2025年04月05日

【番外編】スクリーミング・イーグルのソーヴィニヨン‣ブラン

ワイン愛好家垂涎のワイン
ワイン王国webにナパ・ヴァレーのスクリーミング・イーグルが手掛ける『ザ・フライト』について紹介しています。拙ブログでは、その【番外編】として、スクリーミング・イーグルの超希少な白ワイン(未入荷)についてお伝えします。

ド・メグレ氏.jpg

ナビゲーターはエステート・ディレクターのアルマン・ド・メグレ氏
シャンパーニュ地方のご出身、育ちの良さを感じさせるジェントルマン!
ボルドーワインがお好き・・・と感じました。
スクリーミング・イーグルはボルドースタイルなので、
フランスとカリフォルニアの融合という視点なら、ド・メグレ氏はベストな布陣かも

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プレスセミナーの後のプレスランチに登場した
2020スクリーミング・イーグル、ソーヴィニヨン・ブラン、ナパ・ヴァレー
供出温度は16度
低温で供すると直線的な面が強調されてしまうことがあるのでそれを避ける意味合い
当日は赤ワイン、白ワインとも同じ温度でサービスされました。

アロマ豊かで、柑橘系果実や熟した果実のニュアンス、
酸のインパクトは穏やかで、樽の風味を感じました。


                  🍀🍀🍀

2006年にアメリカ人の実業家スタン・クロンキー氏が新しいオーナーになり、彼のために白ワイン(ソーヴィニヨン・ブラン)を造り始めたのですが、メーカーズ・ディナーの時などに白ワインの必要性を感じていたので、着手したというのが、理由のひとつ。

畑は0.8ヘクタールで、土壌は川が流れていた形跡のある、若干灰青色がかった粘土質で、ソーヴィニヨン・ムスケと、2つの異なるタイプのクローンから成るソーヴィニヨン・ブランからなるワインです。

2006年に植樹し、ワインは2010年ヴィンテージから造っていますが、2011年ヴィンテージから市場にリリースさせました。生産量はスタート当初から2015年までは2050ケース、2016年以降は100125ケース、2019年は最多の150ケース。※1ケース9L換算

畑の作業はとても大事で、収穫は何度かに分けて実施しています。十分に熟した果実と緑色の果皮の果実を両方使うことで複雑味を出すこともあるとのこと。ぶどうは除梗後、プレスし、500600リットルの3年目のフレンチオーク樽とステンレスタンクで発酵させ、必要に応じてバトナージュも行います。10カ月樽熟成させ、ステンレスタンクに移して24カ月休ませてから瓶詰め。新樽ではなく、使用樽を活用することで、果実の美しさを残し、酸味が出すぎないようにしている由、MLFに関してはヴィンテージ次第です。

命名については、当初スクリーミング・イーグルの名は使わない方針でしたが、ワインの品質等、総合的な判断で決行なさったようです。

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コルクに印字されているのは“Fly High and Proud(誇りをもって高く飛んで) ”

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プレスランチに登場した2021スクリーミング・イーグル
CS75%、メルロ18%、CF7%
ナパ・ヴァレー最高峰のカベルネ

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プレスセミナーでフォーカスしたザ・フライト
メルロ主体のワインで、
スクリーミング・イーグルが造るもう一つの顔の赤ワイン
詳細はワイン王国webで!

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2025年03月07日

カリフォルニアの山カベと言ったら『ロコヤ』

  来日したロコヤのクリス・カーペンター氏が4つの山カベを披露してくれました。
  セミナーの詳細はワイン王国webに掲載中なので、
  ご笑覧いただけましたら幸いです。

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   データ:ロコヤ

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  ロコヤはジャクソン・ファミリー傘下のワイナリーで、輸入元は(株)中川ワイン
  関係各所から許可をいただきましたので、ロコヤのぶどう畑を動画で是非!

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画像前列左
①カベルネ・ソーヴィニヨン スプリング・マウンテン ナパ・ヴァレー2021/上代13,2000円
後列左から右に
②カベルネ・ソーヴィニヨン スプリング・マウンテン ナパ・ヴァレー2019/上代13,2000円
③カベルネ・ソーヴィニヨン ダイヤモンド・マウンテン ナパ・ヴァレー201/上代13,2000円
④カベルネ・ソーヴィニヨン ハウエル・マウンテン ナパ・ヴァレー2019/上代13,2000円
前列右から
⑤カベルネ・ソーヴィニヨン マウント・ヴィーダー ナパ・ヴァレー2019/上代13,2000円
⑦カベルネ・ソーヴィニヨン マウント・ヴィーダー ナパ・ヴァレー2006/上代19,8000円
⑥カベルネ・ソーヴィニヨン マウント・ヴィーダー ナパ・ヴァレー2010/上代19,8000円


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     10年の熟成かも[ふらふら]

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2025年02月13日

“畑に敬意を払う”を哲学に邁進するナパ・ヴァレーのスポッツウッド・エステート ヴィンヤード&ワイナリー

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画像提供:カリフォルニアワイン協会


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      5年ぶりに来日したノヴァックCEO


                  🍀🍀🍀

      ベス・ウェーバー・ノヴァックCEO来日40周年記念マスタークラス
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    1982年のファースト・ヴィンテージから40回目のヴィンテージとなる
    2021年のリリースを記念した40周年記念マスタークラスで、
    小冊子「Looking Back」を頂戴しました。
    マスタークラスのリポートはワイン王国webで!

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    南カリフォルニアからナパのセント・ヘレナに転居してきたノヴァック家
    1982年の記録が綴られた回顧録

    医者をしていた父ジャック・ノヴァックさん
    ガーデニングが得意な母メアリー・ウェーバー・ノヴァックさん
    右端で猫を抱いているのがベスさん、兄弟は5人


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 笑顔あふれる若かりし頃のご両親
 ワイナリーの初代CEOとして活躍していた頃のメアリーさん


                 🍀🍀🍀


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  (左)ソーヴィニヨン・ブラン2021&同2013


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  ベスさんがベストマリアージュとして挙げていたのが、
 金糸瓜と蟹のとろみスープとソーヴィニヨン・ブラン



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   リンデンハーストカベルネ・ソーヴィニヨン ナパ・ヴァレー2021


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       40回目の記念ヴィンテージ
       ファミリー・エステー・グロウン カベルネ・ソーヴィニヨン2021
       秘めたるパワーとエレガンス、ベスさんの人となりを反映したワイン


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 左から供出順に
 リンデンハーストカベルネ・ソーヴィニヨン ナパ・ヴァレー2021
 ファミリー・エステー・グロウン カベルネ・ソーヴィニヨン2021
 同2016、同2006、同1996
 前菜三種(つぶ貝の冷菜、蒸し鶏ごまだれソース、くらげの和え物)と合わせて

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 ベスさんが手にしているのが40回目の記念のヴィンテージです。




                🍀🍀🍀


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  1985年から有機栽培を実践しており、ナパのワイナリーでは先駆者
  1992年に取得したCCOF、ビオディナミ農法Demeter、Napa Green、B-Corp
  1% for the Planet等、環境に優しい組織から多くの認証を受けています。


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 スポッツウッドのボトル裏面に記載されている認証

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        最も新しい認証はパタゴニアが管理するROC
        Regenerative Organic Certified/環境再生の農業認証になります。
        環境と地域社会への配慮を常に考えて前進するリーダー
        それがベス・ウェーバー・ノヴァックCEOだと、私は確信しています。

【ひとりごと】
 ベスさんとのプレスランチは2024年11月7日のことでした。
 米国大統領選挙の結果が出たのは、日本時間の6日19時30分過ぎ。
 私はニュースを見る気も失せ[がく~(落胆した顔)]
 ベスさんも落胆なさっていて「アメリカ人を代表してお詫びします」とのお言葉が。
 私は、その時のことを忘れることができません。
 新しい大統領は、気候変動対策と逆行することを押し通すつもりのようですが、
 嘘が当たり前の人間が大統領なんて信じられません。
 2003年のアカデミーの授賞式で、
 マイケル・ムーア監督が時の大統領ブッシュに向けた言葉
 私はそれを言いたい気分です、Shame on you, Mr.Trump!

[演劇]製品についてのお問い合わせはWINE TO STYLE / TEL:03-5413-8831

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2024年12月24日

ジェラール・ベルトランのアイコンワイン ~クロ デュ タンプル、ヴィラ ソレイヤ、クロ ドラ~




 世界最大規模のデメター認証取得者
 トップキュヴェ3アイテムとジェラール・ベルトランの三銃士
 左から
 ロゼ『クロ デュ タンプル2021』営業部長のクレマン・キャリエール・プラダル氏
 オレンジワイン『ヴィラ ソレイヤ2021』ブランドマネージャーのコランタン・アンリオ氏
 赤ワイン『クロ ドラ2019』アジア・パシフィック営業担当ヤン・ヴィッセール氏

 南仏の自社畑1,263㌶に17のエステートを所有し、22年前からビオディナミを導入。
 ジェラール・ベルトランの全ての畑はデメター認証取得済。
 世界最大のビオディナミの生産者です!
 祖父母が5~6㌶の畑からぶどう造りを開始し、父親の代からワイン造りに着手。
 1987年父親の急逝により、仕事をサポートしていたベルトラン氏が事業を継承。
 2名だった従業員も、今では400名まで急伸、勢いある生産者として注目されています。

 来日した三銃士は、ベルトラン当主のワイン造りのこだわりについて語りました。


          WINE KING of the south of France

         ジェラール・ベルトランのXより

         2023年WS誌からWINE KING of the south of France受賞
         ベルトランでは全生産量の40~50%がロゼなので、
         2024年にはdbからMASTER WINEMAKER Winner Best Rose
         ロゼの造り手としても高評価されています!


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  ジェラール・ベルトランのXより

  かつてフランス代表のラグビー選手だった当主
      パリオリンピック2024では聖火ランナーとしての勇姿

               🍀🍀🍀

 ブランド構成
 ヴィッセール氏による解説
 エントリーレベルからアイコンワインまで層の厚さを誇るベルトラン
 ロゼワインは米国や欧州、フランス国内での売上快調。
 オレンジワインは日本で人気!
 2024年はクラウディワイン(日本酒の濁り酒に似たタイプ)や軽い赤ワインを新発売
 オーガニックワインやテロワールを生かしたワイン、スパークリングワイン
 シングルヴィンヤードや希少ワインのカテゴリーに続き、
 すべての頂点にいるのが、三銃士が紹介するアイコンワインです。


     クロ デュ タンプル2021
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    ロゼワインのクロ デュ タンプル2021 ビオデイナミ農法/デメター認証
    産地はラングドック・ルーション
    アペラシオンはラングドックのガブリエール / 12㌶で11区画に区分
    品種はグルナッシュ52%、サンソー41%、シラー4%、ヴィオニエ3%
       グルナッシュ&サンソーとも60~120年の古樹
    参考上代 34,000円
    片岩の上部にライムストーンが広がるエネルギーあふれる土壌
    ルイ14世の時代は “one night wine/一夜だけ浸漬させる造り”が重用された。
    今は敷地内にあるセラーでワインを醸造、生産量は15,000~20,000本
    ボトルに施されたブルーとゴールドはフランス王朝カラー

    

 ヴィラ ソレイヤ2021
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 ビオディナミ農法 / デメター認証
 地域はラングドック・ルーションで区画はシャトー・ロスピタレ
 品種はルーサンヌ、ヴィオニエ、ヴェルメンティーノ
 ぶどうは全房のまま、マセラシオンカルボニックを実施
 温度は21~25度の間で調整。その後、ぶどうを圧搾し、木樽で発酵
 木樽、アンフォラ、80㍑のワイングローブで6~9ヶ月熟成
 参考上代 30,000円
 

            ワイングローブ=ガラス製のアンフォラ
            画像提供:ジェラール・ベルトラン

        「色の抽出が綺麗、澱は常に対流している」とプラダル氏。
         ワインツーリズムでも視覚的に効果ありとのお話でした。
         ちなみに、ワイングローブは世界のトップ生産者たちが、
         トライアルしている注目の容器と言えます!

 
           

 クロ ドラ2019
 クロドラ2019はビオディナミ農法 / デメター認証
 産地はラングドック・ルーション、アペラシオンはラ・リヴィニエール
 品種はシラー、カリニャン、グルナッシュ、ムールヴェルードル
 参考上代 35,000円


 テイスティングした6アイテム
 左から

 クロ デュタンプル2018、同2021、ヴィラ ソレイヤ2020、同2021
 クロ ドラ2015、同2019
 後日ワイン王国webでご紹介させていただきます!


             🍀🍀🍀


 葡萄酒技術研究会後期講演会にて


12月12日、山梨県の葡萄酒技術研究会後期講演会の折に、ヴィラ ソレイヤ2021をテイスティングしていただきました。エノログの皆さまから頂戴したコメントはブログに掲載しています。ジェラール・ベルトランが新容器ワイングローブで完成させたオレンジワイン。皆さまに、その魅力がお伝えできましたら幸いです。


                🍀🍀🍀


2024年の収穫状況
直近20年で最低の収量(2007年と同程度)とのこと。欧州各地で、霜や雹、長雨や洪水、干ばつ等の被害が出て、フランス全体では27%減になりました。南仏の場合、ピレネー付近は干ばつで、年間の降水量はわずか150mm足らず。片や、モンペリエ付近では多くの雨が降り、病害虫(ベト病やうどん粉病)が発生しました。ワイナリーでは、2年前からローヌ渓谷から水を引いてくるプロジェクトを開始しています。年間10%程度しか灌漑を利用していないベルトランですが、クリーンな水を確保しておく手段は講じておきたいとのお話でした。プラダル営業部長は「ビオディナミを導入して以降、ぶどう樹は熱波の時は水分を失わないように自衛本能で身を守り、たくましくなっている」と力説しました。

ジェラール・ベルトランの、立ち止まることなく、前進する姿勢は、
ラグビー選手だったベルトラン当主の精神そのものあり、
それは見事にワイン造りに反映しています。

【製品についての問い合わせ先】
株式会社 ファインズ 電話 03-6732-8600
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2024年10月09日

ワールドクラスの品質を誇るNZ北島の家族経営のワイナリー『クラギー・レンジ』

 クラギー・レンジの3代目デイヴィッド・ピーボディ ブランドアンバサダー
 新規輸入元WINE TO STYLE主催のプレスセミナー
 デイヴィッドさんが手にしている『ル・ソル2016』はセミナー用に供された参考商品

     2016年は天然コルク、2018年VT以降はSCにチェンジ

 [目]購入できるクラギー・レンジ

(No.7「ル・ソル」以外)の8アイテム

上記のクラギー・レンジをチェックしていただくとワイナリー&ワインの詳細がわかります。
デイヴィットさんがセミナーで解説していた事項としては、
祖父がビジネストリップでNZを訪れた時、マールボロ、マーティンボロ、オークランドを視察。その折、クメウ・リヴァーのシャルドネを味わい、同国の潜在能力を感じ、ワイン造りを決断。ピーボディ家はブルゴーニュワインを愛飲しており、シャルドネやピノ・ノワール好みだった。
クメウ・リヴァーの醸造責任者はNZ初のマスター・オブ・ワイン(MW)マイケル・ブラコヴィッチさん。地質のプロでもある彼から様々なアドバイスを受けた。
クラギー・レンジはピーボディ・ファミリーとNZで2人目のMWスティヴーブ・スミスさんとで始業。スティーブさんは世界レベルのワインを産出。初ヴィンテージ2003年はロバート・パーカーによる高評価の追い風を受け、特に米国市場では大成功。2024年から新しい醸造責任者(2021年ワイナリーに参画)ベン・トゥームズさんが就任。彼は2020年にニュージーランド・ヤング・ワインメーカー・オブ・ザ・イヤーを獲得しており、クラギー・レンジのワイン造りの新時代を担う人材として大いに期待している。
祖父母が世界クラスのワイン造りを目指してワイナリーを立ち上げたが、四半世紀に満たない間に、クラギー・レンジは世界が認めるワイナリーとして存在感を示している。


                🍀🍀🍀🍀🍀



 画像(C) Craggy Range
 細部まで行き届いたヴィンヤードは綺麗!

 アーダーン元首相の結婚式@Craggy Range
 資料提供: WINE TO STYLE
 2024年1月、NZの元首相アーダーンさんの結婚式がクラギー・レンジで行われました。
 供出されたのは2アイテム
 
              SB テ・ムナ マーティンボロ2023



 
      テ・カフ ギムレット・グラヴェルズ・ヴィンヤード ホークス・ベイ2020




               🍀🍀🍀🍀🍀



       創業者好みのロゼ
       ヴィンテージによって使用品種のブレンド比率は異なります。 
       2023年はメルロ100%、
       最新の2024年

はメルロにテンプラニーリョを20%ブレンド



                 🍀🍀🍀🍀🍀



 
        プレスセミナーの翌日開催されたBeyond Bordeaux Tokyo
        クラギー・レンジはフランスの「ラ・プラス・ド・ボルドー」に、      
        ニュージーランドのワイナリーの第一号として参入
        ラ・プラスには300あまりのワイン商がおり、
        世界のインポーターやブローカーを通して消費者に販売
        扱うのはトップキュヴェやプレミアムワインが中心
        クラギー・レンジはワイン商CVBGに販売を委ねており、
        アイテムは『アロハ(マオリ語で“愛”)』と『ル・ソル』

 


 ワイン王国web

に試飲セミナー報告をアップしています。
 ブログと併せてご笑覧くださると嬉しいです。
 引き続き、宜しくお願いします。
posted by fumiko at 10:23| Comment(0) | 来日したワイン生産者&関係者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年08月29日

“ファインワインを世界から”をミッションに邁進する日本リカーの創立60周年記念祝賀会

      日本リカー主催創立60周年感謝の会
     2023年11月で創立60周年を迎えた日本リカー
     おめでとうございます!
     長年お付き合いしてきた取引先や関係者、プレスを招いて祝賀会を開催
     会場は代官山のメゾン ポール・ボキューズ


     エントランスには日本リカーの株主2社のスタンドパネル
     仏ブルゴーニュが拠点のルイ・ジャド
     シャンパーニュのPHやCH等を擁するEPIグループ


  晴れの日を共に祝うため、
  来日したルイ・ジャドのピエール=アンリ・ガジェ会長(中央)
  EPIグループのダミアン・ラフォリ社長(右から2人目)
  テーブルの同席者は日本リカーの斎藤富明代表取締役社長(最左)
  山口大輔日本リカー事業部長、本間寿一PH&CHジャパンカントリーマネージャー


 日本リカーの沿革、60年の歩み
 斎藤社長による解説の主要部分を列記すると、
 ■設立は1963年11月26日、江商(株)主導で協和発酵と合弁で新会社を立ち上げる。
 輸入洋酒の卸販売の日本一を祈願し『日本リカー(株)』と命名
 ■1967年江商(株)が兼松(株)と合併、翌1968年大阪支店開設

 ■1974年『ルイ・ジャド』との代理店契約を締結
 同年福岡支店、75年名古屋支店、79年仙台営業所を開設
 ■1986~88年第一次ボージョレ・ヌーヴォーBNブーム到来
 ポール・ボキューズ氏のヌーヴェル・キュイジーヌの提唱もあり70年代からBN世界に拡大
 ■1999年卸問屋業からワインインポーターにシフト、翌2000年ルイ・ジャドが資本参加

 ■2005年メルシャンの資本参加によりメルシャングループ
 ■2007年メルシャン、キリングループへ
 ■2016年PH-CH社による資本参加、ブランドポートフォリオ再構築

 平成以降、日本リカーの10代目社長は斎藤富明氏で2021年から采配を振っています。
 日本リカーの使命は「世界の酒庫を拓く」から、
 「世界のワインと暮らす」に変わり、今は「ファインワインを世界から」です!

 アンリ・ガジェ会長が語った記念年 
 5年振りに来日した会長は満面の笑み

 60周年を迎えた日本リカー
 :日本リカーとルイ・ジャドの代理店契約から今年で50年
 :アンリ・ガジェ氏がルイ・ジャドに入社した1985年から約40年
 :日本リカーとルイ・ジャドのパートナーシップ締結から約25年
 上記の4項目を述べた後、販売成功に導いてくれた関係者
 および日本リカーの創立から今に至るチームメンバーに対しての謝意がありました。
 2022年末、30年間の職務を辞し後進に社長職を譲ったガジェ氏。
 新社長の日本でのお披露目はコチラ

で紹介しました。

 【参考】ルイ・ジャド創業150周年の時に作成した年表 クリックで拡大



              o○.。o○.。o○ .。o○.。o○.。


 ミニトークセッション
 ラフォリ氏、通訳 高橋佳子さん、アンリ・ガジェ氏、大越氏

 大越基裕氏をゲストスピーカーに迎えてのトークセッション
 テーマは「ワインの銘醸地におけるリーディング企業としてのこれからのワイン造り」
 [NEW]ワイン王国web

にトークセッションの要点を記載しました。


             o○.。o○.。o○ .。o○.。o○.。


    記念年のワインで祝福
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    親交があったポール・ボキューズ氏ゆかりのレストラン


    ラグジュアリーワインのレア・シャンパーニュ&ブラン・デ・ミレネール


      ボーヌ PC レ・グレーヴ ル・クロ・ブラン2017 ドメーヌ・ガジェ
      ガジェさんの父が購入した畑でミネラルや白い花を彷彿とさせるワイン


 南仏風の小野菜を添えた鱸(すずき)のロースト
 爽やかなブールブランソースが白にもシャンパーニュにも寄り添い[わーい(嬉しい顔)]


      アンリ・ガジェ会長が心を込めてセレクトしたヴィンテージ
      沿革にも記載したように、1985年はガジェ氏がルイ・ジャドに入社した記念年
      グレートヴィンテージかつマグナムで熟成させたシャペル・シャンベルタン
      ワインの長い熟成に由来する様々な要素が広がり、
      ゆるやかな時の流れに浸ることができました


 主要ブランド ポートフォリオ
 データ提供:日本リカー

 日本リカーが定義するファインワイン
 ぶどう産地のテロワールが体現できる健全で高品質なぶどうから造られるワイン
 熟成の可能性を備えつつ、どの段階でも美味しく飲むことができるワイン
 それなりの生産量で持続可能なワイン(小売想定@3,000前後以上)
 日本リカーが定義するラグジュアリーワイン
 ファインワインの特質を備え、希少で、本物のストーリーを有するワイン
 支払った高額な対価以上の満足感を与えることができる限定生産の高級ワイン
 (小売想定@20~30,000超)


      祝賀会に供された全アイテム


 ルイ・ジャドがオレゴンで手がけるレゾナンス PN2016
 EPIグループが所有するビオンディ・サンティ ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ2018


 チリの名門ドン・メルチョーCS2021
 オーストラリアのペンフォールズ グランジ2018


    グラッパやヴィンテージ・ポート等のラインナップ


              o○.。o○.。o○ .。o○.。o○.。



 ラフォリ社長とは8年ぶり、アンリ・ガジェ会長とは6年ぶりの再会
 あらためまして、おめでとうございます!
 日本リカー&パートナーのルイ・ジャドとEPIグループのさらなる躍進を願っています。


 ピエール・エルメのマカロン、ルイ・ジャドとPHのロゴもさすが!
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2024年08月10日

TEMPOS Vega Sicilia テンポス ベガシシリア ~日英2ヵ国のみで開催された160周年記念ディナー~

 スペインの至宝“ベガシシリア”設立から160年を祝して
 会場は和の殿堂『雅叙園東京』の竹林の間


 天井には一枚の木から彫りおこした木彫絵
 接着剤は使わない職人技、70種以上の四季の花が描かれています。


 和の空間と展示用マグナムボトルのウニコ1995、2004、2009


 初来日のアルベルト・アルバレス ゼネラルマネージャー
 スペイン企業で役員として活躍した後、昨年6月現職に就任


 出典:TEMPOS Vega Sicilia の X から
 160周年アニバーサリーディナーを開催したのは英国と日本のみ
 英国に於ける会場はロンドン ナショナル・ギャラリーのスパニッシュルーム
 ベラスケスやスルバラン等の画家の作品に囲まれた格調あるお部屋!



テンポス ベガ シシリア

の沿革

聖セシリアを祭った教会名が語源のベガ シシリア。正式名は、スペイン語で“時間”を意味するTEMPOSを冠した『テンポス ベガシシリア』です。
アルバレスGMは「1864年にエロイ・レカンダがリベラ デル ドゥエロの地でワイナリーを創業。彼は欧州ワインの愛好家でフランスからカベルネ・ソーヴィニヨンを持ち込み植樹。1907年に初代ワインメーカーのチョミン・ガラミオラが長熟タイプのワイン造りに着手。ワイナリーの発展に貢献しました。約40年ほど前、現オーナーであるパブロ・アルバレスの父親がワイナリーを購入し、今に至っていますが、パブロは国際化に取り組み、今では145ヵ国に輸出。ベガ シシリアを量&質の両面で躍進させました」と語りました。


 国内外に5ワイナリー
 画像提供:TEMPOS Vega Sicilia
 スペイン国内に4つ、ハンガリーに1つ
 ■伝統のベガシシリアと近代的なアリオン、ともに拠点はリベラ デル ドゥエロ
 ■1993年に400年以上のワイン造りの歴史があるハンガリーに国外初のワイナリーを取得
 ■2001年新たな挑戦としてトロにピンティアを立ち上げる
 ■2009年マカン設立、バロン・エドモン・ド・ロートシルトとのジョイントベンチャー

 記念ディナーの終盤、アルバレスGMが発表した最新情報
 [NEW]現在リアス・バイシャスで新プロジェクトを進行中
  2タイプのアルバリーニョを2027年にリリース予定


 ファインズ

の川村崇社長、アルベルト・アルバレスGM、セサル・ロマンアジア輸出担当
 川村社長は「ベガシシリアが創業した1864年は、日本では幕末の動乱期にあたり、
 坂本竜馬や高杉晋作が活躍していました。
 その時代からワイン造りをしていたことに、歴史の重みを感じます。
 時の流れを重視しながらワインビジネスを展開しているベガシシリア。
 弊社も同じ気持ちで、共に歩んで参ります」と挨拶。


 余談ですが、竹林の間の由来は・・・
 アルバレスGMの後方の床柱に彫られている中国・晋の時代の“竹林の七賢
 文学を愛し、酒や囲碁を好み、高尚な話を楽しんだ7名の知識人たちの集いの場所
 そこが竹林でした。壁の色も竹を感じる淡緑ですね。
 時空を超えた“空間”で、スペインの至宝ワインを堪能できてラッキーでした。[わーい(嬉しい顔)]


 アルバレスGMと吉川由紀子会長との記念ショット



               🍷 🍷 🍷 🍷 🍷


 アニバーサリーディナー






 今回だけのスペシャルメニュー
 ワイナリー側からのリクエストは「和食とのペアリング」
 ペアリングを仕切った雅叙園東京顧問の石田博ソムリエ

 先付:もろこし豆乳蒸し × オレムス マンドラス2021
 マンドラスの品種フルミントは高い酸味が特徴なので、
 ハンガリーでよく使われているプラムに代わり、
 日本の梅の酸味と合わせてバランスを取った組み合わせ
 もろこし豆乳と酸味のあしらいは和の食材に長けた石田氏の自信作

 前八寸:雲丹と翡翠茄子 × オレムス マンドラス2019
 糖度と酸味のバランスが取れたヴィンテージ
 アーモンドの意味があるマンドラス、風味にナッツ系の油脂を感じます。
 現地ではフルミントとフォアグラが好相性、そのポイントは“脂分”
 ここではフォアグラに代わって鶏レバーを使ったペアリング
 前八寸に使われていた雲丹や蓮根だと力強さ、海老芝煮だと酸味が際立ち、
 各食材によって異なるハーモニーを奏でてくれた印象

 椀盛:鱧葛打ち
「通常はお椀を外すこともありますが、伝統のコースの流れにしています。
 上品な鱧の葛打ちに、鶉丸を入れることで、接点をもたせました」と石田氏


 造り:鰹叩き × バルブエナ2014
 赤ワインに合わせた赤身のお造り、ニンニクや生姜が繋ぎ役!


 バルブエナ2014、バルブエナ2001
 バルブエナは樽熟と瓶熟で熟成期間は5年かかることから「バルブエナ5」と命名
 ベガシシリアのテロワールとヴィンテージの特徴を表現しています。


 焼肴:鰻蒲焼
 スペインではピメントを良く食べるので、日本のピメント(甘長)添え


 石田博氏からは、
「料理長の伝統的で季節感を尊重したメニューで、ペアリングを楽しめるようにしました。
 ベガシシリアは和食に合うんです」とのコメントが!


 色鮮やかな孔雀が描かれている欄間にもご注目くださいませ。
 竹林の間には、羽ばたく鳥や開花した花々が描かれています。
 結婚式場として利用されることが多いお部屋なので、
 新たな門出をする新郎新婦を祝福する意味で、このような動植物を題材にしている由。


 強肴:焼豚角煮 × ウニコ1996 & ウニコ1981
「唯一」と名付けられた良年のみ生産されるプレミアムワイン
 約10年の熟成を経てリリースされるフラッグシップです。
 カタルーニャ地方の名物料理を日本風にアレンジ。
 発酵食品の醤油を使った料理と熟成した赤ワインとのペアリングは安定感あり


      はちみつのクレメ杏の香 × アスー5プットニョシュ2000
      洋のタッチを取り入れた杏を使ったデザート
      ワインから感じる杏やマンゴー、甘露煮風の味わい
      デザートと相乗してコースの最後を〆てくれました。

 感謝を込めて
 160周年アニバーサリーディナーにお招きいただき、ありがとうございました。
 アメリカンオークの記念プレートも!
 ベガ シシリアでは樽工場を所有、全体の3分の1をまかなっています。
 アメリカンオークは自社で製樽、フレンチオークはメンテナンスのみです。

 今回、ブログでは画像を使って、イベント全体の流れをしたためました。
 ワイン王国web

と併せてご笑覧くださると嬉しいです!
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2024年08月02日

ワインと芸術の融合を自負するトスカーナのBIBI GRAETZ/ビービー・グラーツ

    ファーストヴィンテージから20年でTOP醸造家の仲間入り
    2024年4月に来日したビービー・グラーツ当主
    2023年3月からピーロート

が販売を開始しています。


 2023年9月のZOOM
 トスカーナと東京を繋いでお話を伺いました。
 ワイナリーは古いホテルを購入して内部を改装なさったそうです!



 2024年の来日で
 左から順に供出されたアイテム
 #1:カザマッタ・ビアンコ2023
 #2:カザマッタ・ロッソ2022
 #3:テスタマッタ・ビアンコ2021
 #4:コローレ・ビアンコ2021
 #5:テスタマッタ・ロッソ2016
 #6:同2020
 #7:同2021
 #8:コローレ・ロッソ2015
 #9:同2020
 #10:同2021

ワイナリーはフィレンツェを見下ろすフィエゾーレの丘にあります。
祖父も父も彫刻家という家庭で育ったグラーツさんは、アーティストとしての道を究めるべく、フィレンツェ美術学校に進学しますが、母親が自家用に手入れをしていた2㌶のぶどう畑の作業を手伝っているうちに、ワイン造りに目覚め、生涯の仕事にすることを決断。ワイン道を初歩から学び、学友を介してイタリアの名醸造家の元で実地研修を重ね、視察や研鑽を積みながら、2000年に自らの名を冠したワイナリーを設立しました。

「当時理想としていたワインはサッシカイア」と語った後、「テスタマッタ・ロッソのファーストヴィンテージが著名なワイン雑誌でサッシカイアの次に高評価を受けた時は驚きとともに最高の気分だった」と述懐。ファーストヴィンテージに関しては、VINEXPO2003のブラインドテイスティングで第1位に選出されるという快挙を成し遂げています。加えて、2008年のワインスペクテーターで、テスタマッタ2006が赤ワインの最高得点をゲット。現在、トスカーナのTOP5に入るワイナリーとして存在感を示していますが、この間、わずか20年あまりのことです!



 ビービー・グラーツのぶどう畑
 画像提供:ピーロート・ジャパン
 標高が高く、石の多い痩せた土壌から酸味を伴ったエレガントなワインを生産
 テスタマッタはヴィンチリアータ、オルモ、ロンダ、ラモーレ、モンテフィリ&シェナ
 コローレはラモーレ、ヴィンチリアータ、オルモ&シェナ
 とくにコローレは樹齢の古いぶどう樹が中心

 画像提供:ピーロート・ジャパン
 すべての畑のなかで標高(650m)が最も高いラモーレ
 “樹齢の古いサンジョヴェーゼ(90年以上)”が生み出すビービー・グラーツならでは味わい

 ジリオ島
 画像提供:ピーロート・ジャパン
 トスカーナ地方の最南端に位置するジリオ島は、グラーツ当主のワイン造りのルーツ


 画像:BIBI GRAETZの公式サイト
 ぶどう品種アンソニカは、シチリア州ではインツォリアと呼ばれています。
 トスカーナ州ジリオ島のアンソニカはシチリア州のぶどうより凝縮感や塩味あり



                🍀🍀🍀🍀🍀



      ベイクドビーツサラダ × カザマッタ・ビアンコ2023

イタリア語で「狂気の家(Crazy House)」を意味するカザマッタ(アンソニカ60%、ヴェルメンティーノ30%、トレッビアーノ10%)。「アンソニカを何故使うのですか」との問いについて、「カコウ岩質由来のミネラル、ぶどう本来のエネルギーがあり、潮風の影響もあるので」と当主。


      カザマッタ・ロッソ2022

暖色レッドとイエローを使ったラベルからは、エネルギーやポジティブな“気”を感じます。
サンジョヴェーゼ100%、発酵はステンレスタンク、醸造はステンレスタンクとフレンチオーク(10%)で6ヵ月間熟成、その後、瓶詰め。フレッシュで滑らか、果実の味わいを強調した味わい。
当主が“リトル・テスタマッタ”と形容するカザマッタ・ビアンコ&カザマッタ・ロッソのラベルはリリース毎に変えるとのこと。

 北海道産ホタテのクルード × テスタマッタ・ビアンコ2021、コローレ・ビアンコ2021

 テスタマッタ・ビアンコはジリオ島の単一畑セローネのアンソニカ100%。
 燻したスパイスやナッツ風味、ワインの塩味とヨード感がホタテと良い相性
 コローレ(=色)・ビアンコはジリオ島のピエトラボーナの畑のアンソニカ100%。
 桃やアーモンドペーストのアロマ。高樹齢のぶどう由来のストラクチュア、ミネラル感


   鹿児島県産海老のリガトー二 × コローレ・ビアンコ2021

 ジリオ島の南西部に位置する畑で標高200~500m、超樹齢100年のぶどう樹含む。
 除梗・圧搾後、ステンレスタンクで低温発酵。
 熟成は70%フレンチオーク、30%ステンレスタンク。
 シーフードクリームソースとワインの質感の一致、ヨードがもたらす渾然一体感。


 左から テスタマッタ・ロッソ2021、同2020、同2016

3ヴィンテージについて、グラーツ当主は以下のように表現。
2021年は“肉厚”、フレッシュでありながら豊満。みずみずしい赤系果実、味わい深い油脂感
2020年は“完璧”、イチゴの果実感、バニラのアロマ、最高レベルの完成度
2016年は“力強さとエレガンス”、赤系果実、紅茶、タバコ、なめし皮、個性的なワイン


 ペッパーステーキ × コローレ・ロッソ2021、同2020、同2015

2021年はサンジョヴェーゼ100%
エネルギーやパワーにあふれ、太陽の恩恵を受けたヴィンテージ
2020年はサンジョヴェーゼ100%
古樹、標高、土壌の3要素が生み出す緊張感あるワイン
2016年はサンジョヴェーゼ80%、カナイオーロ10%、コロリーノ10%
層になって広がるアロマ、ストラクチュアとバランス、ミネラル感、複雑味のある味わい

サンジョヴェーゼ、カナイオーロ、コロリーノの歴史ある畑から生まれた、
ビービー・グラーツの“夢”を表現したトップレンジがコローレ


     コローレ・ロッソを前に笑顔のグラーツさん



 キャロットケーキ×テスタマッタ・ビアンコ2021

 ケーキの程よい甘さとオレンジの酸味がアンソニカ種の軽快な酸味と塩味に相乗。
 ラベルとデザートの色合わせが視覚的に好印象


                🍀🍀🍀🍀🍀



  今月半ば
Beyond Bordeaux Tokyo 2024(以後BBT)の開催が予定されています!

  上記は昨年のBBTに出たビービー・グラーツのプリムール発売日&ワインデータです。
  テスタマッタのラベルに使われているイエローとブルーは補色の関係。
  大胆でありながら繊細さが垣間見える色彩感覚は素晴らしいです。
  グラーツさんはワイン造りの要について、
  (1)古樹へのこだわり 
  (2)エレガントな酸を伴ったワイン
  (3)アーティスト根性=ワインとアートの融合
  とコメントしていましたが、
  芸術家一家のDNAを感じるラベルには飲み手をワクワクさせる魅力があります!

  ■ワインについての問い合わせ先:ピーロート・ジャパン
  電話03-3458-4455 / mail service@pieroth.jp
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2024年07月20日

和食と上級クラスのプロセッコとのマリアージュ@明治記念館 花がすみ

 東京から樹木がどんどん消え去っている今、
 明治記念館の庭園の緑に癒やされました!

庭園.jpg
       プレスディナーまで少し息抜き

 来日メンバーを囲んで 
All members.jpg

ディナーに参加した5ワイナリーの皆さん
後列中央コンテ・コッラルト社、後列右イル・コッレ社、
前列左から2人目アンチッロット社、前列中央サンタ・マルゲリータ社、右隣ラ・トルデーラ社
プロセッコ・スペリオーレDOCG保護協会のディエゴ・トマージ事務局長(後列左)、SOLOITALIA林茂代表、花がすみの杉山浩一料理長(前列右)


   2019年に世界遺産に認定されたコネリアーノ・ヴァルドッビアーデネの丘陵が生む
   プロセッコ・スペリオーレDOCG


■プロセッコはイタリア北東部のみで生産。上級品『コネリアーノ・ヴァッドッビアーデネ・プロセッコ・スペリオーレDOCG』は急斜面の丘陵地で造られています。
■ぶどう品種で85%以上使う必要があるのはグレーラだけ。その他の地元固有品種ヴェルディーゾ、ペレーラ、ビアンケッタ、グレラ・ルンガは最大15%まで認められています。
■残糖分の割合によって、エクストラ・ブリュット(0~6g/L)、ブリュット(0~12g/L)、エクストラ・ドライ(12~17g/L)、ドライ(17~32g/L)に分類
■リーヴェは、地元の方言で“急斜面にあるぶどう畑”を意味しており、DOCG内のサブ・ゾーンごとの違いを明確にする目的をもっています。最大収量は13トン/ ㌶に制限され、ぶどうは手摘み、ヴィンテージの記載義務もあります。現在、コネリアーノ・ヴァルドッビアーデネの領域内にあるリーヴェは43



                🍀🍀🍀🍀🍀



     
 
前菜דポンテ・ロッソ”コネリアーノ・ヴァルドッビアーデネ・プロセッコ・スペリオーレDOCG エクストラ・ブリュット2023/コンテ・コッラルト社
ぶどう品種はグレーラ主体でヴェルディーゾ、ビアンケッタ
鰻の脂分や青利烏賊の黄味焼きとは寄り添っていましたが、素材によっては口中に生臭みが


 椀物は鮎魚女葛仕立て、蓮根餅、木の芽


 
お造りדリーヴェ・ディ・レフロントロ“ヴァルドッビアーデネ・プロセッコ・スペリオーレDOCGブリュット/サンタ・マルゲリータ社
ぶどう品種はグレーラ100%、当日のマイベスト
肩肘はらず素直に楽しめる相性で、丁寧な造りを感じさせる酒質が好印象

 
焼物דコッレ・バイオ””コネリアーノ・ヴァルドッビアーデネ・プロセッコ・スペリオーレDOCG ブリュット/イル・コッレ社
ぶどう品種はグレーラ85%、ビアンケッタ5%、ペレーラ4%、ヴェルディーゾ6%


 器の青と朱塗りのお盆のコントラストが見事


石焼き×ヴァルドッビアーデネ・プロセッコ・スペリオーレDOCGブリュット ミッレジマート2023/アンチッロット社
ぶどう品種はグレーラ100%

 
天麩羅にはグレーラ100%のアンチッロット社のミッレジマート2023を合わせて
酢橘を使うことでワインの酸味と相乗。加えてワインの軽いビター感が塩でマスキングされる印象


  二八蕎麦



     デザートדティットーネ”“リーヴェ・ディ・ヴィドール”
     ヴァルドッビアーデネ・プロセッコ・ドライDOCG/ラ・トルデーラ社
     ぶどう品種はグレーラ85%他
     ほうじ茶のロースト感とワインの軽いビター感が〇、黒蜜が美味!

 供出されたワイン
 左から右の順


IMG_8387.jpg
 プレスディナーの直前には雅叙園で試飲会が開催されました。


【お問い合わせ先】
プロセッコ・スペリオーレDOCGについては
SOLOITALIA
TEL: 03-5858-9550 / FAX: 03-5858-9330
e-mail: info@soloitalia.co.jp
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2024年07月03日

NZ『フォリウム・ヴィンヤード』の栽培兼醸造家岡田岳樹氏のワイン造り

2年連続で来日したフォリウム・ヴィンヤード

の岡田岳樹さん

昨年は1ヵ月かけて、NY、ダブリン、ロンドン、シンガポール、香港、ソウルを巡回
大事な営業でした!

今年はニュージーランドワイン試飲・商談会2024に合わせて来日。
日本は輸出全体の25%を占め、
豪州、英国、米国、韓国、シンガポール等の他、台湾が新たに加わりました!
輸入元WINE TO STYLE主催のプレスランチもあり、そこでは、
最新ヴィンテージや若飲みされることが多いSBの熟成のポテンシャルについて言及。
岡田氏が貫くワイン造りは、ワイン王国web

で紹介しています。
パッションフルーツや柑橘の香りが出すぎていないフォリウムのSB
味わえばわかる、その魅力を、愛好家の皆さんと共有したいと思っています。
参考:2023年の来日リポート





    2003年からNZ生活を続けている岡田さん

 プレスランチに登場した8アイテム

 SBの最新VT2023年、2019年、2013年を利き比べながら、
 熟成のポテンシャルを確認。
 2021年から商業ベースでCH(最右)にも着手。


      青木一押しのロゼ
     「みんなでワイワイ」、「食卓に笑顔を」
      フォリウムのワインはそんな感じで飲んで欲しいそうです!


    癒やしのワイン
    甘さの裏に隠れた凜とした酸味がイイ感じ


 パワーアップできる黄色やオレンジで、ご機嫌よう[わーい(嬉しい顔)]
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2024年05月29日

オーストリアの新星“ニューチャプター”と和食との融合@八芳園

 来日したレンツ・モーザーご夫妻
 マダム・モーザーは“ニューチャプター”の名付け親

 有言実行のワイン醸造家レンツ・モーザー氏
 彼はトライゼンタールのマルクス・フーバー氏とタッグを組み、
 オーストリアの固有品種グリューナー・ヴェルトリーナー(以後GV)から造った、
 ニューチャプターを世界のトップ白ワインの仲間入りさせようと奮闘しています。
 誕生ストーリーはコチラ

をご笑覧くださいませ。 

 オーストリアワインマーケティング協会(AWMB)が、
 ウィーン大学と協力して作成したデジタル ワインアトラス

 上記の地図は拡大できます。
 トライゼンタールの位置をお示しするために検索してみました。
 ここは大陸性気候とパノニア気候が交差するエリアで、
 森林もあり、自然の要塞のような景観。
 土壌は東側がレスとローム、西側が石灰と花崗岩を含む礫岩。
 全体の87%を白ワインが占めています。
 フーバー氏の畑は底土がすべて石灰質、
 そこから収穫された高貴なGV主体の白ワインがニューチャプター

 出典:AWMB
 オーストリアの主要品種と有機栽培の比率も載せておきます/ 2022年のデータ


                 🍀🍀🍀🍀🍀


       八芳園の庭園で1年ぶりの再会を祝って乾杯半月
       フーバー氏が手掛けるGV100%のスパークリングワイン
       石灰質土壌由来のミネラルを感じる口当たり
       夕映えが良く似合う泡ものでした!

                 ~少し寄り道~
2023年に80周年を迎えた八芳園。歴史をたどってみると、江戸時代初期は大久保彦左衛門の屋敷でした。その後、明治の実業家渋沢栄一翁のいとこ渋沢喜作氏の所有となり、明治から大正の変革期には喜作氏からこの地を譲り受けた財界人久原房之助氏の私邸として使われていました。戦後、久原氏から長谷敏司氏に、庭園の一部と屋敷が提供され、飲食店を開業、八芳園がスタート。現在もオーナーである長谷家によって継承されています。


      庭園から移動して壺中庵へ

      松の間に向かう途中、
      亡き吉右衛門さんの押し隈発見


  黄色のお花、インパクト大


 
各ヴィンテージに合わせた和のテイスト

 ロブマイヤーのバレリーナワイングラスⅢ

は輸入元(株)ロシナンテ協賛
 羽根のように軽いロブマイヤーのグラスを使うとGVのさらなる繊細さがわかります。
 左から
 NC2020/99%GV、1%リースリング
 NC2021/95%GV、各1%ずつSB、CH、PG、リースリング、ムスカテル
 NC2022 (2024年秋発売) /98%GV、2%SB
 BERG2022/ このワインの一部をNC2022に使用。
 GVと相性の良いアカシアの大樽で発酵熟成させた余韻の長い白ワイン


  単一畑ベアクは2021年VTからBIO表記。NCも2023年VTからBIO表記にする予定

モーザー氏は、ニューチャプターのコンセプトについて
■ドイツ語圏で9割以上消費されてしまうGVを世界市場で知らしめ認知させる
■オンリーワンのワイン造り(ニューチャプターだけを生産)
■明日のGVのスタイルを今飲んで欲しい(未来を読み込んだワイン=将来を見据えたGVなので10年後にはオーストリアのスタンダードなワインになっているであろう)
と語りました。

 冒頭にも書きましたが、モーザー氏は有言実行の人物なので、
 昨年の来日時「2020年から最新VTまでの垂直試飲をするよ」と語り、
 その約束をきちんと果たしました。
 次回は「70年代、80年代、90年代と2000年代のGVを比較試飲するつもり」と!
 ワクワクする宣言[わーい(嬉しい顔)]

 2022年は降雨もあり、ヴィンテージ的にはナーバスな印象とコメントしていましたが、
 2023年に関しては「太陽に恵まれた年」と述懐。
 フーバー氏は収穫のタイミングをじっくり待ち、9月末から開始し10月末までかけた由
 糖度の上がり具合、種の熟し方等、満足できる状態だったようです。


              🍀🍀🍀🍀🍀


来日期間中、モーザーご夫妻は和食との相性探求に余念がなかった由。「オーストリアのすべての料理がGVに合うとは言い難い。しかしながら、和食との相性は素晴らしくとても良く合う」と述べていました。八芳園では総料理長が、日本ならではの食材を使い、NCの各ヴィンテージの特徴を踏まえながら、和食の世界の魅力を示してくれました。

 先附
 桜鱒昆布締め、鱒子塩漬け、うるい、花弁百合根、クコの実、柑橘入り出汁ジュレ
 厳選した昆布から抽出される旨味と特製ジュレが食材を引き立てGVの繊細な味わいと相乗


 吸物
 蛤若筍椀、こごみ、花弁人参、木の芽
 出汁は3~4年寝かせた利尻昆布を使用。蛤のヨードと土壌由来の味わいが寄り添い好印象


 造里(さしみ)
IMG_4610.jpg
 サヨリ、本マグロ、梅醤油
 梅酒は八芳園の庭の梅から造ったオリジナル。醤油のコクがブリッジ役
 モーザー氏が納得なさっていた「おさしみと2021年ヴィンテージ」の組み合わせ


 焼物
 鰆蕗味噌焼き、白アスパラ、蚕豆、酢取茗荷
 蕗の香りとマスカルポーネで風味付けした白アスパラガスの味わいが五感を刺激


 2020年ヴィンテージ
 初VTの2020年はステンレスタンク&500㍑のブルゴーニュ樽とアカシアの大樽を併用。
 1%だけリースリングをブレンドしています。

 ■GV100%ではない造り ■毎年ブレンド比率&品種が異なる造り
 それがニューチャプターのキャラクターです!

 2022年ヴィンテージ
 2022年VTは木樽を10%使用し、SBを2%ブレンド
 爽快さと若干のロースト感、スレンダーでエレガンな印象

 お品書きと併せて
 蛍烏賊と山菜の天麩羅、新玉葱、菜の花、たらの芽、塩、酢橘
 2022年VTの新鮮さとミネラル感が軽快な食感の天麩羅と絶妙なバランス
 蛍烏賊を食しながらワインを合わせても生臭さは皆無
 双方が奥行きある味わいになり、素晴らしい調和を見せてくれました。
 2022年に2%だけブレンドされているSBがスパイス的なお役目。
 SBに和柑橘のニュアンスもあるので酢橘の酸味と同化。
 モーザー氏も天麩羅と酢橘に大満足


 食事
 駿河湾の桜海老鍋御飯、味噌汁、香の物


 NCのマーケティング戦略
 ユニークさを重視したラベルとボトル
 際立つイエロー、ボルドーのアンティークな瓶型を模した特製ボトル


        スペシャルな生け花
        草月流いけばな作家の久保島一裕氏


        この日の為に活けてくださった特別な作品、お見事


    イメージ写真っぽく撮ってみました。


               🍀🍀🍀🍀🍀

      
朋友と味わったマグナム

      昨年、2021年VTのマグナムサイズを試飲し魅了されて購入。
      モーザー氏から「マグナムは親しい仲間と」と言われていたので、
      ゴールデンウィークの最終日、朋友11名と楽しみました。
      GVの愛称はグルビー(“緑”の意味)
      新緑の5月にぴったりのワインなので、
      色で合わせるマリアージュもお薦めです。
      アボカドや山葵との組み合わせは文句なし!


