
画像提供:HKTDC
2回にわたり、香港での日本酒人気と食のホットスポットについてお伝えしました。
第3弾はイベント全体をまとめた最終リポートです。
Opening Ceremony
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香港貿易発展局(HKTDC)主催の香港インターナショナルW&Sフェアは今年で6回目

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初参加のヨルダン、リトアニア、モンテネグロ、モロッコの4カ国を加えた40の国・地域から1005の出展があり、約2万人のバイヤーが来場。海外からは主としてイタリア、フランス、豪州、米国、カナダ、アジア圏からは中国本土、韓国、日本、マレーシア、フィリピン、インドネシアで、アジアのバイヤー数は昨年より15%増。最終日のみ一般消費者の入場が可能になっていますが、こちらは昨年より18%増の2万4千人でした。
セミナーを振り返って
2日半の日程で参加したセミナーのなかで印象に残った箇所は・・・
トルコワインセミナー
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主要10カ国とトルコの一覧(2010年データ)を見ると、ぶどうの生産量はイタリア、米国、フランス、スペインに継ぐ位置にいます。ワイン輸出量はまだまだ微量ですが、「トルコワインはホットな市場で、英国や米国から注目されていますし、MWのジャンシス・ロビンソンやティム・アトキンも話題にしています」とデブラさん
そのデブラ・メイバーグMWですが、ここでも彼女が得意とする聴講者参加型のスタイルで本領を発揮していました。10月末に来日してチリのプレミアムワインディナーの講師をなさった時も、参加者は青い布(太平洋)や白い布(アンデス山脈)の持役をしたり、動きを伴うクイズを仕掛けられたりで(笑)、おとなしくしていられない状態でした。香港では、参加者に準備した小物を付けながら、5つの代表的な品種を解説しました。Wines of Turkeyのサイトはコチラで
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最初のぶどうはLocal Lord (地方の領主) を意味するEmirエミル種。手製の王冠が登場しました。「軽快で溌剌とした白ぶどうで、ワインはピノ・グリージョ的」とデブラさん
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Narinceナリンジェ種 は “delicately” の意味。用意したのは、透けた羽根の“繊細な”蝶々。ぶどう品種のイメージ、伝わってきますよね。「ライトでデリケイト、フルボディの白ワインになります。シャルドネのイメージ」とのこと
3番目はKALECiK KARASIカレジク カラス種、ここでは紙細工のお城を頭からかぶせて。デブラさんは「ブラックカースルの意味です。フレッシュで、ガメ種に似ています」と。4番目がÖküzgözü オクズギュス種、ツノのついた帽子で、品種の“bull's eye(牡牛の目)”を表現していました。フルボディで熟成タイプの赤ワインになり、デブラ的表現ではメルロ似とのこと。最後の品種はBoğazkereボアズケレ種、タンニンや酸味がしっかりしているからなのか、トルコではトローチ・バーナーを意味するようです。顔見知りの中国のトップソムリエさんを指名してデブラさんが手渡した小道具は、のど飴でした。読み方が難しいので発音も声を合わせて練習しましたが、暗記だけでないセミナーなので、機会があれば活用してみたいです。
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全10アイテムを試飲。トルコ・アナトリア地方のぶどう栽培とワイン造りの痕跡は7000年前にさかのぼることができます。土着品種は800あまり、国際品種はカベルネやシャルドネ、メルロ、シラー等を栽培しています。総体的に白ワインは気品があり、バランスが取れていると感じました。赤ワインのなかには固めのタンニンや収れん味が少し気になるものがありましたが、今後さらに変化していくと思います。
Wine Industry Conference
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〝Driving Growth グローバルワイン産業の動向〟をテーマにした酒類業界会議では中国ワイン協会副理事長のLi DeMeiさんが基調講演、中国のワイン業界の動向について語りました。パネルスピーカーは、ここ数年シンガポール在住でワインアドヴォケイトとeRobertParker.comの編集長リサ-ブラウンMW、チャイ·コンサルティングの創業者モーリーン·ダウニーさん、www.jancisrobinson.comの共同研究者でワインスクールの講師ほか幅広い活動をしているフェラン・センテジェスの3名、進行役はデブラ・メイバーグMW