      昨年の来日でお披露目された2021年VT。
      そのリポートはコチラ

で!

   【ニューチャプター新ヴィンテージ情報】
   2022年ヴィンテージの発売は今秋を予定しています。
   お問い合わせは輸入元 (株)ロシナンテ 03-3423-4552 まで!
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2024年04月26日

新たな絆! ピーロート・ジャパンとチリの老舗ワイナリーTARAPACA タラパカ

 創業150年を迎えたヴィーニャ・タラパカ
 左からセバスチャン・ルイス、ペドロ・エラネ・アグアド、クリストバル・ビザマ各氏

1874年、チリの銘醸地マイポ・ヴァレーに創業したヴィーニャ・タラパカ
今年で150周年を迎えるチリ最古のワイナリーのひとつです。昨秋、輸入元ピーロート・ジャパンが独占販売権を取得したことに伴い、ヴィーニャ・サン・ペドロ・タラパカ(VSPT)社からCEOのアグアド氏(中央)、ヴィーニャ・タラパカのチーフワインメーカーのルイス氏(左)、同エリアマネージャーのビザマ氏が来日。歴史や現況について語りました。

ちなみに、VSPT社はチリ最大のワイングループでチリの6ワイナリーとアルゼンチンの2ワイナリーが加盟。ヴィーニャ・タラパカは2008年から一員になっています。同グループの総栽培面積は4,254㌶、年間1,600万ケース以上を生産し、世界80以上の市場で販売。チリ第2位のワイン輸出コングロマリットです。



ヴィーニャ・タラパカの輸出先は中国、韓国、カナダ、ブラジルが特出。所有地は2,600㌶、そのうち611㌶に植樹。自然の山に囲まれた自社畑を「ナチュラル・クロ」と呼んでいます。ここは、土壌、気候、地形だけでなく、生物多様性にも恵まれており、ワインの味わいに反映しています。
VSPTグループ全体のサスティナブルへの取り組みとしては、環境に優しいワインの生産に力を入れており、具体的には ■CO2削減を目指す継続的な投資 ■輸出用ボトルの14%軽量化 ■マイポ・ヴァレーにおける生物多様性保全活動 ■企業を取り巻く社会/環境のあらゆる側面でのサスティナブルな環境形成の活動をしています。


      
グラン・レゼルバ レッド・ラベル シャルドネ2022

      ロブスターカクテル

冷涼なアコンカグア・ヴァレーから産出されたシャルドネ100%のワイン。13~14度で低温発酵、300㍑のフレンチオークの旧樽35%&ステンレスタンク65%で8ヵ月熟成。MLF5~7%。フラワリーでシトラスやハーブのアロマ、アルコールと酸味のバランスが良く、フレッシュで果実感に満ちたスタイル。「収穫を早め(3月中旬)に行うことで酸味を生かす」とルイス氏。
使用年数は1年~7年

      グラン・レゼルバ レッド・ラベル カベルネ・ソーヴィニヨン2021
      ウルフギャングサラダ モッツァレラチーズ添え

カベルネの聖地マイポ・ヴァレーのCS94%、CF4%&PV2%。旧樽のフレンチオーク225㍑で12ヵ月熟成。黒系果実のプラムやカシス、黒胡椒や丁字似のスパイス。まるみのある口当たり、具材たっぷりのサラダやチーズと良い相性。

        グラン・レゼルバ ブラック・ラベル カルメネール2021

花崗岩を起源としたマイポ・ヴァレーの沖積土壌、根は深く、素晴らしいボディとまろやかで甘やかなタンニンを備えたカルメネール100%のワイン。栽培はマサルセレクション。300㍑のフレンチオーク(新樽率15%)で14ヵ月熟成。深みのあるルビーレッド、黒系果実のブラックベリーやブラックチェリー、スミレやバニラ、アーシーさもあり、層になって広がるアロマ。口中滑らか、バランスの取れた味わい。

 
マイポ・ヴァレーのナチュラル・クロ

 画像:ヴィーニャ・タラパカ

 
グラン・レゼルバ ブラック・ラベル カベルネ・ソーヴィニヨン2020

  Tボーンステーキ マッシュポテト クリームスピナッチ

石英を含む地区と沖積岩が表層にある地区で痩せた土壌。マイポ・ヴァレーのCS100%、フレンチオークの大樽とフレンチオーク(新樽率15%)で14ヵ月熟成。深みのある濃いルビー色、赤・黒系果実に黒胡椒や丁字等のスパイス、樽由来のバニラ。熟したタンニンがウルフギャング・ステーキのジュージーな肉質や脂分と相まって絶妙なマリアージュ。来日メンバーも絶賛!


      グラン・レゼルバ ブルー・ラベル レッド・ブレンド2020
      チョコと2種のアイスクリーム

ワイナリーを代表するアイコンワイン、マイポ・ヴァレーのCS75%、シラー10%、CF9%、マルベック6%のブレンド。フレンチオークの大樽3,500㍑とフレンチオーク(新樽率20%)で14ヵ月熟成、容器は共に50%ずつの割合。最高の区画のぶどうで平均樹齢30年の古樹。深みのあるルビー色、赤&黒系果実のアロマ、ダークチョコ、ミントや黒胡椒。骨格のあるタンニン、豊潤かつパワフル、長い余韻。チョコとワインのポリフェノールが相乗したナイスマリアージュ。総生産量2万ケース。Decanter2022で最高賞の97点を獲得。


 供出順に左から
 #1:レッド・ラベル シャルドネ2022 / 3,300円(税込)
 #2:レッド・ラベル カベルネ・ソーヴィニヨン2021 / 3,300円(税込)
 #3:ブラック・ラベル カルメネール2021 / 8,800円(税込)
 #4:ブラック・ラベル カベルネ・ソーヴィニヨン2020 / 8,800円(税込)
 #5:ブルー・ラベル レッド・ブレンド2020 / 11,880円(税込)


青木私感 日本におけるチリのプレミアムワインの立ち位置

アジア圏では中国や韓国におけるプレミアムワインの動きが快調で販売数量も伸びている。なかでも韓国では、スパイシーな料理やコリアンバーベキューと食すことで、チリのカベルネやカルメネールとのマリアージュが好評。市場への導入がプレミアムな価格帯だったことも味方して、金額面でも成功を収めている。
ひるがえって、日本では、安価な価格帯のチリワインからスタートした経緯があり、プレミアムワインの動きは、両国と比べると、いまだ出遅れている。

財務省が発表した酒類輸入通関実績をもとに、醸造産業新聞がまとめた2月のスティルワインの輸入上位10ヵ国を見てみると、1位はチリ。しかしながら、750mlあたりのCIF単価は、5位のアメリカが最高で2,332円(前年1,932円)、次いで6位のオーストラリアが1,684円(同996円)、最低は1位のチリで317円(同289円)という結果になっている。

同紙による『2023年の輸入スティルワインの銘柄別・生産者別販売数量』では、10万ケース(9㍑換算)超は19銘柄。チリ産は、上位4銘柄(1位アルパカ、2位フロンテラ、3位サンタ・カロリーナ、4位コノスル)を占め、他にも9銘柄がランクイン。日本市場におけるチリワインの人気の程がうかがえる。ゆえに、今後の課題は上級の価格帯へのシフト!

ブログ内に記述した生産者の中・高価格帯のレンジは、低価格帯のワインとは異なる趣きがあり、試せばわかる魅力がある。さらに、評価が高い生産者のワインにはすべてのレンジで安定感がある。

味覚に敏感な日本のワインラバーの皆さんが、プレミアムワインの愛好家になってくだされば、アメリカやオーストラリアのCIF単価にすぐに近付くと確信しています。
2024年が日本におけるチリのプレミアムワインの幕開け年になることを願いつつ・・・

【製品についてのお問い合わせ先】
ピーロート・ジャパン / TEL 03-3458-4455 / service@pieroth.jp
posted by fumiko at 22:23| Comment(0) | 来日したワイン生産者&関係者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年04月13日

カリフォルニア『メートル・ド・シェ』の注目すべき若手コンビ来日!

 マーティン・ウィンターズ&アレックス・ピッツ(右)共同オーナー
 ふたり揃って来日したのは今回が初めて

10年ほど前、料理人として2つ星レストラン『サイラス』で働いていたことがきっかけで、繫がったおふたり。ピッツ氏はその後、フレンチランドリーで働き、カリフォルニアのナチュール・ムーヴメントの先駆者スコリウム・プロジェクトのアシスタント・ワインメーカーとして研鑽を積みます。ウィンターズ氏はソムリエとして、メドーウッドで働き、その後、レオ・ハンセン氏からワイン醸造を学びます。そして、2012年に共同で『メートル・ド・シェ』のブランドを設立。人為的な介入を抑え、樹齢の古いぶどう樹のぶどうを使ったワイン造りに注力しています。

当日のリポートがワイン王国web

に掲載されたので、リンクさせていただきます。今のカリフォルニアを感じてくださいませ


        シュナン・ブランのスパークリングワイン
        シュナン・ブランは恩師レオ・ハンセン氏が愛する品種

 ふたりは恩師に敬意を表し、シュナン・ブラン100%の泡ものを完成させました。
「集いの場では泡ものは必須。我々が造ったスパークリングで乾杯したかった」とピッツ氏
 軽快でフードフレンドリーな瓶内二次発酵
 ソレラ(2012年からのワインを継ぎ足し)スタイルの泡ものもあり。こちらは日本未輸入
 シャンパーニュは、アヴィーズ村を代表するジャック・セロスやアグラパール
 ヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区のムーセ(Mousse)が好みだそうです。


     ユニークなラベル
    自由の女神とカリフォルニア州のシンボル ハイイログマが乾杯している絵柄
    出典は1883年に出版された『The Wine Press & The Cellar』


     Tacos Barのフレッシュ・タコス
     素材はフレッシュなブリ


      鮎をトルティーヤで巻いて揚げて


IMG_4404.jpg
 ウナギに山椒を添えて


    Bean to Barブランドのチョコ


 フィッシュ・タコスはカリフォルニアでも大人気
 食の話題でも大いに盛り上がっていました。

 料理に合わせて6アイテムがサービスされました。
 左上のグラスはメキシコ在来種のトウモロコシを焙煎し煮出したオリジナルコーン茶


 マルコ・ガルシアオーナーシェフも加わり記念ショット!

 
              🍀🍀🍀🍀🍀
                    
人気店Los Tacos Azules


取材時、マルコさんが「三軒茶屋にもお店があるよ」と言っていたのでググったら、何と、何度もお店の前を通っていたことがわかり(汗)
先日、ランチ初体験してきました。ここはお昼のみ、恵比寿のTacos Barは夜だけの営業

 おすすめタコスのコースにあったインゲンとチョリソー炒め

 具材たっぷり

 ピリ辛風味

 若い女子や外国籍のグループ、ファミリー等、客層様々
 外には10名ほどの列ができていて人気ぶりがよくわかりました。
 地元にいながら、灯台下暗しでした、sorry

【製品についてのお問合せ先】
 WINE TO STYLE 電話03-5413-8831 / https://www.winetostyle.co.jp/
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2024年03月09日

ムートンの元醸造長パトリック・レオンが培ってきた情熱を反映させた『シャトー レ トロワ クロワ』

 レ トロワ クロワのマスタークラス
 仏ボルドーの右岸フロンサックに位置するワイナリー
 輸入元ミレジム

に招聘されたベルトラン・レオンさんは、
 来日記念のマスタークラスセミナーで5種のワインについて解説


    偉大な父親から奥義を伝授されたベルトラン・レオンさん


ワイナリーについて
名門ワイナリーで秀逸な醸造家として活躍していたパトリック・レオンさんが第一線から離れ、当時、学業を終えたばかりのベルトランさんのために、1995年シャトーを入手。購入の最大の決め手は土壌と気候。フロンサックで、グラン・ヴァンに匹敵するワイン造りを目指すレオン一家にとって、前述の2要素は必須条件でした。

レ トロワ クロワは、“3本の十字架”を意味し、シャトーのぶどうが育つフロンサック、セイヤン、サンテニヤンの村にそびえる3つの教会の塔に由来。栽培面積は19.5㌶、畑の最高位は86m、土壌は粘土石灰質で、粘土質はストラクチャーとまろやかさ、フレッシュさとミネラル感は石灰質由来。ぶどう品種はメルロとカベルネ・フラン。全て手作業、収穫には10kgのカゴを使用、2回の選果、区画(45)ごとの醸造、木樽での育成

グラン・ヴァンとは何か
ベルトランさんは「バランスが最も大事」と強調。続けて「力強いワインは毎年造れますが、エレガントなワインはとても難しい。我々にとってのグラン・ヴァンはエレガントさを纏ったワイン」と言及。
2011年の来日時、パトリックさんが語ったリポート

を添えておきます。ベルトランさんからいただいた情報と見比べてみると、若干の変化があることがわかります。


   【ちょっと寄り道】
   プライベートで楽しんだロゼ
   初めて試飲した時から心惹かれたロゼ
   2月初旬に現行の2022年VTをラデュレのマカロンと合せて楽しみました!


 5アイテムをテイスティング
 ワインのテクニカルデータはコチラ

で確認可

 2022レ トロワ クロワ ロゼ
 ME100%、直接圧搾によるロゼ(以前はセニエによる醸造も)

1995年から生産していたロゼ、当初は家族のためのワインでした。ベルトランさんの妹の結婚式で使用。色調は淡く日本の桜を連想させるピンク、石灰土壌に由来するフレッシュ感、酸は穏やか。柑橘果実や赤い果実のアロマがあり、香りと同時に口中に様々な果実の要素が広がるチャーミングな味わい。親しい友との語らいやアペリティフにお薦め

ベルトランさんに、ロゼ造りで最も重要な点について質問したところ、「酸化させないこと」とのお返事があり、「圧搾中ぶどうは空気に触れません。圧搾中にCO2を添加します。収穫は気温が低い夜間に行いますが、気温が低いと酸化プロセスはそれほど重要ではありません。醸造所には酸化を防ぐ、ぜん動ポンプ peristaltic pomp があり、果汁を送る際には、酸化を防ぐために少量の窒素を使います」と語りました。


      2011レ トロワ クロワ ルージュ マグナム
 
2011年は9月まで気候完璧。収穫の頃は気まぐれな天候が続き、最大限の熟度を得るまで待てなかったのですが、ぶどうは一滴の雨を受けることなく収穫できたので2009年や2010年に続く良作。
ME85%、CF15%。醸造は木樽、ステンレスタンク、コンクリートタンク、熟成は34%新樽使用、Alcは14.5%、アロマはフルーティでピュア、ミネラル、タバコ、繊細なニュアンス。「あと10年くらいで土壌由来の個性が加味されます」とベルトランさん


     オマージュヴィンテージの2018レ トロワ クロワ ルージュ
     パトリックさんが最後に関わったヴィンテージ
     ME88%、CF12%、新樽率39%
     熟した果実、きめ細かなタンニン、まろやかな口あたり
     余韻が長く、バランスが取れたエレガントなワイン、現行VT
     レオン一家が求めるグラン・ヴァン
     ファミリーの神髄を感じるヴィンテージ


      参考品 深窓のワイン2012ヴィラ マリー

最も古い区画のぶどう(樹齢80年)を使い、ベルトランさんとシャンパーニュのピエール・ペテルス、ラングドック・ルーションのドメーヌ・ラ・ジャスの3人でワインクラブを結成し、採算度外視でスタートさせたワイン。ファーストヴィンテージの2009年はME100%。ぶどうは完全に除梗し、温度管理しながら木樽で発酵。ピジャージュを施し優しく抽出、
良年のみ生産、本数は約2000本、ほとんど流通させることがない希少アイテム。ヴィラ・マリーは19世紀の建造物の壁に刻まれたかつてのシャトーの所有者の妻の名。ベルトランさんの愛娘の名もマリー。ちなみに、今はワインクラブ自体の活動はしていない模様。

メルロ92%、CF8%、新樽で17ヶ月熟成、完熟した果実、緻密なタンニン、レースのような食感、バランス良好、レ トロワ クロワらしいエレガントスタイル。クラシックなワイン


       参考品 2016ヴィラ マリー
IMG_3327.jpg
        ME66%、CF34%(2区画)
        木樽(新樽2/3、1年使用樽1/3)で16ヶ月熟成
        凝縮感のある果実、熟したタンニン、土壌由来のミネラル
        口中での存在感、フィネスとエレガンス
        2010年と同様の秀逸なヴィンテージ


        【ちょっと寄り道】
         パトリック&ベルトラン親子のサイン入りボトル
         2005年のマグナムボトルには、 
         2018年に惜しまれながら世を去ったパトリックさん
         ベルトランさんのサインが入っています、貴重な記念ワイン!

 2004年4月のセミナーから抜粋 拡大可
 出典:ソムリエ協会機関誌No.79

ソムリエ協会の機関誌編集長時代に担当した記念すべきページ
パトリックさんの熱い思いを感じますし、ベルトランさんのワイン造りの根幹をなしていることがよくわかります。このような機会を得たことを本当に有り難く思っています。
会場からの質問を受けて、パトリックさんが返したお言葉を、最後に書いておきます。

~ワイン造りでは、テロワールを理解し、その土地に対して何ができるかを探すことが大事です。自然を理解し、自然の個性を尊重し、自然の評価を高めるようにすれば、成功します。テロワールを反映させた素晴らしいワインは、ファッショナブルなワインとは違い、流行に押し流されず、歴史の中で、脈々と残ります。それが偉大なテロワールのワインです~


                🍷 🍷 🍷

ベルトランさんは、セミナーの冒頭、「シャトーを1995年に購入して29年が経過し、その間、家族が培ってきた情熱、働く人の情熱に支えられ、今があります」と挨拶していました。一子相伝のワイン造りを伝承された彼がさらに飛躍なさると確信しています!


【製品についてのお問い合わせ先】
株式会社ミレジム 電話 03-3233-3801
担当 @millesimes.com
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2024年02月20日

伊ピオ・チェーザレの若きリーダー フェデリカ・ロージー・ボッファ・ピオ当主が語る伝統の継承

 伊ピエモンテの老舗ワイナリー『ピオ・チェーザレ』
 5代目フェデリカ・ロージー・ボッファ・ピオ当主

1月から取扱いを開始した輸入元WINE TO STYLE

の招聘でフェデリカさんが来日。ブルガリ イル リストランテ ルカ・ファンティンで8種のワインの試飲を交えながら、家族の系譜や新たな取り組みについて語りました。

 
   画像提供:WTS

初めてフェデリカさん(1997年生)と会ったのは、父親ピオ・ボッファ当主と一緒に来日していた2017年秋で、あどけない面影が印象的でした。
彼女が23歳の時、ボッファ当主がCOVID-19の合併症で逝去。それを契機に、フェデリカさんは5代目としてワイナリーを継承。今は、いとこのチェザーレ・ベンヴェヌート・ピオさんと143年の歴史を有すピオ・チェーザレを仕切っています。7年余りの間にいろいろありましたが、成長ぶりに感心しました。

「1881年にワイナリーを興した初代チェーザレ・ピオは、ワイン好きの情熱をビジネスに変えた人で、当時20歳。イタリアでのパスポート番号はNo.55、早くから海外を視野に入れ、販売にも力を入れていました」とフェデリカさん。ピオ家は、20代の若さが原動力なのかも知れませんね。ちなみに、ワインは現在、世界55ヵ国に輸出されています。

ピオ・チェーザレの独自性
イタリアの北西部ピエモンテ州ランゲ地方アルバ村の旧市街地の中心部にあり、歴史的なアルバ村に位置する唯一のワイナリーとして、村の紋章をラベルに載せることや、バルバレスコとバローロの生産も許されています。1700年代後半に建てられたセラーには、ローマ人が遺した城壁の跡があり、地下4層構造の最下層はタナロ川の地下水脈よりも低いことがわかっています。ワイナリーが手狭になってきたことから、現在、新しい施設を拡張中で、完成後は、白ワインの醸造やロジスティック部門で活用するとのことでした。

ぶどう畑は80㌶で、すべて自社畑。栽培には化学薬品を使わないサステナビリティを優先した農法を採用し、太陽熱を利用したソーラーパネルでワイナリーの電力の60%をまかなっています。栽培のスタッフはすべて正社員として雇用し、敷地内の住居で生活しているので、ここでも親から子へと仕事がきちんと引き継がれているようです。

ピオ・チェーザレでは、国際品種ソーヴィニヨン・ブラン(白ワインの大家ドゥ二・デュブルデュー教授は亡くなる直前まで醸造のコンサルタントをなさっていました)やシャルドネ、ネッビオーロに10%シラーをブレンドしたロゼを手掛けていますが、ピエモンテ地方の土着品種ティモラッソにも注目。数年後には新しいアイテムがリリースされる予定とか。長熟可能の白ぶどう ティモラッソの品種特性を考え、現在熟成中。晴れのデビューが楽しみです!


               o○.。o○.。o○ .。o○.。o○.。

             
              ピオ・チェーザレのラインナップ


      食前酒ヴェルモット・ディ・トリノNV
      限定生産1000本
      シャルドネベースの酒精強化ワインでヨモギやオレンジの皮など、
      25種以上の芳香のあるハーブをブレンド
      最後に焦した砂糖を加えることがポイント
      飲むときはレモンの皮のスライスを添えて、
      14~15度の温度帯にしてストレートで!


 個性が異なるシャルドネ
 鮪のタルタル トマトウォーター

4代目当主はピエモンテ州の白ぶどうとは異なる長熟タイプの品種を探していました。カリフォルニアの『ロバート・モンダヴィ・ワイナリー』で数ヶ月研鑽を積んでいた折、樽熟成で個性を発揮するシャルドネに目をつけ、帰国後、ネッビオーロを引き抜き、持ち帰ったシャルドネの苗木を1981年に植樹しました。
そのシャルドネから造られた『ピオディレイ(右)』、“ピオ家の女性”の意味を持つワインで樽発酵・樽熟成。彼女たちのように、味わいはしっかり&リッチです!

『ランゲ シャルドネ“ラルトロ”(左)』は、“もう一つの”を意味し、ピオディレイの別の顔というニュアンス。一部樽、一部ステンレスを使用。ソーヴィニヨン・ブラン を10%ブレンドしているフレッシュでフルーティーなタイプ


      伝統的なスタイルのバルバレスコとバローロ
g
      カルナローリ米のリゾット ラディッキオロッソ

        普通のバルバレスコ、普通のバローロと呼ばないで
        バルバレスコ・ピノ、バローロ・ピノと呼んで欲しい!!


古典的・伝統的な造り
様々な村のぶどうをブレンドして造りあげる完成度の高いワインで、
バルバレスコは4つの村のぶどう、フレッシュさを備えながらもパワフルな味わい
バローロは8つの村で、ストラクチュー、フィネス、複雑味がある味わい
それぞれの畑の個性を生かし、すべての“要素”を融合させて造り上げる伝統製法のワイン!
近年、気候変動の影響で熟すのが難しかったネッビオーロに変化が出ている由。ゆえに樽の使用率も減り、熟成期間も短かくなっています。

 単一畑のバローロ"モスコーニ2018"&バローロ"オルナート2016"

モスコーニは4代目当主の還暦を記念して購入した畑で広さは10㌶。ぶどうは1940年代と1970年代の古樹の区画のセレクション。ワインは濃い色調で黒い果実、バルサミコ、レザーのアロマ、生産本数6300本、ファーストヴィンテージは2015年。2018年は雨が多かったそうですが、冷涼年を反映した品格あるスタイル

オルナートは円形状の南向き斜面で日照時間が長い暖かなエリア、ワイナリーで最も古いワイン。ファーストヴィンテージは1985年。2016年はグレートヴィンテージで生産量は14000本、ガンベロ・ロッソの赤ワインベスト。赤系果実、パワー&タンニンがありながらリッチでエレガント

フェデリカさんの「伝統的な造りのバローロには、モスコーニやオルナートのぶどうも使われています。伝統製法のバローロ・ピオと併せて、単一畑に特化したワインを造ることで、ピオ・チェーザレのパローロはどれも素晴らしいということを証明したかった」との力強いメッセージを聞きながら、私は、故ピオ・ボッファ当主の姿を思い浮かべていました。

IMG_2430.jpg
 ジビエとピエモンテのワインの相性良好

    鹿肉 根セロリ アミガサタケ

 2016年に復活したバローロ・キナート
 苺 バニラ マスカルポーネ

1)のヴェルモットも、8)のキナートも1952年までは潤沢に生産していましたが、50年代のカクテルの流行で、活躍の場を失い、生産中止に!
フェデリカさんがワイナリーに参画した2016年から、祖母直伝のオリジナルレシピに則り再生産、歴史あるラベルも採用。セラーには古いワインがストックされているとのことなので、まさに“温故知新”の貴重な酒精強化ワインです、生産量は限定1000本!
キナノキとアカキナノキの樹皮を少量のクラシック・バローロで21日間浸漬。その後、レシピにあるリンドウの根、ルバーブ、カルダモンシード、シナモン等の香草を加え、週週間の熟成の後、クラシック・バローロを加え、少しの砂糖とアルコールで味を調整。ストレートで楽しむ食後酒


 プレスランチに供出されたアイテム
 左から右に
 1)ヴェルモット・ディ・トリノNV
 2)ランゲ シャルドネ“ラルトロ”D.O.C.2022
 3)ランゲ シャルドネ"ピオディレイ"D.O.C.2021
 ※2020年ヴィンテージから4代目へのオマージュとして過去のラベルを復刻して使用

          参考画像:最左は2020年以前のラベル / 2017年撮影

           4)バルバレスコD.O.C.G.2019
           5)バローロD.O.C.G.2019
           6)バローロ"モスコーニ"D.O.C.G.2018
           7)バローロ"オルナート"D.O.C.G.2016
           8)バローロ・キナートNV


              o○.。o○.。o○ .。o○.。o○.。



       フリーテイスティングには新アイテム登場
        祖母の名を冠したロゼ『ランゲ ロージー2022』
        ロージーはフェデリカさんのミドルネームでもあり、
        とっても由緒あるネーミング
        生産本数5000本、ファーストヴィンテージは2017年

 フリーテイスティングのワイン
 左から右へ
 #1:ガヴィD.O.C.G.2022
 #2:ランゲ ソーヴィニヨン・ブランD.O.C.2022
 #3:ランゲ ロージーD.O.C.2022
 #4:ドルチェット・ダルバD.O.C.2022
 #5:バルベーラ・ダルバD.O.C.2021
 #6:バルベーラ・ダルバ スペリオーレ フィデス モスコ-ニD.O.C.2021
 #7:ランゲネッビオーロD.O.C.2019

【製品についてのお問い合わせ先】
 WINE TO STYLE
 TEL:03-5413-8831
 info@winetostyle.co.jp
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2024年02月09日

仏サヴォワワイン生産者来日テイスティングディナー@蕎麦割烹こうもと

 サヴォワ地方のワイン × 日本料理
 2019年9月

以来の来日になりました[わーい(嬉しい顔)]

  最新:サヴォワワインの概要

 Le Comité Inter-professionnel des Vins de Savoie (CIVS)
 サヴォワワイン生産者委員会

は、ワイン生産者とぶどう栽培者の共同事業体で、
 その使命はワインの生産とマーケティングを指導・調整すること。
 特に市場開拓と販売促進に力を入れています。

2024-02-08.png


 フランス南東部、スイス&イタリアの国境に位置する産地
 2050㌶のぶどう畑、22品種、様々な微気候、標高は250~550m、90%がAOPワイン
 白70%、赤20%、ロゼ6%、スパークリング4%
 年間販売本数1,400万本、年間売上高6,000万€、国内消費95%で輸出は5%
 産業分野のNo.1は酪農、No.2は穀物生産、ワイン産業はNo.3

 主要な3つのぶどう畑

 白ぶどう/ジャケール42%、アルテス12%、シャスラ5%、ルーサンヌ4%
 黒ぶどう/ガメイ14%、モンドゥーズ11%、ピノ・ノワール4%



 来日した8名を囲んで監修役田邉公一さん(後列中央)とこうもとの杉浦康祐オーナー(前列左)
 今回のペアリングはワインを試飲した後、田邉&杉浦両氏が意見交換を行い、
 ベストの組み合わせを構成しました!



             o○.。o○.。o○ .。o○.。o○.。



     和食とワインのマリアージュ
     #1 Mr Mathieu FANTAUZZI / Créman de SavoieNV
     品種:ジャケール40%、アルテス40%、シャルドネ20%
1966年設立、ファミリー経営。ぶどうは手摘み、20ヵ月の熟成を経てリリース。ジャケール(白い花)、アルテス(エキゾチックなアロマ)、シャルドネのブレンド。クレマン・ド・サヴォワは2015年9月に認定され、ジャケールの使用は40%以上と規定されている。万人受けするスパークリングワイン

      <前菜>前菜盛り合わせ  
      水蛸とフルーツトマト  柚子味噌ソース
      水菜と壬生菜のおひたし、からみ鴨含め煮
      帆立寄せ 葉山葵のせ、聖護院大根の茶碗蒸し
八寸に該当する前菜。ペアリングのポイントは、フレッシュさ、深みのある味わい、クリーミーさの3要素。守備範囲の広いクレマンにどの食材もうまく寄り添い、中でも茶碗蒸しは泡のクリーミーなテクスチュアとバランス良好


   #2 Mr Laurent CAVAILLE / Savoie Chignin Terres de Famille2022
   品種:ジャケール100%
1949年創設、土壌は粘土石灰質、フレッシュでミネラル感のあるワインを産出。サヴォワのオンプレミス市場を牽引する存在。サヴォワワイン生産者委員会の会長であるローラン・カヴァイエ氏は「1973年にA.O.P.の認定を受けてからワインの評価、真の発展に繫がった」と言及

       <強肴>吟醸からすみ蕎麦 
同店の看板メニューからすみ蕎麦。ペアリングのポイントはワインからほのかに漂う吟醸香と、磨き抜かれた日本酒で仕上げた吟醸からすみの一体感。双方に共通する塩味効果。ワインの清涼感とからすみ蕎麦の旨味と濃厚さも面白い対比


       #3 Mr Jérémy DUPRAZ / Savoie Apremont Terres Blanches2022
       品種:ジャケール100%
2004年設立、現在弟とワイナリーを運営。モレーヌ土壌(氷堆石)で花崗岩が多いので収穫したぶどうは酸味とフレッシュ感が特徴。小区画ごとに手摘み収穫して個別に18ヵ月熟成させ最後に1つにブレンド。2022年VTは太陽の恩恵を受けた良質なワイン


      <お造り>旬のお造り盛り合わせ
       ~クエ、金目鯛、松皮蝶昆布締め、あおりいか すべてお塩で~
魚介類を塩で食すことにより、ワインの深み、旨味、コク、アフターに広がる塩味とぴったり相乗する組み合わせ


      #4 Mr Pascal PERCEVAL / Roussette de Savoie
      God Save the Altesse2022
      品種:アルテス100%
2005年設立、ぶどうは手摘み、土着酵母で発酵。13世紀にモン・グラニエ山の崩壊によってできた粘土石灰土壌に由来する繊細でフレッシュなアロマ。現在有機栽培に転換中。黄色系果実、エキゾチックスパイス、キノコ(土)、ミネラル、味わいは軽やかでまろやか


      <焼物>鰆生姜焼き きのこ味噌和え
鰆と生姜にはワインのスパイシーさ、別添えの合わせ味噌にはアワビ茸、椎茸、エリンギの3種のキノコを使い、ワインの土っぽいニュアンスとの相性を堪能


      #5 Mr Kevin FOUCHER / Château de la Gentilhommière2020
      品種:モンドゥーズ100%
共同経営ぶどう栽培者のケヴィン・フーシェ氏がワイナリー経営者のフランク・マソン氏とタッグを組み手掛けたワイン。2021年有機農法に転換し、2023年にビオディナミを実践。ぶどうは除梗し、フードルで15ヵ月熟成、こなれたタンニン、口中滑らか


       <肉物>岐阜県飛騨牛フィレ肉ロースト 旬の根菜焼き
ワインとの相性を考え、フィレ肉は炭火でロースト、なると金時に塩を使うと、素材本来の甘さが上品に広がる印象。ケヴィン・フーシェ氏は「先にサービスされた味噌和えにも合う」とコメント。きのこを使った発酵食品の味噌に土っぽさがあったので、彼の意見に同意!


      #6 Mr Thomas SENGER / Roussette de Savoie Le Marestel2020
      品種:アルテス100%
創業1830年のぶどう農家、16世紀に開拓された畑は泥灰土質のモン・デュ・シャ山の支脈に広がる。現在6代目、ワイン名はマレステル伯爵に由来。ぶどうは手摘み、3年間の熟成。黄桃や杏のような核の大きな黄色系果実、アーモンドや蜂蜜、シャンピ二オン、様々な要素


     <揚物>牛蒡白胡椒揚げ天つゆ
素材は北海道産の牛蒡。2種の調理法で、細切りはフレッシュ、太いのは出汁で炊いたものを天麩羅にして上から白胡椒をまぶした厚みのある味わい。ワインと牛蒡に共通する土のニュアンス、フレッシュな溌溂感とまるみ、天つゆの旨味と渾然一体


         #7 Mr Didier BERTHOLLIER / Chigin-Bergeron Les Salins2021
         品種:ルーサンヌ100%
1998年、ディディエ&ドゥ二兄弟がワイナリーを継承、それを機に有機栽培・ビオディナミに転換。傾斜のきつい石灰質土壌の畑から造られるルーサンヌ(サヴォワでの呼称はベルジュロン)、キュヴェ名サリンはサリニテ(塩味)の意味。生産量3,000本。甘やかなアロマ、黄金糖のニュアンス、旨味&清涼感


  <手打ち蕎麦>胡麻蕎麦 
同店の人気メニューの胡麻蕎麦。蕎麦の濃厚な旨味は、アロマ豊かでコクがあり、しっかりとした味わいのワインと好印象。温かいお蕎麦で試したかった気持ちもあり・・・


      #8 Mr Florent HERITIER / Roussette de Savoie Frangy Altessima2020
      品種:アルテス100%
2004年にワイナリーを設立。氷河期に形成された土壌、ワインはすべてオーガニックから「デメテル」までのビオディナミ認証済。ぶどうは手摘み、コンクリートと砂岩製の卵型タンクで18ヵ月熟成


     <甘味&チーズ盛り合わせ>クリームチーズ麹漬け金柑甘露煮 林檎パイ
同店オリジナルの林檎パイ。多様なチーズを生産しているサヴォワゆえ、田邉&杉浦両氏が熟考したクリームチーズの麹漬け、金柑の甘露煮は、クリーミーな食感や酸味が絶妙!


 
フルメンバーの記念ショット


田邉スーパーバイザーと『こうもと』の杉浦オーナーの自信が伝わってくるペアリングでした。生産者の皆さんも満足なさっていました。サヴォワワインは国内消費が多いので、輸出量はわずか5%。今回のディナーに登場した #2、#4、#5、#6、#8はまだ日本市場に参入していません。目にする機会が少ないサヴォワワインですが、日本料理に寄り添ってくれるピュアな味わいは本当に魅力的です。ワインラバーの皆さんに興味を持っていただく“価値大の優れもの”だと思っています!

【お問い合わせ先】
フランス大使館貿易投資庁ービジネスフランス
℡:03-5798-6128
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2023年12月09日

伊ヴェネト州『ブリガルダーラ』のチェザーリ社長が語る“至福のアマローネ”

輸入元オーバーシーズ

の招聘で、ヴェネト州からブリガルダーラ

の創業者ステファーノ・チェザーリ氏が来日しました。2019年のVinitalyで出会い、同年10月から輸入を開始しましたが、その後、COVID-19の影響下に。取引を開始して4年が経過し、2023年にパンデミックが明けたので、チェザーリ社長が来日。今回、自らのワインについて語りました。

 第一部はアマローネワインマスタークラス
 供出順左から
 第1フライト
 #1:アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ カーヴォロ2018
 ●畑:カーヴォロ / 標高130m ●品種:コルヴィーナ59%、コルヴィノーネ21%、
 ロンディネッラ17%、その他3% ●熟成:225㍑のオーク樽と25ヘクト㍑のオーク樽で48ヶ月
 価格:7000円(税別)
 オレンジのトーンを含むガーネット、フローラル、タンニンも柔らかで飲みやすいワイン
 #2:アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ クラッシコ2018
 ●畑:ブリガルダーラ / 標高250m ●品種:コルヴィーナ47%、コルヴィノーネ39%、
 ロンディネッラ6%、その他8% ●熟成:225㍑のオーク樽と25ヘクト㍑のオーク樽で36ヶ月
 価格:7000円(税別)
 香りに干しぶどうのニュアンス、レッドチェリーやベリー、草っぽさ、中盤から広がる凝縮感

 カーセ・ヴェチエのぶどう畑
 画像:ブリガルダーラ

 第2フライト
 ●畑:カーセ・ヴェチエ / 標高450m ●品種:コルヴィーナ39%、コルヴィノーネ30%、
 ロンディネッラ31% ●熟成:225㍑のオーク樽と25ヘクト㍑のオーク樽で48ヶ月
 価格:#3は11000円(税別)、#4~#6はオープン価格
 #3:アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ カーセ・ヴェチエ2017
 #4:アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ カーセ・ヴェチエ2012
 #5:アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ カーセ・ヴェチエ2010
 #6:アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ カーセ・ヴェチエ2005

 #3と#4は温暖年
 2017年はアロマ豊か、プラムや干しイチジク等の果実風味、口中滑らか。
 2012年の第1香はシャイ、時間の経過でチェリージャム、甘草、安定したバランス。
 #5と#6は冷涼年
 明るいルビーで温暖年と比べると酸がエレガント。4種のなかのマイベストは2005年。  
 黒糖、ソーテルヌワイン似のセメダイン的なアロマ、しなやかな酸味、甘草、なめし皮、
 熟したタンニン、心地よい余韻。


 第3フライト
 ●畑:自社畑から最良のぶどうを選択 ●品種:コルヴィーナ55%、コルヴィノーネ25%、
 ロンディネッラ20%、●熟成:225㍑のオーク樽と25ヘクト㍑のオーク樽で60ヶ月、参考商品
 #7:アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ リゼルヴァ2013
 #8:アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ リゼルヴァ2007
 
 左から右に供出

 第3フライトは2種のリゼルヴァにフォーカス
 当日のベストワンは#8(前列右)
 層になって広がる旨味、今飲んでも美味、今後の熟成にもさらなる期待
 宮嶋通訳が「2007年VTはPP97点。チェザーリ氏も気に入っています」と言及[わーい(嬉しい顔)]
 Alcは17.5%ながら、全体のバランスが良く、味わっているだけで、こころ和むワイン
 素晴らしいアマローネは “至福のワイン”と形容できます!

 一代でワイナリーを興した実力派ステファーノ・チェザーリ氏
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 セミナーの前半で沿革について解説

ブリガルダーラの歴史は古く、紀元1100年には農園として存立していました。1200-1400年の間は修道院が所有、1600年代になるとフォンタナ家、1800年代にはイタリア系オースラリア人のジュゼッペ・フラッカローリが入手。現在の外観が整い、小さな庭園を造り、糸杉も植樹。1928年チェザーリ当主の祖父レンツォがブリガルダーラ(分割されず同じ名称で続いてきた)を取得したことで農場に転換。父ランベルトが継承し、1970年代には畑にぶどう樹を植えますが、最大の推進力はチェザーリ氏で、1979年に自社ブランドワインの醸造を開始しました。

ちなみに、農場を継承した父親の本業は農耕機器(ブルドーザー等)を輸入する仕事で、日本の小松製作所の機械も扱っていた由。チェザーレ氏も、1976年に大学を出て父親と同じ仕事に就きますが10年位で転職。ヴァルポリチェッラでのワイン造りに着手、今に至っています。

地図.png
 画像:ブリガルダーラ

所有面積10㌶のうち6㌶の畑からスタートし、現在では120㌶で47㌶まで拡張。生産量は年間30万本。
自社畑は3つで、ブリガルダーラは重い粘土質でベースは凝灰岩。カーセ・ヴェチエは標高が高く、有機物が多いシルトの砂質土壌。カーヴォロ2㌶は東向きで、石ころが多く水はけが良い。雨が多い年は良好ですが、干ばつの年はなかなか厳しいとのこと。栽培している品種は黒ぶどうのコルヴィーナ(チェリーのトーンがあるエレガントな品種)、コルヴィノーネ(ハーブ的、若干粗野な品種)、ロンディネーラ(病害虫に強い品種)、モリナーラ、古来品種オセレータ。白ぶどうのガルガーネガ。

イタリアにおける生産量/2009年と2021年
チェザーリ当主が示した(1)ヴァルポリチェッラ (2)リパッソ (3)アマローネの数量
2009年 (1)2300万本 (2)1300万本 (3)870万本
2021年 (1)2000万本 (2)3500万本 (3)1800万本
ヴァルポルチェッラは減少傾向、リパッソとアマローネは倍以上の伸び。「アマローネは80%が輸出市場であり、リパッソはアマローネの味わいがあり、より安価なので、海外での人気が高い。アメリカとカナダは14%、スイス12%、英国10%、スウェーデンとドイツは8%、日本とロシアはわずか1%」と語りました。

さらに「2010年までは225㍑のバリックのみでしたが、それ以降から、500㍑のトノーも併用し、最初の2年は小樽、あとの2年はスラヴォニアンオークの大樽を使っています。アルコール度数の高いワインなので、発酵に耐えるジンファンデル酵母も使用しています」との追加コメントもありました。


              🍷 🍷 🍷 🍷 🍷



 第二部は料理と合わせて@パレスホテル東京グランドキッチン

 ソアーヴェ2022
 オマール海老と茸のテリーヌ/茸のマリネとオマール海老のクリーム、キャヴィア
 品種はガルガネーガ100%、グレープフルーツやカモミール、白桃、溌溂とした酸味
 ほのかに広がるビター感、フレッシュ&フルーティー
 オレンジを煮詰めてソアーヴェを加え、酸を引き出し双方を相乗させたマリアージュ。
  “酸”がポイント。テリーヌのクリーミーなテクスチャーと好印象
 

 ヴァルポリチェッラ・スーペリオーレ カーセ・ヴェチエ2021
 ヴァルポリチェッラ・スーペリオーレ ・リパッソ2020(右)
 的鯛のカダイフ/牛蒡のヴルーテ&フリット
 的鯛のサクサク感および魚の皮と身の間に血合いがあるので、
 赤と合わせることで香ばしさが際立つ相性。バルサミコを使ったソースがポイント


 アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ カーセ・ヴェチエ2012、同2017(右)
 赤ワインのリゾット、トリュフ

 この料理だけは伝統的なイタリアンへのオマージュとして考案
 リゾットのなかのパンチェッタやレーズンがブリッジ食材になり、
 アマローネのドライレーズンや甘いスパイス風味とナイスマリアージュ


      アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ カーセ・ヴェチエ2005
    国産牛フィレ肉のグリル、南瓜のピューレ&フリット、赤ワインソース、トリュフ
     セミナーに登場した2005年ヴィンテージ、マデイラを使ったソースがポイント
      牛肉を炭焼きした“香ばしさと甘さ”が、アマローネの要素と重なり美味 

          ディナー風景
        右側の中程にステファーノ・チェザーリ当主、宮嶋勲通訳

 JETCUPのふたりの優勝者
 サービス担当の瀧田昌孝ソムリエ(右)
 セミナーとディナーに参加していた本多康志氏(資生堂パーラー ザ・ハラジュク店長)
 おふたりはJETCUPの歴代の優勝者、イタリアワインに精通しています!
 山田琢馬ソムリエ(左)は先輩を目標に精進中

 マリアージュで心がけたポイント
 瀧田ソムリエに気を遣った点について伺ってみました。
 一代でワイナリーを築いた当主なので、イタリアン重視より、インターナショナル路線
 国際感覚を備えたビジネスマンに焦点を当てたフレンチスタイルを考えたとのこと。
 すべての料理にワインを使っています。

 マリアージュの記述は、瀧田ソムリエの説明も加えてあります。
 ブリガルダーラのアマローネは残糖が少なくて、食事に合わせやすいワインです。
 年末年始の集いに活用できると確信しています、お楽しみくださいませ!

【製品についての問い合わせ先】
 株式会社オーバーシーズ 電話03-5779-7545
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2023年11月04日

ワイン造りもロゴもオーナーの美的センスが光るイタリアの『イ・ジュスティー・エ・ザンツァ』

伊トスカーナから、カンティーナ『イ・ジュスティー・エ・ザンツァ』のオーナー、パオロ・ジュスティさんが来日し、ガエターノ・ドニゼッティーの歌劇『愛の妙薬』に登場する人物たちに因んだネーミングのワインや新しいアイテム、近況情報について語りました。


 photo by Fumiko
 上の画像は2017年に撮影


イ・ジュスティー・エ・ザンツァのスタイル
知名度が高いキアンティやモンタルチーノ、ボルゲリに対抗すべく、新しい産地で、新しいトスカーナワインの可能性を追求しているイ・ジュスティー・エ・ザンツァ。オーナーのパオロ・ジュスティさんは元建築家、異色の造り手です。

彼の父ブルーノと祖父アンジェロは、1900年代初頭から、マッサ・カッラーラ県(トスカーナ北部リグーリア州との州境)でワイン造りを行っていました。パオロさんはボルドーの左岸のような畑を求め、それに見合う最適な場所を探していました。1995 年、リヴォルノとの州境に位置するピサ県の小さな町ファウリアの古いスコピッチ農園に、理想とするぶどう畑を見つけ、父とともに購入。なだらかな丘陵地帯にある畑は、砂と砂利質、豊富な化石を含む土壌で、彼の夢が叶いました。


    通算5回目の来日になるパオロさん
    一番好きなワインは尊敬する父親への思いを込めた『ペルブルーノ』
    ラベルは鷲が羽根を広げたイメージです!

      愛の妙薬」オペラで楽しむワイン
       資料提供:WTS
      「愛の妙薬」の主人公がラベルを飾るワインは、
       2015年からオーガニック認証を取得、ワイン誌でも高得点獲得。


 
 #1:2020ネモリーノ トスカーナ・ビアンコI.G.T.
 ぶどう品種:トレッビアーノとセミヨン各50%
 地中海のフレッシュさとアロマを表現し、海辺の夏の夕暮れを連想させるワイン
 #2:2019ネモリーノ コスタ・トスカーナ・ロッソI.G.T.
 ぶどう品種:シラー60%、サンジョヴェーゼ20%、メルロ20%
 コンセプトはフレッシュな果実味とクリーンで即効性のあるアロマ
 トスカーナの伝統的な前菜やアペリティーヴォに最適
 #3:2018アディーネ コスタ・トスカーナ・ロッソI.G.T.
 ぶどう品種:サンジョヴェーゼ90%、アリカンテ10%
 日本の輸入元とのコラボで誕生した日本限定発売のワイン。2016年が初ヴィンテージ
 #4:2020ベルコーレ コスタ・トスカーナ・ロッソI.G.T.
 ぶどう品種:サンジョヴェーゼ80%、メルロ20%
 トスカーナの海岸地域の果実の凝縮感を表現したワイン。
 #5:2019ペルブルーノ コスタ・トスカーナ・ロッソI.G.T.
 ぶどう品種:シラー100%
 父親へのオマージュワイン。単一畑のブドウから生産、他界した 2003 年が初収穫
 骨格と濃密でビロードのようなタンニンを備えた長熟ワイン、ジビエと好相性
 #6:2018デュルカマーラ コスタ・トスカーナ・ロッソI.G.T.
 ぶどう品種:カベルネ・ソーヴィニヨン70%、メルロ25%、プティ・ヴェルド5%
 1996 年が初ヴィンテージのフラッグシップ。
 沿岸部のトスカーナで偉大なボルドー・ブレンドを造るのが夢だぅたパオロさん。
 それを形にしたのがデュルカマーラ


                🍷 🍷 🍷 🍷 🍷

     生ハムの盛り合わせとデュルカマーラ

     トマトとサンジョヴェーゼは酸味が相乗して良い相性


ランチ会場だったKNOCKはパスタが売りのレストラン。イ・ジュスティー・エ・ザンツァのワインと合わせて楽しむパスタということで、パオロさんがセレクトしたお薦めの組み合わせは・・・
【ネモリーノ・ビアンコ】
鶏ササミとカラスミ『わさびペペロンチーノ』スパゲティ
『レモン・クリーム&ケッパー』スパゲティ
【ネモリーノ・ロッソ】
KNOCK の定番マスカルポーネとこんがりレーズン『パネ・パンナ』
【アディーネ】
キャベツの『アンチョビ・ペペロンチーノ』スパゲティ
【ベルコーレ】
濃厚チーズブレンド『KNOCKʼN CHEESE』のチョップドスパゲティ
クラッシュエッグ&とろけるチーズ『ミートソース』スパゲティ
【ペルブルーノ】
『山盛りキノコ&クリーム』スパゲティ
【デュルカマーラ】
マッシュルーム『デュクセル・ブラウンソース』スパゲティ


                🍷 🍷 🍷 🍷 🍷

 
サンジョヴェーゼを愛するパオロさんは美術に対する造詣が深く、絵心も見事。アディーネのラベルの女性を、KNOCKのコースターにさりげなく描いてしまう手腕はさすがでした!

    
 出典:weekend-cinema 
パオロさんから、徹底した“こだわり”が伝わってきたので、「イタリアの女優さんで、サンジョヴェーゼと重なる方は?」と聞いてみました。少しだけ、沈黙があり、その後、「モニカ・ヴィッティ! 親しみがあって穏やかなところがサンジョヴェーゼに通じます。温かみのあるキャラクターが好きです」と。サンジョヴェーゼとモニカ・ヴィッテイの共通項。親しみある雰囲気、成る程、よくわかります。
モニカ・ヴィッティさんは昨年他界しましたが、誕生日は11月3日でした!


ご息子ジャコモ(24 歳)さんがカンティーナに参画し、ファミリーの 4 代目のワイン生産者になるために精進中。「彼のアイデアとエネルギーが、イ・ジュスティー・エ・ザンツァの伝統を尊重しながら、品質を向上させてくれることを願っています」とパオロさん。愛娘は英国のフィナンシャル・タイムスに勤務し、ワインや経済について執筆しているそうです。


               🍷 🍷 🍷 🍷 🍷

私は『デュルカマーラ』のラベルがお気に入りです。パオロさんは「豚肉ときのことリンゴの煮込み」との相性を挙げていました。じっくり煮込んだジビエや、脂肪分の多い柔らかなチーズ、トリュフはデュルカマーラに良く合いますね。
美的&知的センスにあふれたイ・ジュスティー・エ・ザンツァのワインは、ジャケ買いでも一押しです。

【製品に関するお問い合わせ先】
 WINE TO STYLE 株式会社 担当: 斎藤美樹 PRディレクター
 〒106‐0045 東京都港区麻布十番1-5-30 十番董友ビル2階 Tel:03- 5413- 8831
 公式HP: https://www.winetostyle.co.jp
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2023年08月17日

コロナ禍あけの来日でエデュアルド・チャドウィック当主が披露した“ヴィラ・ドン・マキシミアーノ”

チリワインの素晴らしさを世界中に知らしめた『ベルリン・テイスティング』
ドイツのベルリンで2004年に開催され、世界のワイン関係者を驚愕させました。その後、2011年までの間、18の都市で22回のブラインドテイスティングが展開されましたが、日本では2006年

に、ワインジャーナリストの有坂芙美子女史の仕切りで執り行われました。
主催者は1870年に創業したチリの名門ヴィーニャ・エラスリスのエデュアルド・チャドウィック当主。ベルリン・テイスティングから10年目には仕掛け人のスティーヴン・スパリュアさんと一緒に東京でLook Back in Wonder

と題するセミナーを開催しました。
来年は、世紀のベルリン・テイスティングから20周年になります!!


 入門レベルから高品質なワインまで
 photo by Fumiko / 2023年5月31日撮影
 アコンカグア・ヴァレーにあるワイナリー
 お出迎えは様々な国の言葉で!

 photo by Fumiko / 2023年5月31日撮影
 2010年に新設したドン・マキシミアーノ アイコン・ワイナリー
 現代的で持続可能な醸造施設

 photo by Fumiko / 2023年5月31日撮影
 上のデザインと見比べながら、拡大して、ご覧ください!


               🍷 🍷 🍷 🍷 🍷



             5年瓶熟のスパークリングワイン
        エラスリス エクストラ・ブリュット/小売価格8,250円

太平洋から12kmの場所にある冷涼エリア アコンカグア・コスタのシャルドネ65%とピノ・ノワール35%をブレンド、ベースヴィンテージは2017年。「瓶熟の具合を細かくチェックしながらタイミングを見極め、ユニークさを備えたアイテムとしてリリースさせました」とチャドウィック当主。8月の来日は、コロナ禍あけ初のアジアツアーだったので、同席メンバーと喜びを分かち合いながら乾杯しました、Cheers半月

余談ですが、家庭画報7月号の世界のスパークリングワイン特集

で、エクストラ・ブリュットを候補に挙げたので、4月下旬の撮影時に初めて試飲しました。あれから3ヶ月経過して再度テイスティングした感想は、落ち着きが出ていてバランス良好。エラスリスのスパークリングワインはエクストラ・ブリュットとブラン・ド・ブランの2種類ありますが、ともに希少アイテム、チリのエスプマンテ(チリのスパークリングワイン)の最高峰です!



発酵はステンレスタンクとフレンチオークの古樽16%、瓶詰前にオークの古樽で7ヶ月熟成。MLFは30%実施。シュル・リーで5年間瓶熟。淡い麦わら色、気泡は繊細、香りは華やか、シャルドネ由来のスマートな酸味、ピノ由来の豊潤なボリューム感、気泡はワインに溶け込みスムース


 涼やかなソーヴィニョン・ブラン
 エラスリス アコンカグア・コスタ ソーヴィニヨン・ブラン2021/同4,180円

エクストラ・ブリュツトと同じく、アコンカグア・コスタの畑(ローム質の薄い層からなる粘土と変成岩の土壌)から収穫されたソーヴィニヨン・ブラン。早朝の手摘み収穫で、85%ステンレスタンク、10%樽、5%は卵型のコンクリートタンクで発酵。淡いストローカラー、青リンゴや柑橘系果実、ミントやハーブ、テロワールを反映したミネラル、溌溂としたワイン


      ボルドー品種と地中海品種のブレンドタイプ
      エラスリス ヴィラ・ドン・マキシミアーノ2018

/同7,700円

アイコンワイン『ドン マキシミアーノ ファウンダーズ レゼルブ』のセカンド。初ヴィンテージは2016年、「(3番目となる)2018年はここ10年来で最もバランスの取れた年」とチャドウィック当主。ボルドー品種と地中海品種をブレンドした現代的なスタイルのワインで、CS28%、シラー23%、マルベック21%、CF16%、グルナッシュ7%、ムールヴェードル5%を使用、フランス産オーク樽で22ヶ月熟成、新樽率50%。ボルドーのクラシックな要素と地中海の独創性を併せ持つスタイルは、従来からのセカンドワインとは趣きを異にしており、エラスリスの今までの成果を形にしたアイテム。フラッグシップの弟分ワインをもっと身近に感じて、是非、トライしていただきたいと思っています!


  チリを代表するカルメネール
 エラスリス カイ2012/同27,500円 (右)カイ2019/同14,300円
 
チャドウィック当主が “テディベア”と形容するカイ!
その心は「鋭さを持ち合わせているカベルネと違って、人を優しく包み込むタッチのワインなので、いつでも抱いていたいと思わせるイメージ」と当主[わーい(嬉しい顔)]
太平洋から60kmに位置するアコンカグア・ヴァレーのマックスVヴィンヤードの最良の区画のぶどうから造られるカイは、チリを代表するぶどう品種カルメネール主体、数多くの受賞歴を有すワインです。

2012年も2019年もカルメネール95%、シラー5%のブレンド。フランス産オーク樽で22ヶ月熟成。ただ、新樽の使用率は前者が47%、後者は70%。2019年は温暖な気候で、ぶどうのポテンシャルを考え、樽の比率も多めになった由。冷涼年の2012年ヴィンテージはフィネスがあり、タン二ンはシルキー。2019年ヴィンテージは黒系果実、黒オリーブや黒胡椒、焙煎香やダークチョコ、パワフルさを備えた滑らかな味わい

      photo by Fumiko / 2023年5月31日撮影
      エラスリスの畑のカルメネーレ、赤い葉が特徴です!


 創始者ドン マキシミアーノ エラスリスへのオマージュワイン
 (右)エラスリス ドン マキシミアーノ ファウンダーズ レゼルブ2018/同12,100円 
 (左)エラスリス ドン マキシミアーノ ファウンダーズ レゼルブ2008/同15,400円
 2018年ヴィンテージから瓶型をチェンジ。若干高さが増しスリム&ストロングなボトル

アコンカグア・ヴァレーのテロワールを表現した高品質のカベルネ・ソーヴィニヨンをベースにしたワインで、偉大なる 創始者の名を冠しています。
2018年は完璧なぶどう生育期に恵まれました。ワインは深みのある紫色、赤系&黒系果実、心地よい酸味、きめ細かで滑らかなタンニン、エレガントで奥行きのある味わい。ぶどう品種CS70%、マルベック15%、カルメネール7%、プティ・ヴェルド5%、CF3%、フランス産オーク樽で22ヶ月熟成、新樽率75%

2008年はエルニーニョの影響下にあり、雨が多く、日照も少なかったヴィンテージ。最も古い区画マックスⅠ、Ⅱ、Ⅴのぶどうを使用、10年違いであることを意識しながら味わうと丁寧に造られたことが伝わってきます。チリワインの熟成具合を見事に表現したワイン、フィネスと複雑味。ぶどう品種CS84%、カルメネール8%、PV5%、CF3%、フランス産オーク樽で20ヶ月熟成、新樽率100%


     プエンテ・アルト最高のカベルネ
      ヴィニエド・チャドウィック2020/同77,000円



温暖で乾燥した気候だった2020年ヴィンテージはCS100%で、フランス産オークで22ヶ月熟成、新樽率75%、フードルを25%使用。黒系&赤系果実、ダークチョコ、バルサミコ、甘草、木目細かいながら存在感あるタンニン

ぶどう畑は、ポロ競技の名選手として活躍し、同時にワイン造りにも情熱を傾けていた父親ドン・アルフォンソさんの夢を実現したもので、自邸にあったポロ競技場をぶどう畑に転換することをチャドウィック当主に委ねたところから、このワイン誕生の物語は始まります。
1992年にヴィニエド・チャドウィックのぶどう畑が完成しますが、父君は翌年他界。このぶどう畑から造られたワインを味わうことはありませんでしたが、その思いはワインの中に生き続けています。

 栄光のヴィンテージ
 photo by Fumiko/2016年9月
 マイポ・ヴァレーのプエンテ・アルトの畑から誕生したヴィニエド・チャドウィック🍷
 1999年がファーストヴィンテージ。
 ボルドーの1級格付けワインとスーパー・タスカンを抑えて、
 ベルリン・テイスティングで1位に選ばれたのは、2番目の2000年ヴィンテージです。
 現在のラベルとは少し異なり、現行ラベルでは、ヴィンテージが記載してある箇所に、
 偉大な父親アルフォンソさんのポロ競技の勇士がイラストで描かれています。
 亡き父へのオマージュ!



   2024年に向けて始動開始
  
    5月のチリ訪問では、チャドウィック当主が海外に出ていたので、
    お目にかかれませんでした。それだけに今回の再会はとても嬉しいものでした。
 
    ディナーの翌々日、韓国に向かわれましたが、
    ベルリン・テイスティング20周年イベントに向けて既に始動開始しています!
    どのような展開になるのか、今から、ワクワクしています。
    ワインラバーの皆さまにはもっともっと
    チリのプレミアムワインの素晴らしさを感じていただきたいと思っています!

    【製品についてのお問い合わせ先】
     株式会社JALUX ワイン部 電話03-6367ー8756 / https://www.jalux.com

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2023年08月12日

NZフォリウムの岡田岳樹栽培・醸造責任者が来日! ヴィンテージファーストのワイン造りを語る

 なでしこジャパンはW杯ベスト4進出ならずでしたが、本当にお疲れ様でした。
 会場はニュージーランド北島北部のAuckland / オークランドにある、
 イーデン・パークでした。

 出典:ニュージーランドワイングロワーズ

 今回はサッカー[サッカー]繋がりでNZにフォーカス
 現地で活躍中の日本人醸造家が手がける美味なワインを紹介させていただきます!


最新データ
7月にニュージーランドワイングロワーズ主催のセミナーがあり、直近のデータを得ることができたので、はじめに、いくつか情報を載せておきます。

 出典:ニュージーランドワイングロワーズ
 ワイン生産量は世界全体のわずか1%、緯度は南緯35-45度
 ぶどう栽培地の96%はサステイナブル認証を受けています。

     主要生産品種はソーヴィニヨン・ブラン、主要生産地域はマールボロ
     出典:ニュージーランドワイングロワーズ

 気候と土醸
 出典:ニュージーランドワイングロワーズ

 サブリージョンのスタイル
 出典:ニュージーランドワイングロワーズ
 

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4年ぶりに来日したフォリウム・ヴィンヤーズの岡田岳樹さん
コロナが落ち着いてきた2023年の今、1ヶ月の長旅を続けてきた岡田さん
訪日前、NY、ダブリン、ロンドン、シンガポール、香港、ソウルを巡回してきましたが、訪問先での首尾も上々だったようで、世界のマーケットでも人気のSBになっています!

2010年ニュージーランド南島の北東部Marlborough / マールボロのブランコット・ヴァレーに創業したFolium/フォリウム

は輸入元WINE TO STYLEのグループ会社であり、岡田さんはワイナリー設立当初から栽培と醸造のすべてを取り仕切り、フォリウムならではのワインスタイルを貫いています。中心となるぶどうはソーヴィニヨン・ブランで、ピノ・ノワールとシャルドネも栽培しています。プレスセミナーでは、自然と対峙したワイン造りや最新ヴィンテージについて言及し、バックヴィンテージやニューフェイスのワインも披露しました。


 NZに移住して今年でちょうど20年目

岡田さんのワインはヴィンテージ・ファーストです。「フォリウムは多くの土壌が粘土質なので保水性は良好。毎年降雨(650ミリ)が一定量あるので、これがヴィンテージを特徴付ける大きな要因になっていると考えています。非灌漑 (2011年から実施) にすることで、ヴィンテージ毎の特徴が出ているのではないかと思っています。SDGsでも、灌漑しないことで、180万㍑/haの節水になっています」と岡田さん

ニュージーランドのサブリージョンはワイラウサザン・ヴァレーアワテレですが、フォリウムはサザン・ヴァレーに属しています。岡田さんは、このエリアについて、 ■ワイラウに比べ、涼しくて乾燥している ■氷河期に削られた粘土質土壌がメイン ■マールボロの生産量の25%を占める、と述べていました。

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マールボロのSBの特徴とは
マールボロのSBは、清涼感あるピーマン、スグリ、完熟したパッションフルーツの要素を備えた爽やかなワインと評されていますが、近年の研究で、チオール類(3MHと3MHA)の量が非常に多いことがわかってきました。この結果を得て、NZの生産者たちはチオール類を最大化することを目標に、チオール類の多いワイン造りをしています。


チオールはグレープフルーツやパッションフルーツ様の香り成分で、岡田さんはチオールについて「Mercaptants / メルカプタンとも呼ばれる有機物で、香りが強いため、少量でもワインに香りに影響を与えます。チオールは果実には存在せず、果汁中に含まれる前駆体から酵母の働きによって生成されます」とコメント

 出典:フォリウム・ヴィンヤーズ

その前駆体を最大化するには、■土壌中のチッソ素量 ■ 紫外線 ■ぶどうの葉 / これら3要素は少ないより多いほうが良く、また、古樹より若木のほうが多いとのこと。さらには、手収穫より機械収穫で行うほうがチオール量が倍以上とのお話でした。

そのような研究結果を踏まえつつ、ヴィンテージファーストで、チオールファーストではない岡田醸造責任者は、手収穫&非灌漑 (灌漑を行うほうがぶどうの葉の数は多い)というワイン造りを貫いています。

 

 ヴィンテージを反映させたワイン
 #1: Sauvignon Blanc Reserve Marlborogh2021 / 参考小売価格4,800円
 #2: 同2013 / 5,800円
 #3: Chardonnay Marlborough2021 / 5,500円
 #4: Pinot Noir Rose Marlborough2022 / 4,200円
 #5: Pinot Noir Reserve Marlborough2021 / 5,800円
 #6: 同2014 / 7,600円
 #7: Sauvignon Blanc Late Harvest Marlborough2022 / 6,800円

 左から右に#1~#7


 #1#2はフォリウムのフラッグシップ、#3のシャルドネは初登場
2021年ヴィンテージは淡イエロー、粘性があり、溌溂とした酸味と塩味が魅力、料理と合わせて楽しめる柑橘果実の内果皮似の軽いビター感。2013年は若干濃いめの黄色、10年の熟成を経ても若々しく、トロピカルフルーツや完熟果実、白胡椒のニュアンス、口中での厚み、凝縮感。
7年程前、岡田さんのSBを購入し、3年間セラーで寝かせ、その後、和食とマリアージュさせる機会があり試しましたが、穏やかな熟成と綺麗な酒質が印象的でした。
一般的なマールボロのSBと違い、チオールを前面に出し過ぎていないフォリウムをお試しいただけると嬉しいです!

満を持してリリースした#3シャルドネ。発酵はステンレスタンクで天然酵母使用。熟成は古樽で18ヶ月。冷涼エリアを感じさせる柑橘系果実、昆布出汁似のアロマ、時間の経過で味わいまろやか。岡田醸造責任者の人柄が反映しているワイン(笑)

 鰺のマリネ 胡瓜とジンのジュレ、豆苗のサラダ スダチ醤油ドレッシング
 ブリッジ食材になっていたスダチ醤油ドレッシング(酸味と乳酸のまるみ)
 シャルドネの柑橘ニュアンスやハーブの清涼感が料理と相乗
 
 最新ヴィンテージ2022年
 2020年が初ヴィンテージ、コロナ渦中に誕生したロゼ
「セニエ製法だと年毎の差が出ないので、ダイレクトプレスで造っています」と岡田さん
 色調はコーラルカラー、赤系果実やスイカのアロマ、フードフレンドリーな酸味、
 中盤からシルキーなタンニン、凝縮感

 2014年ヴィンテージ(右)と最新ヴィンテージ2021年を比較試飲 
 画像から色調の違いがおわかりいただけると思います。 
 NZのピノの熟成能力を証明してくれた1本、フランス的な雰囲気を纏った2014年
 雨が少なかった2021年は深みのある色調で骨格、ボリューム感、ポテンシャルあり
 サーロインのグリルは滑らかながら存在感あるタンニンの2021年ヴィンテージと好相性
 口中の脂分を優しく流してくれる印象
 タンニンが溶け込みスムースな味わいの2014年はブルゴーニュの熟成したチーズと!

 国産牛サーロインのグリル チミチュリソース
 とうもろこし ズッキーニ トマト 甘長唐辛子

 “バスク”チーズケーキ オレンジ アーモンドチュイル × #7
1996年に植樹したSB、貴腐ぶどう100%のレイト・ハーベスト、以前リリースした2018VTと同じく、2022年VTも2月に200ミリ以上の降雨があったことでボトリティス発生。ぶどうの生育では難しい年だったが、ワインは癒やしの空気感を纏ったエレガントな甘口.。舌の上を洗い流してくれるフレッシュで綺麗な酸味、熟した果実のコンポート、ロースト感。オレンジの酸やアーモンドチュイルの蜂蜜や焦しがし風味がワインとバランス良くマリアージュ

【製品についてのお問い合わせ先】
 WINE TO STYLE(株) 電話03-5413ー8831 / https://www.winetostyle.co.jp

                               
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 山梨大学×NHK文化センターでの体験
 チオールについて深掘りしたくて・・・
 山梨大学・鈴木教授が担当なさった『香りで楽しむ日本ワイン』を受講してきました[わーい(嬉しい顔)]
 
 出典:(C)山梨大学
 岡田さんから前駆体が増える要素を伺っていましたが、
 山梨大学とメルシャンの研究によると、3MH前駆体合成は夜明け前に盛んになるとのこと
 ナイトハーベストは科学的有意性あり
 期せずして、岡田醸造責任者と鈴木教授からチオールについて伺うことができました。
 有意義な学習時間でした、ありがとうございました!
posted by fumiko at 23:23| Comment(0) | 来日したワイン生産者&関係者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年07月29日

オーストリアワインの新しい章“ニューチャプター”に込めた思い

レンツ・モーザー&マルクス・フーバー両氏がデビューさせた白ワイン
“ニューチャプター”が日本で初めて紹介されたのは2021年4月のことでした。
現地と東京を繋いだオンラインで同国が誇る固有品種グリューナー・ヴェルトリーナー(以後GV)から造られたワインについておふたりが解説。オーストリアワインの新しい章、GVの新しい章、ふたりの男にとっての新しい章 “ニューチャプター” 誕生の経緯は、こちらのリポート

をご覧いただくことで、ご理解いただけると思います。

そして・・・2年経過した2023年6月、レンツ・モーザー氏が2番目のヴィンテージ『ニューチャプター2021』を引っさげて来日。今回はリアルなお披露目になりました。


 第1部 世界トップの白ワインと利き比べながら
 ニューチャプターをリリースするにあたり、おふたりは国内外の100以上のワインを検証
 世界で人気の白ワイン、#3~#5に、敬意を表しています。

 左から
 #1: New Chapter2021 750ml
 #2: 1st growth - Ried Zwirch2021 Markus Huber
 #3: Cloudy Bay 2021
 #4: Chablis 1er Cru - Les Vaudevey 2021 Domaine Laroche
 #5: Antinori - Cervaro della Sala2021 モーザー氏が愛する伊ワイン
 #6: New Chapter2021 Magnum 今回初登場[わーい(嬉しい顔)]


 オーストリアの名門ロブマイヤーの手吹きグラスで試飲
 左から#1~#5

   
     マグナムボトルを手にするモーザー氏
     瓶型が特殊なのでボトル代も高くなりますが、
     モーザー氏にとって、ニューチャプターは特別なワイン。
     レギュラーサイズと比較試飲してみると、マグナムはとてもフレッシュ
     酸味のメリハリあり、GVの特徴香とも言える白胡椒のニュアンス
     大容量ボトルの本領発揮!


        第2部 料理とのマリアージュ@エラン/élan
マリアージュのポイントは ■ワインのミネラリティと塩 ■ブリュレのニュアンス(焦げたニュアンス) 。モーザー氏は「GVにはソーヴィニヨン・ブランと同じような“ロースト感”があります」と語りました。ゆえにマリアージュでは、その要素を意識しながら相性を診ました。信太竜馬シェフ考案のメニューについては野中洸太支配人が解説してくれました。

      乾杯はフーバー氏のゼクト
      グリューナー・ヴェルトリーナーブラン・ド・ブラン
      日本の6月は湿気が多いので軽快で爽やかなGVの泡は魅力的


 
赤パプリカをじっくりローストして作ったピュレとハマグリの出汁のソースを“泡立て”仕上げた一品で、食材のホワイトアスパラガスはしっかりと焼き目をつけてローストし、スミイカは丁寧に包丁を入れ、さっとあぶるように火を入れることで、ぷりっとした食感と一気に広がる甘味が堪能できたひと皿。GVにイカの甘味とホワイトアスパラガスのほろ苦さがバランス良く釣り合いナイス!


       5種のワインとの相性を見ながら



酸味を意識したハーブを香らせたブールブランのソース、魚(マナガツオ)が主役なのですが、味わい的にはブルーチーズ(フルムダンベール)を乗せてローストした白桃がアクセントのひと皿


 容量違いを利き比べてみると、マグナムボトルは、
 フレッシュさ、溌溂とした酸味、食事を引き立てるミネラル感が最高!


 
信太シェフにとって、GVを肉に合わせるのも、フルコースに合わせるのも今回が初挑戦。
シャモの肉汁に土っ要素要素があるヴァンジョンヌのソースを使用。さらに舞茸を焼いて香ばしさを強調。花ズッキーニを配し、アルザスやドイツで好まれているポムスフレを添えて仕上げたひと皿

信太シェフは、ヴァンジョンヌのソースを“泡状”にして供出しました。野中支配人は「泡にすると軽さが表現でき、口中でそれが弾けると香りが出てきます」とコメント


 好奇心旺盛な信太シェフが取り組んでいる養蜂
 巣箱から取ったばかりのハチミツ


 ワインから感じ取れるパッションフルーツやマンゴーやメロン
 ヨーグルトソースの酸味、爽やかな青みのバジルを合わせたひと皿


    来日できたことに大満足のモーザーー氏
   「来春は2020、2021、2022、バレルサンプルの4種を比べたい」とコメント


    モーザー氏との初の2ショット


 信太シェフとモーザー氏


           ニューチャプターの輸入元はロシナンテ

ロシナンテはオーストリアの老舗ロブマイヤー日本総代理店です。ロブマイヤーは歴史あるガラスメーカーで、ハプスブルグ家とも関わりが深く、シャンデリアでも良く知られています。「NYのメトロポリタン歌劇場にあるシャンデリア」は特に有名です。同国を愛するロシナンテの志村有一社長がグリューナー・ヴェルトリーナーの素晴らしいワイン『ニューチャプター』に惚れ込み、扱いを開始したことは大いに納得できます。

モーザー氏の6月来日にまつわるリポートはワイン王国web

で紹介させていただきました。ご笑覧いただけましたら幸いです。
製品についてのお問い合わせは(株)ロシナンテまで/電話03-3423-4552
posted by fumiko at 23:58| Comment(0) | 来日したワイン生産者&関係者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年05月08日

ジル・デプレ輸出部長が語るブルゴーニュの名門《ルロワ》日本上陸50年

 髙島屋 × ルロワ社 50年
 マダム・ルロワのリクエストで誕生した50年記念のローズちゃん人形
 髙島屋では1972年からルロワ社のワインを輸入しています。
 2022年に50周年を迎えました。


   来日したルロワ社のジル・デプレ輸出部長
1990年仏国認定ソムリエの資格取得、モナコの『ルイ・キャーンズ』でマダムと出会い、2011年ルロワ社に入社。米国勤務の後、フランスに戻り、セールス・マネジャーに就任、現在に至る。


 画像提供:髙島屋

マダムは動画で「長年にわたりルロワのワインを変わらずに愛してくださったこと。また、わたしたちの思いを髙島屋が伝え続けてくれたことにも、こころからの感謝をお伝えしたいと思います。なぜなら、それぞれのワインには、お客様ひとりひとりに対する様々なメッセージがあり、それらを通して、わたしたちもお客様と出会うことができるからです」と語りました。

バイヤーさんのリポートにはルロワ訪問が掲載されていますのでリンクしておきます。
🌹 ルロワ

日本上陸50年 / 2022年5月
🌹 ルロワ

が導く、未来のワインスタイル / 2022年11月


             o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。



 2022年10月25日@日本橋 髙島屋

ジル・デプレさんが語った要約
1868年ブルゴーニュ地方オクセー・デュレス村に創業したメゾン・ルロワ。ワイン商として150年近い歴史を有す。ワインの買い付けはすべてブラインドで行い、毎年ワインを買い付けるとは限らない(直近の2021年は買い付けはしなかった)という姿勢を貫いている。ワイン本来の味わいが出てくるには、ばらつきがあるので、3年、10年と待つ必要があり、ポテンシャルの高いワインを選び、市場に出すべきかどうか、熟考した上で決めている。マダムが事業を引き継いだのは1955年。プロとして初仕事は1955年VTのジュヴレ・シャンべルタンの買い付けだった。当時のネゴシアンはそれなりの力を持っていたが、GCの買い付けは年々難しくなり、ミクロ・ネゴシアンの台頭もあり、マダムは「伝統的なスタイルを守り、最高品質のワインを造るには自らのメゾンを立ち上げるしかない」と決断、1988年にシャルル・ノエラが所有していたGC他を買収し、ドメーヌ・ルロワを立ち上げる。

マダムのモチベーションの根源は1988年から取り入れたビオディナミ農法であり、当初は奇異な目で見られていたが、完璧なワインを造り出していることで、今ではマダムと同じ考えの生産者が増えている。ルロワのワインには3種類あり、メゾン・ルロワ、ドメーヌ・ルロワ(22㌶、赤ワイン主体。白ワインはコルトン・シャルルマーニュ、アリゴテ。ステンレスタンク・木樽を使用)、ドメーヌ・ドーヴネ(マダム個人が所有、白ワイン主体で木樽100%)、ドメーヌ・ルロワ&ドーヴネとも醸造方法はすべて同じ。
ジルさんの語りでは触れていませんが、オクセーデュレス レ ラヴィエールやコトーブルギニヨンの白ワインもあり

ドメーヌ・ド・ロマネ・コンティDRCとの関係は1930年代に遡る。世界恐慌下で、DRCを所有していたジャック・シャンボン氏が畑を維持していくのが困難になり、エドモン・ド・ヴィレーヌ氏(DRC現当主オベールさんの父親)とアンリ・ルロワ(マダムの父親)に権利を半分ずつ譲渡。これを機に、若きビーズ・ルロワがワインの世界に参画。
1933年生まれのマダム、長い歳月が流れている。


 白ワインのテイスティング

 ムルソー2018
 
ジルさんは2018年ヴィンテージに関連し、「この年の冬は多くの霜と、何日かは雹も降りました。2018年~2022年までの間は、冬のマイナス要素を温暖化による温度上昇が補っているような面があり、2021年は9月23日が収穫日でしたが、2022年は同時期で収穫も発酵も終了していました。8月の収穫も増えているので近年、温度調整器付きの運搬トラックを活用しています」と言及。
白い花のイメージ、柑橘系果実の清々しいアロマ、木の実や蜂蜜、口中滑らか、余韻に続く酸味とミネラル


 シャサーニュ・モンラッシェ プルミエ・クリュ2014
  白ワイン部門のマイベスト。凝縮感、温度が上がってからまるみのある果実味
  スパイス、ミネラル、旨味、納得のピュアさ


      サントーバン プルミエ・クリュ1999
 
シャサーニュ・モンラッシェとピュリニー・モンラッシェの間に位置する村で、早くから楽しめるワイン。光沢をまとった黄金色、蜜を含んだフジリンゴ、果実の甘露、黄金糖、甘味のあるスパイス、ミネラル、口中で噛み応えのある味わい、長い余韻



  赤ワインのテイスティング


  ジルさん自ら赤ワインの状態をチェック


  サヴィニー・レ・ボーヌ プルミエ・クリュ ナルバントン1972

『マダム・ルロワの愛からワイン(文園社刊)』には、サヴィニーを「ベリー系の果実の香りや樽香などのわかりやすいおいしさが親近感をもたらし、ルロワが造るサヴィニーが、この地のグレードを確かなものにした。15~20年の熟成に耐えるワイン」との記述があります。
グラスから下の字が読み取れる透明感は艶やか。若干オレンジを含んだルビーで、赤系果実やピンクペッパー似のアロマ、口中滑らか、中盤から果実の旨味、アルコール由来の甘味、50年を経ても厚味を感じさせるワイン


  ニュイ・サン・ジョルジュ プルミエ・クリュ1972
 
ボトル差があったアイテム。NSG好きの私にとって最初にサービスされたワインは、熟成具合に違和感があったので、異なるボトルのワインも試させていただきました。
オレンジを含み、サヴィニーより若干明るい色調。縮縮感、干しぶどう、黒鉛、皮革、漬物等、長い熟成に由来する第3のアロマ豊かで、ワンワードなら茶葉の渋み


 ジュヴレ・シャンベルタン プルミエ・クリュ エストゥネル・サン・ジャック1972
 50周年記念イベントのマイベスト。50年の歳月を経ても、果実の存在感あり。
 ブラックチェリーやブラックベリー、タバコ、湿った土っぽさ。
 口中スムース、ワインに馴染んだタンニンと旨味


 
1972年にプレイバック!
ボジョレーのジョルジュ・デュブッフとの出会いにより、フランスの料理界のグラン・シェフたちと繋がりができた年。ポール・ボキューズ巨匠から届いた手紙には「あなたのお陰で私はブルゴーニュ高級ワインの最高峰を発見することができました」との文字が!
出典:マダム・ルロワの愛からワイン


 左から右の順に
 Gevrey Chambertin 1er Estournelles Saint Jacques1972 / Maison LEROY
 Nutis Saint Georges 1er Cru 1972 / Maison LEROY
 Savigny Les Beaune 1er Cru Narbantons1972 / Maison LEROY
 Saint Aubin 1er Cru 1999 / Maison LEROY
 Chassagne Montrachet 1er Cru 2014 / Maison LEROY
 Meursault 2018 / Maison LEROY


裏方でワインのサービスを担当していた優秀なスペシャリストから話を伺ってみました。
1972年ヴィンテージの3アイテムのうち、ジュヴレ・シャンべルタン エストゥルネル・サン・ジャックだけは、リコルクしていないワインでした。3本とも (予備を含むと4本) 状態は違っていましたが、ポテンシャルというか、個性がはっきりしていたのは、エストゥルネルでした。3本とも状態の良かったボトルは果実味や味わいがしっかりとしていて、マダムがおっしゃっている“村の特徴”が出ていました。



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 利き酒の後は、髙島屋オリジナルプレートでマリアージュ体験
 手前左から時計回りに
 黒毛和牛ローストビーフとレッドマスタード
 マンデイアン(ドライフルーツ、ナッツを乗せたチョコレート菓子)
 フォワグラテリーヌとイチジクの白ワイン煮
 生ハムと2色の大根のミルフィーユ 柚子の香り
 蟹と帆立貝のタルタル キャビアを添えて
 トリュフとクリームチーズのプティシュー(中央)



 魚介類や白ワインを使ったひと皿には3種の白ワイン
 ローストビーフやチョコレート菓子には3種の赤ワイン
 最初は上記の感じでトライしてみましたが、
 マスタードや柚子、クリームチーズ等がブリッジ食材になり、
 すべてがバランス良く食せました。
 マダムからの愛を感じながら・・・



 【参考データ】
 40周年記念

45周年記念

と貴重な時間を共有させていただきました。
 ありがとうございます!!!
 2回ともマダムの来日は叶いませんでしたが、
 記念ヴィンテージの供出は忘れがたいものであり、
 両社の足跡をたどる意味でも、大事な記録になっています。
 ご覧いただけるようにしてありますので、タイムスリップしていただけましたら幸いです!


お詫び
使用していたPCがエネルギーを受けすぎたせいなのか(苦笑)、データが取り出せなくなり、リポートが大幅に遅れてしまいました。髙島屋様には長らくお待たせしてしまいましたこと、お詫びいたします。何卒ご容赦くださいませ。
posted by fumiko at 22:23| Comment(0) | 来日したワイン生産者&関係者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年04月29日

アルゼンチン最古のワイナリー『ボデガ・コロメ』のトロンテス、ソーヴィニョン・ブラン、マルベック

 アルゼンチンのワインイメージを変えるプレミアム・ワイナリー

アルゼンチン北西部サルタ州にあるボデガ・コロメ

からクリストフ・エアーバー当主(左)が来日、日頃はスイス在住です。
久々の訪日だったので親交のあるアンダーズ東京のギヨーム・ポピーGMとともに親しい友人だけのランチ会を開催。私は輸入元ヴィレッジ・セラーズのコーエン社長&中村専務とご一緒にお邪魔させていただきました。とても光栄なことでした、ありがとうございます!


 エンパナーダ!


    貴重なSB
    なんと標高3100mに位置するアルトゥーラ・ラクシマで収穫したぶどう
    75%はステンレス・タンク、25%はフレンチオークの新樽で発酵
    最初から最後まで塩味が続き、深みのある旨味、酸味の印象
    当主に塩味について質問してみました。
    「痩せた土壌で海風の影響はないが、
    昔、海の底だった場所なので海中生物や貝殻の跡はある」と。
    納得できました!


 メイン料理に添えてあったレモンの厚焼
 SBとレモンの酸が素晴らしい相乗


 山羊のチーズ添えパンプキン、ビーツ、ハーブ


   ザ・タヴァンのジュリアン・ピゲ総料理長のメニュー解説


 贅沢な3種のマルベック利き比べ

 ボデガ・コロメは現存するアルゼンチン最古のワイナリー
 アルゼンチンと言うとメンドーサにフォーカスしがちですが、
 高地サルタ州のカルチャキ・ヴァレーの魅力を改めて認識、標高3100m、凄すぎ!

 アンデス山麓の豊かな自然が育む果実味を生かしたワインです。
 それを実現させているのは洗練された栽培&醸造技術


 純粋な果実の風味と高地ならではのストラクチャーが調和
 スマートでエレガントなワイン


    標高の高い畑(標高1700m~3100mの間に4ヶ所あり)で育ったぶどうは、
    紫外線から身を守るため果皮が厚い。濃厚な色合いと芳醇な果実味があり、
    昼夜の気温差が25℃と大きいため、しっかりした酸を備えます。


 メインの多種の肉料理、ラムもビーフもポークも美味
 途中退席せねばならず[もうやだ~(悲しい顔)]


    (C)アルゼンチン大使館

   次の取材があり、ランチは最後まで滞在できなくて、とても残念でした。
   動きやすいお席にしていただき、自然光がキャッチできる場所で撮影は完璧
   スタッフの皆さまにも助けていただきました、感謝です。


   久々に再会したコンラッド東京の森覚エグゼクティヴソムリエ(上記画像左列2人目)から、
   新たな仕事場で活躍なさる事を伺いました。
   ランチが終わったら、FBで公式発表するとおっしゃっておりました。
   さらなるご活躍、大いに期待しています。

   さてさて・・・サルタ州のコロメを訪問するチャンスがあるのかなぁ、ふふふ

  【ボデガ・コロメについての問い合わせ先】 
   ◆ヴィレッジ・セラーズ 
   ◆https://www.village-cellars.co.jp/
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2023年03月30日

伊カヴィロ社とサントリーが商品を軸としたサステナビリティ活動を展開!

  3月28日発売! タヴェルネッロ オルガニコ テトラパック®
 飲用シーンに合わせて楽しめる250ml、500ml、1㍑の3タイプ
 有機栽培ぶどう100%、ユーロリーフ認証を受けたオーガニックワイン
 白ワインはトレッビアーノとシャルドネのブレンド
 赤ワインはサンジョヴェーゼ
 オープン価格 (参考カタログ価格: 370円、740円、1360円)
 新製品の詳細はコチラ

で!

     
   カヴィロ社は1983年からタヴェルネッロで紙容器を使用してきました。
   今年で40周年、歴史のある容器です!
   ワインの色が見えないのでそれをどう伝えるか
   当初は試行錯誤したようですが、
   ダルモンテ代表は「イタリアならではの“デザイン性”で、
   容器の中身がワインであることを示す工夫をしています」と語っていました。


 ひとりでも気楽に楽しめる250ml


 環境に配慮した容器の各種認証 クリックで拡大
 画像協力:サントリー
 FSC認証 / 紙容器は持続可能な森林資源
 BONSUCRO認証 / キャップ&紙容器は持続可能なサトウキビ由来の素材
 Carbon Trust認証 / キャップ&紙容器は植物素材使用によるCO2削減



              o○.。o○.。o○ .。o○.。o○.。



 サントリーとカヴィロ社による包括連携協定締結
 協定書を手にするカルロ ダルモンテカヴィロ社代表
 吉雄敬子サントリー株式会社取締役執行役員ワインカンパニー社長



              o○.。o○.。o○ .。o○.。o○.。


 サントリーとカヴィロ社の取り組み
 画像協力:サントリー
 サントリーは1995年からカヴィロ社との連携をスタート
 2018年にタヴェルネッロ オルガニコが日本市場にデビュー
 2022年の主な成果のなかで「タヴェルネッロ オルガニコ」は前比121%
 好調な動きを示しています。
 2023年はさらに「タヴェルネッロ オルガニコ」の提携先カヴィロ社
 との連携を強化していく方針であり、
 今月28日、環境配慮型の共同開発商品テトラパック®を日本で先行発売
 約12,000のぶどう栽培家、約30のワイナリーを連ねるイタリア最大のワイン生産協同組合

 [目]参考:サントリーワイン事業方針の詳細はコチラ

をご覧ください!


 両社のものづくり
 画像協力:サントリー
 相互に有するノウハウの融合でワイン市場の発展に貢献
 ちなみに昨年新装した登美の丘ワイナリーFROM FARM & 気候変動対策の一端は、
 ブログ

をご笑覧いただけましたら幸いです。

 ~すべては畑から / すべては畑に戻る~
 画像協力:サントリー
 共通のコンセプトを有する両社
 互いの強みを融合・活用してワイン市場の持続可能な発展に取り込むとのこと


              o○.。o○.。o○ .。o○.。o○.。



IMG_8665.jpg
 来日セミナーにおける両代表

  画像協力:サントリー
 上記の沿革でおわかりのように、
 同社はワインにおけるサステナビリティ活動のパイオニア的存在です。
 ダルモンテ代表は、セミナーでも「再生可能エネルギーの100%自給自足」について
 言及していたので、私は以下の質問させていただきました。

Q1.ワイナリーでは電力の自給自足100%を達成しているとのことでしたが、7州27ワイナリーを総括した協同組合なので、通常の1つのワイナリーの場合とは異なるとは思いますが、ソーラーパネルのようなものを導入してワイナリー自体の電力を100%自給自足しているという理解でよろしいですか?
A.エネルギーはさまざまな形で作っています。地熱、電気、バイオメタンガス等。自社のエネルギー製造拠点でつくられるエネルギーを率先して使いつつ、余剰分をガスや電力線に戻しています。またファエンツァの工場の近くに蒸気を利用した熱製造施設を作っていて、その熱をさまざまな企業に提供しています。例をあげれば、F1チーム等にも

[NEW]追記(4月2日)ダルモンテ代表の回答に関してもう少し深掘りしたかったので気候変動の専門家に伺ってみました。そのお返事は・・・
~欧州では、火山国であるアイスランドとイタリアで地熱発電の開発が進められています。また欧州では廃熱のお湯も利用されています。ただ一般的ではありません。
メタンガスを液化したものがLNGですが、マイナス163℃で冷却しておく必要があるので、自動車用には適していません。自動車用は高圧で圧縮してタンクに保存して使われます。メタン、エタン、プロパンと炭素量が大きくなりますが、プロパンガスは常温で液化できますので、既にタクシーなどに利用されています~


Q2.ボトルの軽減や輸送におけるCO2軽減については世界中のワイナリーが取り組んでいますが、カヴィロ社ではどのような対策を取っていますか?
A.具体的活動を2つ挙げると、1つ目は液体メタンガスの活用です。全てではありませんが、我々の製品の輸送を行う企業で活用されています。2つ目はブリックを容器として活用することです。容器を一つ一つ運ぶのではなくロール形状で配送されるため、包材輸送を大きく効率化できます。数字的にはトラック1台で運べるブリック(で包装されるワインの量)をボトル換算すると23台分になります。

 [NEW]追記(4月4日) ブリックについても詳細な情報が知りたくて問い合わせをしました。
 以下、画像と丁寧な解説を頂戴しましたので補足として載せておきます。
 出典:日本テトラパック株式会社
「ブリック」はいわゆる呼称であり、素材自体は紙容器なので「紙容器」と捉えれば良い。ダルモンテ代表からの返信を要旨すると「この素材は瓶のように、1本1本運搬するのではなく、画像のようにロール状で運ぶことができるので輸送効率が上がり、それゆえにCO2削減に繋がる」とのことでした。

私はまだ見たことがないのですが、気候変動に関連する事柄として注視していきたいです。
サントリーホールディングス株式会社広報部伊豆蔵さんにはお手数をおかけしました。
ありがとうございました!!

【製品についての問い合わせ先】
 サントリーお客様センター:0120-139-380
 受付時間9時30分~16時30分(土・日・祝日を除く)
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2023年01月14日

シャトー・フィジャックのオーナーが所有する秘宝シャトー・ド・ミルリー@ルグラン・フィーユ・エ・フィス東京

 
 サンテミリオンの石灰質の台地に位置するシャトー・ド・ミルリー
 キーワードはフレッシュさ、エレガンス、しっかりとした余韻

シャトー・フィジャックは125年以上も前からマノンクール家が所有。18世紀に建設され、14㌶の庭園、40㌶のひと続きのぶどう畑から構成されています。
2022年9月に発表されたサンテミリオンの格付けで、念願だったプルミエ・グラン・クリュ・クラッセAに昇格しました。
ワイン王国webにパリ在住の松浦氏が
サンテミリオンの格付け

のリポートを載せているのでリンクさせていただきました。


 来日したマノンクール現当主と醸造責任者
 ブランディンヌ・ド・ブリエ・マノンクール当主
 フィジャックもミルリーも手掛けるフレデリック・ファイエ社長兼醸造責任者

 12月初旬、輸入元WINE TO STYLEの招聘で来日したおふたりは、
 秘宝のシャトー・ド・ミルリーに特化したマスタークラスセミナーを開催
 同シャトーはマノンクール家が所有するプティシャトーで、
 家族で楽しんだり、親しい友人にふるまうためのプライベートワインでしたが、
 ブランディンヌさんの父ティエリー氏の代になり、2017年からパリのルグランで販売
 その縁で、今回ルグラン初の海外旗艦店ルグラン・フィーユ・エ・フィス東京


 でセミナーをしました。
 余談ですが・・・
 シャトー・フィジャックのスタイルを確立させたティエリー氏が初来日したのは1974年
 味わう文化(日本酒や日本茶)がフランスと通じるということで親日派だった由。

 
 ぶどう樹1本からワイン1本
 地図は拡大可

土壌は粘土石灰質&石灰質、作付面積は0.8㌶、栽培比率はメルロー95%&CF5%
平均樹齢は35年、植樹4,000本、生産量は4,000-4,500本、ぶどう樹1本からワイン1本!
収穫に関しては2018年 (2017年までは1回) から2回に分けて実施

格付け昇格について「とても喜ばしい結果です。サンテミリオンには大小の規模のシャトーがありますが、ヒエラルキーがあることは消費者にとってはわかりやすいはず」とマダム
審査に関しては「100点制で、50点はワインの品質(15ヴィンテージをテイスティング)。25点はテロワール(ぶどう畑、栽培や醸造)。25点はSNSでの発信、露出度、サンテミリオンへの貢献度、古酒の価値(世界市場、ワインのポテンシャル等)」と語りました。


 4ヴィンテージをテイスティング
 左から順に
 #1:シャトー・ド・ミルリー2014 参考小売価格11,000円
 #2:同2015 14,000円
 #3:同2017 12,500円
 #4:同2018 14,000円 
 ※全商品12月中旬以降出荷可能予定

 ラベルのデザインはティエリー氏がデザインしたもので、
 モデルは畑にあった“樫”。森の王様であり、ワインには欠かせない樫
 当初は黄色だったものを近年背景を白にしてより際立たせたとのこと


    第1フライトは2014年、2015年
    ともにメルロー90%、CF10%、新樽率80%
     2014年は雨が多く冷涼。収穫9月下旬から10月上旬
    フランボワーズ、カシス、グラファイト、スパイス、メンソール
    フレデリックさんは「白い花、CFらしさが出ているヴィンテージ」と


      2015年は温暖年で日照度豊か、収穫は9月下旬
      フルーティ&フレッシュ、よく熟したぶどうを感じさせる厚味
      ミネラル、酸味とタンニンと凝縮感のバランス、飲み飽きしない味わい
      「開放的な香り」とフレデリックさん


         マイベストは2015年
        20点評価で2015年と2018年には18.5点をつけました。
        2ヴィンテージとも温暖年だったのですが、
        2015年にはマダムがこだわる“フレッシュさとエレガンス”があり好印象
        おふたりの写真撮影時、
        「お好きなVTのボトルを持っていただけますか」とお願いしたところ、
        嬉しいことにおふたりとも2015年[わーい(嬉しい顔)]
        未開栓のボトルが1本ずつしかなかったので、マダムは2014年で!


        第2フライトは2017年、2018年
        メルロー90%、CF10%、新樽率は2017年80%、2018年90% 
         「若いうちから真価を発揮するワイン」とフレデリックさん
       2017年はクラシックなヴィンテージ、収穫の時期は例年と同じ
       香りは閉じ気味、黒系果実、ミネラル、中盤から酸味のニュアンス


    2018年は太陽の年、日照度豊か、深みのあるガーネット
    ブラックベリー、グラファイト、ミネラル、ビターチョコ、スパイス、タンニン
    リッチで層を成して広がる味わい


 12月1日にオープンした素晴らしい店舗
 WINE TO STYLEのグループ会社パリの老舗ワインショップルグラン

初の海外旗艦店
 ルグラン・フィーユ・エ・フィス東京は広尾駅4番出口徒歩0分


 1980年代のパリのルグラン、この雰囲気大好き!


 1階にあるワインバーではグラスワインやチーズ、コーヒーが楽しめます!



      シャンパーニュの陳列棚

      ピエール・ペテルスの輸入元WTSらしいシャンパーニュセレクト 
      ブラピのシャンパーニュはペテルスとのコラボレーション


 WTSの目玉アイテムのボランジェ


 贅沢なスペースに約500銘柄のワインが並んでいます!


 地下に降りる途中にもワインの展示


 セラーには高級ワインが微睡んでいます!
 同じフロアにマスタークラスセミナーを行ったサロンもあります。


【店舗情報】
店舗名:ルグラン・フィーユ・エ・フィス東京
所在地:東京都港区南麻布5丁目1-27
営業時間:水木金は12時~21時、土日祝日は11時~20時
定休日:月火 ※祝日の場合は営業
アクセス:東京メトロ日比谷線広尾駅4番出口徒歩0分
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2022年10月22日

ブルゴーニュの名門ドメーヌ・ド・モンティーユの当主がサンタ・リタ・ヒルズで造るワイン『ラシーヌ』

ブルゴーニュ地方ヴォルネイ村を拠点にする名門ワインナリー『ドメーヌ・ド・モンティーユ』のエティエンヌ・ド・モンティーユ当主の来日を機に、輸入元wine to styleが、カリフォルニア州サンタ・リタ・ヒルズでド・モンティーユさんが取り組むラシーヌのワイン7種のテイスティングディナーを開催しました。

カリフォルニアの冷涼産地サンタ・リタ・ヒルズでブルゴーニュと同じぶどう品種シャルドネとピノ・ノワールに特化したワイン造りを目指したド・モンティーユさんとシェフ・ド・カーヴのシーヴさん。

         ラシーヌについて
         エティエンヌ・ド・モンティーユさん(左上)
         シェフ・ド・カーヴ、ブライアン・シーヴさん(左下)
         シャンパーニュ『ピエール・ペテルス』のロドルフ・ペテルス当主(右上)
         タイラー・ワイナリーのオーナー醸造家ジャスティン・ウィレットさん

ご参考までに、wine to style のサイトにあるラシーヌ

の記事をリンクしておきます。
前述のふたりがジャスティン・ウィレットさんの表現力に感銘を受け、コラボの話を持ち掛け、そこにシャンパーニュのペテルス当主が仲間入りしました。現在は、ウィレットさんに代わり、サンタ・リタ・ヒルズのスペシャリストのライアン&べッツィー・ハナフォード夫妻が栽培パートナーとして参加しています。

ド・モンティーユさんが語ったラシーヌに関するナマ情報、ワイン解説&コメント等は ワイン王国web

で紹介させていただきました。



 拡大可
 ワイナリーは
 入手したラシーヌの畑は

 2020年と2021年にぶどう樹を植えました。
 2023年か2024年には収穫したぶどうからワインを造る予定

サンタリタヒルズ ラシーヌの畑.jpg
 テイスティングディナーに供出されたワインのヴィンヤードは上記地図の
 ペテルス当主と造るスパークリングワインは2022年秋に国内リリース予定半月


        ブルゴーニュワインファンを魅了するラシーヌのワイン
          #1:2018サンタ・リタ・ヒルズ キュヴェCH
        アルカリ土壌由来の白い花、塩味、還元的な香りが特徴

     #2:2018ウェンズラウ・ファミリー・ヴィンヤードCHサンタ・リタ・ヒルズ
IMG_0383.jpg
       ぶどうの植樹も手掛けた長期リースしている将来性ある畑


       #3:2018ベントロック・ヴィンヤード CH サンタ・リタ・ヒルズ
IMG_0393.jpg
        明太子白菜キムチにも太刀打ちしたベントロック!