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Li DeMeiさんは、中国のワイン造りや飲酒の歴史は2000年前にさかのぼることができ、そのことは漢の歴史家(SIMA Qian司馬遷によって書かれた)の記述に残されていること。ぶどう栽培やワイン造りは、欧州訪問をしたグループリーダーで、漢の使節団員だったZHANG Qian張騫によって紹介されたこと、ワイン用のぶどうは気候条件等の問題があり、中国全土での栽培には至らず、狭いエリアに限られてしまったこと。Rice wine造りは比較的容易に全土に広がっていったことについて解説。
日本でのワイン造りの歴史を振り返ってみても欧州系ぶどうの栽培には困難が伴いましたし、故川上善兵衛翁の日本風土に合ったぶどう品種の改良の歴史を見ても、アジアでのワイン造りの苦労を感じます。片や、米文化のアジアにとって、Rice wine(日本では日本酒)は導入しやすく、日本でも47道府県で日本酒が生産されていることを考えると、中国でライスワイン造りが比較的楽に広がったことは理解できます
中国のワイン総生産量は

上記は直近から過去3年間、計4年分のワインの総生産量のデータで、2012年は1,382,000t。生産されるワインの多くは低価格帯が主流です。また、2012年のワインの総輸入量については376,900klで、内訳は2L以下のボトルが255,500kl、2L以上のパッケージ(バルク)が121.400kl。輸入ワイン市場は急成長しています。
主たるワイン産地

大きな3つの丸は左から新疆ウイグル自治区(Xinjiang)、黄河沿いの寧夏平原に位置する寧夏回族自治区(Ningxia)、華北地方にある山東省(Shandong)、他にはHebei'(河北省)や甘粛省(Gansu)等も。
中国では80%が赤で、ドライな赤ワインが好まれています。微量ながら甘口ワイン(ソーテルヌ等)への興味も。栽培品種のうち、黒ぶどうは欧州系のカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、初めて聞いたCabernet Gernischtカベルネ・ガニッシュ(正確な読み方不明)、この品種はボルドー由来で、今では中国固有の品種になっているとのこと、ピノ・ノワール。白ぶどうはシャルドネ、イタリアン・リースリング、リースリングで、地方ではヴィテイス・アムレンシス(アジア原産ぶどう)中心
ワイン生産者はビッグブランドとブティックワイナリーに大別され、前者にはチャンユーグループ、COFCOグレートウォール、ダイナスティ、グランド・ドラゴン等、後者にはグレイス・ヴィンヤード、ホーラン・チャンシュエ、シルバー・ハイツ、ホーラン・マウンテン等があります。

フェラン・センテジェスさんについては今年の5月、ジャンシス・ロビンソンMWが自身のサイトで紹介しています。2006年のスペインベストソムリエで、13年間エル・ブリのソムリエだった由。その彼が用意していたのが上記の五感を刺激する教材でした。初めて見ました。
左から2種の香りのサンプル(リオハのワイン)、フランスの『Le Nez du Vin 』と同じです。隣りはスプレー式、シェリーの香りで、私はアモンティリャードを連想しました。これら2つは嗅覚を刺激しますが、赤と白のボールはグルナッシュ種を触った感じとのこと、外観はソフトで中が固い印象! クールな触感の筒はゴデーリョ種を表現しているそうです。コルクのアダプターは動画で、口中にワインが入ってから香りがどのようにして伝わっていくかが軽快な音楽とともに楽しめるようになっています。視覚と聴覚への刺激です。そして最後、一番右は鏡、変化の目・・・自分の内面を見つめるのかなぁ
嗅覚、触覚、視覚、聴覚、あとは実際にワインを味わって味覚、五感の完成!
ユニークな教材!
Spanish Fine Wine Tasting ~ White ad Sparkling Wines~
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3000年以上のワイン造りの歴史があるスペインは世界一のぶどう栽培面積を誇っています。香港でのスペインワインセミナーは(一社)日本ソムリエ協会刊のソムリエ教本のスペイン編を学習している印象。ワインの原産地呼称(DO、DOCa、Vinos de Pago)、主たるぶどう品種の特徴、熟成規定等を解説していました。そのあと、9種(カバは2アイテム)をテイスティング。
Japan Wine Challenge2013でブロンズメダル、Dcanter誌でブロンズメダルを獲得したワイン等も登場していました。聴講者はバイヤーさんが多かったのではないかと思いますが、講師の話を真剣に聞いていましたし、座れなかった方たちもいたので、スペインワインに興味を持つ人が多かったようです。
Sparkling Wines Beyond Champagne
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WSETの国際トレーニング&開発アドバイザーMs.lvy Ng講師が、英語と広東語を駆使して発泡性ワインについて説明。マスタークラスと銘打ってはいても内容は基本的な製法(シャンパン製法、シャルマ製法、トランスファー方式)、各国のワインの特徴&ぶどう品種、熟成期間等をWSETの表(外観、香り、味覚、結論)を参考にしながらテイスティング。供出されたのはプロセッコ(伊)、アスティ(伊)、カバ(スペイン)、スパークリング(米国)、シャンパン(ポル・ロジュ)の5アイテム
Premium Port Wines
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プレミアムの形容にふさわしい上質のポートワイン
香港インターナショナルW&Sフェアならではのセミナー
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『Kopke 375 Special Edition Porto Colheita1940』、輸入元スゲヴィヌスが主催したプレミアム・ポートワインセミナーに登場。1940年に収穫されたぶどうから造られたワインで、73年間、580リットルのオーク樽で熟成させたスペシャル版。1638年創業のKopke社の375周年を記念したポートワインです。忘れ得ぬ味わいのポートでした。関連記事のワインのこころも
>>>http://sankei.jp.msn.com/life/news/131121/trd13112114300013-n1.htm
今年の会場は