       #4:2018サンフォード&ベネディクト・ヴィンヤードCH
      1971年に植樹したぶどう樹で、サンタ・リタ・ヒルズの中では最古


        3種のピノ・ノワール
        エティエンヌさんは本家同様、全房発酵を多めにしています。

求めているワインのスタイルによって変わりますが、#5は50%、#6は3分の2 (「トライアルをしていますが100%でも問題ないと思える畑」とド・モンテーユさん)、#7は3分の2の割合。「全房発酵ではステム(梗)がフィルター代わりになるので、色調は淡めになりますよね」と質問したところ、「全房はステムが果皮の色素を吸収するので最終的に色はライトになります。もともとPNから造るワインは色調が淡めなので、色より、“輝き”が大事だと思っています。全房の場合、熟成による色の変化はほとんどありませんが、除梗したワインは最初は色が濃い目で熟成によって淡くなっていきます」とおっしゃっていました。とても興味深い内容でした。


 台座に写り込んだルビーの輝き、美しい!


 鳥瞰で色調観察
 #5:2018サンタ・リタ・ヒルズ キュヴェ PN
 #6:2018ラ・リンコナーダ・ヴィンヤード PN サンタ・リタ・ヒルズ
 #7:2018サンフォード&ベネディクト・ヴィンヤード PN サンタ・リタ・ヒルズ


  さらなるご活躍にCheers!!
 photo by Tadayuki Yanagi
 エティエンヌさん、wine to styleの武村Yoshiさん(左)と遠藤玲子さん(右)と一緒に乾杯🍷



 ドメーヌ・ド・モンティーユのワイン・プロジェクト@ 北海道・函館
 画像:NHK北海道webより
 10月からド・モンティーユ&北海道のワイナリー建築がスタート、完成は来夏予定
 東奔西走するド・モンティーユさんの手腕、大いに期待しています!
 https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20220824/7000049961.html

 
   最後に・・・
  2004年カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品していた『モンドヴィーノ』
  この映画に、ド・モンティーユファミリーも登場していました、懐かしいです。
  ちなみに、この紹介文を書いたのは・・・
  日本で最もド・モンティーユに精通しているYanagiさん
posted by fumiko at 23:32| Comment(0) | 来日したワイン生産者&関係者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年04月25日

1889年設立のナパ『マヤカマス』から醸造家が初来日、WSで高評価を受けた2015年VTを披露

 ピューマの遠吠えの意味をもつマヤカマス・ヴィンヤーズ
ワイナリー名はマヤカマス山脈に由来。敷地は190㌶、うち18㌶にぶどう植を植樹、畑は標高550m〜750mの山岳地帯に位置しています。生産量は5,000~6,000ケースで、内訳はCH2,000、ME500~1,000、CS2,000~3,000。ロゴのMの中に描かれているのは2 匹のピューマ(マウンテンライオン)、アメリカン・インディアンのワッポ族の言葉でマヤカマスは「ピューマの遠吠え」を意味します。

マヤカマスの沿革 敬称略
ナパで最も古いワイナリーのひとつとして知られているマヤカマス・ヴィンヤーズ

は、サンフランシスコでピクルスの販売をしていたドイツ人のジョン・ヘンリー・フィッシャーが、1889年に別荘兼ワイナリーとして立ち上げたものです。場所は現在のマウント・ヴィーダーAVA (当時の呼称はレッド・ウッズ)。趣味で植えたぶどう樹(ジンファンデル等)からワインを造り、販売。荷馬車で2日間かけてサンフランシスコまで運搬していたという記録も残っています。1906年のサンフランシスコ大地震とそれに伴う火災が原因で自己破産に追い込まれたフィッシャーは止む無く施設を手放すことに。1910年、オークションにかけられたワイナリーは、わずか5000ドルで落札されます。余談ですが、購入した人物はカトリック系だったので禁酒法時代 (1920~1933年)にも合法的にワイン造りをしていたとのことです。

禁酒法解禁後、廃墟に近い状態になっていたワイナリーを英国人のジャック・テイラーが購入。重力移動式のワイナリーとして再建し、敷地にシャルドネとカベルネ・ソーヴィニョンを植樹。1965にワインメーカーとしてボブ・セッションズを雇用。彼は1971年まで働きました。1968年から所有者がテイラーからボブ・トラヴァース(1972年から2012年までワイン造りを担当)に変わります。機械工学を専攻した彼は、ワイン好きが高じて、ワイナリーを入手する以前には、ハイツ・セラーズでワイン醸造を学んでいました。

1976年に開催されたパリ・テイスティングで7位に入ったマヤカマス・カベルネ・ソーヴィニョン1971はボブ・セッションズが造ったワインです。この出来事以降、マヤカマスは評価を高め、さらに、2006年に行われたパリ・テイスティング30周年記念のテイスティングでは3位に輝き、長期熟成に耐えうるワインとしてマヤカマス・ヴィンヤーズは世界的に知れ渡るようになります。

2013年、トラヴァースが74歳の時に、現オーナーのショッテンスタイン財閥の傘下となり、スクリーミング・イーグルの元ワイン・メーカーのアンディ・エリクソンがワイン醸造を監修。ワイン造りは2月に来日した若きポープ、ブレイデン・アルブレクトが担当しています。
長期にわたり放ったらかしにされていた畑の大改革はカリフォルニアでオーガニック&バイオダイナミック農法のパイオニアとして知られているフィル・コトゥーリに委ねられ、マヤカマスは健全な土壌を取り戻すことに成功しました。



 細く長い林道の奥にあるマヤカマス・ヴィンヤーズ
 禁酒法時代にはスピークイージー(もぐり酒場)の場としても知られていた!?
 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』の映画を思い出して・・・ 


 1976年の『パリスの審判』でのランキング

 2006年は第3位に!



2月に来日した醸造家ブレイデン・アルブレクトさんと輸出部長キャシー・コーンさん
アルブレクトさんの家族はラザフォードに畑を所有していたので、幼少期から土に馴染み、自社畑で獲れた野菜等を食べていたそうです。ソノマに転居し、高校生の時はワイン造りにはまり、カリフォルニア大学バークレー校に進学して農業を専攻。インターンシップでフィル・コトゥリーの元で学び、彼の哲学にほれ込みます。その恩師から紹介されたのがマヤカマスで、ワインメーカーとして現在に至っています。

 ブレイデン・アルブレクトとのテイスティング・タイム

バランスの取れたマヤカマス・ヴィンヤーズ シャルドネ ナパ・ヴァレー2014、2017
「2017年は山火事がありましたが、シャルドネはカベルネと醸造施設が異なるので生産することができました」とアルブレクトさん


樹齢40年のぶどう樹、無灌漑、発酵は小樽(新樽率5~10%)とパンチョンとステンレスタンクを使用。ノン・マロ、シュル・リーで12ヵ月(約15年位の使用樽)樽熟、その後6ヵ月ステンレスタンクで熟成させ瓶詰め。2017年は温暖な気候だったので、ワインの味わいを締める意味で6ヵ月ステンレスを使用



(左から) マヤカマス・ヴィンヤーズ CS マウント・ヴィーダー ナパ・ヴァレー 2012、2013、2015
2012年はボブ・トラヴァースが所有していたので栽培にも収穫にも関わっていないヴィンテージ。2013年から現オーナーのショッテンスタイン家が管理。栽培から収穫、醸造に至るまで全ての工程を自分たちで行った。納得できるヴィンテージで質も量も潤沢。温暖な2015年は結実不良があったものの酒質は良く、長期熟成タイプ。この年は2019年ワインスぺクテーター誌のTOP100

で堂々の第2位!

 和牛ヒレ肉のカツサンド 
(左から)同2003、2005、2010
温暖だった2003年は果実味とタンニンの調和が取れたヴィンテージ。2005年は2015年と比べると穏やかな年だったが若干青っぽさがあり現段階では酸が際立つ。冷涼で雨が多かった2010年は、数年続いた干ばつ後の年になるので樹勢が強く、通常より、若干水分を感じるヴィンテージ

カベルネに関しては、糖度が上がりきらない状態(=酸が残っている状態)で、収穫を早めに行うことを心がけている由。ぶどうは房ごとに選果を行い、100%除梗、コンクリートタンクとステンレスタンクと蓋なしのフュードルの3つの容器を使い発酵させる。スキンコンタクトは14~21日、プレス、樽熟成(マヤカマスでは3年間)。ここでは1960年代から続けている醸造方法で、最初の2年は大きめのカスク(ものによっては1929年代や1940年代の樽、年季の入った大樽)で熟成。3年目は225㍑のフレンチオークが主体。新樽率は5~10%、年によっては新樽使用率ゼロのことも。4年目に瓶熟成を1年間行ってから出荷。VTによっては更なる熟成を加えることもあるそうです。

アルコール度数が13.5%~14%程度で収まっている理由について、アルブレクトさんは「標高が550m以上なので、畑は霧の上にあり、ぶどうは陽を浴びても涼しい環境にいるので、糖度が上がらなくてもぶどうはきちんと熟すことができます。ゆえに果実味とフェノール分を備えつつ、アルコール度数を低くおさえることができるのです。日照時間は長くても、標高が高く、涼しいので、ぶどうは加熟になりません」と語りました。

 10年違いのヴィンテージを発売

同2005、2015
数年前から、最新VTと10年前にさかのぼったVT(今回を例にすると2015年と2005年)を同時発売し、若いワインと熟成したワインの双方を楽しんでもらおうという試みをしています。2020年の12月には2016年と2006年、来年は2011年と2007年をリリース予定です。

2017年は山火事があり、ぶどうへの害はなかったものの、火事がひどくてテイスティングルームも燃えてしまったとのこと。停電と断水のため、醸造中のワインのメンテができなかったことから2017年は発売しません。ただし、ワイナリー用として250ケースはキープしています。そのような経過から、未発売だった2011年を2017年の代わりに発売することに決めたそうです。

      焙じ茶最中アイスとカベルネ

取材を終えて
初来日のおふたりは大のスキー好き。仕事が終わり次第、「ニセコに行く予定」と語っていました。スキーのイロハを教えてくれたアルブレクトさんのお父様と合流するとのことでした。北海道では1月末にCOVID-19の感染者が出ていたので少し気がかりでしたが、なんとかすり抜けたようです。
初めての日本訪問の印象が少しでも良いことを願っています!

◍製品についてのお問い合わせはWine in Style


Tel:03-5413‐8831
posted by fumiko at 23:55| Comment(0) | 来日したワイン生産者&関係者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年01月18日

スマイルが輸入を開始して早25年、自転車ロゴで人気の『Cono Sur』

祝 スマイル × コノスル交流25年

『コノスル』のマティアス・リアス醸造責任者(右から4人目)と『スマイル』の菅宜雄取締役常務執行役員(右から3人目)を中心にした両社の皆さま

コノスルの創業は1993年、南米のチリ、コルチャグア・ヴァレーを拠点にしています。親会社はコンチャ・イ・トロですが、スタート当初から、“ぶどうの能力”、“果実の力”を最大限に引き出すことを念頭に、“no family trees, no dusty bottles, just quality wine (家系図や埃をかぶった瓶はない、あるのは高品質のワインだけ)” をスローガンにして、その実力を発揮してきました。日本でその魅力を伝道してきたのは輸入元スマイルです。昨年(2019年)で両社の付き合いは25年になりました。おめでとうございます!


ラベルの自転車は、コノスルのぶどう造りの基本!
“自然のサイクルを尊重”というコンセプト&ぶどう畑で働く農夫たちのシンボル。

登場したワイン
昨秋、25周年記念で来日した醸造責任者マティアス・リオス氏はプレスランチセミナーを開催し、同社自慢のアイテムを披露しました。南米最大のピノ・ノワール生産者としての実力を示すべく、ブラインドテイスティングタイムもありました。


(左から)
#1:センティネラ2015
カサブランカ・ヴァレーにあるエル・センティネラ農園のシャルドネ100%、瓶内二次発酵のスパークリングワイン。一次発酵はステンレスと一部は小樽。畑は太平洋から9kmの場所にある冷涼なエリア、日較差は約20度。ドザージュ6g/L
#2:20バレル・リミテッド・エディション SB 2018
厳選した最良の20樽 (バレル)のみを瓶詰めした限定生産ワイン。切れの良さ、清涼感ある味わい。
#3:オシオ2016
カサブランカ・ヴァレーの『エル・トリアングロ』のぶどうが85%、サンアントニオ・ヴァレーのぶどうが15%、ブラウンのトーンを含む熟成したニュアンス、複雑味や旨味、広がりのある余韻。伝統国のピノではないと直感できるが、深みのある味わい。第一香の印象と味わった後に感じる印象に若干の違和感(酵母!?)。リアス氏いわく「天然酵母と培養酵母を半々ずつ使用しているが、後者に関してはカサブランカ・ヴァレーで培養した酵母を使っている」
#4:シャルム・シャンベルタン2016 (ジャンテ・パンショ)
ブルゴーニュもチリも2016年は冷涼年。ジャンテ・パンショの創業は1954年、現当主ヴァンサン・ジャンテ氏は2代目で、2006年からご子息もドメーヌに参画。色調は赤紫、第一香は閉じ気味、果実味と酸味のバランスが良く、中盤以降、喉の奥にAlc由来の温かさ。
#5:コセチャ・ノーブレ2013
世界最南端の栽培地ビオビオ・ヴァレーのリースリングを使用。ワイン名は“高貴な収穫”、残糖70g/Lなれど、甘味と酸味のバランス良好、余韻も長い。




チリは春から夏にかけて乾燥した地中海性気候で、日較差(昼夜の寒暖差/20度)が大きく、日照量も豊富。コノスルのぶどう畑は、北部はリマリ・ヴァレー、南部はビオビオ・ヴァレーまでの約880kmに広がっています。現在300㌶以上の畑を所有し、多様な品種を有機農法で栽培しています。

ピノ・ノワール対決

ピノ・ノワール2種をブラインドで!


大きさの異なる丸がリズミカル、視覚的にも楽しめたアミューズブーシュ


ともにヴィンテージは2016年


烏賊と里芋のタルタル 柚子のジュレと白魚


真鱈の白子とあんこうのポシェ デュグレレ風
20 バレル・リミテッド・エディションSB


牡蠣のフラン 春菊と牛バヴェットのエギュイエット 赤ワインソース


オシオ(休暇の意味)はブルゴーニュの『ジャック・プリュール』のマルタン・プリュール氏の協力を得て造られた限定生産品、伝統国とニューワールドの個性を併せ持つワイン。


自家製ヨーグルト 無花果のコンポート
コセチャ・ノーブレ2013

ロブマイヤーのシャンデリア!


奇しくも、2週続きで『ロステリーレカン』にお邪魔することになったのですが、初回と違って今回は会場全体が見わたせる位置だったことで、ゆっくりとお部屋を観察することができました。天井を見上げて、まぁ、大好きなロブマイヤー発見!
NYのメトロポリタン歌劇場のシャンデリアと同じデザインでした。4代目H・ハラルド・ラードがじゃがいもと自転車のスポークで模型を作った伝説のシャンデリア、素敵です!

財務省発表の酒類輸入通関実績 (2019年1~11月累計)における輸入上位10ヵ国を見ると、1位はフランス(前比10.5%増)でした。ボジョレ・ヌーヴォーの輸入が数字に反映しています。日欧EPAの影響で、スーパーマーケットのチリワインの棚取りが減ってしまい、まだ以前の状態には戻っていないようですが、日智EPAは締結期間が終了し撤廃されたので、2020年は、リーズナブルなアイテムだけでなく、チリのプレミアムワインに注目していただきたいと思っています。

◆コノスル製品へのお問合わせは(株)スマイル
TEL: 03- 6731-2400
http://www.smilecorp.co.jp/goods/wine.html
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2020年01月11日

カリフォルニアを代表するスパークリング『シュラムスバーグ』のヒュー・ディヴィーズ当主来日セミナー

米国産スパークリングワインのパイオニア『シュラムスバーグ』


ワイン・イン・スタイルの招聘で来日したヒュー・デイヴィーズ当主
日本はNo.1の市場ということで気合十分、今回で4回目の訪日になります!
プレス向けのテイスティングセミナーではシュラムスバーグのフラッグシップワイン『ジェイ・シュラム』のリリース前の2018年のベースワイン数種とそれらをブレンドした完成形、『ジェイ・シュラム』のヴィンテージ違いやベストセラーアイテム『ブラン・ド・ブラン』等を披露し、ワイン造りの哲学、キーとなる区画やスタイルの多様性についても言及しました。

ワイナリーの沿革
2002年に訪問した時に、最も印象深かったのはカーヴでした。
カリフォルニア最古と言われ、1800年代に人の手によって掘られた歴史的な建造物です。現在は最大で300万本ものスパークリングが寝ています。ちなみに、シャンパーニュ地方で、ローマ人たちが遺した石切り場をカーヴとして使っているメゾンにはシャルル・エドシックやルイナール等がありますが、人(協同組合の生産者たち)が手で掘って完成させたカーヴで一番良く知られているのはマイィ・グラン・クリュです。時代的には1929年のことなので、シュラムスバーグの古さが良くわかります。

ワイナリーは1862年にドイツ移民のジェイコブ&アニー・シュラム夫妻によって設立され、建物の周囲には、リースリング、シャスラ、ジンファンデル等が植えられていました。年間10万本程度の生産量で、ロンドンやNYにも輸出。禁酒法下、経営困難で廃業状態になり、何人かの手に渡った後、1965年に2代目当主ヒューさんの両親であるジャック&ジェイミー・デイヴィーズ夫妻が購入。アメリカ初の瓶内二次発酵(シャンパーニュ方式)のスパークリングワイン造りに挑戦し、アメリカ産スパークリングワインのパイオニアとして成功を収めて今に至っています。約150年間にわたる歴史については年表

を参考にしてください。

       ワイナリー&ぶどう畑の位置
       

シュラムスバーグはダイヤモンド・マウンテンにあります。
デイヴィーズ夫妻は、ワイナリー周囲の自社畑に植樹してあったリースリングやシャスラを、シャルドネCHとピノ・ノワールPNに植え替え、シャンパーニュと同じ品種、同じ製法に注力していましたが、近年、サイドビジネスとして、ボルドー品種やピノ・ノワールを使った赤ワインを生産。1994年にCHとPNをカベルネ・ソーヴィニヨンに植え替えて2001年にはCSのファースト・ヴィンテージをリリース。セント・ヘレナにはデイヴィーズ・ヴィンヤーズも完成しています。
シュラムスバーグのスパークリングワインに使うぶどうは、3つの自社畑、3つの自社管理畑、契約農家の計200㌶からなる120区画のもので、それらを300ロットのキュヴェにして使用しています。沿岸地域、カーネロス、ソノマ・コースト、アンダーソン・ヴァレーまでの南北210kmに及ぶ幅広いエリアから調達しています。

壮観! 2時間のセミナーに登場したワインたち

左から第1フライトの6本、第2フライトの6本、第3フライトの3本
木箱のなかにあるのはヒューさん愛用のサーベル

完成品になる前の2018年のベースワインを試飲

A:シャルドネ
ステンレスタンクベースワイン
ダットン・ウィンクラー・ヴィン ヤード(グリーン・ヴァレー)
砂質土壌、柑橘果実、南国フルーツ、夏ミカンの内果皮似のビター感、上品でスマート
B:シャルドネ
ステンレスタンクベースワイン
ホーク・ヒル・ヴィンヤード(グリーン・ヴァレー)
Aより南(ソノマ・コースト)に位置し、収穫は1週間程度遅い、活き活きした酸、硬質で塩味の印象
C:シャルドネ
ステンレスタンクベースワイン
スカイウォーカー・ヴィンヤード(マリン)
ヒューさんは「レモンの皮を擦ったような引き締まった感じ。10年後のリリースを考えた時に必要となる要素」と語っていました。
D:シャルドネ
樽(パンチョン)ベースワイン
キーファー・ヴィンヤード(グリーン・ヴァレー)
Aに近い自社畑、樽を使ったふくよかでまるみのあるスタイル
通常は全体の25%をフレンチオークの旧樽で発酵させ、一部MLFも行うとのこと。
E:ピノ・ノワール
ステンレスタンクタンクべースワイン
レディング・ランチ・ヴィンヤード(マリン)
標高243㍍のCに近い畑、完熟しはじめたイチゴのニュアンス、芯のある酸味、長い余韻
F:ジェイ・シュラムのベースブレンド
CH 82%、PN18%。ステンレスタンク発酵65%、樽発酵35%。残糖 0.05g/100ml、pH 3.02、総酸度0.97g/100ml、Alc11.6%
「ジェイ・シュラムを構成するベースワインのうち、A~Eは全体の50%、残りの50%はそれ以外の畑。ただし、Aのダットン・ウィンクラー・ヴィンヤードのシャルドネは比率的に多い」とヒューさん。



EのPNは凝縮感があり、リッチな印象


第2フライト


G:ジェイ・シュラム ナチュラル2018
CH82%、PN18%、樽発酵率35%。F(第1フライトのAからEのベースワインをブレンド/Aclは11.6%)の瓶内二次発酵終了後のワイン。糖分25g(シャンパーニュ地方では24g)とイーストを加え、瓶内2次発酵させることでアルコールが1%アップするので、このワインのAlcは12.5%。フレッシュで飴のような甘やかな印象、Fより華やか。
H:ジェイ・シュラム ナチュラル2014(熟成中)
CH86%、PN14%、樽発酵率29%
Gより香り閉じ気味、温度変化で焼きりんごや熱した果実、良好な酸化熟成のニュアンス
I: ジェイ・シュラム ナチュラル2009(熟成中)
CH86%、PN14%、樽発酵率27%
Jのドザージュをしていないタイプ。粘性があり、ヘーゼルナッツ、スパイス、クリーミー
J:ジェイ・シュラム 2009(完成品)
CH86%。PN14%、樽発酵率27%、ドザージュ10g/L
香りは開いていて華やか、洋梨、カスタード、アーモンド、鮮明な酸味とスムーズな食感
K:ジェイ・シュラム 2004(完成品)
CH85%、PN15%、樽発酵率34%、ドザージュ11g/L
暑かった年、デゴルジュマンは2012年、焼きりんご、ココア、ロースト香、長い余韻
L:ジェイ・シュラム Late Disgorged1999(完成品)
CH74%、PN26%、樽発酵率38%<、ドザージュ11g/L
冷涼年、収穫遅め、デゴルジュマンは2015年、果実のコンポート、クリームブリュレ、クルミ、層になって広がる旨味

心ときめいた1999年


ヒューさんが最近試みているのが、Late disgorged (デゴルジュマンの時期を通常より遅らせ、澱との接触期間を長く保たせるスタイル)で、顧客のなかにも、このスタイルを好む人たちが増えているとのこと。では、通常のデゴルジュマン(ジェイ・シュラムは基本的に8年間瓶熟させ、その後デゴルジュマンを実施)とどう違うか? 「低温調理だと、香りや味わいに深みが出るのと同じで、スパークリングワインもじっくりと時間をかけることで、ヴァニラがキャラメルや糖蜜に、ヘーゼルナッツがクルミに変化していきます。それと同じです」とコメントしていました。古酒の醍醐味、旨み成分をしっかり感じました!

第3フライト

M:ブラン・ド・ブラン2016
シュラムスバーグが一番最初に生産したアイテム。35,000ケース/年、CH100%、瓶内熟成2年、樽発酵率25%、フレッシュ、クリーン、クリスピー、「柑橘の要素と合わせて楽しんで」とヒューさん。
N:ブラン・ド・ノワール2015
PN 81%、CH19%、 瓶内熟成2年、樽発酵率34%。シャルドネを入れるのはシャープさを出すためとおいしさを与えるため、ピノの果実味を邪魔しない程度に使用。
O:ブリュット・ロゼ2015
PN 59% (うち5%は3〜4日スキンコンタクト)、CH 41%、瓶内熟成2年、樽発酵率35%、「スキンコンタクトの目的は色素の抽出と味わいにコクが出から」とヒューさん。ベリー系果実やチェリー。ロゼの出荷量は20年前は5%、10年前は20%、現在30 %で若い女性からの人気が高いとのこと。

歴代アメリカ大統領御愛用スパークリングワイン


年表にもあったように1972年はシュラムスバーグにとって運命の年でした。ニクソン大統領が訪中の折、周恩来首相との会見の最終日に、“平和への乾杯”として、シュラムスバーグのブラン・ド・ブランを供出したからです。それまでほとんど無名に近かったスパークリングワインが世界から脚光を浴び、それ以降、ホワイトハウスで歴代の大統領から重用されています。


1975年、昭和天皇が訪米なさった時にサービスされたのは『ブラン・ド・ブラン1971』でした。

サーベラ―ジュを披露


ワイナリーではサーベラ―ジュを推奨しているので、ヒューさんが腕前を披露してくれました。さすがに手馴れていて所作もお見事! サーベルでボトルのネック部分をカットする時は一瞬の出来事なので、撮影のタイミングが合わなかった人もいて・・・そこで、ワイン・イン・スタイルの武村さんと一緒にスローモーションでプレイバック



ヒューさんのお茶目さが面白すぎて一同大爆笑!
シュラムスバーグの醸造家として語っている時とは全く違うキャラだったので本当は凄い人かも(笑)
魅力あるナパのスパークリングワインストーリーと貴重なベースワイン体験、とても勉強になりました。ありがとうございました!

◆商品のお問い合わせはワイン・イン・スタイル
TEL: 03-5413-8831
URL: http://www.wineinstyle.co.jp/
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2019年12月28日

2020年1月14日発売開始! 『インシグニア2016』のプレ・リリース特別セミナー報告

ひと足早くインシグニア2016をお披露目

ジェロボームの招聘で4年ぶりに来日したジョセフ・フェルプス

のロバート・バクスター輸出部長が、2020年1月に日本でリリースされる『インシグニア2016』の特別セミナーを開催しました!
WAで99点評価を受けた2016年ヴィンテージは、発売直後(過去において100点は4回ありましたが、いずれもリリースしてすぐではないので)のインシグニアとしては今までで最高のポイント


ジョセフ・フェルプス・ヴィンヤードの沿革
コロラド在住の建築業者ジョセフ(ジョー)・フェルプスは1970年代初頭、ワイナリー建設を依頼され、出向いたカリフォルニアに魅了され、1973年に同州セントヘレナ近郊スプリングヴァレーの牧草地を購入し、ワイン業界に参入します。畑も施設もなく、すべてゼロからの出発でした。初代ワインメーカーはドイツ人のウォルター・シュグだったことから、スタート当初はカベルネ・ソーヴィニヨンCSのほかに、PN(シュペートブルグンダー)やヨハニスベルグ・リースリングを栽培。ファーストヴィンテージは1973年で、この時は購入したぶどうを使い、ハイツセラーズの醸造施設を借りて行いました。

1978年に、カリフォルニア初のボルドーブレンド『インシグニア1974』がデビュー。当時は、ぶどう品種や畑名を記載したワインが主流でしたが、ジョーはCS94%とメルロME6%をブレンドしたワインにブランド名を付けて発売。アメリカ市場で評価となり、ワインは大ヒット。ワイナリーを代表するアイコンワインとして、今に至っています。
「ナパのCSとは違うキュヴェを造りたい」と思っていた創業者は、その年のベストなキュヴェをブレンドして最高のワインを造り出すことを考えました。それがインシグニアです。1990年代から2000年代にかけて、ロバート・パーカーから高い評価を受け、2002年ヴィンテージは2005年のWS年間トップ100の第1位にランクされています。

ジョセフ・フェルプスは現在ジョーの孫にあたる3世代目が継承しているファミリー経営のワイナリーです。ワインメーカーはそれぞれナパとソノマにいて、ナパは1999年の収穫時からワイナリーと関わっているAshley Hepworth女史、2008年からワインメーカーとして活躍しています。ソノマはJustin Ennisで、彼は2007年にフリーストーンのセラーマスターとしてワイン造りに加わり、2011年にアシスタントワインメーカー、2014年にワインメーカーに就任しました。


テイスティングを交えながら

(供出順に左から)
#1:Sauvignon Blanc Napa Valley 2017  希望小売価格7,200円(税別)
#2:Freestone Vineyard Chardonnay 2016  希望小売価格8,500円(税別)
#3:Freestone Vineyard Pinot Noir 2016  希望小売価格9,400円(税別)
#4:Cabernet Sauvignon Napa Valley 2016  希望小売価格15,000円(税別)
#5:Insignia 2016  希望小売価格オープン(税別)

ナパにある7つの畑
ナパには以下6つのほかにカーネロスにも畑があります。すべて自社畑で150㌶

画像協力:ジョセフ・フェルプス

(1)Home Ranch Vineyard
AVA:セントヘレナ。ジョセフ・フェルプスが1973年に植樹した畑。ワイナリー周辺に位置し、カベルネ・ソーヴィニヨンCS、マルベックMa、プティ・ヴェルドPV、ソーヴィニヨン・ブラン、ヴィオニエ、ショイレーべ 
(2)Banca Dorada Vineyard
AVA:ラザフォード。1983年に取得した畑でナパのなかでは温暖、CSのみ栽培、しっかりとしたタンニン、ミネラル感
(3)Las Rocas Vineyard
AVA:スタッグス・リープ・ディストリクト、1983年に取得、ラザフォードより温暖、日照を受ける東向きの畑、CSのみ栽培 
(4)Barboza Vineyard
AVA:スタッグス・リープ・ディストリクト、1974年からバルボザ家が運営していたところをジョセフ・フェルプスが1997年に長期リース契約した畑で、CS、PVを栽培。春に霜害があるので風車を設置して防備
(5)Yountville Vineyard
AVA:オーク・ノール・デイストリクト。ナパの西側にあり、ジョセフ・フェルプスの最初のぶどう供給源になっていた畑で1979年に購入。1973年当時の主たるぶどうはヨハニスベルグ・リースリングでしたが、今はCSのみ栽培
(6)Suscol Vineyard
AVA:ナパ・ヴァレー。ナパの南側に位置し、一番新しく面積も広い畑。かなり涼しいエリア。アルコール度数は低く、酸の高いぶどうなので、ナパのCSやインシグニアにブレンド。CS、CF、Maを栽培

ソノマの畑は海に近い冷涼エリア
20年前にソノマコーストに2箇所の土地を購入、全部で40㌶。2007年にワイナリー完成(それ以前はすべてナパに運搬して醸造)。土壌は砂岩が風化して堆積したゴールドリッジ


画像協力:ジョセフ・フェルプス

(1)Pastorale Vineyard
フリーストーンのエリアにあり、PNとCHの2品種を栽培
(2)Quarter Moon Vineyard
フリーストーンのエリアにあり、PNだけを栽培

白ワイン2種からテイスティング


#1:ソーヴィニヨン・ブラン ナパ・ヴァレー2017
ホーム・ランチ・ヴィンヤードのSB100%、500L のフレンチオーク使用(新樽1/3)、7ヶ月熟成、天然酵母。フレッシュ、酸は強すぎず上品、余韻に軽いビター感、まるみを感じさせるスタイル
#2:フリーストーン・ ヴィンヤード シャルドネ 2016
フリーストーンのパストラルのシャルドネ100%の希少ワイン。500L と228L のフレンチオークを使用(新樽1/3)、ヴィンテージにもよりますが12~13ヶ月熟成、燻した樽のニュアンス、シトラス、アカシア、SB同様、酸の印象が強すぎずバランス良。


(C)Joseph Phelps
フリーストーン・ヴィンヤードの周囲には湿気を好むレッドウッドが多い。

赤ワインはピノ・ノワールからスタート

赤ワインはすべて2016年でした。「量、質ともに素晴らしいヴィンテージ」とバクスターさん

#3:フリーストーン・ヴィンヤード ピノ・ノワール2016
フリーストーン(クォーター・ムーン51%、パストラル49%)のPN100%、天然酵母、ステンレスタンクで発酵後、フレンチオークの新樽34%と1~2年の使用樽66%で13ヶ月熟成。バクスターさんは「全房を20%することで引き締まったスタイルになります」とコメント。フレッシュ、ラズベリー、バルサミコ、クローブ、ナツメグ、ミネラル、フェミニンでバランスのとれたスタイル
#4:カベルネ・ソーヴィニヨン ナパ・ヴァレー2016
ぶどう品種:CS86%、ME7%、PV3%、Ma2%、CF2%。バクスターさんが「グラスのなかにナパがある」と形容していた異なる畑のぶどうをブレンドしたワイン。ステンレスタンクで発酵させた後、新樽48%(フレンチオーク62%、アメリカンオーク38%)と1~2年の使用樽52%(フレンチ、アメリカン)を使用、18ヶ月の熟成。ヴァニラ、ココア、グラファイト、アルコール由来の甘さ、舌の上を軽くなぞるタンニン。アメリカンオークを併用することで、若くても飲みやすいスタイルに。インシグニアのセカンド的存在
#5:インシグニア2016
ぶどう品種:CS84%、PV10%、Ma3%、CF3%。ステンレスタンクで発酵させた後、フレンチオークの新樽100%で24ヶ月熟成、5社の樽メーカーを使用。紫色を帯びたガーネット、黒系果実(ブルーベリー、ブラックチェリー等)、樽香、杉、グラファイト、甘草、肉厚なニュアンス、余韻に果実のふくらみ



量より質を重視するジョセフ・フェルプスが、ナパ・ヴァレーの最高のキュヴェをブレンドして造るインシグニア。高評価を受けた2016年VTの日本での発売は1月14日(火)。ナパワインファン、インシグニアファンの皆さまは年開け要チェックです!
製品のお問い合わせはジェロボームまで。TEL 03-5786-3280
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2019年12月15日

ナパヴァレーで活躍する日本人醸造家林泰久氏の『PAULOWNIA』を和食に合わせて!

家紋の五三の桐をラベルにしたワイン

(左から)
セカンドラベルの
#1:ボン・オドール・カベルネ・ソーヴィニヨン2017
#2:同2016
フラッグシップの
#3:パウロニア・カベルネ・ソーヴィニヨン2017
#4:同2016
#5:同2015

ワイン道はイングルヌックで


岡山県倉敷市出身の林泰久氏は旅行会社で働いていた時に、社員全員で応募したグリーンカード(アメリカ永住権)が当選し、ロサンゼルスに転勤。さらにサンフランシスコに異動したことで、ナパワインの魅力にハマります。ワインに魅了された彼は2000年にイングルヌックに入社。半年間はワイナリーでホスピタリティーの仕事に従事し、その後、ワイン造りの現場に加わるチャンスを得ます。ワイナリーでは、2人の師、ルビコンの醸造家で果実味を生かした造りをするスコット・マクラウド氏と、シャトーマルゴーの醸造家でエレガントさを大事にするフィリップ・バスコール氏からの指導を受けながら、研鑚を積みました。

2014年に独立して、セントヘレナのぶどうでHayashi Wines

のワイン造りを開始。ぶどう品種はカベルネ・ソーヴィニヨン100%、契約している畑から購入しています。2017年に初ヴィンテージ2015年の『パウロニア』と『ボン・オドール』を出荷。2018年には2016年ヴィンテージ、2019年には3番目のヴィンテージとなる2017年をリリースしました。年間の総生産量はわずか150ケースの希少ワインです。
ワイン販売に関しては、サイエストインターナショナル(株)が運営している完全会員制ワインクラブThe Stella

が行なっており、会員だけでなく、一般販売もしているので、同社HPから購入することができます。ステラの商品はすべてカリフォルニアでワイン・ディレクターをしている秋月康孝氏が発掘したものです。品質が良くて美味しくて少量生産のワインを日本に紹介している秋月氏と林氏との出会いは2007年でした。秋月氏とエレノア・コッポラさん(コッポラ監督の奥様)との交流があったことで、イングルヌックで対面。それがきっかけとなって、2014年に独立した林氏のワインをサイエストインターナショナル(株)で扱うことになりました。

グラス・マウンテンの土壌

セカンドラベル『ボン・オドール カベルネ・ソーヴィニヨン2017』
ぶどうはグラス・マウンテンの単一畑から生産されていますが、土壌の深層部にはガラス(グラス)のように光沢ある黒曜石(こくようせき)があります!

前菜

カリフラワームース 才巻海老 雲子フライ 抹茶塩 鯖寿司炙り 鰻サンド あん肝 タルタル
鯖寿司をボン・オドールに合せても魚の生臭さは一切なし、鰻サンドに隠し味的に使われていた辛子の存在感がカベルネのスパイシーな要素のつなぎ役になり好印象

御造り

鰤/鬼おろし 茗荷 あさつき 山葵 海苔
カベルネのヨード感が海苔の佃煮と良く合ってびっくり!

揚物

鰆 二色揚げ 
胡麻 ゆかり
銀杏 クリームチーズ粕漬け
 
煮物

焼茄子万寿 生雲丹 渡り蟹のあんかけ
料理の味わい深さがパウロニアの複雑味と相乗

2016年と2017年の違いは

ボン・オドールCS2016、同2017
ラベルを見ると、2016年はセントヘレナ、2017年はナパヴァレー(セントヘレナ+オークノール)。これについて林氏は「通常はセントヘレナ産のぶどうのみで生産していますが、2017年は暑い年だったことと熱波と山火事の影響で、量的に十分なぶどうが得られなかった為、2017年だけはオークノールのぶどうも使いました」とコメント。

果実味と上質なタンニンのあるワインはパウロニア

パウロニアCS2016、同2017
「ひとつのタンクでワインを造りますが、生産過程で、フラッグシップかセカンドに分類します。前者は果実味と上質なタンニンを備えているもの、後者は飲みやすいことが決め手です。瓶熟期間も前者は1~1年半ほど長くなります」と林氏。パウロニアは4樽、ボン・オドールは2樽の生産だそうです。

特別供出の初ヴィンテージ2015

ファーストヴィンテージの2015年、とても良い熟成具合

メイン

京都七谷鴨 すき焼き 九条葱 大黒占地
京鴨の優しさ、和の素材に寄り添うCS2016はフードフレンドリー

お食事

小豆島産手摘みオリーブ釜炊き御飯 生ハム
絶妙な塩加減の生ハムと旬のオリーブ
熟成期間が長いパウロニア2015との組み合わせ◎


全員が注目した旬房カレーうどん
ワインのスパイシーな要素と様々なスパイスを使ったカレーとのユニークなマリアージュ
参加メンバー全員が微笑んだ組み合わせ

デザート

黒糖プリン いちご
黒糖のポリフェノール、これはカベルネのポリフェノールと合致。日本のいちごはまるみと甘さがあるので酸味があっても熟成を経たカベルネなら守備範囲は広いと思いました。


ヘビー・トーストからミディアム・ライト・トーストまで樽の焼き具合のサンプル


グランドハイアット東京のロビーにあった可愛いツリー!

◍製品についてのお問い合わせ先はサイエストインターナショナル株式会社(担当:長瀬敦子)
電話03-5797-7658
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2019年10月01日

俳優カイル・マクラクラン氏が情熱を傾けるワイン『pursued by bear 』

カイル・マクラクラン氏来日


テレビ『ツイン・ピークス』、『グッド・ワイフ』や映画『ブルー・ベルベット』でよく知られているマクラクランさん。今回は自らが造るワインのPRで来日しました!

ワシントン州コロンビア・ヴァレーにあるヤキマ出身の彼は、2005年から郷里でワイン造りをしています。同州『ダンハム・セラーズ』のエリック・ダンハムさんが造る秀逸なカベルネ・ソーヴィニヨンの味に惚れこみ、ダンハムさんにワインメーカーを依頼。マクラクランさんが求めていたワインスタイルを実現することができました。現在のワインメーカーはダンハムさんの元でアシスタント・ワインメーカーを務めていたダニエル・ワンプラーさんが担当しています。

マクラクランさんに質問してみました。
Q:何故ワイン界に参入したのですか? 事業なら他にもやれることがあったのでは?
マクラクラン:ワインを選んだ理由は3つ。まず第1にワインが好きだから。毎日ワインを飲んでいるよ。第2に父が住んでいるヤキマに帰ろうと決めたから。第3に私の趣味として。

お父上は不動産ブローカーで造園も自分で手掛けてしまうほどの器用人、食べることや飲むことが大好きだそうです。マクラクランさんがワイン造りに関わってから、家族と過ごす時間が増えたと喜んでいました。ご子息は今、11歳ですが、ワインに興味を持っているようです。

パースード バイ ベアは醸造所も自社畑も所有していませんが、醸造に関してはワラ・ワラにある『ABEJAアベハ』の施設を借りて行っています。畑は、初代ワインメーカーだったダンハムさんから的確な情報を得ており、秀逸な栽培家のぶどう畑と契約し、自ら出向いてぶどうの具合を見ています。独特のラベルは、ロンドン在住のアーティスト、キャロライン・チャーチ女史のスクラッチ・ボードによる熊の絵が使われています。

ワイン名はシェークスピア繋がり

Once Upon a Time・・・
シェークスピアの作品が多く上演されていた劇場といえばグローブ座
円筒状の木造建築で屋根がない劇場、このイラストがそうですね。

pursued by bear 熊に追われて退場


「シェークスピアの『冬物語』の第三幕、第三場のト書にある“pursued by bear パースード バイ ベア”から命名しました」とマクラクランさん。
舞台上に突然 熊が出てきて、役者さんを追いたててしまうト書きはとても鮮烈な驚きだった由。ワシントンのワイン界に、突然、俳優が出てきてワイン造りを始めるということを、パースード バイ ベアにリンクさせたかったようです。

試飲会ではマムラクランさん自ら解説

マクラクランさんが大好きなカベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、それから一番新しいロゼが登場



ブラッング ベア ロゼ2018
AVA:コロンビア・ヴァレー
品種:ムールヴェドル50%、グルナッシュ30%、サンソー20%
生産量:424 ケース
希望小売価格:4,900円(税別)
ステンレスタンクと木樽を併用。南仏のロゼをイメージして造られたフレッシュ&フルーティなワイン。淡いさくら色、ピュアな酸味、ドライな味わい。魚介類と香味野菜をたっぷり使ったブイヤベースが似合いそう!


カベルネは2ヴィンテージ。2014年はカベルネ100%、2015年は若干メルロをブレンド。果実味、全体のバランスから言って2015年がマイベスト!

カベルネ・ソーヴィニヨン2014
AVA:コロンビア・ヴァレー
品種:CS100%
生産量:95ケース
希望小売価格:10,800円(税別)
発酵も熟成も木樽(ブルゴーニュのタランソー)、ブラック・チェリー、バイオレット、大人びた風格、青みのニュアンス、鉛筆の芯、2015年VTと比べるとスリムな印象

カベルネ・ソーヴィニヨン2015
AVA:コロンビア・ヴァレー
品種:CS81%、ME19%
生産量:479ケース
希望小売価格:10,800円(税別)
発酵も熟成も木樽(ブルゴーニュのタランソー)、果実感にあふれ、綺麗な酸味とこなれたタンニンのバランス好印象、豊潤、長熟タイプ


シラーも2ヴィンテージ、2013年は参考出品。シラー好きの私は、2013年ヴィンテージに惹かれました、複雑味&奥行きあり!

べビー ベア シラー2014(画像は)同2013
AVA:コロンビア・ヴァレー
品種:シラー100%
生産量:384ケース
希望小売価格:7,800円(税別)
(2014年は)ステンレスタンクで発酵、600㍑の木樽で32ヶ月熟成。ブラックベリーやブルーベリー、甘草、黒胡椒、きめ細かいタンニン、穏やかで豊潤な味わい。
(2013年は)マクラクランさんが特別に持ち込んだヴィンテージ。熟成による香りの変化、赤系果実、中盤から余韻に続く酸味、エレガントな印象。
シラーが蝋栓なのは、瓶型とのバランスを考え、「一番似合うから」ということで使用しています!




拙著『映画でワイン・レッスン』のコンセプトを説明してから、マクラクランさんに本をプレゼント!
日本語のみですが、本誌にある映画のジャケットとワイン画像を見れば、イメージはご理解いただけるはず。著名な俳優さんに“映画とワインの世界”をお伝えできて、本当に光栄な時間でした。
輸入元オルカインターナショナル(株)の今川栄造取締役にこころから感謝です。ありがとうございました!!

■製品についてお問い合わせは
オルカインターナショナル(株) ℡03-3803-1635
http://www.orca-international.com/
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2019年09月29日

【備忘録】仕事冥利な時間 Champagne BOLLINGER × L'AFFINAGE

ボランジェと四つに組んで
先日、銀座レカンの元料理長で、現在はラフィナージュ

のオーナーシェフとして活躍している髙良康之氏の料理に、大好きなシャンパン『ボランジェ』を合わせ、それらの相性についてリポートするというお仕事がありました。誌面に載せる画像はプロのカメラマンさんが担当、ゆえに私は相性チェックに集中。マリアージュの合間に、髙良シェフ渾身の料理をカメラに収めることができたので、これらの画像は私の大事な備忘録!

ディナーの席上、髙良シェフは「自分のなかでボランジェは“指針のためのシャンパン”という位置付けになっています」と語っていましたが、そのお言葉通り、6アイテムそれぞれの個性を大事にしながら考案されたメニューから、ボランジェ好きのシェフの細部にわたるこだわりが感じられました。マリアージュについてのコメントは、ワイン王国12月号に掲載する予定です。

メゾンの顔スペシャル・キュヴェ、トップレンジの順で

素晴らしいラインナップ!


スペシャル・キュヴェをマグナムで味わう醍醐味!
多くの要素を感じさせてくれるキュヴェゆえに、甲殻類、あわび、蛤を使った3種のアミューズ・ブッシュで味わい探究しました。


蒸したあわびをパン粉で揚げた一品(左)と蛤のグラタン
あわびの下にクルミを配してシャンパンから感じ取れるクルミやヘーゼルナッツを表現した演出もあり!

当日のハイライト『ヴィエイユ・ヴィ―ニュ・フランセーズ』

注いでいる最中から甘やかな香りが・・・


Photo by Fumiko /2009年3月
メゾンの誇り! 
メゾンの裏手にある2区画のぶどう畑で栽培されている貴重な自根のピノ・ノワール
ブジーにあった3区画目の畑は1990年代フィロキセラによって全滅


ボランジェ・ラバーとして最高の瞬間!
12年経過したシャンパンは黄金色に輝き、口中では熟成による多種多様な味わいが層になって広がり、最後にはシェリー的なニュアンスも。


長野県産 天然スッポンのロワイヤル、白トリュフの芳香 × ヴィエイユ・ヴィ―ニュ・フランセーズ2007
旨味、きのこ類や枯葉のニュアンスが料理から伝わってくる種々の要素と相乗◎


フォアグラとドライイチジクのパヴィ × ラ・グランダネ2008
「酸味と酸味が出合うと次に出てくるのは甘味」と語っていた髙良シェフ。フォアグラのトップ部分に赤ワインヴィネガーを使い、2008年ヴィンテージの酸味と重ねることで絶妙な甘みの要素、美味美味!
「なるほど」と納得できる“青み”の存在感


雑誌用の写真を担当していた瀧岡カメラマンを盗み撮り m(_ _)m


ブルターニュ産オマール海老とセップ茸のフリカッセ × ロゼNV


ランド産仔鳩のロースト、赤ワインソース × ラ・コート・オーザンファン2014


個室での撮影では髙良シェフのご配慮もあり


ハチミツとフルムダンベールチーズのムース × R.D.2004


琴線に触れた当日のマイベスト『R.D.2004』、素晴らしかったです!!



ディナーではボランジェのコマーシャル・ディレクター ギー・ド・リヴォワール氏が各アイテムを解説し、輸入元アルカンの伊藤啓介部長が通訳を担当。ワイン王国の原田勲会長のお姿も!
超希少なヴィエイユ・ヴィーニュ・フランセーズ2007、完成度の高いR.D.2004を、髙良シェフの秀逸な料理と合せて堪能できたことは、本当に仕事冥利な時間になりました。
ワイン王国の村田惠子編集長に深く感謝いたします、ありがとうございました!



[わーい(嬉しい顔)]ボランジェの記事プレイバック
2009年、シャンパン講座(当時は昭和女子大学オープンカレッジ)で、ラ・グランダネ2000、同ロゼ2002、R.D.1997、ラ・コート・オーザンファン2002の4アイテムを出したのですが、その時のマイベストも、ラフィナージュの時と同じくR.D.でした。
私的感想を見てみると、「どのアイテムも素晴らしく甲乙つけがたしというのが正直な気持ちです。ゆえに1つに絞るのは難しかったのですが、R.D.から感じる新鮮さと熟成感のバランスの面白さ、食材と合わせた時の包容力は最大の魅力」と書いてありました。
そうなんです、R.D.のバランス感は素晴らしく、完成度が高いです!

で・・・その講座後、受講生にボランジェについてアンケートを取ったのですが、今、読み返しても興味深いので、プレイバック!

本日飲んだ中で最も印象に残ったのは。その理由も教えてください。
参加者:21名(男性5名、女性16名)、シャンパン愛飲歴:平均4年
●ラ・グラン・ダネ・ロゼ2002:11名
香り華やか、奥行きあり、バランスのよさ、果実の豊かさ、時間の経過による変化、長い余韻
●R.D1997.:5名
熟成感、酸味がきれい、温度変化で広がるふくらみ
●ラ・グラン・ダネ:4名
乾いたミネラル感と香ばしさ、
●ラ・コート・オーザンファン2002:1名
文句なしにおいしい!
<私的感想>
どのアイテムも素晴らしく甲乙つけがたしというのが正直な気持ちです。ひとつに絞るのは難しかったのですが、R.D.から感じる新鮮さと熟成感のバランスの面白さ、食材と合わせた時の包容力は最大の魅力。

ボランジェのシャンパンのイメージは
クラシック&ゴージャス、深みとコク、007のイメージ、骨格があり男性的&通好み
凝縮感&品質安定、育ちが良くてまじめで丁寧、伝統、英国王室御用達
質実剛健、高価でスペシャル、ボディ&厚み、安心感、やや古臭い
<私的感想>
1829年という歴史あるメゾンから連想される伝統や格式、安定感のイメージ
映画007のボンドから連想される男性的イメージ
高価なシャンパンだけに特別の日に飲みたい、というイメージ
これらがキーになっていると感じました。

(女性に質問します)男性にレストランに誘われ、その人がボランジェを選んだら、あなたは相手をどのように評価しますか
■本物のシャンパン好き=自分を大切にしてくれそう
■料理との相性を考えた上でシャンパンを選択したのなら嬉しい=相手を認める
■シャンパンを飲み慣れている=好評価、好感度UP
■映画好き、センスが良い、味覚に長けている
■プライドが高そう、ちょっとキザっぽい(ボンドを連想してしまうので)、金持ち=相手を警戒
<私的感想>
シャンパンを飲み慣れていてセンスが良い=好感度。
一方でお金に余裕があり、遊び人的なイメージを持つとの印象も。
男性の皆さま、女性を誘ってシャンパン選びをする時は熟考なさいませ(笑)

(男性に質問します)あなたが女性をレストランに誘い、その人が「ボランジェが飲みたい」と言ったら、相手をどのように感じますか
■ソフトで丸い味わいより、きっちりとした凝縮感のある味わいを好む女性(男性評価の価値観も肉食系タイプを好む)  ←面白いです
■ミーハーではなく、シャンパン通の女性
■シャンパンへのこだわりがあり、良いものを知っている
■なぜボランジェが飲みたいのか、逆にその心理を知りたくなる
■シャンパン好きだとは思うが、好感は持たないかも
<私的感想>
無記名で提出していただいたわけですが、男性の回答者は5名。
「そうか、そのようなイメージを持つのか」なんて思いながら、男性心理の機微を感じた次第(笑)

ボランジェと007の関係をどのように捉えていますか
肯定派
■超強力なタイアップ
■スーパーマン的でPBだけど洗練された魅力という点から合っている
■味覚にうるさい007が選んだシャンパンなので納得できる、ボンドの趣味のよさが出ている
■ともに引き立て合う関係、流行に流されることのないエレガンスさが共にある
■女性を口説くための小道具として効果がある
否定派
■特に007が好きでないので・・・ちょっと古臭いイメージ
<私的感想>
ボランジェ関係者は来日の折、よく007との関係を強調していますが、あまり強調しすぎると男性的なイメージが濃くなりすぎる気がします。イギリスで愛されている一因にボンド効果はありますが、日本ではもう少し違う角度(女性目線)を取り入れるのも一考かも。


エリザベス女王はダニエル・クレイグファンですね!
私も映画好きで、クレイグ好きなので、彼の最終作(となるであろう)『NO TIME TO DIE』の公開はとても楽しみです。『ボヘミアン・ラプソディ』のラミ・マレックが出演するとの情報も嬉しいです。最新作にはどのアイテムが登場するのかなぁ・・・

■ボランジェ製品へのお問い合わせは正規代理店(株)アルカン
℡03-3664-6551(代) 
https://www.arcane.co.jp/wine/
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2019年09月18日

サヴォワワインの生産者と和食とのマリアージュ@広尾おくむら

Vin de Savoie × Japanese Cuisine(washoku)
 











サヴォワから来日した生産者を囲んで




















生産者の皆さんにとって多忙な一日。
午後からのマスタークラスセミナー@フランス大使公邸に続いて、夜はマリアージュ体験@広尾おくむら


サヴォワワイン生産者委員会(CIVS)のアレクシス・マルティノー ディレクター(最左) と同コミニュケーション担当のフランク・ベルクレスさん(最右)

サヴォワワインの基本情報
サヴォワ県の作付面積は2,200㌶、全体がAOP(原産地保護呼称)の対象になっています。畑は標高250~500m、ぶどうは山のふもとの急斜面で栽培しています。品種は23あり、その多くは固有品種。代表的な白ぶどうはジャケールやアルテス、黒ぶどうはモンドゥーズやぺルサン。比率は白ワイン70%、赤ワイン20%、ロゼワイン5%、スパークリングワイン5%の比率。国内消費が95%、輸出はわずか5%。スパークリングワイン=クレマン・ド・サヴォワには注目が集まっていて、スカンジナビア諸国、アメリカ、ベルギーを中心に輸出。サヴォワワイン全体の輸出相手国第1位はアメリカで、「日本は第2位の市場」とフランクさん。


白ぶどう
◍ジャケール/サヴォワの6つのアペラシオンで使用している品種。粘土石灰質と相性良好。
◍アルテス/熟すに従って黄金色、ピンクから赤い色に変化。別名ルーセット。
◍ルーサンヌ/ベルジュロンと呼ばれていた品種。晩熟品種で生産地は限定されている。
黒ぶどう
◍モンドゥーズ/サヴォワを代表する品種。石灰岩や片岩の土壌と相性良好。
◍ガメイ/早熟で収穫エリアは限られている。ストラクチャアがあり、風味豊か。
◍ピノ・ノワール/ 第2次世界大戦後に導入。ぶどう畑全体のわずか2%、50㌶


昨年7月、サヴォワワインと和食のマリアージュ@小田島

にお声がけいただいたのですが、その時に白ワインは石灰に由来するミネラル感、赤はボディ感はありながら料理に寄り添うタイプという印象を受けました。特に、白の主要品種ジャケールやアルテスは同じ山岳地帯スイスのシャスラやオーストリアのグリュナー・ヴェルトリーナーのように香りに癖がなく、ニュートラルなので、甲州ワインのように、和食と合わせて楽しめると実感!

和食とのマリアージュ
料理の構成は、CIVSからのワインリストとおくむらさんからのメニューを勘案して、中西祐介ソムリエが担当しました。


オードブル5種盛り合わせ
◍ガラスの器はガスパッチョ(スイカ、フルーツトマト)
◍焼とうもろこし、雲丹
◍鰻蒲焼、キャビアドオーベルジーヌ
◍イチジク、ブルーチーズ
◍カニ、ビーツマリネ 
#1:Domaine Vendange, Crémant de Savoie, Grande RéserveNC
#2:Domaine Jean Perrier&Fils, Savoie Apremont, Gastronomie2018
#3:Domaine Dupraz, Savoie Apremont, Terres Blanches2018

青木私感:唯一の泡もの#1は2016年がベースワインのクレマン・ド・サヴォワ。ドライでスマート。柑橘系果実やストーンフルーツのニュアンスがあり、グラス内の温度が上って複雑さが増す印象。#2ジャン・ペリエ・エ・フィスのジャケールはフレッシュで白い花やミネラル感豊か、カニやビーツマリネと合わせて〇、シュル・リーで12ヶ月置いた#3ドメーヌ・デュプラはイチジクやブルーチーズと合わせて〇、鰻蒲焼とジャケールの相性には多くの生産者が納得。


碗物
◍合鴨ロース、コンソメ、ブイヨンドレギューム、冬瓜、舞茸、シメジ、トリュフ
(右から順に)
#4:La cave du Prieuré, Roussette de Savoie 2018
#5:La cave du Prieuré, Roussette de Savoie Marestel 2018
#6:Les Fils de René Quenard, Savoie Arbin, Clos de laGalèze2017



青木私感:旨味が効いたスープがすべての要。出汁をひと口味わってワインを口にした時の渾然一体感は好印象。素直な味わいの冬瓜からきのこ類へ、きのこ類からトリュフへと重心を移していくにつれ、複雑味が増す味わい。#4
#5ルーセットは旨味との統一感、#6モンドゥーズはきのこ風味とのハーモニー。汁物とは合わせにくいはずのワインの“酒質”を考えたからこそできた組み合わせで、ナイス・マリアージュ!
ただ、(私の前方に座っていた)カーヴ・デュ・プリウレの方には「白は魚!」との思いがあり、相性には満足せず、手長海老的料理を希望していました。その点に関して言えば、和食の出汁の繊細さ、奥深さにどれだけ慣れているかということが根底にあると感じました。


旬のもの
◍鱧フライ、白味噌ソース、野菜マリネ(青トマト、水茄子、あかねカブ)
#7:Château d'Apremont, Savoie Apremont, Cuvée Spéciale Jacques de Montmayeur2017
#8:Domaine Vendange, Roussette de Savoie, Madame de M…2017
#9:Domaine Jean Perrier & Fils, Roussette de Savoie Monterminod 2017

青木私感:ジャケール100%の#7シャトー・ダプルモンはミネラル感が際立ち、厚みもあり、溌剌とした酸(ノン・マロ)の効果で鱧フライの脂分を洗い流してくれる印象。アルテス100%(MLF有)の#8ルーセット・ド・サヴォワと#9同モンテルミノは、#8はジンジャーや柑橘類の砂糖漬け、#9はさらに骨格があり、蜂蜜や果物のコンフィの要素。白味噌ソースをブリッジ食材にすることで、ワインの豊潤さと果実味が引き出された感じ。


近海より
◍秋鮭西京焼き、オゼイユソース
#10:Domaine Denis et Didier Berthollier, Savoie Chignin Bergeron, Les Salins2016
#11:Maison Cavaillé, Savoie, Origine2015
#12:Maison Cavaillé, Seyssel, Vieilles Vignes2014

青木私感:西京焼に#10シニャン・ベルジュロン(ルーサンヌ)の厚みとねっとり感、#11ジャン・キャヴァイエ(CH、ジャケール、アルテスのブレンド)の豊かさ、#12ルーセット・ド・セイセル(アルテス)の複雑さを合わせて!   唯一のルーサンヌはシュル・リー由来の旨味、スモーキーさが西京焼の味わいに馴染んでバランス良し。


シグネチャー
◍黒毛和牛フィレ肉 山椒
#14:Domaine Dupraz, Savoie Mondeuse, Phoenix2018
#15:Domaine Denis et Didier Berthollier, Savoie, Et ma goutte de…2018
青木私感:赤ワインとお肉という定番の組み合わせに、山椒、わさび、ガーリックのソースを添えて。#14サヴォワ・モンドゥーズは黒系果実やスパイス、タバコ等の要素を備えた骨格あるワイン。自然酵母で発酵させた#15モンドゥーズは、色調は濃紫、スミレやピンクぺッパー、ふくらみのある味わいでタンニンの存在感も。ともに山椒との相性も良く、和の食材に寄り添ってくれる包容力あり。


一杯のひととき
◍ミニャルディーズ


ディナーに参加した生産者

(左から)
Jean Perrier & Filsのジル・ペリエさん、Philippe Vialletのマチュー・ファントッツィさん、Domaine Duprazのジェレミー・デュプラスさん、Maison Cavailleのジャン・クリストフ・カバイユさん、Domaine Vendangeのダイアン・ゴネルさんand La Cave du Prieureのシモン・バーレットさん



愛娘さんが作ってくれたという日仏対訳表を手に笑顔のアレクシスさん

ワイン生産者団体の役員は、ワイン関係者から選出されることが多いのですが、サヴォワワイン生産者委員会(CIVS)のアレクシス・マルティノー ディレクターはユニークな経歴の持ち主で、17年間チーズ業界で活躍なさってきた方です。ディナーでは隣席だったので会話するチャンスがありました。たまたまチーズ話題になった時、あまりの詳細さにびっくり。訳を伺ったところ、経歴がわかりました。ワインにどっぷりつかっていない点やサヴォワワインの生産者を一歩引いた立ち位置から見る余裕もおありなので、CIVSの新ディレクターの手腕に期待したいです。

収穫開始は9月10日頃とおっしゃっていましたが、今年は雹害や嵐に見舞われ、アプルモンのコミューンではぶどうが収穫できなくなった生産者が数社あるとのこと。量的にも質的にも恵まれていた2018年よりは減量になりますが、納得のいく収穫であることを願っています。
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2019年08月27日

スペインワインの評価本『ギア・ペニン』で95点以上を獲得した最優秀ワイン

テイスティングセミナー『カタ・デル・ポディオ』

『ギア・ペニン』はスペイン語圏で最も多作なワインジャーナリストとして知られているホセ・ペニン氏が1990年に創設したワインガイドブックで、スぺインワインの国際取引においても影響力があり、スペイン政府が認めている権威ある書籍です。2020年には創刊30周年を迎えます。

ギア・ペニンの創始者ホセ・ペニン氏

来日回数が多いので顔なじみの方もたくさんいらっしゃると思います。
「ここ10年位の変化としては、大手著名ワイナリーだけでなく、小規模生産者による素晴らしいワインが次々と登場しています」とペニン氏。


2019年は12,500アイテムをテイスティングしたとのことで、その比率は赤ワイン54%、白ワイン27%、スパークリングワイン8%、ロゼワイン7%、酒精強化ワイン他4%で、95点以上は239アイテム。ちなみにペニン氏は100点は付けない主義なので、評価本での最優秀ワインは95~99点ということになります。

5アイテムをテイスティング
7月に来日して行ったテイスティングセミナー『カタ・デル・ポディオ』にはポディオ(スペイン語で“表彰台”の意味)にのぼった高得点(95点以上)ワインが供出されました。




(左から順に/最後の数字は点数)
#1:Domaines Lupier EL Terroir2015 D.O.ナバーラ 95点
#2:Abadia Retuerta Pago Negralada 2014 V.T.カスティーリャ・イ・レオン 95点
#3:Victorino 2015 D.O.トロ 97点
#4:Triga Magnum 2015 D.O.アリカンテ 95点
#5:Quo Vadis 1972 D.O.アリカンテ 95点

気になったワインは・・・


ナバーラのドメーヌ・ルピエールが造るエレガントなガルナッチャ!
夫婦でワイナリーを経営、平均樹齢80年のガルナッチャ100%、標高は400~600m、土壌は粘土石灰質、ビオディナミ農法。20日間のマセレーションの後、容量の異なるオーク(500L、300L、250L)で14ヶ月熟成。熟した赤系果実、野イチゴの可愛い酸味、、熟したタンニンによる滑らかさ、樽使いのうまさ、ガルナッシャの果実味とテロワール(ネーミング通り)を反映させたバランスの良さ、自然体で楽しめる好感度200%のワイン!


サンパウの菊池ソムリエもサービスをサポート



遅摘みしたモナストレル(ムールヴェードル)100%のワイン!
樹齢30年以上、標高500m、ビオディナミ農法、天然アルコール度数16%。仕込み年は1972年。それをベースにして毎年新しいワインを加えていくソレラシステムによるワイン(最後に添加したヴィンテージは1988年)。香りと味わいのギャップが魅力、第一香はドライシェリー、酸味の印象。味わうと中盤以降口中で層になって広がる複雑味と甘味。チェリー等の赤系果実、果物のコンフィ、菓子パン、蜂蜜、黒糖。


ボトルに中には1972年から1988年までのワインが!

ギア・ペニン・セレクションTOKYO会場

試飲会場には18のブースがあり、No1の生産者ドメーヌ・ルピエールも出展していました。日本での輸入元はないとのことでしたが、酒質の良さに興味ひかれた方々も多かったようで、担当のエリサさんに商談を持ちかけて・・・日本での扱いが決まることを願っています!

キラキラボトル

味わいだけでなく、ボトルも魅力的だったNo.5のモナストレル
透明ボトルに金字を施し、スワロースキーのような装飾品を纏ったボトルはスペイン王室の華やかを彷彿とさせる優雅さでした。空ボトルはデキャンターとして活用できますね。

◆Guía Peñín
URL: http://www.guiapenin.com
URL: http://suscripciones.guiapenin.wine/ 
ラベル:ギア・ペニン
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2019年07月23日

バースデー・ヴィンテージ・ワインとしてもお薦めしたい輝きにあふれた『Lux Vitis 2015』

このところ、日照時間の少ない日が続いていますね。
太陽が恋しいなぁ・・・
そんな思いをしている方に、“豪華な光”に満ちたイタリアワインをご紹介します。


ぶどう品種はカベルネ・ソーヴィニヨン95%、サンジョヴェーゼ5%、生産本数は7,500本
セメントタンクで発酵、ブレンドしてからフレンチオーク(新樽100%)で24ヶ月熟成、希望小売価格27,000円(税別)


命をはぐくむ光のワイン


テヌータ・ルーチェ社が10 年ぶりにリリースした新製品ルックス・ヴィティス


ラテン語でLuxは光、Vitisはぶどう属で、 “Vita(命)”をはぐくむ光という意味が込められています。すべてのものに命をもたらす“光”、その光に敬意を込めて命名されました。


最初はシャイな印象、空気と触れ合うことで少しずつ表情に変化が・・・
深みのあるガーネット、フルーツの凝縮感、サンジョベーゼに由来する芯の通った酸、エレガントさと複雑さを備えた味わい、ふくらみのある長い余韻。



1995 年、ヴィ ットリオ・フレスコバルディとロバート・モンダヴィのジョイントベ ンチャーとして誕生したトスカーナの革新的なワイナリー『テヌータ・ルーチェ』。モンダヴィと離れ、2004年、フレスコバルディがすべての権利を取得した時点で、今までルーチェに使っていなかったぶどう品種カベルネを植樹し、新たな挑戦に取り組みます。それがルックス・ヴィティス! 砂質土壌に適合し、収穫のタイミングもほとんど同時期のカベルネとイタリアのDNAそのもののサンジョヴェーゼをブレンドして造り上げた逸品。



アジアパシフィック・エリアマネージャーのエリカ・リバルディさんが新製品を解説。
鎌倉見学の後、会場に駆け付けたエリカさんは、開口一番「初めての鎌倉でたくさんのエネルギーをもらいました」と挨拶し、ビックバンのようなパワフルな鮮烈さで集まったメンバーをくぎ付けにしました。
2015年を初ヴィンテージにしたことについて、「イタリアにとって素晴らしい年で、ブルネッロ協会は5つ星の収穫年を与えています。ルーチェプロジェクトでぶどう樹を植樹してから23年経過していること等、いくつかの理由があります」とコメントしました。

IMG_4118.jpg
ルックスをテイスティングして、はち切れんばかりの笑顔に


文句なしのマリアージュは乾燥イチジク、ドライアプリコットとワインの酸もナイス!

瓶詰の年月日&時間まで記載


プレス会見の折、サービスされたボトルに、L 8/038 11:51 との刻印がありました。
これはL(ルックス)、8(2018年)、038(1月1日から数えて38日目、つまり2月7日)、11:51(11時51分)を示すものです。全ボトルにデータが刻まれていますが、ここまでのこだわりが凄い!

そこで思ったことが・・・


子供が生まれた時に、お洒落なプレゼントをいただきました。
銀製のスプーンとフォークのセットで、表面の柄の部分には「出生時間」、裏面には「生年月日とファーストネーム」が刻印されているので大事な記念になっています。ルックスもそれと同じ感覚で楽しめます。

2015年のバースデー・ヴィンテージ・ワインを探しているなら、これはお薦めです。
生産量の10%だけを日本市場で販売するとのお話だったので、いずれにしても希少ワインです。興味があれば是非!

[ダイヤ]製品についてのお問い合わせは日本リカー(株)事業部
TEL:03-5643-9772
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2019年07月18日

コンチャ・イ・トロのマルケス・デ・カーサ・コンチャを主軸にして3産地を比較



チリのコンチャ・イ・トロからワインアンバサダーのパブロ・プレサックさんが昨年に続いて来日。チリの土壌の多様性を表現したワイン『マルケス・デ・カーサ・コンチャ』をベースにした比較試飲を行ない、近年注目されている最南端の産地ビオ・ビオ・ヴァレーで生産している同リミテッド・エディションシリーズのシャルドネとピノ・ノワール(いずれも日本未輸入)も紹介。テイスティングは3フライトに分け、最北端リマリ・ヴァレーのケブラダ・セカ・ヴィンヤード&サン・フリアン・ヴィンヤード、チリ最高のカベルネを産するアルト・マイポ・ヴァレーのプエンテ・アルト&ピルケ・ヴィンヤード、最南端にあるビオ・ビオ・ヴァレーのキトラルマン・ヴィンヤードのワインを供出しました。
地図は拡大してご覧いただけます。























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北(リマリ)vs南(ビオ・ビオ)
マルケス・デ・カーサ・コンチャはスペイン国王から受けた“マルケス(侯爵)の称号をネーミングにしたワインで、コンチャ・イ・トロの多様性を表現しています。1976年が初リリースでカベルネ・ソーヴィニヨンからスタートしました。ワイン造りのスタイルは基本的に同じ。ワインメーカーはマルセロ・パパです。

第1フライトはシャルドネ
#1:2017 マルケス・デ・カーサ・コンチャ シャルドネ 小売価格2,200円(税別) 
D.O. リマリ(リマリ・ヴァレー) ケブラダ・セカ・ヴィンヤード
畑は標高190m、リマリ川の北岸、太平洋から10~18kmに位置し、霧が多く、午後は日射が強いエリア。石灰質主体で有機物を含んだシルト(沈泥質粘土)の沖積土壌。リマリ川を流れる水にたくさんのカルシウムが含まれていて、それが石や岩に付着して堆積。年間の降雨量は80mm、水源は地下水&アンデスの雪解け水を利用。昨今干ばつの影響を受けており、ケブラダ・セカで栽培をしているのはコンチャ・イ・トロ社だけ。破砕、圧搾後、オークの発酵槽で12~15日以上発酵、5%MLF、12ヶ月樽熟成。コースタルに由来する塩味、柑橘果実の内果皮似のビターさ、舌の上に広がる粘性、透明感のあるフレッシュな酸味。

キトラルマン・ヴィンヤード

ビオ・ビオ・ヴァレーのキトラルマン・ヴィンヤードはビオ・ビオ川の南岸194mに位置し、2007年にぶどう樹(シャルドネ&ピノ・ノワール)を植樹。土壌は山から崩れた岩や石がそのまま堆積したコルヴィアル(崩積土壌)、年間の降雨量は1,256mm。

#2:2017 マルケス・デ・カーサ・コンチャ シャルドネ リミテッド・エディション 日本未輸入
D.O.ビオビオ(ビオビオヴァレー) キトラルマン・ヴィンヤード
2017年は例年より若干冷涼な気候。降雨量は多いが、主として冬期に集中。シャルドネの土質は火山土壌に起因する赤い粘土質。オーク樽で10~12日以上発酵、15%MLF、樽で12ヶ月熟成(新樽20%、一空樽80%)、ベントナイトで清澄、低温処理後瓶詰。白桃やトロピカルフルーツ、ビターな厚み、酸の広がり、心地良い余韻。

供出された6アイテム

(左から)
#1:2017 マルケス・デ・カーサ・コンチャ シャルドネ
#2:2017 マルケス・デ・コンチャ シャルドネ リミテッド・エデイション
#3:2016 マルケス・デ・カーサ・コンチャ ピノ・ノワール
#4:2017 マルケス・で・カーサ・コンチャ ピノ・ノワールリミテッド・エデイション
#5:2016 マルケス・デ・カーサ・コンチャ カベルネ・ソーヴィニヨン
#6:2016 ドン・メルチョー

第2フライトはピノ・ノワール


#3:2016 マルケス・デ・カーサ・コンチャ ピノ・ノワール 小売価格2,200円(税別) 
D.O. リマリ(リマリ・ヴァレー) サン・フリアン・ヴィンヤード
標高190m、太平洋から30km、リマリ川の南岸に位置する畑。丸い石や石灰を含む赤いローム粘土質で、有機物の含有はほとんどなし、水はけの良い沖積土壌。オープントップのステンレスタンクで7日間コールドマセレーション。発酵は12~14日間、11ヶ月樽熟成、MLFは自然に行われる。凝縮感があり、#4よりロースト風味(樽由来)あり。それについて「造りの違いに起因するものなのか」と質問したところ、「ワイン造りのスタイルは同じで、樽の焼き方も同様」との回答だったので、ヴィンテージが1年違うことによる差、産地の個性による差と推測。双方を飲み比べた印象は2017年ヴィンテージの#4のほうが好み。ちなみに2016年ヴィンテージはエルニーニョの影響で降雨量は例年の倍だった。「収穫が早まったことでワインはフレッシュでエレガントなスタイルになった」とパブロさん。


#4:2017 マルケス・デ・カーサ・コンチャ ピノ・ノワール リミテッド・エディション

日本未輸入

D.O.ビオビオ(ビオビオヴァレー) キトラルマン・ヴィンヤード

ピノ・ノワールの畑は上層部が赤い粘土で下層部は石の多い水はけの良い土壌。発酵はオープントップのステンレスタンクで10~12日(7日間のコールドマセレーション含)、12ヶ月熟成(新樽20%、一空樽80%)。ミネラルと樽由来のビター感、中盤からインパクトがあり、余韻も長くエレガント。


第3フライトはカベルネ!

#5:2016 マルケス・デ・カーサ・コンチャ カベルネ・ソーヴィニヨン 小売価格2,200円(税別)

D.O.マイポ(マイポ・ヴァレー)、プエンテ・アルト・ヴィンヤード&ピルケ・ヴィンヤード

アンデス山脈の麓(プエンテ・アルトは標高650m、ピルケ570m)に位置し、マイポ・ヴァレーで最も冷涼なエリア。日較差が大きい。2013年から収穫を少し早めにすることで酸味を残し、フレッシュで果実味を重視したスタイルにチェンジ。ぶどうはプエンテ・アルト6割、ピルケ4割の割合で使用。熟成にイタリアンカスク(5000L)を50%使うが、樽材はフランス製で樽の生産だけをイタリアで行っているガンバカスク。熟成は16ヶ月(フレンチオークとガンバカスク)。マルケス・デ・カーサ・コンチャはドン・メルチョーのセカンド的存在、カベルネ・ソーヴィニヨン91%、シラー5%、カベルネ・フラン4%。果実の凝縮感、シルキーで滑らか、柔らかなミネラル、バランスが良く、カリテプリ!!


#6:2016 ドン・メルチョー 小売価格11,000円(税別)

D.O.プエンテ・アルト(アルト・マイポ・ヴァレー)、ドン・メルチョー・ヴィンヤード

標高650m、アンデス山脈の麓にあり、マイポ川の北側に位置する畑プエンテ・アルトではドン・メルチョー、アルマ・ヴィーヴァ、チャドウィックのワインを造っているので、チリ屈指のカベルネの産地と言える。ドン・メルチョーの区画は7つあり、それらはさらに140以上に細分化され、別々に醸造。カベルネ・ソーヴィニヨン93%、カベルネ・フラン3%、プティ・ヴェルド3%、メルロー1%。ステンレスタンクで発酵10日間。発酵後10日~20日間タンクで密閉し、マセレーション。フレンチオークで14ヶ月(新樽55%、一空樽45%)。#5より明るい紫色を含んだ色調、粘性が高く、小さな赤系果実、グラファイト、木目の細かなタンニン、口中での存在大、長い余韻




セミナーの後はチリ人シェフのメニューで歓談タイム




フリオ・フィオレ駐日チリ大使の代理として出席したフェリペ・ディアス参事官(後列右)

コンチャ・イ・トロのパブロさん等を囲んで記念ショット


[ダイヤ]製品についてのお問い合わせは日本リカー(株)事業部
TEL:03-5643-9772
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2019年07月14日

アキコ・フリーマンさん来日で和食に合わせたテイスティング・ランチョン@蕎麦割烹こうもと

昆布だしの旨味 ユーキ・エステートのピノ・ノワール
ワイン・イン・スタイル

の招聘でフリーマン・ヴィンヤード&ワイナリー(以後フリーマン)のオーナー兼醸造家のアキコ・フリーマンさんが来日し、新製品『ユーキ・エステート ピノ・ノワール ソノマ・コースト 2016』を含む、全6アイテムを紹介。それらを蕎麦割烹こうもとの料理に合わせて探究しました。



ユーキ・エステートは2007年にフリーマンご夫妻が購入した、太平洋から8km程内陸に入った標高300mの丘に位置する自社畑。披露された2016年ヴィンテージは初リリースから数えて3番目のヴィンテージです。
アキコさんは「“ユーキ”は13歳の甥っ子の名に由来していますが、“悠久の時”を生きる樹木を意味するユーキと、日本語の“勇気/ユーキ”につながります」と語りました。


希少アイテム『アキコズ・キュヴェ』を手にアキコさん
生産量全体の90%が国内消費。輸出相手国は英国、香港、シンガポール(近年上昇中)が上位で、日本向けは3%とのことでした。

供出された6アイテム

(左から順に/すべて外税)
#1:2017 涼風 シャルドネ ロシアン・リヴァー・ヴァレー@7,400
#2:2016 ピノ・ノワール ソノマ・コースト@7,700
#3:2016 ピノ・ノワール ロシアン・リヴァー・ヴァレー@7,700
#4:2015 グロリア・エステート ピノ・ノワール「輝」ロシアン・リヴァー・ヴァレー@9,000
#5:2016 ユーキ・エステート ピノ・ノワール ソノマ・コースト@10,500
#6:2015 アキコズ・キュヴェ ピノ・ノワール ソノマ・コースト@11,700

和の世界に寄り添う奥深さ

ワインと料理のマリアージュを担当したのは、広尾の隠れ家レストラン 蕎麦割烹こうもとで、杉浦康祐支配人は「事前にワインをテイスティングさせていただき、それに合わせて考えました」と。そのお言葉通り、見事な組み立てを楽しむことができました!

前八寸を2種のワインに合わせて

とうもろこしすり流し おぼろ豆腐 雲丹 わさび 餡かけ × 涼風CH
"白い妖精"と呼ばれている京都産の甘いとうもろこしのすり流し&雲丹の塩味とわさびの辛味を穏やかなおぼろ豆腐のアクセントにした二品。シャルドネを味わうことで、とうもろこしとは甘味、豆腐とは酸味のハーモニー。トロピカルフルーツの香りと爽やかな酸味を備えたワインの奥行きを引き出す効果が出てナイスマリアージュ!
毎年同じ区画のぶどうをフリーマンが購入して生産ているワインで、ロシアン・リヴァー・ヴァレーの畑のぶどう樹は1982年に植樹された古樹。いつ飲んでも魅力的なシャルドネ!

ホワイトハウスで供されたシャルドネ
私がアキコさんに初めてお目にかかったのは2015年のことでした。
銀座にある金沢懐石のお店で開催されたプレスランチで、涼しい海風の影響を受けた“凛としたスタイル”の『フリーマン涼風シャルドネ』を試飲した時、日本人の琴線の触れる機微さに感銘を受けました。その折、オバマ大領領が主催した晩餐会の逸話を伺いました。その素敵な出来事は連載していた産経新聞のワインのこころ

で紹介しました。ご笑覧いただけましたら嬉しいです。


出汁巻き天ぷら 鱧(はも)焼霜造り梅肉醤油 × PN ソノマ・コースト
「ソノマ・コーストのピノは料理に合わせやすく、ワインラバー向き」とアキコさん。黒系果実、深みのある香りでスパイシーなニュアンスも。ナチュラルな酸味と旨味が融合したワイン。2016年ヴィンテージには自社畑ユーキのぶどうを50%ブレンド。

焼物にはロシアン・リヴァー・ヴァレーのピノ

長野県天竜川 若鮎塩焼、当日のマイベストのマリアージュ
天然鮎の腸(はらわた)のほろ苦さや白身のほくほく感、双方の味わいに見事に太刀打ち。厳選された素材だったので生臭さも皆無で、ロシアン・リヴァー・ヴァレーのピノの底力を実感。塩の効果も◎

「万人に好まれるピノ。霧の出方がソノマ・コーストより少ないので、ぶどうは陽を受けて熟します」とアキコさん。フラワリーでフルーツ感豊か、心地良い酸味と優しい余韻。

強肴(しいざかな)にはグロリアとユーキ

鰻押し寿司 × グロリア・エステート(左)
力強さに焦点を合わせた一品、双方を合せることで甘味の要素がより広がる印象

合鴨ロースト× ユーキ・エステート(右)
旨味(醤油と出汁と醤油麹)がポイント、ロースト風味と醤油の一体感


2016 グロリア・エステート(左)
自社畑ワイン。初リリースの2012年から数えて5番目のヴィンテージ。「カリフォルニアのピノらしい力強さがあり、ラベンダーの花やミカンの皮に通じるオレンジ系の香りが特徴」とアキコさん。

2016 ユーキ・エステート (右)
「収穫時期はグロリアより2~3週間遅く、グロリアとの大きな違いは天然酵母。ぶどう畑は20度以上の急斜面で、冷涼な地域でもしっかり実を付ける23、2Aのスイスクローンを使っています。ユーキは昆布だしや旨味を感じるワインで、醤油を使う料理と良く合います」とアキコさん。2010年にソノマの条例で、斜面のきつい場所でのぶどう栽培は禁止(土砂崩れ等の災害を避ける意味で)されたのですが、フリーマンでは2010年以前に畑を購入したので、条例は適用外。


2015 アキコズ・キュヴェ ピノ・ノワール ソノマ・コースト

生産量300~400c/s。プロダクションチームが、その年できた200程の樽を全部味見して、そのなかから10~15樽を選んでブレンドしてキュヴェを生産。それをチーム全員でブラインドテイスティングして、一番人気のキュヴェを選択。2002年からリリースしているワインですが、毎年アキコさんのブレンドがトップになるので、アキコズ・キュヴェと命名。ちなみにトヌリエ(樽メーカー)は5社、樽の焼きはミディアム・ロングとのこと。ナツメグやシナモン等のスパイス、厚みと凝縮感があり、口中滑らかで余韻も長い。


こうもと手打ち蕎麦 飛騨牛花山椒佃煮
蕎麦割烹のお店だけに、手打ち蕎麦の食感とタレ絶妙、花山椒の存在も複雑味のあるアキコズ・キュヴェと良い相性でした。私には飛騨牛の佃煮の味が少し濃かったので、量的にも味わい的にももう少し控えめ目だと良かった印象。蕎麦好き、ピノ好きには試して欲しいマリアージュ。


アイスクリーム 焙じ茶のマカロン
焙じ茶と赤ワインのポリフェノールの相乗効果!



アキコさんを囲んでの記念ショット
飲むたびに"日本人の感性"が伝わってくるアキコさんのワイン。アキコさんの食に多大な影響を与えた祖父の存在にも敬意を表している私です。

[ダイヤ]ワインに関するお問い合わせ先はワイン・イン・スタイル株式会社
TEL:03-5413- 8831
URL:http://www.wineinstyle.co.jp/

蕎麦割烹こうもと

〒106-0047
東京都港区南麻布5-1-10
TEL:03 -3440-1166
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2019年05月20日

ピエール・グラフイユ ジェネラル・ディレクターが語った『シャトー・レオヴィル・ラス・カーズ』のテロワール

『シャトー・レオヴィル・ラス・カーズ』の誇り

ぶどう畑の入口にある石のアーチ

~ここのワインのラベルには“Grand Vin de Léoville du Marquis de Las‐Cases ”と、本来本元を誇っていて(ボルドーとしては珍しく、シャトーという言葉が入っていない)、ここが18世紀にサン・ジュリアンばかりかメドック中で、最高の勢力を誇った貴族の領地だったことを私たちに教えてくれる。ラス・カーズの素晴らしい畑はジロンド河をのぞむ砂利層の土地にあってラトゥールと境を接している。(中略)。近年の名声は1976年から96年までミシェル・ドロンが管理していた頃に築かれたもの。彼は1996年にドロン家の3代目である息子のジャン=ユベールにあとを託した。ラス・カーズは今や格付1級ワインの好敵手になるほどのワインを生産している~
出典:デイヴィッド・ペッパーコーン著『ボルドー・ワイン』



シャトー・.レオヴィル・ラス・カーズを所有するドロン家のジェネラル・ディレクター ピエール・グラフイユ氏

ペッパーコーン氏の紹介文にあるように、レオヴィル・ラス・カーズとラトゥールは隣接しており、畑は地続き。土壌はともに似通っているので、グラフイユ氏いわく「双子と言えるほど」。
ラス・カーズ(サン・ジュリアン村)のほうが、ラトゥール(ポイヤック村)より若干粘土が多い。また、ラトゥールの畑は砂利が多く、粘土がほとんどない区画もあるとのこと。2シャトーとも川に近く、50種類の異なる土壌の層があり、この多様な土壌がワインに複雑味を与えています。

しかしながら、1855年の格付では、ラトゥールが第1級、レオヴィル・ラス・カーズは第2級となり、当時の所有者レオヴィル家にとって、この結果は受け入れられないものだったので、以来、ボトルに2級という文字は記載していません。現在の所有者ドロン家も、「我々のワインは1級に値する」との意志を受け継いでいます。

レオヴィル家は長い間メドックに畑を所有していましたが、1789年のフランス革命によって畑が分割され、1826年~1840年にかけて、レオヴィル・ラス・カーズ、レオヴィル・バルトン、レオヴィル・ポワフェレの3つに分かれ、その後、1855年に格付けが行なわれました。



ドロン家はメドック地区サン・ジュリアン村に位置するシャトー・レオヴィル・ラス・カーズとクロ・デュ・マルキ、サン・テステフ村のシャトー・ポタンサック、ポムロール地区にあるシャトー・ネナンを所有しています。

クロ・デュ・マルキとプティ・リオン
レオヴィル・ラス・カーズの畑は格付以前から所有されていた歴史ある区画であり、その囲い壁(Enclos)から500m西に位置するのがクロ・デュ・マルキ。2つの畑はテロワールも異なるので、それぞれセカンドワインを生産しています。レオヴィル・ラス・カーズはプティ・リオン、クロ・デュ・マルキはプティ・マルキです。レオヴィル・ラス・カーズは30%をセカンドに、クロ・デュ・マルキは25%をセカンドに回しますが、ヴィンテージ的に難しい年にはファーストワインの質を維持するために50%程度にすることもあるとのこと。
植樹面積で一番多いのがカベルネ・ソーヴィニョンで65%、メルロは19%、カベルネ・フランは16%。フランの比率の多いのがシャトーの特徴であり、樹齢は60~70年、なかには80年の古樹もあります。かつてはプティ・ヴェルドも植えていましたが、今はありません。その理由について「カベルネと比べてタンニンのエレガントさに欠ける」とグラフイユ氏。

クロ・デュ・マルキの区画は、昔は森林でした。ぶどう樹を植樹したのは1895年~1900年で、ファーストヴィンテージをリリースしたのは1902年。クロ・デュ・マルキの土壌はラス・カーズのそれと比べると、やや粘土が少なくなります。砂も多いのですが、ラス・カーズとは異なる砂質です。

プティ・リオンはレオヴィル・ラスカーズのセカンド・ワインで、ファーストヴィンテージは2007年。ゆえに2006年までプティ・リオンは存在していませんでした。
クロ・デュ・マルキをレオヴィル・ラス・カーズのセカンド・ワインと明記してある文献が散見できますが、シャトーでは、レオヴィル・ラス・カーズとクロ・デュ・マルキを明確に分けて考えていました。
ラス・カーズにセカンドワインがなかった時分は、ラス・カーズにならなかったぶどうをクロ・デュ・マルキに使っていました。しかし、2007年以降は完全にそれを止め、クロ・デュ・マルキには回さず、それらはプティ・リオンに使用しています。
レオヴィル・ラス・カーズとクロ・デュ・マルキは現在、同じ醸造所内で生産していますが、2つのワインの差別化をはかるため、新しい醸造施設を建設中で、今年から工事に着手、4年間で完成予定です。新ワイナリーでのファーストヴィンテージは2022年の予定。
[目]レオヴィル・ラス・カーズのテロワール




2方向からレオヴィル・ラス・カーズにフォーカス


今春来日したグラフイユ氏が披露したテイスティングは非常にユニークな内容でした。
「このような試みはシャトー内で行ったことはありますが、外に出て開催したのは3回目。今回のアジアツアーで訪問した香港、台北、東京です」と語っていました。

【テーマⅠ】は『クロ・デュ・マルキ』とレオヴィル・ラス・カーズのセカンドワイン『プティ・リオン』の2ヴィンテージ(2012年と2009年)を探究。
【テーマⅡ】は、リリースから30年を経たレオヴィル・ラス・カーズ1989と、同ヴィンテージを構成しているカベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、メルロ&プティ・ヴェルドの4セパージュにフォーカスしてワインのスタイルを探究。

【テーマⅠ】
サン・ジュリアンのテロワールを探る

(右から左の順で) #1~#4

2012年と2009年の気候比較

2012年は冷涼で多雨、特に春は雨が多かった。7月中旬から好天、収穫時若干の降雨、10月4日~18日収穫、ぶどうの熟度を待っていたので晩熟の年と言える。川に近いので、メドック全体から見ればぶどうは早く熟度があがるが、2012年は遅目。非常に素晴らしい年ではないが良年だった。
2009年は2012年と対照的、平均気温も高い。醸造家にとって完璧とも言える年。春先に若干の降雨。開花までは順調。べレゾンは短期間で進み、ボルドーにとって素晴らしい年。
2つの区画は300m程度しか離れていませんが、レオヴィル・ラス・カーズは川にそばなので、熟成具合は5日~1週間ほど違うとのこと。気候変動の影響で近年カベルネは良く熟す。

プティ・リオン2012 vs クロ・デュ・マルキ2012
#1:Petit Lion 2012
CS48%、CF8%、ME44%の比率。カベルネはラス・カーズの畑の若樹、メルロは樹齢50~60年、最も古いのは80年。醸造温度はワインにフレッシュさを出すため、クロ・デュ・マルキより少し低め。熟成期間は12ヶ月(フレンチオーク100%、新樽率30%)、フランボワーズやミュール等の赤系果実、口中フレッシュ、タンニンまろやか。今の段階で開いていて華やか、セカンドワインなので、早い段階での飲みやすさが求められますが、#1はこの先も楽しめる度量。
#2:Clos du Marquis 2012
熟成期間15~16ヶ月(フレンチオーク100%、新樽率50%)、マセレーションはプティ・リオンより長め。フレッシュで、タンニンは#1より強く感じ、まだ若い印象。果実のニュアンスのほか、モカやショコラ、ミネラル、今後25年~30年熟成可能。

プティ・リオン2009vsクロ・デュ・マルキ2009
#3:Petit Lion 2009
CS29%、ME71%の比率、樹齢の古いメルロが多いヴィンテージ。熟した黒系果実、タバコ、シガー、モカ、穏やかなフレッシュ感があり、今飲んで美味しいワイン。
#4:Clos du Marquis 2009 
CS70%、ME20%、CF8% 、PV2%の比率、2009年当時PVは畑にあったが、2011年に接木してCS(ラス・カーズでマサルセレクションで増やした苗木)に植え替え、黒系果実、甘草、タンニンはしなやか、今後20年の熟成が可能


【テーマⅡ】
レオヴィル・ラスカーズ1989年の品種にフォーカス

#5:Château Leoville Las Cases1989
30年の熟成を経たワイン。1980年代で82年、86年に並ぶ良いヴィンテージ。1989年は2009年と類似した年。暑くて乾燥した“太陽の年”とのこと。カシス、ミュール、フュメ香、タバコ、ユーカリ、ミント等、各品種由来のニュアンス。フレッシュ感、横に広がる味わい、複雑味があり、余韻も長い。ブレンドの妙、4品種をブレンドすることでワンランク上の味わいに!

ドロン家では、40年前から品種ごとのボトルをキープして、熟成の変化や将来どの品種にフォーカスしていけば良いかをリサーチしています。メドックの名門シャトーの先見の明ある取組み!

#6:Merlot 1989
25%使用、1980年代はカベルネの熟度が十分でなかった分、今よりメルロの比率が高かった由。熟成が一番進んでいるのがメルロ。第3アロマに由来するタバコ、シガ-、下草、醤油のニュアンス。


#7:Cabernet Franc 1989
12%使用、香りより、味わいにフランの個性が出ている印象。ユーカリ、ミント、甘草、芯のある味わい。

#8:Petit Verdot 1989
3%使用、スミレ、熟した果実、タンニンの存在感、ストラクチュアあり、「使用が多いと全体のバランスが崩れてしまうので、ブレンドする量は重要。医者のような品種=微量使うことで、ワインの欠点を治してくれる」とグラフイユ氏。


#9:Cabernet Sauvignon 1989
50%使用、ラス・カーズが誇る王者の風格の品種。30年の熟成でさらなる底力、魅力を発揮。フュメ香、シガ-、洗練されたタンニン、凝縮感があり、エレガントなニュアンス。4品種の中のマイベスト!


銀座レカンのメニューに合わせて

春らしいパステルカラーのアミューズ・ブーシュ


レカンのハウスシャンパンは・・・瓶底がルブタンの靴底と同じ赤色のアイテム(笑)
シャンパンラバーさんならおわかりですね



フランス産白アスパラとイベリコ生ハム
唐墨とミモレットのラペ 柚子の香り


熟成したボルドーワインとの相性、お薦めです!
乳飲み仔羊のロティ パセリとピスタチオのアビベール
春蕪 人参 アスパラガスのトリコロール ガルニ
エミュルショネした仔羊のジュのソース


デザート取り合わせ、ハッピー!


1989年ヴィンテージの特別セット

限定100セット(日本への入荷量は未定)で9月に発売予定!
ケースの中にはラス・カーズ1989年ヴィンテージとモノ・セパージュ4種+グラス
メスシリンダーも入っているので、世界で一つだけのオリジナルブレンドが作れます!


ラス・カーズでは25~30年の割合でリコルクをしています。


新旧のコルクを手に


テーマⅡのワインはすべてデキャンタージュしてサービス


壮観、ドロン家が誇るワイン!


最後に最新ヴィンテージ2018年情報
例外的な素晴らしいヴィンテージ。乾燥していたが、暑すぎなかった。カビの発生もなく、雨もなく、各区画で細かいチェックをしながら収穫できた。9月19日にメルロから収穫を開始、10月15日にカベルネを収穫。メルロは過熟を避けて早めに収穫し、カベルネはタンニンの熟度を待って収穫した。現時点でアロマティックな素晴らしい出来。期待が高まるヴィンテージ!

レオヴィル・ラス・カーズならではの早めのブレンド
ラス・カーズでは収穫した年の12月、MLFが終った段階でブレンドをしています。試飲をして、優劣を決め、そこでブレンドを完了してしまうとのことなので、プリムールで供出するワインは確定したブレンド。ピエール・グラフイユ氏は「早い段階でブレンドしたほうがより結びつきが強く、融合しやすい」とコメントしていました。

URL:シャトー・レオヴィル・ラス・カーズ


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2019年05月10日

シャブリ『ドメーヌ・ラロッシュ』のティエリー・ベリコー社長と6アイテムのGCをテイスティング

ティエリー・ベリコー社長へのインタビュー

輸入元ジェロボームの招聘で昨年2月以来の訪日になったティエリー・ベリコー社長

光栄にもグラン・クリュ6アイテム5ヴィンテージを試飲しながら単独インタビューさせて頂きました。
前日に到着なさったばかりでしたが、朝10時30分からのグラン・クリュだけのテイスティングも順調に進み、インタビュー翌日からの日本縦断セミナー&メーカーズディナー(京都、大阪、福岡&札幌)に向けて弾みがついたご様子でした。

最新のヴィンテージ情報では、2018年は非常に喜ばしい出来で数量&品質ともに理想的、霜にも雹(ひょう)にも悩まされることもなく、問題がなかった由。夏は暑くてかなり乾燥したので若いぶどう樹は苦労しましたが、ドメーヌ・ラロッシュ(以後ラロッシュ)のレ・ブランショに関しては平均樹齢45年、収穫は8月27日から開始したとのことでした。ただ、インタビュー中、「昨日の夜、霜の害が予想されるということで、ろうそくを灯したり、散水したようです」とベリコー氏。
思わず、昨年同様の理想的な気象状況になるように願ってしまいました!