パートナー国のスペインは91の展示ブースを披露
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会場内のお洒落な飾り付けが目につきました。
画像の左のコルク型のUSBのアダプターはいくつあっても嬉しい優れものでした!
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ふと立ち寄ったスペインのブースでは、特徴ある3品種(マカベオ、チャレッロ、パレリャーダ)ではなく、(左から)①シャルドネ100%、②シャルドネ83% マカベオ12% ピノ・ノワール5%、③テンプラニーリョ70% シラー25% ピノ・ノワール5%のカバに出逢いました。

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香港では58%の市場シェアを誇るフランス
イタリアに続いて2番目のボリューム154のブースを展示

イタリアはエミリア・ロマーニャ、キアンティ、ヴェローナの3地域162の展示ブースが

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豪州はワインオーストラリアがブースを構え、アジア・新興市場統括ディレクターのアーロン・ブラッシャーさんのミニ・セミナーも好評
帰国直前、少しの間、ワインオーストラリア(豪州)のブースへ。20年ほど前、ペンフォールドで働いていたというアーロンさんに香港での様子を伺ってみました。ブースでの反応も良く、手ごたえを感じているようです。HKTDCが作成した2013年版の資料に、5年以内に中国が豪州にとっての最大輸出市場になるであろうとの予測が載っていたので、その点を質問したところ、アーロンさんも同意見。「来年フォーカスしたい国は?」との質問にも、最初に登場したのが中国でした。英国、米国に続く、No3(数量ベースは第4位ですが、金額ベースでは第3位)が中国で、豪州のプレミアムワインの輸出相手国としてますます重要な存在になっているようです。ちなみに中国における豪州の赤ワイン比率は70%とのこと、これもさらに増えそうな勢いです。
香港と中国本土の消費者の違いについては、「香港はワインや料理に関して中国本土より洗練されていますし、知識もあります。ただ、中国の次世代はワインの教育、旅行経験、欧州の食事スタイルに慣れ親しんできているので、徐々に変化してくると思っています」と語っていました。過去6年間にわたって中国へのワイン販売は主として、シラーズとカベルネ・ソーヴィニヨン中心ですが、わずか1年で80%以上の増加を記録した中国。話を聞きながら、アジアではNo2の市場とは言われつつも、豪州ワインのシェアが4~5%ととても少ない日本だけに、巨大消費国の中国とは全く異なる切り口で豪州ワインの浸透を考えねばと思いました。
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香港の繁華街コーズウェイベイにあるハイサンプレイスの地下にあるスーパーマ-ケット『ジェイソンズ』で見つけたペンフォールドの店内陳列、中国語で〝奔富〟の意味を持つペンフォールドは中国語圏で人気もの

南アフリカからは28の出展がありました。12月第2週のワインのこころに南アの泡ものについて書きましたが、日本未輸入のアボンデール、イイですよ。輸入元のダイバースフレーバーズもフレンドリー!
http://sankei.jp.msn.com/life/news/131212/trd13121214560010-n1.htm
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ダイバースフレーバーズの代表取締役アントニー・バッドさん
私が気に入ったスパークリングワイン『アボンデール』は南アフリカのパールバレー、クレイン・ドラケスタイン連峰の麓に位置し、ケープタウンから車で35分のところにある家族経営のワイナリーのもので、7種類のワインをビオディナミ農法で生産しています。アントニーさんの前にあるパソコンでは畑で働くアヒルたちの姿も。赤ワインでは『セダバーグ』のシラーズ2010(画像右から3番目)がバランスも良く好印象、エアラインでも使われているそうですが、日本での扱いが増えて欲しい南アのワインたちでした。
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日本からは昨年から参入したJETROと今年初の鹿児島県政府と新潟県酒造組合で98展示をしました。来年はさらに輪が広がるはずです。
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