レ・ブランショ・ラ・レゼルヴ・ド・ロベディエンスは日本が最大の市場
2017年の11月に来日したシャブリ委員会モロー副会長のプレス会見

で、「シャブリは日本市場で再活性化しています。数量・金額ともに第3の市場であり、なかでもプルミエ・クリュPCやグラン・クリュGCの伸びが良いです」との報告がありました。

シャブリのぶどう畑は総面積にして5,000㌶に及びますが、最上級に格付されているGCはわずか100㌶のみ、例えて言うと、ボルドーのシャトー・マルゴーの広さしかありません。

ジェロボームがラロッシュの輸入に関わって3年、ベリコーさんがラロッシュの社長に就任して10年経過しました。日本での販売も快調で、高価格のアイコンキュヴェ、GC『レ・ブランショ・ラ・レゼルヴ・ド・ロベディエンス』に至っては日本が最大の市場になっているとのことでした。ベリコー社長は今後の目標として「PCとGCの良さをさらに知っていただけるように頑張っていきたい」と述べていました。

ラロッシュが誇るグラン・クリュ


シャブリは町を中心に放射状に広がっている産地で、現在2,500名ほどが居住しています。
ラロッシュは自社畑を90㌶所有しており、GCとしては、レ・ブーグロ(ジェロボームでの扱いなし)、レ・ブランショレ・クロレ・ブランショ・ラ・レゼルヴ・ド・ロベディエンスを生産しています。



小道を境に隣接しているレ・ブランショ(地図の右端)とレ・クロ(その左隣)ですが、ワインの個性は異なります。レ・ブランショは全体で約12㌶あり、そのうちの4㌶を所有しているのがラロッシュです。ネーミングは土壌の白さ(blancheur)に由来。南東向きの畑なので、ぶどうは午前中からしっかりと日差しを受けます。レクロは真南向きなので太陽のニュアンスを感じさせるアペラシオンです。GCの中で最も栽培面積が広く、土壌は白い粘土と砂利質、若干の泥灰質を含んでいます。

6アイテムのグラン・クリュをテイスティング

(左から)
#1:シャブリGC レ・ブランショ2016 希望小売価格11,000円(税抜)
#2:シャブリGCレ・クロ2016 同13,500円(税抜)
#3:シャブリGC レ・ブランショ・ラ・レゼルヴ・ド・ロベディエンス2015 同18,000円(税抜)
#4:シャブリGC レ・ブランショ・ラ・レゼルヴ・ド・ロベディエンス2011 参考商品
#5:シャブリGCレ・クロ2010 参考商品
#6:シャブリGC レ・ブランショ2009 参考商品


第1フライトは2016年のレ・ブランショとレ・クロを比較
2016年は難しい年。収量は50%ダウン。冬暖かかったことで、ぶどうの生育が早まった。春は寒くて雨も多く、霜害も発生。芽が出ていたのでダメージを受け、さらに雹害もあり、厳しい天候が続いた。8月は暑く乾燥した気候になり、9月も好天に恵まれたので持ち直すことができた。収穫は9月26日~10月4日、サイクル的には2014年ヴィンテージに類似

試飲の1時間ほど前に抜栓、カラフェに移してサービス。レ・ブランショ2016は緻密さを備えたフェミニンなスタイル。柑橘果実の内果皮似のビターさ、ミネラル感が特徴。ベリコーさんは「まだ若いがグラン・ヴァンになりうるワイン、エネルギーがあり、フィネス豊かで繊細」と。また、料理談義ではカニ(甲殻類)とアボカドの一品を提案してくださいました。私はふきのとう等、春野菜の天ぷら(塩で)を。
レ・クロ2016は香り華やか、酸のインパクト、白胡椒、白ワインながらタンニンのニュアンスも。ベリコーさんは「レ・ブランショはミネラル、レ・クロは黄色い果実」と表現。料理談義では白身の肉(鶏肉)をホワイトソースで調理し、モリーユ茸を添えた一品を提案。ラロッシュではレストランを2軒経営しており、いずれもシェフは日本人。ゆえにマリアージュの探究に余念がないようです。

第2フライトはアイコンキュヴェのヴィンテージ違い
ラロッシュの社員は全部で80名。うち35名が栽培担当者で、ひとりが1区画を担当し、年間通して、畑の状態をこまめにチェック。その成果がレ・ブランショ・ラ・レゼルヴ・ド・ロベディエンスに表れています。毎年3,000本しか生産しないスペシャルなアイテムの背景には (1)35名の栽培家による綿密な作業、(2)GCという格付け(フランスにおいてはアルザス、ブルゴ―ニュ&ボルドーのみ)、(3)レ・ブランショ最大のオーナーであり、最も良いブランショを所有しているという重要な3要素があります。

トライアングルの秘密


レ・ブランショ・ラ・レゼルヴ・ド・ロベディエンスのコンセプトはテロワールをいかに引き出すかということです。“完璧”を表現するのはとても難しいのですが、それを可能にする方法としてラロッシュが行なっているのが独自のブレンド(調合)。9世紀の修道院(ロベディエンス)で行っているトライアングルによるテイスティングが、それです!

2012年を例にすると
32本のサンプルをブラインドで試飲。メンバーは醸造担当者、シェフ・ド・カーブ、栽培チームのトップ、ベリコー社長、ドメーヌ・ラロッシュのスタッフ、外部(ワインのプロ)からの参加者を人れた8名程度。
テーブル上にそれぞれ、香り、酸味、ストラクチュア(熟成によって生じる個性)の架空の三角形(上部画像の三角)を作り、午前中2回(8時~10時)のテイスティングで各ボトルの特徴が表れている箇所にボトルを置いていきます。その作業で中心部(トライアングルの中心)に集まったワインを再度試飲し、レ・ブランショ・ラ・レゼルヴ・ド・ロベディエンスを造るためにブレンドするボトルを決定します。2012年に関しては、7つのサンプル80%、2つのサンプル20%をブレンドしました。


2015年(左)と2011年(右)

2015年は早熟な年、暑かったが太陽だけでななく、骨格を成す酸も表現できた年。2011年は冬はとても寒くて、春と夏はとても暑かった。ぶどうの生育は完璧に進み、衛生状態も良く アロマは豊かで複雑。柑橘でもオレンジの皮のニュアンス、シャンパーニュと同じように石灰の風味、バランスが取れていて余韻も長い

レ・ブランショ・ラ・レゼルヴ・ド・ロベディエンス2015は口中の存在感が見事、蜂蜜の風味、果実味と酸味とのバランス良好。料理談義では「白トリュフのニュアンスを感じます」とベリコーさん。同2011年は熟成が進み、香りもより大人びた印象。ベリコーさんは「オマール海老」、私は和食で、「柚子を使った一皿」を提案しました。

第3フライトはブランショとレクロのヴィンテージ違い
2010年は忍耐力が必要だった年。ぶどうの生育は遅かった。9月の好天で救われた。最終的に良年になったが、造り手として途中まで苦労したヴィンテージ。片や、2009年は2010年とは対照的な偉大なる年。すべての気象条件が理想的に進んだ。収穫は9月初旬に始めたが、ぶどうは美しくラグジュアリーなヴィンテージ

第1フライトで体験した2種のGCの熟成具合を満喫。「クリーミーな牡蠣なら第1フライトの若いタイプですが、ブルターニュの牡蠣のようにミネラル感や複雑味のあるもの、または調理した牡蠣には2010年のレ・クロが良く合います」とベリコーさん。このフレーズで、若いレ・クロと熟成したレ・クロの味わいの違いが伝わるはず、牡蠣好きにはたまらない組み合わせだと思います。
レ・ブランショ2009は秀逸。包容力があり、第3アロマの段階ですが、まだまだフレッシュで果実味もあり、口中での存在感も長く、GC6アイテムの最後を締めくくるにふさわしい落着きのある味わいでした。私は熟成した白カビチーズをお薦めしたいです。

「6つのワインはそれぞれ第1アロマ、第2アロマ、第3アロマの段階にあり、多様性に富んでおり、飲み手にエモーションを与えてくれます」とベリコーさん。また、「直近のヴィンテージは良く飲んでいますが、すでにセラーを離しれてしまったヴィンテージを味わうことは我々にとっても貴重なことなので、6アイテムの熟成具合を知ることができて嬉しいです。ドメーヌ・ラロッシュが行なってきたことが間違いないと確信しました」と語っていました。
同じヴィンテージでありながらGCによる味わいの違い、はたまた同じGCでありながら、ヴィンテージ違いで表情が変わる面白さ。これこそテロワールの反映であり、ラロッシュが追及しているワインスタイルだと実感しました。タイトなスケジュールのなか、贅沢な時間を共有させていただき、ありがとうございました!

ラロッシュ後日談

鴨の冷製@京都・本家たん熊本店 画像提供:ジェロボーム

ベリコー社長とのテイスティングでは、マリアージュについてもたくさんの意見交換をさせていただきました。冒頭に記述したように、今回の来日では東京以外の4都市を訪問し、メーカーズランチやディナーで、様々な食体験をなさったようです。
和食材に関してですが、私が提案したふきのとうは、合せたのがフルショーム2014で、このワインはまるみのあるタイプなので、苦みがワインより少し勝ってしまったとのことでした。もう少しシャープなクリュだったら違っていたと思います。ちなみにグリーンアスパラの天ぷらとフルショームがナイスマリア―ジュだった由。また、京都では昼夜ともに木の芽をふんだんに使ったお料理が出たようで、シャブリとの相性も抜群、ヴィラージュクラスでも文句なしの相性に。柚子の皮を乗せたお椀もその苦みがまさにシャブリのためと言えるような相性とのことでした。柚子恐るべし!
後日談も含め、ジェロボームの山下陽子PR &マーケティング・ディレクターには大変お世話になりました。改めて御礼申し上げます、ありがとうございました。

■関連記事:伝統と革新のメゾン、シャブリ『ドメーヌ・ラロッシュ』ベリコー社長来日セミナー
https://non-solo-vino.blog.so-net.ne.jp/2018-04-23
■製品についてのお問い合わせはジェロボーム(株) ℡03-5786-3280
URL:http://www.jeroboam.co.jp/
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2019年05月04日

モンダヴィ家4世代の想いがこもった赤ワイン“コンティニュアム(継続)”

モンダヴィ家にとって100 年目の記念年

2年ぶりに来日したコンティニュアム当主&醸造家のティム・モンダヴィ氏。
桜が綺麗な季節に再来日できたことを喜びながら、「日本は私にとって特別な国であり、私たち家族にとっても、今年は祖父チェザーレ・モンダヴィがイタリアから移住し、ワイン業界に参入して100年目の特別な年になります」と語りました。

モンダヴィ・ファミリーの沿革
[新月]1919年、イタリア移民の祖父チェザーレ・モンダヴィと妻ローサがカリフォルニアのロダイでワイン産業に参入。当時は禁酒法下でしたが、自家用ワイン造りは許可されていたので、そのためのぶどうの売買をしていました。

[新月]1933年に禁酒法が撤廃され、モンダヴィ家はセントラル・ヴァレーで商用のワイン生産を開始します。チェザーレはワイン造りには温暖過ぎる地を離れることを決意。1943年にチャールズ・クルッグ・ワイナリーを購入し、ナパ・ヴァレーの中心でファインワイン造りのチャンスを得ます。

[新月]1966年、父ロバート・モンダヴィがワイナリーを設立し、ワールドクラスのワイン造りに取り組みます。ティムさんはまだ学生でしたが当初からワイナリーに参画し、卒業後に正式入社。ワインメーカーとして研鑽を積み、フランスの名門Chムートン・ロートシルトとのジョイント・ベンチャー『オーパス・ワン』やチリの『セーニャ』等、世界のトップワイン造りに貢献してきました。

[新月]2005年、ティムさんがワイナリー『コンティニュアム』を設立。
ロバート・モンダヴィ・ワイナリーが上場企業になった後、紆余曲折があり、2004 年にコンステレーション・ブランズによって買収される事態に。そこで父と自分の家族と一緒に新たなワイナリーを興します。それがヴァカ山脈側プリッチャード・ヒルに位置するコンティニュアムで、ネーミングにはモンダヴィ家の“継続”の意味が込められています。

[新月]2012年にエステート、2013年に最新設備を整えた施設が完成しました。ワイナリーの設計に際して、UC デイビス校のロジャー・ボルトン教授のアドバイスを受け、施設の屋上には雨水用の容器を設置し、水の確保と再利用に努めています。さらに畑には2つの貯水湖、6個の井戸もあります。環境への配慮として、ぶどうはオーガニック栽培、社会への還元として、社員は地元の人たちを採用しています。

モンダヴィファミリー家系図(図はクリックで拡大します)
資料提供:WINE IN STYLE


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マウンテン・サイド(山岳部)のワイン造りにこだわる理由
コンティニュアムはナパ・ヴァレー東側にあるヘネシー湖の上のプリッチャード・ヒルにあり、標高は約410~490m。山奥にある自社畑セージ・マウンテン・ヴィンヤードでは、カベルネ・ソーヴィニヨンCS、カベルネ・フランCF、プティ・ヴェルドPV、メルロMEを植樹、有機栽培を行っています。

ティム:1700年代、カリフォルニアに初めてぶどうが持ち込まれ、布教とともに全土に広がっていきます。ナパにおける最初のワイン造りは1800年代で、ドイツ移民が丘陵地でぶどう栽培を行いました。彼らはお金と労力をかけて山岳部のワイン造りに励み、欧州の審査会で受賞するようなワインを産出していました。1919年頃の登録ワイナリー数は121で、植樹面積は18,000エーカーと言われています。禁酒法の時代には、宗教や薬、自家用ワインの3目的以外での生産は禁じられていたので、禁酒法が廃止された後はワイン産業もすたれていました。復興に際しては、山岳部だとコストがかかり過ぎ、さらには収量も少ない為、ヴァレー・フロア(平坦地)での畑の開発が進み、栽培・醸造が盛んになっていきます。
現在のナパにおけるワイン造りの傾向を見ると、収量は少なくても上質のワインを造りたい、お金をかけても良いワインを造りたいとの動きが顕著なので、時代が私たちに追いついてくれたと感じています。

コンティニュアムの垂直試飲

(左から)2006年、2009年、2014年、2016年

2006年はトカロン畑のぶどう100%

2006コンティニュアム プロプライエタリー・レッド オークヴィル ナパ・ヴァレー参考商品
ぶどう品種:CS59%、CF25%、PV16%

2006年はカベルネにとって素晴らしい収穫年。春は穏やかで十分な日照量、発芽と開花には理想的な気候で、乾燥した冷涼な生育期が11月まで続き、完璧な熟度のぶどうが収穫できました。モンダヴィが所有するオークヴィル・トカロン畑のぶどう100%、新樽100%、CSの樹齢35年(平均樹齢20年)、CFとPVは樹齢9年、Alc度数15.1%。熟成の変化を感じる赤茶色、粘性あり、グラス壁面に赤い色調、ブラックベリー、ドライフラワー、甘草、喉の奥にアルコール由来の温かさ、甘さ、口中なめらか、バランス良好、熟成具合も良く今飲んで美味しいワイン

2009年はトカロンと山岳部のぶどうをブレンド

2009 コンティニュアム プロプライエタリー・レッド ナパ・ヴァレー 参考商品
ぶどう品種:CS77%、CF12%、PV7%、ME4%

例年よりも冷涼な気候が続きましたが、霜害も少なく、生育期はストレスもなく進行。6月が温暖だったので、ぶどうは順調に成長し、収穫は9月中旬から10月上旬まで行われました。プリッチャード・ヒルの自社畑のぶどう82%、残り18%はダイアモンド・マウンテン、マウント・ヴィーダー、セント・ヘレナのぶどうを使用。樹齢15年、Alc度数14.7%、4つの中で香りは一番控えめ、06より若干濃い目の色調、ブラックチェリー、ダークチョコ、ココア、中盤以降酸のニュアンス、グラス内の温度変化で香りの広がり


2014年から自社畑のぶどう100%
ティム:果実のピュアさとタンニンの質の良さは、プリッチャード・ヒルだからこその特徴。アルコール度数が高くてもワインがフレッシュなのは、霧によってぶどうが過熟にならず、酸がキープできるからであり、ぶどう自体にポテンシャルがあるので新樽の使用率を下げることが可能。鉄分を含んだ土壌由来のミネラル感も生きています。平均樹齢は20年。


2014 コンティニュアム・エステート プロプライエタリー・レッド ナパ・ヴァレー
希望小売価格37,000円(税別)
http://www.wineinstyle.co.jp/wines/product_detail.cfm?pdtID=4994
ぶどう品種:CS65%、CF15%、PV15%、ME5%

栽培、醸造、瓶詰めをすべてエステート内で行ったヴィンテージ。フレンチオークの新樽率68%、21ヶ月の樽熟成後瓶詰め、Alc度数14.8%。濃い赤紫色、スミレ、カシス、グラファイト、甘草、余韻まで続く酸の印象

カベルネの比率が少ない2016年ヴィンテージ

2016コンティニュアム・エステート セージ・マウンテン・ヴィンヤード プロプライエタリー・レッド ナパ・ヴァレー
希望小売価格37,000円(税別)
http://www.wineinstyle.co.jp/wines/product_detail.cfm?pdtID=7190
ぶどう品種:CS46%、CF31%、PV 5%、ME5%

4つの中でCSの比率が一番少ないヴィンテージ(前年の2015年も同様)、「地球温暖化の影響で、早めに開花し、その後、気温が下がったことで花ぶるいを起こし、結果としてCSの収量が少なくなった」とティムさん。40年以上にわたってワイン醸造をしてきたティムさんが最も好きなのが2016年。「フェミニンな要素を備えたCFやPVの比率も高くなっており、今後のコンティニュアムが求める姿がこのヴィンテージ」とコメント。容器としてアンフォラを初めて使用。テラコッタ製とコンクリート製でトライアルし、エレガントでやさしいタンニンのスタイルが表現できたコンクリート製のアンフォラを採用、今後も使う予定とのこと。Alc度数15.1%。深みのある色調(グラスの下の字が読めない)、香り華やか、味わいまろやか、タンニン細やか、ミネラル、旨味、ポテンシャル、表現力あり

セカンドワインも誕生
Novicium ノビシアム

というネーミング、語源はラテン語の“New”です。
「コンティニュアムになれない“若い修行僧”」とティムさん。
ワイナリーのセラードア、メーリングリストのみの販売とのこと、興味惹かれます!

ランチにはRAENのシャルドネ登場


RAEN

は“Research in Agriculture and Enology Naturally”の頭文字を一つの単語にしたもので、創業者はティムさんのご子息、長男ダンテ・モンダヴィと次男カルロ・モンダヴィです。彼らはピノ・ノワールの名醸造家父の足跡を踏襲すべく、ピノ・ノワールにフォーカス。極少量のシャルドネも生産しています。果実味豊か、ピュアな酸味の広がりと、塩味(海に近い産地)が料理と合せた時に好印象




アンダーズ東京『ザ タヴァン グリル&ラウンジ』のお肉美味、2006年はとてもフードフレンドリー

プライベートでコンティニュアムしていること


同席していた方から「長年続けていることは?」との質問が出ました。
ティムさんは「飲んだり食べたりすることが多いので、健康には一番気を遣っています。それゆえ、出張する時はプールのあるホテルに泊まるようにしています。昨日は30mのプールを40往復、今朝は時間がなかったので、それでも8往復してきました」と。ワイナリー当主としての自覚のほどを感じました。

プレスランチで「ぶどうは苦労しながら実をつけ、それによって優しさも出てきます」と語っていたティムさん。華麗なる活躍とカリフォルニアワインの金字塔でもあったロバート・モンダヴィ・ワイナリーを人手に渡さねばならなくなった経験をしてきた方を前にして、その言葉はぶどうだけでなく、人間にも当てはまると思わず聞き入ってしまった私です。
4世代の情熱がこもった唯一の赤ワイン『コンティニュアム』、
ワールドクラスの風格を備えた赤ワインだと思います!!

■商品についてのお問い合わせはWINE IN STYLE ℡03-5413-8831
URL: http://www.wineinstyle.co.jp/
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2019年04月17日

アルゼンチンが世界に発信する“MALBEC WORLD DAY”に絡んでTamariをご紹介!

アルゼンチンのマルベック

2002年に創業したTamari(タマリ)
メンドーサ州の先住民族Huarpeの言語で“情熱を持ってものごとをする”という意味で、ラベルのロゴはアルゼンチンタンゴを踊る男女を表現しています。

世界マルベックデー

メンドーサ州で農業研究所・学校の設立を求める法案が州議会に提出されたのが1853年4月17日だったので、この日をアルゼンチンワイン産業の発展、変革の始まりと捉え、それを祝う日として“MARBEC WORLD DAY”がスタートしました!

広大な国土3,779km(北緯から南緯までの距離)、南緯22~55度、西緯53~74度に位置するアルゼンチンは、乾燥した大陸性気候で、ぶどう畑は標高300~3,000mの地域に分布。標高差がもたらす多様なテロワールを反映しています。


昨年、SAKURA WINE AWARDで“女性ワインメーカー賞”を受賞したアンドレア・フェレイラさん。今年は同賞のプレゼンターを務めるために、3月に再来日しました!

1972 年メンドーサ生まれ。子供の頃、アルゼンチンのワイン産地ウコヴァレーに住んでいた祖母を訪問したことでインスパイアされ、それがワイン道を志すきっかけになった由。ファン・アグスティン・マサ大学で栽培と醸造を学び、学位を取得。卒業後はラ・ルラールとワイナートでテクニカル訓練を受け、カテナ・サバータやルティーニ等で研鑽を積み、2006年の収穫からタマリに参画。献身的な努力とワインへの能力と情熱が認められ、2012年にチーフワインメーカーに就任、現在に至っています。



タマリはメンドーサから南に100kmのウコヴァレーにあり、ぶどう畑は標高900~1,500m、細かい砂と石ころの沖積土壌で、日較差が大きく、年間平均気温は14度、年間の降雨量は300mm。
スペシャル・セレクションのレンジでは白ぶどうはトロンテス、シャルドネ。黒ぶどうはマルベック、カベルネ・ソーヴィニヨンを生産。

『スペシャル・セレクション シャルドネ2016』はステンレス95%、フレンチオーク5%で発酵・熟成。果実味豊かで、洋梨やパイナップル、酸味のバランスも良く、5%の樽使いがうまく全体をまとめている印象。セビーチェやシーフードに合わせて。


マルベックは『スペシャル・セレクション』と『AR』の2アイテムをテイスティング
ARも先住民の言語“魂”が由来で、ワインを生み出した土地の魂が表現されています。


(グラス左から右に)スペシャル・セレクション、AR
『スペシャル・セレクション マルベック2017』はコンクリートタンク40%とアメリカン&フレンチオーク併用60%。深紫色、ブラックチェリー、樽香、ヨーグルト的なニュアンス、スパイス、柔らかなタンニン、複雑味。
『AR マルベック2015』は濃赤色、ブラックチェリー、グラファイト、黒胡椒、エスニックスパイス、口中スムース

カレーとマルベックはスパイシーさが共通項になって楽しめたマリアージュ。牛肉との相性は言わずもがなですが、相性的にはスペシャル・セレクションがお薦め。女性醸造家が手掛ける丁寧に造られたマルベック!


フェレイラさんと訪日経験も多いイガル・エルガス・スラチェフスキー日本市場輸出マネージャー

タマリはvspt.wine.group

に属し、同グループはチリに7ワイナリー(San Pedro, Tarapaca, Leyda, Santa Helena, Misiones de Rengo, Vinamar, Casa Rivas)とアルゼンチンに2ワイナリー(La Celia, Tamari)を所有しています。タマリは2014年から『やまや』で販売されています。
ボルドーからアルゼンチンにわたり、根付いたマルベックは、外せません!
この機会に是非ともお試しいただきたいと思っています。
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2019年02月09日

Belle Epoque“良き時代”のブラン・ド・ブラン2006&エディション オータム2010

1811年創業のシャンパンメゾンペリエ・ジュエ



今年の旧暦の元旦(春節)は2月5日。春節週間に加えて、ブログも記念の1000番目になるので、ハレの気分にふさわしいネーミングの“Belle Epoque(良き時代)”話題でGo!!!

シェフ・ド・カーヴとベル エポックの世界を満喫

エルヴェ・デシャン最高醸造責任者&輸入元ペルノ・リカール・ジャパンのヤン・ソエネンマーケティングディレクターを囲んで

ESQUISEE

の料理と合せて

ウェルカムシャンパン『グラン ブリュット』に3種のアミューズブーシュ
クスクス、柚子/折り紙、アーティチョーク、カツオ
(画像)雲丹、りんご、キノコ

ベル エポックの最高峰ブラン・ド・ブラン

『ベル エポック ブラン・ド・ブラン2006』 × 酒粕、フォアグラ、マッシュルーム、生姜
今飲んでも10年後に飲んでも楽しめると実感したアイテム、当日のマイベスト!

エルヴェさんは「日差しにあふれていた年。アルコールと酸のバランスが良く、それによってハーモニーが取れている」とコメント。
イエローダイヤモンドの輝き、アカシアやサンザシの花、砂糖漬けのレモン、熱いシロップに漬けた白桃や梨、蜂蜜、ブリオッシュの香り、快活な酸、口中で泡の感触はシルキーで、長い余韻。
ぶどう品種:シャルドネ100%(GC畑クラマンのなかのブロン・ルロワ&ブロン・ドゥ・ミディの2区画)、ドザージュ:8g/L、参考価格:8万円(オープン価格/税別)


帆立貝、オリーヴコンフィ、ういきょうもブラン・ド・ブラン2006に合わせて!
帆立貝との相性はフランスでも人気

世紀のヴィンテージ2008

ベル エポックはシャルドネ50%、力強さはあってもシャルドネの邪魔をしないピノ・ノワール45%、そしてムニエを5%使うことで、2品種の調和を取っているのが特徴

1が付く年は価値がなく、8が付く年はいつも素晴らしい
エルヴェさんがシャンパーニュ地方の面白い言い回しを披露してくれました。
2011を例にすると、日本語には「1」が入っていますが、フランス語の表記だとdeux mille onze(2000と11)になるので1(un) が入りません。

ちなみに、調べてみると、今世紀で「1」が入っているのは2001年(deux mille un/2000と1)で、シャンパーニュ地方のヴィンテージ評価は多くて★★、その次は2021年になるのですが、はてさて・・・
片や、「8」がつく年は2008に引き続き、2018にも期待が持てそうです。
「同じ8でも、2008年は最初から酸味がしっかり存在していた」とエルヴェさん


マナガツオ、パースニップ、グロゼイユ、オレンジのサバイヨン
ブラン・ド・ブランと比べて複雑さあり、香りのなかに砂糖漬けした生姜、ブリッシュ、バターのニュアンス。きめ細かい泡が口中に広がり、中盤以降、エレガントな酸の余韻。
パースニップはフランスでも再発見されている野菜で 人参やカブ、アニスのニュアンスあり

日本の秋にインスパイアされたベル エポック エディション オータム2010


エルヴェさんは「訪日で京都に立寄った時、黄色から赤色に変わるもみじの色の豊かさを発想の根源にしたキュヴェで、色調にはザクロのニュアンス、香りには秋の産物のリンゴ、レッドカラント、ブラッドオレンジ、バターやヴァニラ。味わいは豊潤で泡の広がりも心地良い」とコメント
ぶどう品種:シャルドネ45%、ピノ・ノワール50%、ムニエ5%、赤ワイン15%ブレンド、参考価格:5万円(税別)


小鳩、ジロール、アンディーブ、バナナ
エルヴェさん、絶賛の鳩!
シャンパンは煮込んだ鴨や和牛にもおすすめできます。


フュイタージュ、りんごのタタン、マール ド シャンパーニュ
層になって広がる旨さ、美味美味!

2018年ヴィンテージ情報

2017年は8月中旬迄は順調だったものの収穫直前は降雨でぶどうに被害が出た年。
2018年は星の並びが素晴らしく、霜や雹もなく、開花も早かった由。直近10年で8月中に収穫したのは3回(2007年、2011年)で、2018年は8月23日から開始しています。
量・質とも上出来で、ほとんどのメゾンで18,000kg/ha収穫できたそうです。CIVCの規定でシャンパーニュにできるのは10,800kg/ha。ただし、NVのリザーヴワインとして取り置きできるLa Réserve Individuelle (RI)という仕組みがあり、2018年は2,000kgがRIとして許可されています。しかしながら、残りの5,200kgは2019年12月15日までに蒸留して使い切らなければなりません。
エルヴェさんいわく「天候が芳しくなかった2017年のストック分を蒸留して、その代わりにグレートヴィンテージの2018年分をストックするやり方もある」と。興味深いお話でした!

ディナーから1週間後にエペルネで再会


エルヴェさんはディナー後、2時の深夜便で中国出張へ。11月7日の早朝フランスに帰還なさいました。そして・・・その翌日
シャンパーニュ研修ツアーでペリエ・ジュエを訪問したわれらメンバーを、いつもの笑顔で快く出迎えてくださいました。講座生のために丁寧なテイスティングセミナー、ベル・エポックの迎賓館ではスペシャルランチ!
ペリエ・ジュエ社のカーブ視察とセミナーについては次回のブログでご報告させていただきます[わーい(嬉しい顔)]


なんとアクセス数も550万クリア、まぁ嬉しい数字!!!
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2019年01月29日

ジョヴァンニ・マッツォーニが語るトスカーナ州『Podere Forte ポデーレ・フォルテ』


イタリア・トスカーナ州カスティリオーネ・ドルチャのポデーレ・フォルテ

からコマーシャル&マーケティングディレクターのジョヴァンニ・マッツォーニさんが来日し、プレス対象のディナーを開催。ナビゲーターは同ワイナリーへの造詣が深いソロイタリアの林茂さんが担当しました。

創業は1997年。2002年に完成したワイナリーは壮観な5層(地上2階、地下3階)構造。200年以上の歴史を持つぶどう畑を取得してワイン造りを開始。オーガニック栽培からスタートし、2004年ビオデイナミを導入、2011年にデメターを取得。ワイン用ぶどうの栽培面積は12㌶、主要ぶどうはサンジョヴェーゼで、他にはカベルネ・フラン(CF)、メルロー(ME)、プティ・ヴェルド(PV)、年間生産量は2500ケース。
2018年のヴィンテージは最終的に良かったとのこと。冬は激寒、3月に寒波襲来、春は多雨、7月は平年より遅い動き。その後、気候が好天、9月の少雨と日照度の多さで、ぶどうの熟成具合は良好。収穫は10月10日に終了、例年より3割程少なめ。


モンタルチーノとモンテプルチアーノの間、標高250~550mの火山地帯に位置し、敷地は400㌶強。オリーブ、養蜂(はちみつを生産)、キアナ牛、豚、羊およびホロホロ鳥や鴨の飼育。古代品種の小麦も栽培していてパスタやパンも生産。敷地内には人工貯水池があり、灌漑用に使用


口開けはスプマンテ、所有するレストランと同名の#1『ぺリッラ2014(サンジョヴェーゼ100%)』


訪日回数も多いジョヴァンニ・マッツォーニさん


裏ラベルには2011年に取得したデメターを表示
ワイナリーのシンボルは中央に描かれているアーモンド(商標取得済)
「アーモンドは空と大地の融合」とジョヴァンニさん


最後にトップレンジ『ぺトルッチ2014』
肩も丸いラインはドームの屋根の形をイメージ


供出された赤ワイン左から
#2:ぺトルッチーノ2015/オルチャD.O.C.
ぶどう品種:サンジョヴェーゼ85%、メルロー15%
2002年に誕生したワインで同ワイナリーの“プルミエ・クリュ”クラス、3種の容器(バリック、トノー、大樽)を使用、樽熟成16ヵ月、瓶熟14ヵ月。香りはチェリーやストロベリー、ラベンダー、ミネラル、酸味&タンニンともに柔らかで口中滑らか。好感度100%。生産量は2万本。2015年は秀逸年

#3:グアルディアヴィーニャ2013/トスカーナI.G.T.
ぶどう品種:カベルネ・フラン45%、メルロー44%、プティ・ヴェルド11%
「我々が“グラン・クリュ”と表現しているクラスで、意味するところは薄い表土のすぐ下に岩が多く、構成のしっかりしたワインができるから」とジョヴァンニさん。様々な樽を使い18ヵ月熟成、瓶熟も18ヵ月。収量2.5t/㌶、生産量5000~7000本。2013年は9月5日から独特の現象が起こり、一気に15度位温度が降下したことで、ぶどうの熟度が緩やかに。しっかりした香りのインパクト、ミント、タバコ、甘草、アーシー、バルサミコ似の香り、タンニンの存在感はあるがこなれたニュアンス

#4:グアルディアヴィーニャ2010/トスカーナI.G.T.
ぶどう品種:カベルネ・フラン30%、メルロー35%、プティ・ヴェルド12%
2013同様、香りのインパクトあり。バルサミコ、ミネラル、酸の広がり、口中での力強さと繊細さ、バランス良

#5:ぺトルッチ2014/オルチャD.O.C.
ぶどう品種:サンジョヴェーゼ100%
「2001年に誕生した我々の“魂”と言えるワインで、コレクターや星付レストランのアイテムになっています。生産量は4000~5000本。2014年は難しい年だったので選果に気を遣いました。デキャンター誌から97点評価されたことで、選果が報われたと思っています」とジョヴァンニさん。ラズベリーやブルーベリー、赤い花、質感の良いタンニン、全体的に優しい味わい、2014年ならではの“エレガンス”


グラス右から#1~#5

アンジェロコート東京の料理に合わせて

生マグロのカルパッチョ  バルサミコのグラッサート


生ハムとチーズの盛り合わせ


ペトルッチの可愛い弟分ぺトルッチーノ2015
赤い果実の風味、綺麗な酸味が口中に広がりハムやチーズの脂分を洗い流して


イタリア産ポルチーニ茸の焼きリゾット


グアルディアヴィーニャ2013の茸やバルサミコ的な要素と絶妙
当日のお気に入りマリアージュ!


自家製手打ちパスタタリアテッレ 鴨とザクロのラグーソース × グアルディアヴィーニャ2010
ザクロの使い方がお見事、ザクロの酸味がブリッジ食材に!


マルサラワインで煮込んだ国産牛バラ肉とペトルッチ2014は旨味で相乗


いちじくのセミブレッド ラズベリーソース


乾杯はペトルッチ2014!


ジョヴァンニさんと林さんの2ショット、お疲れ様でした!


絵ハガキのような雪景色
■Podere Forte ポデーレ・フォルテ カスティリオーネ・ドルチャ-イタリア
■お問い合わせはSOLOITALIA(渡辺) ℡03-3619-9353
posted by fumiko at 18:02| Comment(0) | 来日したワイン生産者&関係者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月22日

フードペアリングセミナー by Taste Napa Valley 2019

Taste Napa Valley 2019
2年に1度、カリフォルニア・ナパヴァレーのワイン生産者が来日して行う“Taste Napa Valley”、該当年の今年はNapa Valley Vintners (NVV) に加盟している31社が来日し、1月15日から5日間にわたり、東京、大阪、京都で業界関係者および一般消費者向けの20のイベントを実施、気合の入ったNVV週間になりました!

私は15日に開催されたエンパイアステーキハウス六本木でのバイザグラス・アンコールフェア2018授章式&アンバサダーランチ、16日のパラッツォドゥカーレでの東京トレードテイスティング&第1回ナパ・トリビア王決定戦

、そして17日のビストロ・バーンヤード銀座での『フードペアリングセミナー(試食・試飲付)』の3日間お付き合いさせていただきました。
ナパヴァレーの約550のワイナリーが加盟する非営利生産者団体

フードペアリングセミナー@Bistro Barnyard Ginza

(左から)
クリフ・レイディのレミ・コーエン副社長、フープスのマークさん、小枝絵麻NVV駐日代表、キーナン・ワイナリーのレイリ―・キーナンさん、ケークブレッド・セラーズのブルース・ケークブレッド社長、サン・スペリー・エステート・ヴィンヤーズ・アンド・ワイナリーのエマ・スウェインCEO

各ワイナリー提案のメニューと合せて


ワインを料理に合わせる時に、NVVではペアリングの“方程式”を用いています。
今回のセミナーでは、生産者が現地で実際に合わせている料理のレシピを日本に送り、それを再現して検証しました。モデレーターを務めたのはワイン&フードコンサルタントでNVV駐日代表の小枝絵麻さん。小枝さんはナパヴァレーにあるアメリカ最高峰の料理大学として知られているCIA(The Culinary Institute of America)での学習と、ワイナリーシェフインターンの経験を生かしてセミナーを展開しました。

(左から)
#1:Cliff Lede Vineyards (Sauvignon Blanc 2017) × Citrus glazed hamachi crudo with avocado
2001年にスタッグス・リープ地区に設立、ボルドー品種に特化。樹齢の古いSB86%にセミヨン12%とソーヴィニヨン・ヴェール2%をブレンド、発酵にコンクリートエッグ、使用したフレンチオーク、ステンレスタンクの3容器を使うことで複雑味を表現

#2:Hoopes Vineyard (Chardonnay 2017) × Bistro jeanty's cream of tomato soup with puff pastry
1980年代にオークヴィルにぶどう樹を植樹、初ヴィンテージは1998年。温暖なエリア、このCHは発酵・醸造ともステンレスタンクのみ。2012年から女性醸造家が参画。愛犬の姿をあしらったラベルにも注目

#3:Long Meadow Ranch Winery (Merlot 2015) × LMR grassfed beef meatballs with spiced tomato marmalade
標高300㍍の冷涼なラザフォードと温暖なヴァレーフロアの2つの畑のメルロをブレンド。「ミッドパレットに感じるチェリーやラズベリーのニュアンスはヴァレーフロアに由来」とクリスさん

#4:Keenan Winery Mailbox Vineyard Reserve (Merlot 2014) × Coloradito mole with salsa de chile ancho chile
1974年創業、現在3代目。スプリングマウンテン地区にあり、標高の一番高いところは600㍍で23度の傾斜。畑は霧の上に位置し冷涼ながら、太陽の恩恵も受ける。黒系果実やスパイスの要素、古典的なメルロ

#5:Cakebread Cellars Vine Hill Ranch (Cabernet Sauvignon 2001) × Red wine braised short ribs with shaved garden vegetable & herb salad
1973年創業、「わずか数樽からスタートしたワイナリー」とブルースさん。『ヴァイン・ヒル・ランチ』は栽培家のフィリップス家がマヤカマス山麓に所有する単一畑で、ケークブレッドでは1981年以来、このワインを生産。

#6:St. Supéry Estate Vineyards & Winery Dollarhide Vineyard (Cabernet Sauvignon 2014) × Aka miso braised pork belly
すべて自社畑、ナパヴァレー北東のヒルサイド約335㍍に位置する単一畑ダラーハイドのカベルネは1982年に植樹。サン・スペリーは2008年にナパクリーンランド、2012年にナパグリーンワイナリーの認証を取得

ペアリングの方程式


左(ライト/1点)→中央(ミディアム/2点)→右(フル/3点)となり、食材、調理法、味付けもそれに順ずる。一例として、食材が野菜(1点)+調理法がてんぷら(2点)+味付けが塩(1点)なら計4点になるので、ワイン+ブリッジの項にある3~5点のなかの泡、SB、CHがおすすめ。その際、記載してあるブリッジ食材を活用することで、ワインとの相性がより良くなる。

表はクリックで拡大

























(C)Napa Valley Vintners (C)Ema Koeda



セミナーに参加した6ワイナリーのメンバー
後方のパネルは第1フライトの『ハマチ(脂分があるので2点)+生(1点)+塩(1点)』について記載。クリフ・レイディのソーヴィニヨン・ブラン(SB)と合せて



当初のレシピは唐辛子入りだった由。小枝さんは唐辛子ではなく、ブリッジ食材として「シソと生姜」を使用。お皿の中央にシソ、生姜はみじん切りにしてはっさくの上にまぶして。#1のワインを口に含み、アボカド、ハマチ、はっさくを同時に食すと、中盤以降、はっさくの味わいに続いて生姜の風味が広がり、ワインの果実味をより膨らませてくれる印象。
私感:SBの隠れた要素を引き出す生姜とのペアリング再発見!



ライムとレモンのどちらの酸がSBの酸に合うかとの実験で・・・ライムをかじってから少しだけ塩をなめてワインを試飲、同様にレモンも試してみると、ライムのほうが素直に馴染み、余韻にも広がりが。レモンだと柑橘系果実の内果皮のビター感が出ます。



ナパで著名な『ビストロ・ジャンティ』のレシピをセミナー時に再現、美味!
トマトスープの酸と白ワインの酸のペアリング。パイシートを使うことで、シャルドネに由来する蜂蜜やバターの要素が繋がり、パイシートに少しだけ、ブリッジ食材のレモンを搾って食すことでバランスが良くなる印象。
私感:ステンレスのみより、樽(新・旧)を使用したシャルドネのほうがスープのコク、パイシートとの組み合わせが楽しめたような・・・



シャルドネの酸はライムよりレモンのほうが好印象
ちなみに、小枝さんは和風柑橘を代表する“柚子”に関して「樽の風味を抑え、シトラスのニュアンスを前面に出すことができる食材。酸のあるSBには、柚子の皮を加えることで香りにも味わいにも複雑味が加わる」と参加者に伝授



ロング・メドウ・ランチはワインだけでなく、農業(野菜、牛や羊の飼育、養鶏、養蜂等)も手掛け、レストラン『Farmstead』も経営。ペアリングに関してはエキスパート!
ミートボールだけを食してみると淡白な印象になるのですが、トマトマーマレードが加わるとワインの果実味が増し、ナイスハーモニー。ブリッジ食材としてのラスエルハヌートスパイス(コリアンダー、キャラウェー、クローヴ、ローズバッド、シナモン、胡椒、生姜)がメルローのハーブ感とも相乗。
私感:所有するレストラン『Farmstead』では、マーマレードは甘さだけでなく、香りも十分に生かされているとのこと。ナパで人気の甘辛ソースの魅力を垣間見た気がしました。万人受けするペアリング、これはおすすめ!


コロラディート・モレ(甘味を抑えたチョコレート・ソース)と辛みの利いた唐辛子のソース(左)
※現地では唐辛子を焦がして使いますが、日本では同種の唐辛子が入手できなかったので辛さと風味の度合いは若干違っていたと思います。


ビーフストックをブリッジ食材にして3時間じっくり煮込んだ逸品


熟成したナパのカベルネとシンプルながら味わい深い家庭料理とのペアリング


食材は豚バラでブリッジ食材はココアパウダー(コーヒー粉)、赤味噌、たまり醤油



脂身と赤身、各部位に分けて#6のワインに合せてみると、赤身はスパイスの風味、脂身はカベルネの酸を感じ、様々な味わいや香りを堪能できました。
私感:脂身は熟成したケークブレッドのカベルネとの相性も◎。また私的に試して面白かったのは、サン・スペリーと4番目のメキシコ料理。メルロだと唐辛子の辛みが舌の上にいつまでも残り、気になったのですが、サン・スペリーのカベルネは唐辛子と相乗。コロラディート・モレ、タンニン、唐辛子(カプサイシン)の3つのポリフェノールと、ワインの乳酸(MLF)効果で、メルローの時よりスムース感あり

登場した6アイテム

(左から供出順に)
#1:2017 Cliff Lede Vineyards Sauvignon Blanc,Napa Valley
#2:2017 Hoopes Vineyard Chardonnay,Yountville
#3:2015 Long Meadow Ranch Winery Merlot, Napa Valley
#4:2014 Keenan Winery Merlot, Spring Mountain District
#5:2001 Cakebread Cellars Cabernet Sauvignon, Oakville
#6:2014 St. Supéry Estate Vineyards & Winery, Dollarhide vineyard Cabernet Sauvignon,Napa Valley


左から#1から#6

NVVのペアリングの方程式は昨年6月の現地訪問でも体験できましたが、今回はお料理が本格的で多くの学びがありました。貴重な体験をさせていただき、ありがとうございました!
posted by fumiko at 23:50| Comment(0) | 来日したワイン生産者&関係者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月11日

三国ワイン主催でチリ・ウンドラーガ社ラファエル・ウレホラ来日セミナー@チリ大使公邸

1885年創業、6世代にわたるウンドラーガ

(左から)輸入元三国ワインの須佐敏郎社長、ウンドラーガのラファエル・ウレホラ ヘッドワインメーカー、通訳兼コメンテーターを務めた『チリ最優秀ソムリエコンクール2017』 第2位の稲岡美里氏、ウンドラーガのアクセル・バデアジア・パシフィック担当輸出マネージャー

10月最終週はエデュアルド・チャドウィック氏とのディナー翌日に、ウンドラーガ社のラファエル・ウレホラ が来日し、セミナーでワイナリーの沿革やワイン造りの哲学を語りました。まさにチリ週間!
冒頭、須佐社長は「2015年に4,000ケースから輸入を開始したのですが、2017年には1万ケースをクリアし、2018年の1~10月の販売数量は前比40%増。極めて好調な動きです」とコメントしていました。

会場は駐日チリ大使公邸

エントランスにはチリの紋章



グスタボ・アジャレス駐日チリ大使は所用のため、不在でしたが、マリア・イザベル・コンポス夫人が笑顔でお出迎えしてくださいました。大使の代理として同席なさったのは商務部 チリ貿易振興局 日本オフィス商務参事官ハイメ・リベラ氏。日本語を交えながら「ウンドラーガはチリで130年以上の歴史があり、ワイン産業をけん引してしてきた造り手であり、スティルワインだけでなく、スパークリングワインの生産にも力を入れています」とご挨拶。


ラファエル氏は2007年からウンドラーガ社に参画し、テロワール・ハンターのワインメーカーを務めています。ビオディナミの大家アルバロ・エスピノサ氏からワイン造りに関してアドバイスを受けていますが、ウンドラーガ自体はビオディナミは導入していません。今後の目標として、「安価なイメージを払拭して、チリワインの高品質&プレミアムなワインを浸透させていきたい」とコメント。
ラファエル氏は、ティム・アトキン マスターオブワインチリ2017スペシャル・リポート(英・評論誌)で『ワインメーカーオブザイヤー』を受賞、ドリンクビジネスマガジン(英・酒類飲料業界紙)からは2014年に『注目の若手ワインメーカー30人(40歳以下)』に選出されていて、他にも数多くの受賞歴をお持ちです。

ウンドラーガ社の沿革
フランシスコ・ウンドラーガ氏によって1885年に創立されたチリ最古のワイナリーのひとつ。拠点はマイポ・ヴァレーで銘醸7地域に8つの自社畑、計1359㌶を所有。品種の個性、多様なテロワールを駆使して、カリテプリなタイプから高品質なワインまでを生産しています。ぶどう樹は25年から100年までの古樹で自根。チリでの輸出実績は現在第12位、輸出相手国は70ヵ国以上。ウンドラーガファミリーは2006年に新しい取り組みとしてビオディナミとオーガニック農法に特化したプレミアム・ワイナリー『コイレ』を設立。

スパークリングワインは1910年から手掛けており、スパークリングメーカーのリーダー役でもあります。アドバイザーは元モエ・エ・シャンドンのワインメーカー&農学者のフィリップ・クーロン氏。シャルマ製法によるカジュアルなタイプから瓶内2次発酵の本格的なタイプまで多様なスタイル。使用ぶどう品種はシャルドネとピノ・ノワールのみ。

テイスティングは5アイテム

#1:スパークリング スプレーメ
産地:レイダ・ヴァレー、ぶどう品種:シャルドネ65%、ピノ・ノワール35%、リザーブワイン30%(直近3-5年)、ドザージュ5-6g/L
参考小売価格3,000円(税別)
瓶内2次発酵によるレンジ『スプレーメ』は冷涼エリア、レイダのぶどうを使用。柑橘系果実、白桃、石灰質土壌由来のミネラル、軽いビター感、口中ドライで、余韻に切れの良い酸、重すぎず軽すぎずのスタイル

テロワール・ハンターシリーズ
新たなプレミアムワインを創造するプロジェクト“T.H.テロワール・ハンター”は品種の個性を表現するために最適な土壌、マイクロクライメットをリサーチし、実験を重ねて完成させたウンドラーガ渾身のワイン。産地は10ヵ所、品種は18種、区画は全て7㌶以下

#2:テロワール・ハンター ソーヴィニヨン・ブラン レイダ2015
産地:レイダ・ヴァレー、ぶどう品種:ソーヴィニヨン・ブラン100%
参考小売価格3.500円(税別)
和風柑橘(柚子、スダチ)、ライチ、南国果実、味わいにグレープフルーツの内果皮、中盤から果実の広がり。ラファエル氏いわく「レイダの石灰質土壌なので、フルーツ感と複雑味を併せ持ち、熟成とともに塩味も感じるはず」。

#3:テロワール・ハンターカリニャン マウレ2013

産地:マウレ・ヴァレー、ぶどう品種:カリニャン100%
参考小売価格3,500円(税別)
サンチャゴから南に400kmに位置するマウレ・ヴァレー。ぶどう樹の樹齢は70年、畑は非灌漑。「カリニャンは表情力豊かで酸も豊か、バランスの良いものが取れます」とラファエル氏。さくらんぼ、アメリカンチェリー、ドライフラワー、スパイス、ミネラル、アーシー。果実味、酸味、渋味のトライアングル、まるい味わい。

#4:テロワール・ハンター カベルネ・ソーヴィニヨン アルト・マイポ2015
産地:マイポヴァレー、ぶどう品種:カベルネ・ソーヴィニヨン100%
参考小売価格3,500円(税別)
標高700~800m、アルト・マイポの冷涼なエリア“ピルケ”の畑のぶどうで樹齢30年。果粒は小さく凝縮したタイプ。酸味を残すため収穫は早めに実施。樽熟(新樽率30%)14ヶ月、クラシックなカベルネ、飲んでリフレッシュできるワイン

#5:アルタゾール2014
産地:マイポ・ヴァレーぶどう品種:カベルネ・ソーヴィニヨン82% カルメネール10% カリニャン8%
参考小売価格10,000円(税別)
ウンドラーガのアイコン・ワイン『アルタゾール』はチリの詩人ビセンテ・ウイドブロ氏の詩集名に由来。「ブレンド比率は年によって異なりますが、ワインに骨格やバランスを与えるCSは通常80~90%使用。スパイスやタバコのニュアンスはカルメネール、赤系果実やフレッシュ感、エレガントさを与えているのはカリニャン」とラファエル氏。樽熟16ヵ月、瓶熟24ヵ月。イチゴ、ミント、甘草、シダ、黒鉛、タバコ、複雑味&余韻。生産量12,000本、飲み頃は2024~2026年


セミナー後はカクテルパーティー





抽選でスペシャルプレゼント


招待された得意先やプレスが入場の際に渡した名刺を抽選箱に入れてのお楽しみタイム
ラファエル氏から「チリから持ってきた『テロワール・ハンター カベルネ・ソーヴィニヨン アルト・マイポ2014 マグナム』を2名の方にプレゼントします」とのアナウンスがあり・・・


まぁ、なんとなんと、ワインの天使が私に微笑んでくれました[プレゼント]
ラファエル氏からサインもしていただきハッピー
マグナムサイズなので、しばらくセラーで寝かせておきます、ありがとうございました!

最後に感謝を込めて

SENA 100 POINTS CELEBRATIONにご臨席なさった大使ご夫妻(2018年3月

アジャレス大使から11月9日@チリ大使公邸でのお別れ会に招待されていました。
シャンパーニュ研修ツアーと重なっていたので参加することができなかったのですが、大使は12月に日本を去り、インドネシア在チリ大使として赴任なさいました。日本滞在は約2年程でしたが、公邸でのランチやディナー、ミシェル・バチェレ大統領来日の折の朝食会にもお声掛けくださり、光栄なるひとときを共有させていただきました。マリア夫人はお鮨が大のお気に入り。料理もお得意で、私は手作りのパンをご馳走になりました。日本&日本食を愛していたグスタボ・アジャレス駐日チリ大使とマリア夫人にこころから感謝しています。インドネシアでのご健闘を願っております。
今回、公邸でのセミナーにお招きくださった須佐社長はじめ、三国ワインの皆さまにも、改めて御礼申し上げます。ありがとうございました!

■ウンドラーガについてのお問い合わせは三国ワインまで
Tel:03-5542-3941/Fax:03-3552-0392
URL:https://www.mikuniwine.co.jp/
■Viña Undurraga
URL:https://www.undurraga.cl/
posted by fumiko at 23:25| Comment(0) | 来日したワイン生産者&関係者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月07日

エデュアルド・チャドウィックE・Chadwickとスティーヴン・スパリュアS・Spurrier両氏が発信する“Into the Future”

昨秋は多くのワイン関係者の来日やシャンパン講座初の研修ツアーもあり、貴重な話をたくさん伺うことができました。リポートアップがなかなか追いつかない状況ですが、早めに行動すべく頑張ります!
まずは、新年に相応しいタイトル“未来へ向けて”と銘打ったイベントから始めます。

未来へ向けて


昨年、英国デキャンター誌の“デキャンター・マン・オブ・ザ・イヤー2018”に選ばれたチリ『エラスリス』のエデュアルド・チャドウィック当主。その前年(2017年)の受賞者『アカデミー・デュ・ヴァン』の創設者スティーヴン・スパリュア氏。2004年のベルリンテイスティング以来、親交篤いおふたりがタッグを組み、2018年6月にロンドンとパリで、“Into the Future(未来へ向けて)”と題するイベントを開催しました。
チリから「秋には中国(北京)と日本(東京)でもやりますよ」という連絡を受けていたので楽しみにしていました。そして・・・昨年10月の最終週、おふたりが来日。東京でマスタークラスセミナーと記念ディナーを行いました。

Into the Futureとは

#1:ブライド・ヴァレー ブラン・ド・ブラン2014(英国産スパークリング)
#2:ラス・ピサラス・シャルドネ2017
#3:ラス・ピサラス・ピノ・ノワール2017
#4:ドン・マキシミアーノ・ファウンダーズ・リザーヴ2016
#5:セーニャ2016
#6:ヴィニェド・チャドウィック2016
#7:ブライド・ヴァレー ロゼ・ベラ2014(英国産スパークリング)

供出アイテムは英仏の2都市で行った時と若干異なり、スパリュア氏は英国産スパークリングを2種。私はディナーのみに参加したので、氏とはお目にかかれませんでしたが、新登場のロゼ泡は体験できました。
相方のチャドウィック氏はアコンカグア・コスタの秀逸なシャルドネとピノ・ノワールを披露。さらに2016年ヴィンテージのリリースにあたり、3つのアイコン・ワインを同時に紹介するという過去にない内容でした。

来日記念ディナー@帝国ホテル レ・セゾン


チャドウィック:スパリュア氏が南ドーセットで手掛けているスパークリングワインです。英国は地球温暖化の好影響で有望な産地になっており、英国産スパークリングは未来の産地として注目できます。


3つのアイコン・ワイン!
(左から)ドン・マキシミアーノはレ・セゾンの伊藤靖彦ソムリエ、マギー嬢、ヴィニェド・チャドウィックはチャドウィック氏、セーニャはヴォワザンシェフが手にしています。

チリワインの凄さを世界に知らしめたチャドウィック氏は次なるステップを「テロワールの表現」とコメント。今回愛娘4人のなかの長女マギーさんを同行し、同席メンバーに「マギーは弊社のブランドアンバサダーであり、未来へ向けての存在そのもの」と紹介していました。エラスリスの新たなる発展、未来への動きです。
https://twitter.com/errazurizwines/status/1057014358881038341


ティエリー・ヴォワザンシェフの極上料理に合わせて

鱒とハーブのアミューズ・ブッシュに合わせたのは『ブラン・ド・ブラン2014』

私が初めてブラン・ド・ブランを味わったのは2016年9月で、ヴィンテージは2013年、ナビゲーター役はスパリュア氏でした。
1990年代初め、英国産スパークリング『ナイティンバー』が話題になり、英国ではその後、次々に素晴らしい泡ものが登場。スパリュア氏は2007年にV&Sでジャン=シャルル・ボワセ氏と出会い、その縁でプロジェクトを立ち上げ、スパークリングワイン造りに着手。奥様が南ドーセットに購入した土地に、2009年ぶどう樹を植樹。ボワセ氏の協力のもと、ブラン・ド・ブランを生産。南ドーセットは冷涼気候でシャンパーニュ地方と同じ石灰質(チョーク)土壌です。 「フレッシュで、白い花を彷彿とさせるアペリティフに合うスパークリングワイン」が理想と語っていました。

昨年10月末に試飲した2014年ヴィンテージは明るいレモン色、白い花、白桃、白胡椒、青リンゴのニュアンス、爽快&軽快な味わい、中盤以降に広がるミネラルがアミューズブッシュの塩味と相乗して◎

アコンカグア・コスタの“ピサラス”という名のワイン
ピサラスとはスペイン語で粘板岩を意味しています。「ブルゴーニュの地質調査の専門家フランソワーズ・バニエ - プチ女史に依頼して、特に片岩の多い場所をリサーチしました。根が深く伸びるので、ミネラル豊かで、自社畑の中のグラン・クリュと言える場所です」とチャドウィック氏。土地を購入したのは2005年で、すでに13年経過しています。土壌の名をワイン名にしたのは、エラスリスが追及している“テロワールの反映”、未来への思いを重ねています。
ヴィンテージは2017年、この年は2016年より日照度があり、収穫も3月第1週と少し早目でした。果実の凝縮感と骨格、深み、ミネラルを備えたワインで、生産本数は6000本のみ。


シャルドネは早朝収穫し、丁寧な選果後、ソフトに圧搾、100%全房、天然酵母、36日間の醸し、MLF35%(年によって異なる)、樽熟成9ヵ月、フレンチオーク100%(新樽15%、使用樽2~3年85%)、アルコール度数13%、チャドウィック氏は「石灰やレモンのキャラクターが特徴。パーカーポイント98点でチリ最高の白ワイン」とコメント。
私感:ブルゴーニュ型の大ぶりのグラスで、温度変化や層になって広がる香りや味わいを満喫。ピュアでエレガント、卓越したミネラル感、守備範囲の広いワイン。


セープ茸のカプチーノイベリコ産生ハムをあしらって
ティエリーシェフのスぺシャリテとも言える逸品
私感:スープの滑らかさと旨味、ハム由来の塩味をワインが優しく包み込む至福のマリアージュ、美味!

ブルゴーニュに拮抗しうるワイン


チリの赤ワインと言うと、カベルネやカルメネールを思い浮かべますが、1990年初頭から、海に近い冷涼なコースタルリージョンでのワイン造りが始まりました。カサブランカを筆頭に、レイダ、サン・アントニア、リマリ等。アコンカグア・コスタで最初にワイン造りをしたのはエラスリスで、畑に片岩が多いのが特徴です。2017年は4番目のヴィンテージになりますが、年々品質が向上していて、このワインにはときめきを感じました! 
点数評価を書くのは本意ではないのですが、ジェームス・サックリングはファーストヴィンテージの2014年に98点、2015年に99点、2016年に99点、2017年に98-99点を付けています。


ケース買いして毎年経年観察したくなったピノ、今飲んでも熟成させても美味!

ぶどうは除梗80%、全房20%。厳しい選果の後、低温での醸し、小型の開放式発酵槽へ。発酵後も醸しを継続、樽熟成13ヵ月、フレンチオーク100%(新樽35%)、アルコール度数13%


フォアグラのソテー フヌイユ(フェンネル)と青梅
私感:歯ごたえの異なる食材(ふわふわのフォアグラやフェンネル)や味覚の違い(ソテーの甘味や梅の酸味)を堪能。果実味と酸味ときめ細かなタンニンを備えたバランス感覚抜群のワインとの相性も◎

2016年ヴィンテージの同時披露
来日記念ディナーで、チャドウィック氏は、『ヴィーニャ・エラスリス』、『ヴィーニャ・セーニャ』、『ヴィーニャ・チャドウィック』の各アイコン・ワインの新ヴィンテージ2016年を同時に披露しました。2016年は直近の10年間で最も冷涼。ぶどうが熟すのに時間を要しましたが、「暑い年より涼しい年のほうが、自分が求めるワインスタイル(フィネスとエレガントさ)が表現できる」と語りました。


ドン・マキシミアーノ・ファウンダーズ・リザーヴ2016

ヴィーニャ・エラスリスのフラッグシップワイン。創始者ドン・マキシミアーノは1970年にはカベルネ・ソーヴィニヨン100%でワイン造りをしていました。海から65㎞内陸に位置し、ワイナリーを取り囲むようにぶどう畑(MAX1~7)があり、砂利の多い場所にはカベルネ・ソーヴィニヨン、粘土の多い場所にはカルメネール、海岸寄りの冷涼エリアにはソーヴィニヨン・ブランやピノ・ノワールを栽培しています。

産地:アコンカグア・ヴァレー、ぶどう品種:カベルネ・ソーヴィニヨン69%、マルベック12%、プティ・ヴェルド8%、カルメネール8%、カベルネ・フラン3%、樽熟成22ヶ月、フレンチオーク100%(新樽65%)、深紫の色調、アロマ豊か、カシスやココア、ブラックチェリー、ブルーベリー、スパイス、シルキーなタンニン、口中滑らかで甘やか


縞鯵の炭火焼き 甘草を香らせたポロネギ モワルのベニエ ソースジェヌボワーズ × セーニャ2016


セーニャが誕生したのは1995年で、最初はヴィーニャ・エラスリスが所有する畑のぶどうから造りました。その後、海から40kmの場所に45㌶の畑を購入。岩が多く、カベルネ・ソーヴィニヨンやカルメネールが成熟する畑、2005年からビオディナミを導入。

産地:アコンカグア・ヴァレー、ぶどう品種:カベルネ・ソーヴィニヨン55%、マルベック20%、プティ・ヴェルド 12%、カルメネール8%、カベルネ・フラン5%、樽熟成22ヶ月、フレンチオーク100%(新樽73%、使用樽15%、フードル12%)、フローラル&フェミニンなワイン、「2015年は100点満点でしたが、個人的には2015年より冷涼年の2016年のほうが好み」とチャドウィック氏


雷鳥のインペリアル風 × ヴィニェド・チャドウィック2016

チリ最高のカベルネ

ヴィニェド・チャドウィック2016

アコンカグア・ヴァレーから南に100km、マイポ・ヴァレーにあるプエンテ・アルトはチリの伝統的なぶどう品種カベルネ・ソーヴィニヨンの銘醸地。1880年代からぶどう生産をしていました。1992年、チャドウィック氏は父親がリタイアした後、会社に入社。かつてのポロの競技場だった場所が現在チリ屈指のぶどう畑になっています。 
産地:マイポ・ヴァレー プエント・アルト、ぶどう品種:カベルネ・ソーヴィニヨン97%、プティ・ヴェルド3%、樽熟成22ヵ月、フレンチオーク100%(新樽80%、使用樽10%、フードル10%)、アルコール度数13%、フレッシュさと品の良いエネルギーを備えたチリの逸品、最もこころ惹かれたワイン!


(左から)
英国産スパークリングのブラン・ド・ブラン2014、ロゼ・ベラ2014、ヴィニェド・チャドウィック2016、セーニャ2016、ドン・マキシミアーノ・ファウンダーズ・リザーヴ2016、ラス・ピサラス・ピノ・ノワール2017、同シャルドネ2017


ベルガモットを香らせた葡萄のソルベ × ブライド・ヴァレー・ロゼ・ベラ2014
“ベラ”はスパリュア氏の妻の名前。2014年ヴィンテージはこの100年間で2番目に温かかった年で、果実味、糖分、酸味ともに満足できるものでした。ピノ・ノワール58%、ムニエ17%、シャルドネ25%で、製法はブレンドではなく、マセレーション。色調は深みのあるオレンジ、泡はスムース、野イチゴ、切れの良い酸味、若干タンニンのニュアンス、軽快な印象。


カシスのジュレとフロマージュブランを合わせた葡萄


エラスリスの看板娘マギー嬢はラス・ピサラス・ピノ・ノワール2017
私はスパリュア氏のロゼ・ベラ2014を持って“Into the Future”にエールを送りました!

[わーい(嬉しい顔)]嬉しい情報
エラスリスのセラーで瓶内2次発酵のスパークリングワインがまどろんでいます。シャルドネとピノ・ノワールのブレンド、シャルドネ100%のブラン・ド・ブランの2タイプで、今年か来年リリースされる予定です。
正式な時期はエラスリスのテクニカル・ディレクター、フランシスコ・ベッティング氏と輸入元ヴァンパッションの川上大介氏による利き酒と話し合いで決まる模様。ラス・ピサラスの畑の秀逸なぶどうから造られるので、期待が高まります。エラスリスからデビューする2種の泡ものも、Into the Futureです!

関連ページ
Look Back in Wonder
~1976年パリ・テイスティングと2004年ベルリン・テイスティングを振り返る~
https://non-solo-vino.blog.so-net.ne.jp/2016-09-23
■Viña Errazuriz ヴィーニャ・エラスリス
URL:http://www.errazuriz.com/en/
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2018年12月21日

ミモザの日のCPに向けてシャンパンメゾン『ジョセフ・ペリエ』のオットー取締役来日!!

1825年シャロン・アン・シャンパーニュに設立したメゾン『ジョセフ・ペリエ』

ジョセフ・ペリエのフラッグシップ『キュヴェ・ロワイヤル』
英国のビクトリア女王とエドワード7世の御用達になったことから“ロワイヤル”という呼称を与えられました。また、スウェーデン王室のグスタフ国王からの信頼も篤く、ノーベル賞授賞式晩餐会にも重用されています。2012年に山中伸弥教授がノーベル生理学・医学賞を受賞した折の晩餐会には、ブラン・ド・ブランがふるまわれました。

現当主は5代目ジャン・クロード・フルモンCEO、ご子息ベンジャミンさんが次期当主として参画しています。
ジョセフ・ペリエ社はファミリー経営のメゾンです。書類上の社長は2020年内までジャン・クロード・フルモン氏になりますが、実質的に社長として活動しているのは6代目のベンジャミン・フルモン氏(2020年2月追記)



来年3月8日の国際女性デーに合わせて“ミモザの日”キャンペーンを実施。



シャロン・アン・シャンパーニュの位置

マルヌ県の県庁所在地がシャロン・アン・シャンパーニュ(矢印↓部分)


ローマ人の遺跡 ガロ・ロマン時代の石切場
ジョセフ・ペリエの年間生産量は75万本、アイテム数は9つ
全長3kmのセラーには2~3百万本のシャンパンがまどろんでいます。


ミモザキャンペーンの一環で来日したオットー取締役

日本通のオットー・プシュビラ取締役

オーストリア・ウィーン出身のオットーさんの趣味はクッキング。世界で好きな料理は日本、イタリア、フランス、中国の順番だそうで、特に「日本とイタリアは洗練されている」とコメント。生もの(白子やウニ等)や納豆が好物で、銀杏は市場で購入して持ち帰るくらいのこだわり。「ビタミンEが豊富だよ」とおっしゃっていました。柚子やワサビ、山椒のような和のスパイスにも精通していました、さすがです。

メゾンの最新情報としては、昨年(2017年)からナタリー・ラプレイジュ女史がシェフ・ド・カーブに就任。フルモンCEOの従兄弟にあたる敏腕な起業家アラン・ティエノーさんがオーナーのシャンパンメゾン『アラン・ティエノー』や『ヴーヴ・クリコ』で研鑽を積んできたそうです。
ジョセフ・ペリエはフェミニンな印象のシャンパンなので、ナタリーさんの参入で、より洗練された味わいになりそうです。

プレスランチに登場したアイテム (右から供出順)
#1:キュヴェロワイヤル ブリュットNV
#2:キュヴェロワイヤルブランドブラン
#3:キュヴェロワイヤル2008
#4:キュヴェロワイヤルロゼ
#5:キュジョセフィーヌ2008

ミモザの日にちなんだオリジナルメニュー@六本木L'ESSOR レソール



花束をイメージした特製グラスにはミモザの絵柄!


中村元紀シェフのオリジナルメニューは春のウキウキ感満載

前菜

ミモザをイメージした完璧なひとさら サラダコンポゼ“ミモザ”


口中ではかなく溶けていく食感がブリュットの滑らかなタッチと渾然一体


カリフラワーとサーモンのテリーヌ アニス風味のマヨネーズ添え
2012年ノーベル賞晩餐会に供出されたブラン・ド・ブラン。中村シェフはその時のひとさらを再現。


クリーミー!
和食なら茶碗蒸しが合うと思ったので、オットーさんにその旨を伝えると、なんと、「茶碗蒸しは自分でもよく作るよ」とのお返事。相性についても同意してくださり、その話から “銀杏”談義に。


ミネラル感豊かな2008年ヴィンテージ


アンコウのロティ ソース・ヴァン・ブラン セップのフリカッセ
食通のオットーさんも絶賛、きのこやトリュフ、ソースとナイスマリアージュ


NVから飲み進めていくことで、味わいの“密度”も濃くなってくるのがわかります。

肉料理

ピジョン・ラミエ むね肉のロースト もも肉のコンフィ
ソースマデール フランボワーズのアクセント


中村シェフの気合いの入ったひとさら
当日のマイベストはキュヴェ・ロワイヤル・ロゼ。温度変化で熟した果実味や軽いタンニン等、様々な要素が出てきて魅力的でした。むね肉のロースト、もも肉のコンフィともにロゼの微量なタンニン、ミネラルとうまく引き合い、納得のマリアージュ!

デザート

魏国飛スーシェフがデザートをプレゼンテーション


美味美味、ナポレオンパイ


創始者ジョセフ・ペリエの愛娘ジョセフィーヌの名を冠した最高級キュヴェと合せて!

■製品についてのお問い合わせは株式会社JALUX ワイン部 ℡03-6367-8756
URL: http://www.jalux.com


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2018年12月09日

バローネ・ピッツィーニの真髄フランチャコルタを『銀座いわ815』のお鮨に合わせて!

1870年からの長い歴史を有すフランチャコルタ
  ~NIENTE IN NATURA È SANZA RAGIONE Leonardo da Vinci ~
自然のなかに理由のないものはない レオナルド・ダ・ヴィンチ


#1:フランチャコルタDOCG ブリュット‘アニマンテ’NV
ぶどう品種:シャルドネ78%、ピノ・ネロ18%、ピノ・ビアンコ4%、標準希望小売価格:4,000円(税別)
#2:同DOCG ナトゥール2013
ぶどう品種:シャルドネ60%、ピノ・ネロ40% 標準希望小売価格:5,000円(税別)
#3:同DOCGサテン2014
ぶどう品種:シャルドネ100% 標準希望小売価格:5,500円(税別) 
#4:同DOCG ‘バニャドーレ’ ノン・ドサート・リゼルヴァ2009
ぶどう品種:シャルドネ50%、ピノ・ネロ50% 標準希望小売価格:7,000円(税別) 
#5:同DOCG ロゼ2013
ぶどう品種:ピノ・ネロ80%、シャルドネ20% 標準希望小売価格:6,000円(税別) 


輸入元は(株)アルカンワイン営業部

℡03-3664-6591


11月下旬、伊ロンバルディア州のバローネ・ピッツィーニ

(BP) から、日本文化や食に造詣が深いシルヴァーノ・ブレシャニーニ取締副社長が来日。BPが誇るフランチャコルタ5種を銀座いわ815

で岩央泰氏のお鮨に合わせて探究しました。



ブレシャニーニ氏は1967年フランチャコルタの中心地エルブスコ生まれ。4代前の祖先が当地でぶどう栽培とワイン造りをしていたとのこと。2011年から年に1~2回来日しており、日本の文化や食を高く評価しています。ミラノにあるエツィオ・サンティンのレストラン『アンティカ・オステリア・デル・ポンテ』でソムリエとして働き始めたことがワイン界に入るきっかけになりました。1992年からバローネ・ピッツィーニに参画、現在はBPの顔として世界中を飛び回っています。


岩央泰氏は『久兵衛』や『鮨かねさか』で修業した後、独立。ミシュラン1つ星を獲得し続ける江戸前すし『銀座いわ GINZA IWA』の店主です。

素材のシンプルさを生かして

水タコ&自家製の柚子胡椒 × アニマンテNV
水タコ&ワサピ × ナトゥール2013


口開け#1のアニマンテはBPを代表するアイテム
BPは1998年からオーガニック栽培に取り組み、2001年に認証を取得。フランチャコルタでは有機栽培のパイオニアとして良く知られています。

(前列左側にあるグラス) アニマンテ ANIMANTE は英語ではANIMATEで、“生命を吹き込む”を意味する言葉。つまり、土壌のなかで命が宿り、そこで培ってきたぶどうから生まれたワインがワイナリーの主力となるアイテムの名前になっています。
ちなみにBPは2014年からミラノ大学が推進するプロジェクトの一員として、土壌のなかの有機物とぶどう&ワインの関連を検証、立証する作業を進めています。ただし、研究に関する刊行物等はまだ発表されていないとのこと。

ブレシャニーニ氏の大好物“雲丹”との相性

世界的人気の日本産雲丹× #2NATURAE ナトゥール2013は双方の鉱物的要素が絶妙、これはシームレスなマリアージュ!
ラテン語で“自然”を意味し、BPでは■ナチュラル ■しっかりしたストラクチュア ■長期熟成、の3要素をナトゥーラエの特徴にしています。

さらに高いハードル“なまこ”

海外の方にとって“ナマコ”はどうかなと危惧。でも、要らぬ心配でした。
ナトゥールの酸味とお料理の出汁の旨味が素晴らしく良く合い、マリアージュを堪能しました。


白身は#3SATEN サテンに合わせて。
サテンは和食との相性が良いと追われているアイテム。BPでは■白ぶどうのシャルドネだけ ■通常のガス圧より1気圧低い5気圧 ■エレガントでシルキーな口当たり、の3条件を厳守。樹齢は15~20年、リリースする時はすべてヴィンテージもの、瓶詰前の熟成には30%バリックを使用しています。

白子に唐辛子の風味を生かして

美しい白子!


#4BAGNADORE バニャドーレ2009 × 白子
樽使いの旨さ(40%)と白子の焦がし具合が相乗、口中でトロリと溶け合う食感最高!
#5 ROSÉ ロゼ2013とは唐辛子を少し使うことでスパイスの風味とかすかなタンニンがマスキング効果、こちらもナイスハーモニー

バニャドーレの名前は共同経営者のひとりが住んでいた場所に由来、唯一の単一畑で、面積は3㌶(シャルドネ2㌶、ピノ・ネロ1㌶)、作柄の良い年だけ生産 (2010年、2017年は生産無し)、すべての収穫で一番遅いのがこの畑。ドザージュ・ゼロ、ティラージュ前の熟成に40%樽を使用。酸味が余韻まで残る印象。

包容力のロゼ

ロゼ2013 × もみじおろしを添えたナマコ、お薦めのマリアージュ!
「良いロゼを造るには良いピノ・ネロが必要で、私がパーフェクトと言う時は品質が200%と言う意味です。ロゼの色は毎回同じではなく、その年の作柄が色調や味わいに出てきます。2014年は寒かったので、2013年と比べると淡い色をしています」とブレシャニーニ氏

脂分の多い魚介類はロゼやバニャドーレで

4~5日寝かせたコハダ、参加者全員一致でバニャドーレ、感嘆!


ブリにもロゼ!


赤身もロゼと好印象


中トロにはバニャドーレ、ロゼも◎

Q:地球温暖化の影響はどうですか?
A:気候変動はあっても暑くなるだけではなく、年によっては雨が多く、寒い年もあります。2014年がそうですし、2018年もそのような傾向でした。逆に2012年や2015年は乾燥した暑い年でした。土のなかでは有機物を持つことが大事です。2015年のような猛暑では緊急対応として灌漑が許されたのですが、BPでは20年前から土にこだわってきたので、灌漑することもなく、何の心配もなかったです。

Q:ドザージュ量に変化は出ていますか?
A:フランチャコルタはシャンパーニュよりドザージュは少な目です。今回試飲したアイテムも2つ(ナトゥール&バニャドーレ)は糖分添加ゼロですし、他のアイテムは5g/L以下になっています。

こぼれ話
PRを担当している 『aDue』の代表 永峰詢士氏と山田久扇子氏は、岩氏のお鮨ファンということで、プライベートでもBPのフランチャコルタとの相性を楽しんでいたようです。ゆえにマリアージュは、おふたりの総決算と表現したいくらいの、体験に裏打ちされた見事な組み立てでした! 
加えて、ピア二ストでもある山田氏の粋な計らいは、BGMに使っていたモーツァルト。
以前BPを訪問した折、カンティーナの地下に彼の肖像画が飾ってあったので、その訳を聞いたそうです。BPの担当者は「モーツァルトは生涯で2度イタリアを訪問しており、12歳の時、父親と一緒に、バローネ・ピッツィーニの屋敷に滞在しました」と回答。その縁あって、今回はモーツァルトを聴きながらの贅沢なプレスランチョンになりました。

終盤、「お寿司屋さんに1本だけ持ち込むとしたら、どれを選びますか?」との質問がありました。
ワイナリーの顔のアニマンテやガス圧の低いサテン、ノン・ドゼのナトゥール等、それぞれに魅力があります。私はバニャドーレかロゼで迷いましたが、1本選ぶなら守備範囲の広い『ロゼ』

シャンパーニュに拮抗するバローネ・ピッツーニのフランチャコルタ、その底力、実力に感嘆しました。1990年代から、土着品種を見直す動きが出始めていて、研究も進んでいる由。数年後には、イタリア固有品種を使ったフランチャコルタの発売もありそうなので、その日を楽しみに待ちたいと思います。
素晴らしいひとときの共有、ありがとうございました!


[レストラン]ミシュラン2019も1つ星の
銀座いわ 東京都中央区銀座8-4-4 三浦ビル1F ℡03-3572-0955
銀座いわ815 東京都中央区銀座6-3-12 数寄屋ビル1F ℡03-3573-1815
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2018年11月16日

ジョルジュ デュブッフのアドリアン輸出部長来日 週末にボジョレー・ヌ―ヴォーを楽しもう!

ボジョレーの帝王ジョルジュ・デュブッフ当主からのメッセージ

2018年のボジョレーは格別な年でした.
天候は理想的で、母なる自然の恵みに満ち溢れています.
とてもフルーティで魅力的なワインに仕上がりました.


ボジョレー・ヌーヴォーの解禁日には必ず来日なさっていたジョルジュ・デュブッフ当主
解禁のカウント・ダウンで何度もお目にかかっていましたが、今年は輸入元サントリーワインインターナショナルの招聘で、孫のアドリアン・デュブッフ・ラコンブ輸出部長が全権大使としてひとりで来日。アドリアンさんは昨日大阪でのイベントに出席、本日早朝、新幹線で東京に帰還しました。
デュブッフ当主は今年は自宅で愛妻とヌーヴォーを楽しんでいるそうです。御年85歳なので、無理せず、今後は現地で解禁を楽しんで欲しいと私は思っています。




2018年は春先に降雨が続いていましたが、当主は「適度な雨が潤いをもたらした」と表現。夏の日照と乾燥のおかげでぶどうは健全に生育、収穫開始は8月27日で、昨年より若干早め。2017年は雨がほとんど降らず、ぶどうはかなり苦しんだようで、ボジョレーが基準にしている収量には至りませんでしたが、今年は60hl/㌶と十分な量が取れました。

今年のボジョレー・ヌーヴォー

「フレッシュなイチゴと完熟したブルーベリーをバスケットに詰めたような魅力的な香りで、まるみを帯びたなめらかな味わい」と当主からのお言葉


プレスメンバーは全員女性、女子会のノリで乾杯

昨年デビューしたボジョレー・ロゼ

ウェルカム・ドリンクはデュブッフ当主の思いがこもったロゼ!
今年は米国への輸出も快調とのこと。また、トラディショナルなベルギー、ルクセンブルグ、オープンマインドなイスラエル、スウェーデンがロゼを輸入しているようです。サーモンマリネをレモンと一緒に食して◎


定番のボジョレー・ヌーヴォーはフルーティでラズベリーやブラックカラントのニュアンス!
サントリーワインインターナショナルでは “金曜日にヌーヴォーを購入して週末に楽しむ”
2018年はそのような飲み方を提案しています。


丸の内ワイン倶楽部が考案した料理に合わせて

6種の前菜、サーモンのマリネ、四元豚のトンカツ グレービーソース、ポテトフライ ハーブ&スパーシー、ナポリ風ピッツア、5種のフランスチーズ(左からトム・ド・モンターニュ、シェーヴル・フレ、フルー・ド・メメー、オリヴィエ・サンドレ、ガレ・ド・ラ・ロワール)
アドリアンさんの一押しは、ボジョレー・ヌーヴォーとトンカツ、ガレ・ド・ラ・ロワール!
ちなみにアドリアンさんの大好物はまい泉のトンカツだそうです。


ドメーヌ・ド・ラ・コルティエール ボジョレー・ヌーヴォー2018 オーガニック・ヴィエイユ・ヴィ―ニュ
ぶどう畑は17㌶、樹齢は35年、定番のボジョレー・ヌーヴォーより色調は淡く、果実味と酸味のバランス良好。参加者からの評価が高かったアイテム

マイベストはセレクション プリュス

例年好印象のヌーヴォー、3年前に黒地に金字&白字のラベルにチェンジ、生産本数が記載されています。現在400軒の農家と契約していて、そのなかの秀逸な7~8軒のぶどうを使ったデュブッフの最高レンジ。毎年最上のものを選ぶので、農家は一定していないとのこと。私は黒オリーブと色で合わせるマリアージュを楽しみましたが、デュブッフ当主のお薦めはお肉(ブッフ)(笑)


アドリアンさんの前席に座っていた特権を生かしたワンショット!


(奥左から)ロゼ、ボジョレー、(手前左から)オーガニック、ボジョレー・ヴィラージュ、セレクションプリュス
色調の違いがおわかりいただけると思います。


2018年ヴィンテージのセレクションプリュス、これはしばらく寝かせてから!

サントリーインターナショナルでは解禁日当日、FUJIWARA と横澤夏子のMCで『生配信ボジョバ』を開催。予定視聴者数10万の予定が17万をクリア、この生配信は18日迄閲覧可能です。
https://www.suntory.co.jp/wine/special/kaikin/live/

ボジョレーを楽しむヒント
https://www.suntory.co.jp/wine/series/knowledge/recommend/gamay.html

■商品に関するお問い合わせはサントリーお客様センター
℡ 0120-139-380
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2018年11月15日

ルイ・ジャドの次世代チボー・ガジェ副社長来日!

本日ボジョレ・ヌーヴォー解禁!

ボジョレワイン委員会は2018年ヴィンテージ(VT)について「しっかりとして味わい深く、同時になめらかで複雑」と評価。2017年、2015年、2009年と並び、珠玉のヴィンテージと絶賛しています。ヌーヴォー市場は減少傾向にありますが、2018年はご期待にしっかりと応えられるVTだと思います!

ルイ・ジャドの次世代チボー・ガジェさん来日
10月末、ブルゴーニュの名門メゾン『ルイ・ジャド社』から、現社長の長男で副社長のチボ-さんが来日し、プルミエ・クリュ、グラン・クリュなど上級レンジを主体としたプレミアム試飲会に出席しました。今回2度目の訪日です。育ちの良さを感じさせる佇まいで、好感度100%!

「日本はブルゴーニュワインを良く知っているので、再度来日することができて嬉しい」とチボーさん。ルイ・ジャドにとって日本は米国、英国に続く市場です。

チボーさんは現在、オレゴンにある『レゾナンス』の代表でもありますが、相棒はルイ・ジャド社で41ヴィンテージを手掛けた天才醸造家ジャック・ラルディエールさん、尊敬すべき造り手です!


ルイ・ジャドのワインを手に

チボー:2018年ヴィンテージは最初の6ヶ月は雨が多かった。夏は乾燥していた。若樹は乾燥に苦しんだが、雨によって土壌に水分が蓄えられていたので、素晴らしい収穫になった。9月初旬には収穫がスタートし、量的にも質的にも満足できるヴィンテージ。2010年から2016年までは雹や霜の害で収量の少ない年が続いたが、2017年はコード・ドール(シャブリやボージョレは苦しんだ) は問題がなく、2年続きで良い年になった。


オレゴンのワインと共に

チボー:オレゴンの収穫は少し遅くて、9月17日からスタートした。昨年は量的にも素晴らしかった。今年はそれより少しだけ量は減るが、ブルゴーニュ同様良いヴィンテージ。

テイスティング会場で

ピュリニー・モンラッシェ PC クロ・ド・ラ・ガレンヌ2015(左) ピュリニー・モンラッシェ PC ラ・ガレン2014


安定した味わいのサヴィニー・レ・ボーヌ PC ラ・ドミノード2013


シャサーニュ・モンラッシェ ルージュ・プルミエ・クリュ モルジョ クロ・ド・ラ・シャペル モノポール2015

当日のマイベスト

コルトン・グレーヴ GC 2011
南東向きでシリカを含んだ土壌、畑はビオデイナミ農法を導入。2011年VTは豊潤でシームレス、エレガント

酒質がきれいなオレゴン

ラルディエールスタイル、年々良くなっていて好印象
11月発売予定
(最左) レゾナンス デクヴェルト・ヴィンヤード ピノ・ノワール2015 8,800円

■製品についてのお問い合わせは日本リカー(株) ℡03-5643-9770
URL: http://www.niwine.com
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2018年11月02日

フェッラーリ社所有の2つ星『ロカンダ・マルゴン』×アマン東京『アルヴァ』のスペシャルコラボ

日欧商事の招聘でフェッラーリ社が所有するミシュラン2つ星レストラン『ロカンダ・マルゴン』のアルフィオ・ゲッツィ料理長が初来日!
11月1日&2日にアマン東京のイタリアンレストラン『アルヴァ』の平木正和シェフとのスペシャルコラボレーションを開催、フェッラーリのヴィンテージスプマンテとの相性にも注目!
詳細は>>>http://www.jetlc.co.jp/event/specialdinner

シンプルな素材を生かす魅力

イタリアンレストラン『アルヴァ』33階からの素晴らしい眺め、富士山も見えて良い予感!



白と黒のスタイリッシュなデザイン!


g
日欧商事のティエリー・コーヘン社長 アルフィオ・ゲッツィ シェフ、平木正和 シェフ

フェッラーリのヴィンテージスプマンテを堪能

(左から供出順に)
#1:フェッラーリ・ペルレ・ミレジム2011
トレントDOC、ぶどう品種:シャルドネ100%、瓶内熟成期間:最低60ヶ月間
#2:同ビアンコ・リゼルヴァ2008
トレントDOC、ぶどう品種:シャルドネ100%、瓶内熟成期間:最低96ヶ月間
#3:同ロゼ・リゼルヴァ2010
トレントDOC、ぶどう品種:ピノ・ネロ80%、シャルドネ20%、瓶内熟成期間:最低60ヶ月間
#4:同ネロ・リゼルヴァ2009
トレントDOC、ぶどう品種:ピノ・ネロ100%、瓶内熟成期間:最低72ヶ月間
#5:ジュリオ・フェッラーリ・リゼルヴァ・デル・フォンダトーレ2006
トレントDOC、ぶどう品種:シャルドネ100%、瓶内熟成期間:最低120ヶ月間


五感を刺激 4種のアペリティーヴォ

ポレンタのポルチーニ


リンゴ、モンタデッラソーセージ、フェッラーリトレントDOCのラヴィオーロ
青リンゴを乾燥させてパウダー状にして生地に。その中のフレッシュな青リンゴをペルレのミレジメ2011でコンポートさせた贅沢な逸品、酸味とスプマンテの味わいが相乗


胡麻、トレント風味ルカニカソーセージと蜂蜜
スペシャルディナー用にイタリアから持ち込んだピリ辛のチョリソーを熟成させて作ったウエハースと蜂蜜、フェンネルの風味が2011と合わせて絶妙


ロカンダ・マルゴン風のモッツァレラ・イン・カロッツァ



アオリイカ、雲丹とグリーンクキャビア by 平木正和シェフ
ガラスの容器の下に隠れているイカ墨のようなグリーンキャビア、色白のイカ、オレンジ色の雲丹をからめて、そこにオリーブオイルを数滴たらして食すと、しっかりした酸を備えた2008年VTで口中が洗い流され、続いて、蜂蜜や白コショウの要素

ヴィジュアル的にも最高

鮪とボッタルガ、野菜のピンツィモーニオとラズベリー by 平木正和シェフ
野菜はビーツ、マイクロキューリ、四方竹(秋の希少な筍)


甘酢っぱいラズベリーのヴェネグレットソースと鮪の相性◎
ビアンコ・リゼルヴァ2008の組合わせのほかに、色で合わせるロゼ・リゼルヴァ2010もお薦め!

シンプル イズ ベストのパスタ

インソーリト・トレンティーノ 古代小麦スパゲッティ、グラナチーズ、フェッラーリ・ペルレ、エキストラ・ヴァージン・オリーブオイル ガルダ・トレンティーノDOPウリーヴァ by アルフィオ・ゲッツィ シェフ

「トレント地方を表現していますが、シンプルな素材を生かす工夫をしています」とゲッツィ シェフ
和食に倣い、無駄なものはすべてそぎ落とし、洗練した味わいを追求したパスタ。少しのバターとガーリックの香り、スプマンテを煮詰め、そこに茹で上げたパスタとソースをからめながら仕上げた一品、イタリアンパセリでアクセント!



「味わいも酸味もしっかりしたロゼと合わせて」とシェフ


岩魚、ラディッシュ焼き、根セロリのソース添え by アルフィオ・ゲッツィ シェフ



岩魚(イワナ)は背と腹を別々に調理
腹の部分はエストラゴンとオリーブオイルをミキサーにかけ、ピューレ状に。上からバーナーで焦げ目をつけ、ソースはセロリとニシンの燻製のエキスを加えて


ピノ・ネロの重厚感と根セロリのソースのとろみ、複雑味が好印象



フェッラーリのトップキュヴェ『ジュリオ・ファッラーリ』をサービス



大きなグラスで熟成感を味わう



仔羊、カモミールとウリデア by アルフィオ・ゲッツィ シェフ



「仔羊は子供時代の思い出の料理」とゲッツィ シェフ
たくさんの動物が身近にいて、フレッシュな草を刈ると、カモミールの香りがしてくるような場所だったそうです。仔羊の骨を使った出汁で、そこに少しだけハーブを効かせた料理と熟成感がありながら、まだフレッシュな酸を纏っている2006年との独特のハーモニー。
「料理の味わいが重いと、スプマンテと衝突するので、その点に気をつけています。スプマンテはぶどう品種、熟成具合によっていろいろな可能性が生まれてくるので、相性を考えるのは楽しいです」とシェフ


デザート by アマン東京のパティシエ
フェッラーリ・ブリュット トレントDOC、カンパリ、ブラッドオレンジ

天井が高く、開放感のある空間『アルヴァ』で、ふたりのスターシェフの逸品に合わせて、フェッラーリのヴィンテージアイテムだけを合せるという贅沢さ。
シャンパンに拮抗する存在のフェッラーリは、ガンベロ・ロッソ・スローフード協会刊“ヴィー二・ディタリア”より、、2019年ワイナリー・オブ・ザ・イヤーに選ばれています。イタリアの2530のワイナリーの頂点に輝く名誉ある賞です。おめでとうございました!
posted by fumiko at 15:23| 来日したワイン生産者&関係者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月14日

シャルル・エドシックのシリル・ブランシェフ・ド・カーヴが語るヴィンテージ&ブラン・デ・ミレネール



シャルル・エドシックのシェフ・ド・カーヴ、シリル・ブラン氏が来日!
タイトなスケジュールを割いて7名のプレス&ソムリエとテイスティングセミナーをしました。

持続の精神を体現するシェフ・ド・カーヴ

似顔絵で描かれているのは歴代の4名のシェフ・ド・カーヴです。
上段が4代目(2015年から)シリル・ブラン氏
そこから時計回りに3代目(2011年から2014年)ティエリー・ロゼ、2代目(2002年から2011年)レジス・カミユ(現パイパー・エドシックのシェフ・ド・カーヴ)、初代(1976年から2002年)ダニエル・チボーの各氏

期待できる2018年ヴィンテージ
11日のセミナー時、「ちょうど2週間半前に収穫を終了し、最初のスティルワインをテイスティングし始めたばかりの段階です」とブラン氏。続けて、「2018年は歴史的なヴィンテージになることでしょう。どのエリアでも品質&数量ともに納得のいく出来になっています。ヴィンテージ、プレステージ・キュヴェともに造れますし、リザーヴワインとしてもキープできます」と語りました。
さらに「酸度は中程度から少し低め、豊かなフェノールに富んでいるので、シャルル・エドシックらしいヴィンテージと言えます。いつも聞かれる過去のどの年と似ているか、どの年と比較できるかという質問ですが、私的には1989年の豊かさと2002年の洗練さを持ち合わせていると思っています。答えは10年後にわかると思います」と。

2017年の収量を考えると、今年はダブルハーベストとも言えるので、シャンパーニュ地方のシェフ・ド・カーヴにはハッピーな年になっているようです。
今世紀は、「8」の付く2008年、2018年ともグレートヴィンテージ、覚えやすいです!


比較テイスティグに登場したヴィンテージについて
2006年は収穫日に差が出た年。収穫量は例年並み。酸は若干低め、果実味とボディは豊か。2005年は収穫はほぼ順調、自然糖度も良好、ピノ・ノワールよりシャルドネが健全生育。2004年は1990年や1982年を上回る記録的な収量年で、果実も健康、成熟度も、酸度も理想的な年。1995年は開花順調、夏は暑く、降雨も少なく、すべてが良好。アルコール度数は高く、酸度は例年並み、予想通りの成熟を見せた古典的な年。 
(出典:シャンパン/ガイアブック)

06年と05年の比較テイスティング
「対照的なヴィンテージ」とブラン氏
シャルル・エドシックに就任した2015年に、ちょうど2005年のブリュット・ヴィンテージがリリースされたばかりだった由。その折、「できれば2006年を先に出すべきだったのでは」と提言したというブラン氏。そのアドバイスの正しさを証明したテイスティングになりました。

第1フライトはブリュット・ヴィンテージ
IM
左が2006年、右が2005年、正反対の個性なのでTPOに応じて!

■2006年はローストしたナッツやアプリコットを連想させるシャンパン。熟成も程よい段階にまで進んでいて、今飲んで美味、香りは開いていて親しみやすく、優しい酸がなんとも魅力、 これから数年間は楽しめる。
■2005年はゴールデンカラーで、フェノール類も多く、より熟成感が出ていて、一本芯が通ったミネラル感も。「飲み始めるのはあと数年待ってから。その後長い熟成も可能」とブラン氏。
■データ
2006年:ピノ・ノワール60%、シャルドネ40%、ドザージュ10g/L
2005年:ピノ・ノワール59%、シャルドネ41%、ドザージュ10g/L
ともに9年間澱とともに熟成させ、デゴルジュマン後に1年熟成。

私的感想:2006年はとにかくチャーミング、フェミニンな印象。飲んで美味しさが伝わる1本。好感度の高いアイテムで、優しい酸が飲み手を大いに癒してくれます。
私の好みは2005年。熟成感があり、ミネラル豊か、層になって広がる旨味、ポテンシャルがあります。
例えとして・・・プロポーズの時に用意するなら、2006年がおすすめ! 
気持ちを和やかにしてくれる味わいなので、相手は「No」とは言わないはず。
同じ部屋に結婚式を控えたハッピーな殿方がいらしたので、彼は何のシャンパンを用意したのかなぁ~なんて考えながら思いついた例えです(笑)

第2フライトはロゼ
ロゼ・シャンパンの権威として知られていたブラン氏は、赴任後、上司にロゼのリリースについて、「2005年より2006年を先に出すべき」と提言しました。2005年を試飲した時、厳格でシャイな印象だったのでリリースするのはまだ早いと感じたからです。一方の2006は開いていてフレンドリーでした。結果、意見が聞き入れられ、2006年が先に市場に出ることに。これはシャルル・エドシック開始以来の出来事で、今までの伝統が破られた瞬間になったとのこと。
ちなみにロゼに使う赤ワインは最初の2日間は8~10度でコールドマセレーションを行い、酵母を添加して発酵させるときは18度で、20度超えないようにしているそうです。

2006年はフェミニン

2006年は過去のヴィンテージで言うと「リッチな1998年に類似しています」とブラン氏
開いていて、わかりやすく、フルーティで、熟成のニュアンスも。
2006年:ピノ・ノワール66%、シャルドネ34%、赤ワイン10%添加

2005年はマスキュラン

2005年は「複雑さがある1979年に似ています」とブラン氏。
豊潤で肉感的、口中では強い存在感、フェノールが豊かなヴィンテージ
「赤ワインをサービスしようか、ロゼ・シャンパンをサービスしようか、迷った時に、2005年のようなタイプを選ぶと間違いない」とブラン氏。
2005年:ピノ・ノワール73%、シャルドネ27%、赤ワイン8%添加
赤ワインの比率に関してブラン氏は「凝縮感があったので8%以上添加できませんでした。10%だと強すぎる」とコメント

私的感想:ロゼに関しては2015年のしっかりとした味わいより、2016年のエレガントなスタイルが好み。ただ、2015年には底力があるので、毎年定点観測していくとその実力がわかって興味深いものになると感じました。赤ワインは2016年より2%控めながら、口中の豊かなテクスチュアは印象的!

ロゼの色決めは黒いグラスを使って
ブラン:視覚の影響を受けないようにすることと味覚で判断することが大事です。そのために黒いグラスを使っています。トライアングルブラインドテイスティングと呼ばれるもので、3つのグラスを使い、そのなかの2種類は同じワインにして行うやり方です。

ヴ-ヴ・クリコにいた時に考えた方法で、ヴーヴでは銘醸畑クロ・コランから造られた赤ワインは他の畑のものより色が濃いので、色を見ただけですぐにわかります。それで黒グラスを使うようになりました。その時のやり方を応用しています。

ロゼに使う赤ワイン造りで大事なこと
ブラン:シャンパーニュのアイデンティティーであるチョークのニュアンスやミネラル感を備えているべきだと考えています。ポイントは ぶどうの熟度だと思うので、潜在アルコール度数が11~11.5%であることが大事です。ぶどうが熟し過ぎてしまうと、そのような部分がなくなってしまいます。地球温暖化とともにぶどうをより熟させるという誘惑にかられることがあるかも知れませんが、我々はブルゴーニュではないので、ブルゴーニュ以下の熟度であることが必要です。それがシャンパーニュのアイデンティティーと考えています。
今、現実問題として危惧しているのが、シャンパーニュの新しい生産者のなかに、地球温暖化のことは知っていても、シャンパーニュのアイデンティティーが何かを知らない人たちがいることです。それにより、ぶどうが過熟する方向に進んでしまう危険性を感じています。


第3フライトはブラン・ド・ブランの逸品ブラン・デ・ミレネール
ブラン・デ・ミレネールはダニエル・チボー氏のコンセプトによって誕生したアイテムで“テロワール”を重視しています。生産本数は通常6万~7万本。リリースしたのは初ヴィンテージの83年、85年、90年、95年、そして2004年の5回だけ。


2015年11月撮影
2回目にリリースされたのが1985年、旨味と複雑味と長い余韻、素晴らしい体験でした!

ぶどう品種はシャルドネ100%、クラマン、アヴィーズ、オジェ、メニル・シュル・オジェ、ヴェルテュの5ヶ村を20%ずつ使用。
チボー氏は各村の個性を分析しており、その特徴については、「クラマン村が柑橘の香り、アヴィーズ村はエキゾチックでトロピカル、オジェ村はボディとフレッシュ感、ル・メニル・シュル・オジェ村はスモーキーさとミネラル、そして、ヴェルテュは花のような香りで、全体の繋ぎをする役目」と。製法はスタート時から一切変えていません。

最新ヴィンテージ2004年はチョーキー

繊細で木目の細かい気泡、レモン、フレッシュバター、アーモンド、中盤以降口中に残る酸の余韻


1995年ヴィンテージは豊潤

市場には流通していないヴィンテージ
チボー氏お気に入りのヴィンテージで通常より多めの生産。2004年より、さらに細かい気泡、泡はワインに溶け込みクリーミー、シームレス、蜂蜜、白コショウ、パン・デピス、果実のコンポート、凛としたスタイル

ブラン氏が興味深い話をしてくださいました。
「今春、セラーに保存していた1995年の最後のバッチ(管理する量の単位)をデゴルジュマンしました。その折、Mytikミティック※1を使い、Jettingジェッティング※2を施しました。将来どこかで、1995年ヴィンテージが出てくるかも知れません」と。楽しみです!

※1TCA(ブショネの原因となるトリクロロアニソール)を100%除去したDIAMディアムのスパークリングワイン用コルク
※2シャンパーニュで近年導入し始めた「ジェッティング(噴射)」は、デゴルジュマンの時に、水と亜硫酸をごく少量(0.15マイクロリットル)噴霧することで、ヘッドスペースの空気を排出させる。これにより、酸素含有量の一貫性が保証され、亜硫酸添加の必要性も低減する。還元的な状態になるので熟成期間も長く保たれ、ボトル差もほとんどなくなる。元々ビール業界で長年行われてきた技法


左は2004年VTでミティック、右は1995年VTでナチュラルコルク
シャルル・エドシックでは2020年頃までをめどに全アイテムをミティックにする予定



画像は左からブリュット・ヴィンテージ2006、同2005、ロゼ・ヴィンテージ2006、同2005、ブラン・デ・ミレネール2004、同1995

“飲めばわかる、それがシャルル・エドシック”
2018年ヴィンテージがリリースされた時に、このフレーズが大いに活用されそうです!

11月6日にシャルル・エドシックを3年振りに訪問します。新装されたテイスティングルームでの試飲も楽しみですが、シリル・ブランシェフ・ド・カーブと再会をお約束できたことが嬉しいです!

■製品のお問い合わせは輸入代理店日本リカー(株) ℡03-5643-9770
posted by fumiko at 23:58| 来日したワイン生産者&関係者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月23日

J・ハリディが高評価した豪州MIKE PRESS WINESの醸造家と新オーナー来日!

私はこのワイナリーに5つ星の評価を与えた。自社畑で生産したワインを、この価格帯で提供できる生産者はほかにいない。   ジェームズ・ハリディ

新オーナーはボブ・ハリス & 松岡ハリス佑子さん

初来日したマイク & ジュディ・プレス夫妻(右側のおふたり)と新オーナーのボブ・ハリス & 松岡ハリス佑子さん

良質なワインは良質な畑から生まれる、また良質な畑は世話をすることでより良くなる
マイクさんは、ペンフォールズでグランジを生み出したマックス・シューベルトのもとで醸造経験を積み、その後、セペルトに移動。ミルダラ・ブラスでは醸造責任者として活躍。
1998年、品質の良いぶどうを栽培して販売するためにマイク・プレス・ワインズを設立し、栽培に専念。ぶどうは当初、大手のワインメーカーに販売していましたが、リーマンショックでぶどうが売れなくなると、自らワインを造り、自らのラベルでの販売を開始。“良質なワインは良質な畑から生まれる、また良質な畑は世話をすることでより良くなる”との信念から、マイクさんは畑仕事から瓶詰めまで、醸造のあらゆる段階に関わっていました。

マイク・プレス・ワインズはアデレード・ヒルズに位置し、ケントン・ヴァレー・ヴィンヤードは約34㌶で、海抜500㍍、冷涼な気候。2/3が北斜面、1/3が南斜面。栽培面積は22.7㌶、品種はSB(2.03㌶)、CH(3.25㌶)、PN(4.06㌶)、ME(3.25㌶)、シラーズ(6.09㌶)、CS(4.06㌶)、今までの経験から経済面と安全性を考えて6品種をセレクトしたとのこと。生産量は2万ケース。

ワイナリー創業から20年が経過し、そろそろリタイアを考えようと思っていた時に、新オーナーとの出会いがあり、新たな人生を選択したマイクさん。マイク・プレス・ワインズで引き続き、醸造を担当しています。




私が試写会で観たのは唯一『ハリー・ポッターと秘密の部屋』だけですが・・・
松岡佑子さんは『ハリー・ポッター』シリーズの翻訳者としても良く知られています。


豪州の大御所が認めたワインはすべて1,800円

(右から左の順に)
#1:2017 Sauvignon Blanc   
北斜面で栽培しているSB、日当たりが良いので早く収穫できるとのこと。
フルーツ味を抑えたスタイル、ハーブや柑橘果実、香りは強すぎず、全体に控えめ、中盤から酸味の広がり

#2:2017 Chardonnay
フローラルさを生かしたスタイル、コストがかかるので樽は使用せずステンレスのみ。淡イエローカラー、メロンやリンゴ、ミネラル、生き生きした酸味、口当たりの良いワイン
#3:2017 Pinot Noir Rose
#4:2016 Pinot Noir
「ピノは好きな品種であり、クローン(777)を変えてから、品質がとても良くなりました。育てるのが難しい品種で、樹勢が強いので、しっかりと手を入れていかないといけない」とマイクさん。果実味、アーシーさ、スパイス、細やかなタンニン、1,000円台のピノとしてお薦め
#5:2016 Shiraz
樹齢90年のぶどう樹をカッティングして接木したシラーズ。「熟成にアメリカンオーク(古樽)は必要(フレンチオーク併用)。シラーは力強いのでオーク由来のヴァニラが合う。過熟させないことが大事」とマイクさん。1,800円で購入できる魅力的なシラーズ!
#6:2016 Merlot
樹齢20年、ワイナリー創業時、植樹したメルローは柔らかさのある味わい。J・ハリディは「マイク・プレスが栽培する4つの赤品種では、メルローが最もアデレード・ヒルズの気候に合っている」とコメント。ブラックベリーやストロベリー、スパイス、アメリカンオークとフレンチオークを併用
#7:2016 Cabernet Sauvignon
色調はガーネット、フレンチオークで16ヶ月熟成、カシス、ブラックオリーブ、タンニン滑らか、味わいしっかり
 

マイク・プレス・ワインズ × Weberグリルアカデミー × グラズマターズのコラボ


世界 No.1シェアのBBQグリルメーカー Weber(ウェ-バー)社が日本に進出してBBQに関する正しい知識と「焼くだけ」ではないBBQグリルの可能性を広く普及するために開設したのがグリルアカデミー。下準備からグリルのコツまで専属シェフに学びながら、食材を自分たちで料理し、ワインとともに楽しむ体験型ワークショップです。

ローカルフードを反映させるというコンセプトがあるので、当日はマイク・プレス・ワインズが本国に帰った時に、応用できるような料理が提案されました。我々も料理に挑戦しながらマリアージュを楽しみました。



ホイップしたゴートチーズと杉板スモークサーモンのミニオープンサンドウィッチ
「すべてのワインを試飲して料理を考えましたが、SBの酸がとても印象に残りました。そこで、酸を生かしながら、相性の良いシェーブルと梨を組み合わせ、(レバーグリルを使い杉板の香りを生かした)スモークサーモンにディルを添えています」と高瀬健マネージャー


脂で3時間程下ごしらえした鴨



松岡さんも鴨料理にトライ、Weber社が誇る蓋付のBBQグリル


蓋付だから美味しい
アメリカで本格的なBBQ文化が取り入れられたのは1952年のこと。
Weber社の先代の社長がBBQグリルを作るに至った経緯は・・・
海で使う金属製のブイを作る工場で働いていた時、12名の子供がいたので、妻の仕事を軽減させる意味で、(日本で普及しているような形の)BBQグリルを使い子供たちに食べさせていました。ところが子供たちからの味の評価は最低。ある日、海を見ていて、ブイを真っ二つに切り、蓋を使った器具のアイデアがひらめき、実現させることに。それがWeber社のグリルで、ブロック肉や大きな魚が焼けるのが特徴です。


新アイテムのロゼ


鴨のコンフィー、白菜と大根のオレンジ煮
3~4年前にプロヴァンスに行き、ロゼの印象が良かったので、ジュディさんから「ロゼも造って」とリクエストされて新規に加えたアイテム
「オーストラリアではグルナッシュを使うことが多いのですが、ピノ・ノワールはシャンパーニュの主要品種であり、色もきれいで、フレーバーも良く、自己主張しない点から選びました」とマイクさん


高瀬マネージャーがマグロの味付けを指導


山椒とハーブ風味のマグロのたたき、柑橘風味のオリエンタルソースかけ
シラーズのミント、ユーカリ、スパイス等のニュアンスがマグロの味わいと合って◎



Weberスタイル豚のチャーシュー、ポレンタケーキ添え × メルロー


この日のマイベストはシラーズ!

ヴィレッジ・セラーズが長年かかって開発したグラズマターズ

収納・保管、軽量で持ち運びにとても便利
好きな形に連結して使えますし、洗浄機にもそのまま入ります!


グラズマターズ

は現在、特許出願中。
ヴィレッジ・セラーズのリチャード・コーエン社長の会心の作です!


■製品についてのお問い合わせはヴィレッジ・セラーズ株式会社
℡0766-72-8680
http://www.village-cellars.co.jp
■Weberグリルアカデミー
https://www.weberpark.com/
■MIKE PRESS WINES
http://www.mikepresswines.com.au
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2018年07月26日

ピエモンテ『La Scolca』から5代目キアラ・ソルダーティ女史来日、15年熟成のスプマンテを披露!!

来年100周年を迎える『テヌータ・ラ・スコルカ』

伊ピエモンテ州の名門『テヌータ・ラ・スコルカ』から5代目のキアラ・ソルダーティ女史が初来日して、パレスホテルの『和田倉』でガヴィ&スプマンテとのマリアージュを楽しみました。
ラ・スコルカとは、「Sfurca (注意)」と、以前監視所だった農家が由来のネーミングです。すべて自社畑(50㌶)で栽培を行っています。表記はしていませんがビオディナミ農法を導入、世界50ヶ国に輸出しています。6代目になるご子息は現在14歳。2019年に創業100周年を迎えます!

和田倉の料理長の小粋なおもてなし

小暑とは二十四気のひとつで、夏至から数えて15日目、陽暦では7月7日七夕の頃をさします。昔は“梶の葉”の裏に願い事を書く風習があったようです。


ピエモンテ州が誇る偉大な白ワイン、ラ・スコルカでしか造れないガヴィ ・デイ・ガヴィ[レジスタードトレードマーク]2016

ガヴィ・ロヴェレートの丘陵地帯の樹齢60年のコルテーゼ100%、土壌は粘土質、ステンレスタンクで発酵、シュル・リーで7ヶ月間熟成させ、毎年4月に瓶詰。若くても10年位熟成させても楽しめるワイン、生産本数30万本。緑がかった輝きのあるイエロー、酸味フレッシュ、ミネラル、白い花、コルテーゼの特徴とも言えるアーモンドのニュアンス、希望小売価格8,000円(税抜)。
アスパラガス、お豆腐と合わせてガヴィ◎、「モダンなワイン」とキアラさん。
トム・クルーズの結婚披露宴に供出され、2013年のスキーワールドカップ(スイス)や2014年のソチオリンピックでも使われたガヴィの中のガヴィ!

コルテーゼ100%のスプマンテ2種登場!

西村圭太郎チーフソムリエの丁寧なサービス


瓶内2次発酵で造ったスパークリング ミッレジマート2009
ガヴィ・ロヴェレートのガヴィDOCG丘陵地帯のコルテーゼ100%、72ヶ月以上の瓶内熟成、ドザージュ4g/L。明るい黄金色、気泡細やか、口中クリーミー、柑橘系果実、蜂蜜やトロピカルフルーツ、アーモンド、チョコ、白胡椒、希望小売価格9,000円(税抜)
帆立と、添えてあったライムを一緒に食して口中渾然一体、得も言われぬ味わい。


彩り、食感、風味等、味わいが異なる三重奏!



ヌタ(胡瓜)と良い相性

日本未入荷の逸品

10年以上の熟成を経た『スプマンテ・ブリュット・リゼルヴァ・ダンタン[レジスタードトレードマーク]2003』


IMG_4458 (2) 泡2003年.jpg
標高400mのガヴィDOCG丘陵地帯で収穫されたコルテーゼ100%のスプマンテ、瓶内2次発酵、手作業主体、瓶内熟成最低10年、ドザージュ4g/L、最良年にしか生産しない数量限定アイテム(約1,000本)、初ヴィンテージ1982年。
黄金色で気泡はワインに溶け込み口中ねっとり&滑らか、ビスケットやアーモンド、ミネラル、塩味と旨味と複雑味、日本上陸を期待したい逸品、希望小売価格12,000円(税抜)



キアラさんがお気に召していた揚げ物
スプマンテが口中の脂分をきれいに洗い流してくれました!


視覚&味覚でナイスだったゼリー
ワインの酸味とも良く合います

■製品についてのお問い合わせは日欧商事東京本社 ℡03-5730-0311
http://www.jetlc.co.jp/brand/winery_info/w_introduction?WineryM_SEQ=9
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2018年07月18日

注目! サヴォワ・ワインと和食とのマリアージュ@割烹「小田島」

品格あるサヴォワ・ワイン

画像左から)ニコラ・エフランさん、小田島オーナー、大越さん、小田島大祐さん

1979年創業の家族経営ワイン&スピリッツ会社GCF(本拠地:アルザス)からサヴォワスペシャリストのニコラ・エフランさんが来日。六本木の割烹「小田島」のムッシュこと、小田島稔オーナーの料理に合わせて、ザヴォワ・ワインと和食とのマリアージュを楽しみました。相性についての解説は大越基裕さんが担当なさいました。


サヴォワ・ワインの概要


■サヴォワ県は、東側はイタリアと、スイスとも国境を接しています。面積は東京都の3倍(6,028㎢)、人口は東京都の32分の1(約43万人)、冬のスポーツ(スキー)が人気、農業ではチーズの生産で有名
■栽培面積:2100㌶、ぶどう畑は標高250~500mに位置し、ぶどう品種は23 、その多くは固有品種で、代表的な白ぶどうはジャケールやアルテス、黒ぶどうはモンドゥーズやペルサン。サヴォワのぶどう畑の90%がAOP(原産地保護呼称)。白ワイン70%、赤ワイン20%、ロゼワイン5%、スパークリング5%の比率


GCFとパートナーシップを結んでいるメゾン・フィリップ・ヴィアレ所有の3ドメーヌ
ドメーヌ・レ・フィス・ドゥ・ルネ・ケナール/シャトー・ダプルモン/ドメーヌ・プヴェ(前身は苗木業

2015年9月からクレマン・ド・サヴォワがAOPに


ドメーヌ・ブヴェ クレマン・ド・サヴォワ2015はジャケール50%(ジャケールは40%以上使用しなければならない)、アルテス20%、シャルドネ30%のブレンド。樹齢は15年。瓶内2次発酵は12ヶ月(規定は9ヶ月)。ジャケールは熟成するとブリオッシュやトーストの香り。土壌は粘土石灰質。フランス国内には7つのクレマンがありました。一番最初に認められたのはアルザス。サヴォワは2015年に承認された「8番目」のクレマンになります。


イチジク 白和え 練りごま

大越:ジャケールは果実味は控え目で酵母っぽさが特徴、ミネラルやフローラル感、このワインは他のクレマンと比べると軽いタイプ。今回はごまや自然の甘味が効いたイチジクを選んでいますが、泡ものには香ばしさのあるものや滑らかな(泡は口中ではかなく消えていくので)ムースや茶わん蒸しが合います。

私感:ごまとイチジクの甘さが口中に広がると、それをきれいに洗い流してくれるクレマンなので、食事に最適。日本上陸に期待したいです!



フィリップ・ヴィアレ レ・フラコン・サヴォワ・アプルモン2017
アプルモン村は日当たりが良く、土壌は石を多く含んだ石灰質、品種はジャケール100%(アプルモンではジャケールのみ栽培)、フローラルなアロマ、ノン・マロを生かした軽やかでフレッシュな味わい


イカ 胡瓜 若布 三杯酢 叩き梅肉

大越:酸がしっかりしていて、柑橘系の香りとフローラルでミネラルのあるワインスタイル。味わいはドライでフレッシュな酸と塩味が特徴、テクスチュアはタイトなので、料理も脂分よりは清涼感+ヨード感を前面に。酸があるものとの相性が良いので、和風の三杯酢と梅肉を使い、魚介類も控えめなイカと合わせて。

私感:胡瓜は白ワインと喧嘩することがあるのですが、ここでは三杯酢の活用で、馴染みが良く、好印象! ムッシュ小田島のベテランの手腕



ドメーヌ・レ・フィス・ド・ルネ・ケナール シニャン・ベルジュロン2016

栽培面積18㌶、細かい泥灰・石灰質の堆積土壌、栽培しているぶどう品種はジャケール、モンドゥーズ、ルーサンヌで、このワインは山の急斜面(角度は75度/4㌶)に位置する南東向きの畑のルーサンヌ100%、シュル・リー(1年間)、MLF有、ラベルの鳥はサヴォワにしかいないベルジュロン




大越:ジャケールと比べると酸も穏やかで口中では横に広がるリッチな印象なので滑らかな食材を選択。ワインに塩気を感じるので雲丹を用意しましたが、雲丹だけをワインに合わせるのではなく、茶碗蒸しとデラウエアを一緒に食べることで、雲丹の塩気が中和されてバランスが良いと思います。茶碗蒸しの下にモリーユもあるのでそれも併せて

私感:雲丹とデラウエアの組み合わせの意外性、ほんのりとした甘味がアクセントに。モリーユの燻製っぽさと独自の味わいが料理全体に深みを与えていてびっくり!


冷やし茶碗蒸し モリーユ 生雲丹(殺菌した海水に漬け込んだ雲丹で旨味がより濃厚) デラウエア


飽きのこないクレマン、ミネラル感のアプルモン、豊潤なシニャン・ベルジュロン

モンドゥーズはピノ・ノワールとシラーの交配!

当日唯一の赤ワイン、ドメーヌ・ブヴェのアルバン・モンドゥーズ2016

栽培面積37㌶、粘土石灰質土壌、ぶどう品種はモンドゥーズ(冬寒く、夏暑くても耐えられるぶどう)、香りにはスミレやカシス、桑の実、スパイスの要素も。ぶどうはピノ・ノワールとシラーの交配。アルバン村でモンドゥーズを使うと「アルバン・モンドゥーズ」呼称に。サヴォワでは黒ぶどうの比率は少なく、一番多いのはガメ。モンドゥーズはガメよりもう少ししっかりしたタイプになります。醸造はマセラシオン4~5週間、18ヶ月オークで熟成、無濾過


カツオ叩き サラダ仕立て クレソン アンディーヴ

大越:ピノ・ノワールにシラーの香りをつけた感じのワイン。スパイシーさもあり、酸も乗っていて果実感があり、フレッシュでタイト。唯一の赤ワインにカツオを選んだのは、フレッシュさとスパイシーさの両面を楽しみたかったので、お肉ではなく、赤身の魚で。醤油ベースの味付けで、和の風味を生かす。

私感:カツオだけをワインに合わせても生臭さは無く、脇役(ドライトマトやクレソン等)がワインと料理の仲介役になり、相性の幅がより広がる印象


〆のワインはジャケール100%のシャトー・ダプルモンのアプルモン2016

栽培面積6㌶、白亜紀片岩質土壌、サヴォワ・ワインを代表する銘醸地アプルモン村のジャケール100%、ステンレス100%、フレッシュ感を生かすためノン・マロ、Alc11.5%、生産量3万本


参加者が絶賛した名古屋コーチン 炭火焼 ひと塩

大越:最初のワインと同じ品種ですが、比べると口中での厚みが違い、飲みごたえがあります。鶏肉に添えてあるマスタードを使うと、酸が後押しをして、鶏肉の脂分を切ってくれるので、素材自体の美味しさが楽しめます。

私感:シンプル・イズ・ベスト。新鮮な素材×ジャケールの高級キュヴェの組み合わせで素直な美味しさを実感!




スイスのシャスラもそうなのですが、山岳地帯のワインと和食とのマリアージュは魅力です!
サヴォワではぶどう栽培が相当な重労働で、岩が多いために手作業する時の負担がかなり大変とのお話でした。スキー客でにぎわうサヴォワにはモン・ブラン周辺に51もの星付きレストランがあり、冬場に大半のワインが消費されてしまいますが、夏場はワインの動きは緩め。
AOPとして認められたクレマン・ド・サヴォワは販売の95%がフランス国内、輸出はわずか5%のみ。冷涼な気候下で、育まれるフレッシュで、ミネラル感にあふれ、かすかな塩味を含んだサヴォワのワインは和食におすすめできる逸材なので、今後の販売と輸出増に期待したいところです。ただ、ここ6~7年の天候不順で、ワインのストックは減少、足りない状況になっているとのことだったのが、それが唯一の懸念事項です。
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2018年07月10日

コンチャ・イ・トロ社のファインワインアンバサダー パブロ・プレサックとスペシャル・テイスティング!


コンチャ・イ・トロ

のファインワインアンバサダーのパブロ・プレサックさんと昨秋以来の再会!


会場は2017年6月に日本初上陸したばかりの店舗
NYのマンハッタンエリアで人気のベンジャミンステーキハウスの六本木店



マルケス・デ・カーサ・コンチャをベースに3品種を比較試飲

アペラシオン、ワインスタイル等、異なる点を見ながら、チリワインの多様性を検証
(試飲はボトル右から左の順に)
#1:マルケス・デ・カーサ・コンチャ シャルドネ2016
#2:アメリア シャルドネ2016
#3:マルケス・デ・カーサ・コンチャ カルメネール2015
#4:カルミン・デ・ペウモ2013
#5:マルケス・デ・カーサ・コンチャ カベルネ・ソーヴィニヨン2015
#6:ドン・メルチョー2015


北から南下していくと、リマリ・ヴァレー、マイポ・ヴァレー、カサブランカ・ヴァレー、カチャポアル・ヴァレーとなります。


リマリはいたるところにサボテンが群生していてびっくり、北には世界一乾燥しているアタカマ砂漠 (2014年9月撮影)

第1フライトはセビーチェに合わせて2種のシャルドネ

魚介類やハーブ、要はコリアンダー!


#1:マルケス・デ・カーサ・コンチャ シャルドネ2016 小売価格2,200円(税別) 
D.O.リマリ(リマリ・ヴァレー)、ケブラダ・セカ・ヴィンヤード
創始者がスペイン国王から拝受した“マルケス(侯爵)・デ・カーサ・コンチャ”の称号をネーミングにしたワインで、1976年にカベルネ・ソーヴィニヨンを使って初リリース。チリの土壌の多様性を表現したアイテム。

標高190m、ケブラダ・セカ・ヴィンヤードはリマリ川の北側にあり、太平洋から10~18kmに位置する霧が多く、午後は日射が強いエリア。石灰質主体で有機物を含んだシルト(沈泥質粘土)の沖積土壌。年間の降雨量はわずか80mm、水源は地下水&アンデスの雪解け水を利用。昨今干ばつの影響を受けており、ケブラダ・セカで栽培をしているのはコンチャ・イ・トロ社だけ。リマリでシャルドネを生産するようになったのは2011年頃。
ぶどうは枝ごと破砕、圧搾。オークの発酵槽で12~15日以上発酵、5%MLF、樽で12ヶ月熟成。ワインメーカーはマルセロ・パパ

#2:アメリア シャルドネ2016 小売価格5,000円(税別)
D.O.カサブランカ(カサブランカ・ヴァレー)、ラス・ぺトラス・ヴィンヤード
チリで最初にリリースされたアイコンシャルドネ
リマリ・ヴァレーから450km南下するとカサブランカ・ヴァレー。ラス・ぺトラス・ヴィンヤードは太平洋から30km内陸に位置する畑で、1993年頃からシャルドネを生産、海からの影響はリマリほど受けませんが、風が強く、霧も多く発生するエリア。ぶどうが熟すまでに長い時間がかかり、複雑味のあるぶどうが収穫できます。土壌は粘土質、風化した岩やカコウ岩が多い土壌。生産量は1,000ケース。
ぶどうは房ごと破砕・圧搾、樽発酵の後、フレンチオークの樽で8ヶ月熟成、その後ステンレスタンクでブレンド、非MLF。ワインメーカーは奇才イグナチオ・レカバレン

料理との相性:ワインはともにミネラル感、海岸由来の塩味あり。柑橘果実の酸味が効いたセビーチェと好印象。チリ訪問ではセビーチェとソーヴィニヨン・ブランと合せることが多かったのですが、透明感のある綺麗な酸と相乗。アメリアは単独で飲むと樽の要素を感じますが、セビーチェと合せると鉱物的な香りや味わい、ノン・マロの凛とした酸が調和して◎

チリ変革のワンポイント情報
チリワインのご意見番 WANDSの番匠さんが、伝説的なチリのワインメーカーたちとその歴史について言及。「1970年代、1980年代のチリは混乱した時期だったので、本格的なワイン醸造に携わった人はいなかった(スペインもフランコ政権下で同様)。パブロ・モランデ(1982年にカサブランカ・ヴァレーの畑を開拓した人物で当時はコンチャ・イ・トロの醸造家)やイグナチオ・レカバレン(現在コンチャ・イ・トロでアメリアやカウミン・デ・ペウモを醸造する奇才)やアウレリオ・モンテス(モンテスの創業者)といった、既に70歳を越えている彼らの後の世代が抜け落ちており、その後に続くのがアルバロ・エスピノサ(チリワインの第一人者でバイオダイナミック農法の先駆者)の世代」と。

当時、パブロ・モランデはコンチャ・イ・トロ、イグナチオ・レカバレンはサンタ・リタからサンタ・カロリーナ、そしてアウレリオ・モンテスはサン・ペドロに籍を置いて活躍しており、これらの4社が1990年代初めまでチリワインを牛耳っていて、4社にぶどうを売っていた人たちが90年代に独立したり、欧米からの資本が参入してくることで、チリワインの歴史が変わっていくことに! これはとても興味深いお話でした。


第2フライトはカルメネールにフォーカス
1830年代、実験的にボルドーから持ちこまれ植樹されたカルメネール。その後、フランスでフィロキセラが蔓延し、世界のワイン産地に広がりましたが、チリは四方を自然の要塞に囲まれているので、フィロキセラ禍とは無縁でした。1830年代にはカルメネールだけでなく、欧州の様々な品種も同時に植樹されましたが、カルメネールは150年以上にわたって、メルロと間違えられていて、異なる品種であることを証明したのはフランス人のぶどう学者で1994年11月のことでした。


#3:マルケス・デ・カーサ・コンチャ カルメネール2015 小売価格2,200円(税別)
D.O.ペウモ(カチャポアル・ヴァレー)、ペウモ・ヴィンヤード
標高170km、ペウモは首都サンチャゴから190kmの場所に位置し、コンチャ・イ・トロが所有する2番目に古い畑でカルメネールに最適、入手したのは1910年。ぶどう樹はプレ・フィロキセラの台木を使用。土壌は深く、川に由来するシルト(沈泥質粘土)の沖積土。手摘み収穫と機械収穫。

ぶどう品種はカルメネール87.5%、カベルネ・ソーヴィニヨン12.5%のブレンド、ぶどうを除梗し、密閉したステンレスタンクで発酵8日間、フレンチオークで16ヶ月熟成。深みのあるガーネット、黒系果実、スパイス、酸味とタンニンのバランス

#4:カルミン・デ・ペウモ2013 小売価格23,000円(税別)
D.O.ペウモ(カチャポアル・ヴァレー)、ペウモ・ヴィンヤード、ピルケ・ビエホ・ヴィンヤード、プエンテ・アルト・ヴィンヤード
ペウモ・ヴィンヤードはカチャポアル川に沿った海岸線に近い山岳地帯の標高170mに位置し、フィロキセラ以前の樹から分けられたカルメネールのぶどう樹を使用。ファーストヴィンテージは2003年、その後、05年、07年、08年、09年、10年(樽熟成17ヶ月)、11年、12年、13年(樽熟成13ヶ月)と生産。10年、11年、13年は5月20日前後の収穫、12年は暑かったので、若干早かったとのこと。10年と13年に見られるように新樽率が減っているのが昨今の特徴。「セクシーカルミン」とパブロさん、希少600ケース

ぶどう品種はカルメネール91%、カベルネ・ソーヴィニヨン5%、カベルネ・フラン4%(ドンメルチョーに使う畑)をブレンド、ぶどうは除梗後、ステンレスタンクで5~7日間発酵、フレンチオークで13ヶ月熟成。深みのある紫色、ブラックベリーやカシス、グラファイト、ミネラル、酸味とタンニンと果実味のバランスが秀逸、時間の経過で酸味の印象、魅力的なワイン。ワインメーカーはイグナチオ・レカバレン

料理との相性:2種のワインの滑らかなタンニンが口中の脂分をきれいに洗い流してくれる印象、パプリカの青さと甘さがアクセントになっている感あり、楽しめました。


「チリにおいて、栽培面積の第1位はカベルネ・ソーヴィニヨン、第2位はソーヴィニヨン・ブラン、第3位がカルメネールですが、第2位になる可能性があります。センシティブな品種で、接木をすると収量や品質に問題が発生することも多く、気候も温暖で、土壌も粘土質であることが好ましいので、その意味からも、ペウモの土壌は目が詰まった粘土質であり、温かいエリアなので、熟すまでに時間がかかる晩熟ぶどのカルメネールには最適。収穫の時期は5月(北半球の10月半ばから11月)頃」とパブロさん。

第3フライトはカベルネ・ソーヴィニヨン

#5:マルケス・デ・カーサ・コンチャ カベルネ・ソーヴィニヨン2015
小売価格2,200円(税別)
D.O.マイポ(マイポ・ヴァレー)、プエンテ・アルト・ヴィンヤード&ピルケ・ヴィンヤード
アンデス山脈の麓に位置(プエンテ・アルトは標高650m、ピルケ570m)、マイポ・ヴァレーで最も冷涼なエリアで日較差が大きい。数年前から収穫を少し早めにすることで酸味を残し、フレッシュで果実味を重視したスタイルに変更。熟成の折、50%はイタリアンカスク(5000L)を使用。ワインメーカーのマルセロ・パパのアイデアによるもので、樽材はフランス製、内部は焼かず、樽の生産だけをイタリアで行っているガンバカスク。
品種のブレンドはカベルネ・ソーヴィニヨン95%、カベルネ・フラン4%、シラー1%、生産本数4万ケース

#6:ドン・メルチョ2015 小売価格11,000円(税別)
D.O.プエンテ・アルト(アルト・マイポ・ヴァレー)、ドン・メルチョー・ヴィンヤード
世界に誇るチリの銘醸ワイン、標高650m、アンデス山脈の麓にあり、マイポ川の北側に位置する畑プエンテ・アルトではドン・メルチョー、アルマ・ヴィーヴァ、チャドウィックのワインが造られており、チリ最高のワインができる。区画は7つあり、それらはさらに140以上に細分化され、別々に醸造。ステンレスタンクで発酵、10日間。発酵後、10日~20日間タンクで密閉し、マセレーション。フレンチオークで15ヶ月(新樽69%、他は1年樽)。フランスの醸造コンサルタント、エリック・ボワスノと一緒にチーフワインメーカーのエンリケ・テイラドが最終ブレンドで使うワインを選択。生産量は8,300ケース
まだ若さを感じさせるパープルカラー、粘性は高く、赤い果実、グラファイト、切れの良い酸味、滑らかなタンニン、ぶどう由来の甘やかさ、長い余韻

料理との相性:安定した味わいのマルケス・デ・カーサ・コンチャはプライムリブの脂分と絶妙のマリアージュ、ドンメルチョーは時間の経過により、タンニンや酸味の要素が広がり、熟成肉の旨味と互角の相性


8週間熟成させたアンガス牛のプライムリブ、なんと450g!!
素直に美味しい味わい
ランチタイムで200g、完食できなかった分は初めてのお持ち帰り体験


すべてが終わり、ワインを背景に笑顔のパブロさん

コンチャ・イ・トロだけで、すべてを網羅できる底力
マルケス・デ・カーサ・コンチャを軸にしたシャルドネ、カルメネール、カベルネの3フライトでしたが、2,200円のカリテプリなレンジから、ボルドースタイルのエレガントなカルミン、世界から高く評されているドン・メルチョーまで、その幅広さと安定感はチリ屈指の実力派であると実感しました!


昨年のコンチャ・イ・トロ訪問でパブロさんとの記念ショット(2017年9月撮影)


パブロさんとの試飲はマルケス・デ・カーサ・コンチャのシャルドネとピノ・ノワール
(2017年9月撮影)

■製品についてのお問合わせ先は日本リカー(株) ℡03-5643-9772
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2018年05月04日

カリフォルニアのハーン・ファミリー・ワインズから2代目フィリップ・ハーン初来日!

亡父の跡を継いで

今年3月に他界したニコラス・ハーンさんの跡を継ぎ、2代目当主として精力的に活動しているフィリップ・ハーンさん(37歳)が、No.1市場である日本に初来日しました! 


独立した家族経営のハーン・ファミリー・ワインズ(以後ハーン)

はカリフォルニア州セントラルコースト、モントレー・カウンティのサンタ・ルシア・ハイランズ(S.L.H)に位置し、冷涼な気候に適したシャルドネとピノ・ノワールに力を入れています。




2014年に訪問した時は収穫の真っ只中で、4機のグレープハーベスター(ぶどう自動収穫機)

がフル稼働していました。実に壮観でした!
フィリップさんにそのことを伝えると、「今は7機だよ」とのお返事が。自社畑1100エーカー(440㌶)のうち、8割がグレープハーベスターによる収穫のようです。

今回のプレスディナーでは、7年目から導入している『Flash Détente/フラッシュ・デタント』、カベルネ・ソーヴィニヨンの醸造に使っている装置についてのお話を伺うことができました。


ハーン・ファミリーの軌跡


1980年:ドイツ系スイス人のニコラス・ハーン&ガビー・ハーンご夫妻がワイン造りの適地を探していた時、小休止するために立ち寄ったモントレー・カウンティの自然(朝夕の霧、グランド・キャニオンに匹敵するモントレー湾の海溝)に触れ、この地でのワイン造りを決断。最初の自社畑スミス&フックを購入。

1991年~2006年:ニコラスさんはサンタ・ルシア・ハイランズについての詳細なリポートを政府に提出し、AVA認証に尽力。ハーンは当初カベルネ・ソーヴィニヨン主体でしたが、冷涼気候に適したシャルドネやピノ・ノワールにシフトチェンジ、成功をおさめます。

2006年~現在:AVAはサンタ・ルシア・ハイランズとアロヨ・セコ、自社畑440㌶、The Sustainability in Practice(SIP)TM Program(環境保全実践プログラム)により、畑の管理、土壌の保全、水質&エネルギー保全等、環境や労働者への配慮に注力。


ハーン・ワイナリーのポートフォリオ

(左から)
ハーン(“雄鶏”の意)を表示したラベル。自社畑と契約農家のぶどうを半分ずつ使用。新樽率は40%程度。仏産オークのみ使用。
S・L・Hは4つの自社畑のぶどうを使い、サンタ・ルシア・ハイランズの個性を表現。基本的に新樽率は30~35%程度(樽香を抑えたスタイル)、樽熟成は11ヶ月。仏産オークのみ使用。
ルシエンヌは単一畑(スミス・ヴィンヤード/使用するのは2クローン)から造られる高品質なピノ・ノワール。スミス・ヴィンヤードは所有する畑のなかでは一番古く、内陸にあたるので最も暑いエリア、凝縮感のあるぶどうが収穫できる。
スミス&フックは設立当初から取り組んできたセントラルコーストのカベルネ・ソーヴィニヨンを使ったラグジュアリーなワイン。

供出されたのは未輸入を含む8アイテム

フィリップさんのお気に入りはやはりピノ!
4番目に登場した『ハーン S・L・H ピノ・ノワール エステイト グロウン2016』でした。(供出ワインは後方にある8本、左から右の順)



#1:ハーン・ワイナリー シャルドネ2016
若さを感じるゴールド、粘性は長く、柑橘果実や南国果実、木香、ロースト香。口中に厚み、クリーンな余韻
#2:ハーン S・L・H シャルドネ エステイト グロウン2016
粘性&ぶどうの凝縮感。黄桃や蜜を含んだリンゴ、白コショウ、ヴァニラ、ヘーゼルナッツ(樽香は#1より控えめ)、パワーがありながらエレガント、おすすめワイン!
#3:ハーン・ワイナリー ピノ・ノワール2016
下の字が読める淡赤色、若々しい赤系果実、木香、柔らかなタンニンと心地良い酸味。2018年1月、2月JALのビジネスクラス搭載ワイン。
#4:ハーン・ワイナリー S・L・H ピノ・ノワール エステイト グロウン2016
透明感のあるルビーレッド、さくらんぼや苺、ピンクペッパー、焙煎香、ココア、口中に赤系果実のフレーバー、中盤から広がる酸味、余韻も長く、酒質がきれい。フィリップさんの一押しアイテム!



ハーンが使っている20のピノ・ノワールのクローンをブレンドして造るS・L・H
2014年の訪問時にいただいたブローシャーには16のクローンが書いてあり、どのようなタイプのワインになるかを一覧にしてあります。

#5:ルシエンヌ ピノ・ノワール2016 (日本未輸入)
内陸に位置するスミス・ヴィンヤードならではの凝縮感のあるぶどうを使用。1974年にボルドー品種を初めて植樹した畑で、現在はピノとシャルドネが基幹。色調はルビーレッド、赤系&黒系果実、ピンクペッパー、口中で噛み込める印象、今飲んでも楽しめるが、熟成の変化をみたいアイテム、ポテンシャルあり。
#6:ハーン・ワイナリー カベルネ・ソーヴィニヨン2016
ぶどう品種はCS82%主体、ジンファンデル14%、他メルロ、マルベック、プティ・シラー、グルナッシュ、プティ・ヴェルドをブレンド。レッド・チェリー、スグリ、ヴァニラ、ココア、ソフトな酸とまろやかなタンニン、フェミニン、フラッシュ・デタント使用。
#7:スミス&フック カベルネ・ソーヴィニヨン セントラル・コースト2016
ハーンが初めて手掛けたアイテムで37ヴィンテージ目、ぶどう品種はCS100%、小粒で果皮が厚いぶどう由来の深みのある色調と黒系果実(黒スグリ、プラム等)のニュアンス、甘草、グラファイト、骨格がありながら馴染みやすいタンニン。フラッシュ・デタント使用。
#8:スミス&フック プロプライアタリー・レッド・ブレンド セントラル・コースト2014 (日本未輸入)
ボルドーブレンド、ぶどう品種はメルロ40%、マルベック32%、プティ・シラー26%、CS2%をブレンド。マルベックを多く使っていた1910年以前(フィロキセラの害を受ける前)のボルドーワインを再現したタイプ。フラッシュ・デタント使用。


“食事に合うワイン”という点をハーンはとても大事にしています。
今回は赤坂の隠れ家レストラン『紫芳庵』の和の素材に合わせてのマリアージュでした。


布久白子豆腐 薬味 美味汁
もみじおろしのピリ辛感が、樽の要素を感じるスタンダードのシャルドネとピノ・ノワールと相乗


切り身魚霰揚げ 漉油 藻塩 酢橘
衣の香ばしさと和風柑橘の酸がS・L・Hのロースト風味と重なり、舌の上を洗い流してくれる効果も


筍饅頭 尊菜 針蕗 木の芽
素材の甘味が品の良い樽使いのS・L・Hのシャルドネやピノと良くマッチしていました!


3種3様の趣きのピノ・ノワール


旬の御魚盛り
「お寿司ではなく、お刺身が好き。素材が良ければご飯はいらない」と語るフィリップさんはS・L・Hのピノとの相性を楽しんでいました!


私は果実の凝縮感とスパイスの要素を備えたルシエンヌのピノと
上質なわさび、山芋の甘味、お醤油の乳酸が重厚感あるピノを引き立ててくれた印象


『ルシエンヌ ピノ・ノワール2016』日本未輸入アイテム


竜髭菜 和牛 黒七味焼き 里芋木の芽味噌
フィリップさんはハーン・ワイナリーのスタンダードのカベルネとの相性を推奨。



スミス&フックのプロプライアタリー、色調は濃く、味わいはなんともまる~い印象
フィリップさんは「お肉というより、魚介類に合わせて」と!

通常に発酵・醸造させたワインと、Flash Détente/フラッシュ・デタントの装置を使用したワインを各50%ずつブレンド。フラッシュ・デタントなる装置の画像は見ることができませんでしたが、「熱い蒸気を直接ぶどうに当てることで、瞬間的に果皮からの色素やタンニンを抽出し、破裂したぶどうの果汁を取り出して発酵させます。ジュースになるまでをフラッシュで行います」との説明でした。

昨年末、エノログの戸塚昭先生に、「赤ワインのインクの様な香り」について質問したところ、「それはメトキシピラジンという化合物の臭いで、緑色を呈した未熟な果実に由来しますが、加温により分解します。 主として早飲み赤ワインや廉価な赤ワインの醸造法である、除梗破砕後の発酵前のマストを約75℃に昇温させる加温醸造法Thermovinificationやフラッシュ・デタントFlash Détenteを 採用すると、未熟な果梗が混入してもメトキシピラジンの臭いを感知することはありません」とのお返事をいただいたことを思い出しました。ちなみにフラッシュ・デタントはメトキシピラジンだけでなく、スモークテイントのぶどう等にも利用できるそうです。

「フラッシュは種からのタンニンを抽出しないので、タンニンは柔らかです。スミス&フックにフラッシュのワインを使うようになってから、女性客の人気が高く、右肩上がりの売れ行きです」とフィリップさん。電気代は相当かかるとのお話でしたが、カベルネ・ソーヴィニヨンの味わいに関しては、良い結果を出しています。


帆立昆布〆 加賀太胡瓜 加減酢ジュレはS・L・Hのシャルドネやピノで

I
甘鯛道明寺蒸し 本わさび 銀あん
鯛の甘味、さくらの葉の塩味、わさびの清涼感が赤ワイン(ピノやカベルネ)と合わせても面白い相性に


釜炊きにて
天然鯛の炊き込み 香の物 赤出椀


噛みこむことで旨味倍増のご飯、上品な味わいの鯛、本当に美味、美味
#2のS・L・Hシャルドネに合わせて


黒糖ソルベ 苺
#7の凝縮感とアルコール由来の甘さとの相性良好

きれいな空間、こだわりの器

紫芳庵の器の数々、おもてなしの丁寧さが印象的でした。
海外の生産者をお連れしたいスペシャルな空間

ブリティッシュエアウェイズが最大の顧客
冒頭に記述したように、ハーンのワインのNo.1市場は日本であり、 輸入元ワイン・イン・スタイルさんとは長い付き合いがあります。
フィリップさんは、「日本がナンバーワンですが、ブリティッシュ・エアウェイズ(英国航空)のすべての便のファーストクラス、ビジネスクラスの搭載&ラウンジでの扱いがあるので、この数字が圧倒的に大きいです」とおっしゃっていました、これは初耳!

ここで、2012年に『菊乃井』の村田吉弘料理長から伺った味覚の話について触れておきます。1999年からエアラインの機内食開発にかかわっていた村田料理長いわく「機内は、湿度も少なく乾燥しています。ゆえに五感は鈍くなるので、味覚、嗅覚は地上の時より濃いめを好むようになります。そのための一工夫が必要」と。その時に料理長が語っていたのが、“しんみりめ”との表現。

フィリップさんは「ピノ・ノワールはブルゴーニュとは違うスタイル、カベルネはナパとは違うスタイルのワイン造りをしています」と強調していましたが、地上で味わった時のハーンのワインの“微妙な濃さ”が、機上では村田料理長が説く“しんみりめ”になっているのではないかと思います。


■ワインについてのお問い合わせはワイン・イン・スタイル ℡03-5413-8831
http://www.wineinstyle.co.jp/ 
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2018年04月23日

伝統と革新のメゾン、シャブリ『ドメーヌ・ラロッシュ』ベリコー社長来日セミナー

昨年来日したユニオン・デ・グラン・クリュ・ド・シャブリ(UGCC)のメンバー

ティエリー・ベリコーさんは2000年に発足したUGCCの現会長&ドメーヌ・ラロッシュ社長
(左から2人目)


UGCC試飲会で供出されたのはシャブリ・グラン・クリュ レ・ブランショ1987のマグナム
30年の熟成を経たワイン、心地良い酸の質感、スムース、複雑味と余韻の長さ、圧巻!


今年は輸入元ジェロボームの招聘で来日セミナー!

ベリコー社長とは3ヶ月ぶりの再会でした!
「ラロッシュで働き始めて10年、ワイン業界に参入して20年になりますが、一番素晴らしいと思う瞬間が皆さんと一緒にテイスティングする時です」と語っていました。

ドメーヌ・ラロッシュのロゴ

視覚、嗅覚、味覚の3つの感覚を表現したユニークなロゴ

ドメーヌ・ラロッシュの概要
自社畑は90㌶(うちGC4、PC12)で、90ヵ国以上に輸出
修道士たちが住んでいた9世紀の施設、13世紀の圧搾機も保存

ワイン造り
ぶどう樹についてはマサル・セレクション方式
収穫は30kgのかごを使って手摘み
栽培(超25年以上のベテランも)はひと区画、ひとりの割合で管理
醸造面ではGC、PCには樽を使用、MLFは行う
フランス農水省が定めたHVE (Haute Valeur Emvironnementale/ 環境保全農業の環境価値重視)の認証を受けていて、環境への配慮、生物多様性への取り組み等を実施。シャブリでは「アテナフクロウ」の保護活動、ラングドックのマス・ラ・シュヴァリエールでは夜行性で食虫動物の「こうもり」を増やすことで、畑の害虫駆除に活用。

シャブリのアペラシオン、総面積は5300㌶
(カテゴリー下から上へ)
・プティ・シャブリ
・シャブリ/シャブリの中心を成し、面積は3500㌶
・シャブリ・プルミエ・クリュ/17クリマ、全体の14%
・シャブリ・グラン・クリュ/7クリマ、総生産量のわずか2%、長期熟成タイプ

セミナーで試飲した6アイテム
「キメリジャンの土壌、シャルドネ、そして大変厳しい冬の時期がある大陸性気候により、活き活きしたミネラル、きれいな酸、明確な味わいが表現できる」とベリコー社長



(右から順に)
#1:Chablis Les Chanoines 2016
2016年は3月、4月に霜の害を受けたので少生産、品質は良好。
白い花、塩味、中盤以降ピュアな酸の広がり、丁寧な造りを感じる1本

#2:Chablis Saint Martin 2016
聖マルタンの名に由来し、ラロッシュを代表するワイン。60㌶を所有しているので、毎年上質の区画のワインだけをブレンドして生産。香りは#1より控め、和風柑橘、軽いビター感、旨味、WS90点。

#3:Chablis 1er Cru Les Vaudevey 2016
10㌶を所有、場所は谷間に位置し冷涼。畑の向きは南東、毎年収穫は一番最後で、ベリコー社長は「最もシャブリらしい」とコメント。食と合わせて楽しみたいアイテム、シーフード、スモークサーモン、アジアンフード

#4:Chablis 1er Cru Les Fourchaumes Vieilles Vignes 2014
直近10年での最良年、他と異なる香り、存在感のある酸味、ビター感、熟成感と力強さ

#5:Chablis Grand Cru Les Blanchots 2014
4㌶所有、2014年という良年に加え、朝から日差しを受ける場所なので、「レ・クロを王とするなら、ブランショは女王と呼ばれている」とベリコー社長。アカシア、切れの良い酸、複雑味、余韻に果実のニュアンス

#6:Chablis Grand Cru Les Blanchots La Reserve de L’Obedience 2014
若いヴィンテージはカラフェに移して! 香り甘やか、ピュアかつ重厚、深みがあり、長く続く余韻



ロべディエンスはアイコンワイン。ブランショのワインサンプルをすべて持ち寄り、5月初旬にブラインドテイスティングで決めます。9世紀のカーブ内にある石製テーブルの上に、それぞれ酸味、アロマ、ストラクチャアの三要素を頂点とする三角形を作り、インパクトの強いものは先端に並べ、バランスが取れているワインは真ん中に置きます。その結果、すべてにおいてバランスの良いワインだけをブレンドしてロベディエンスを生産、毎年3000本。


村名、PC、GCの順で味わうと、凝縮感 力強さがより明確に。

クロージャーについて

HVEを取得しているドメーヌ・ラロッシュは常に向上を目指しています。現在80名のスタッフが世界の動きをチェック、伝統を守りながら革新を続けています。
クロージャーに関しては、2000年VTからGCにスクリュー・キャップを導入し、10年間観察してきました。その間、ポルトガルのコルク業者にも変化が見られるようになり、2014年ヴィンテージから、アモリム社のNDテックを採用しています。ベリコー社長は「GC、PCに使っていますが、ボトル差は全くない」と語っていました。

ちなみに、NDテックとは、ポルトガルのコルク会社アモリム社が独自に開発した、コルク臭(TCA/トリクロロアニソール)を感知させない天然コルク。同社の検出システムで、1つずつすべてのコルクから香りを抽出し、ガスクロマトグラフィーでのハイスループット解析(TCAの定量)を可能にしてTCA除去率を高めたもの。同社では年間45億個のコルクを製造、天然コルクは約10億(500万個/日)、圧搾コルクは35億個です。(出典:メルシャン小林弘憲リポート)

メルシャン生産部の小林さんから許可をいただいたので、コルク最新研究のリポート

をリンクさせていただきました。是非、ご覧ください!


余韻の長い『シャブリ・グラン・クリュ レ・ブランショ・ラ・レゼルヴ・ド・ロベディエンス2014』




ラングドックのマス・ラ・シュヴァリエール



ドメーヌ・ラロッシュが20年前にラングドックに設立したドメーヌ。
32㌶を所有、うちペロリ8㌶で、ここは標高400~500mで粘土石灰土壌、1980年代後半に植樹されたシャルドネに特化。ロカ・ブランカは24㌶でシラーを中心とする黒ぶどうを栽培。ノルウェーでの人気が高く、No.1フレンチワインとして定評あり。また、スウェーデン出身の世界最優ソムリエ、アンドレアス・ラーソンさんはペロリを「ラングドックで最も素晴らしいシャルドネ」と評価。

■製品についてのお問い合わせはジェロボーム株式会社 ℡03-5786-3280
HP: http://www.jeroboam.co.jp/
FB: Jeroboam(ジェロボーム)

[わーい(嬉しい顔)]シャブリ賞は谷川雄作さんが受賞

ブルゴーニュワイン委員会(BIVB)マーケティング・コミュニケーション責任者のフランソワーズ・ルールさんと谷川雄作さん

4月23日に行われた(一社)日本ソムリエ協会主催 第7回『ソムリエスカラシップ』の授賞式で、協賛のシャブリ委員会からシャブリ賞の発表があり、BIVBのルールさんから、銀座『ティエリー・マルクス・ジャパン』の谷川雄作シェフソムリエにシャブリ招待の目録が授与されました。
エントリー資格は過去のスカラシップ優秀者で、ルールさんとの面接によって受賞が決定しました。式典後、谷川さんの受賞の“決め手”について伺ったところ、「知識が豊富で、シャブリの多様性について説得力があったこと。加えて、料理との相性では、鯛をテーマにした斬新なアイデアがとても素晴らしかったこと」を挙げていました。
谷川さんは現地訪問でさらなる知識を吸収してきてくださることと思います。
シャブリ賞受賞、おめでとうございました!
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2018年04月15日

ルイ・ジャドのピエール・アンリ ガジェ社長来日昼食会@ロオジエ

ガジェ社長念願の訪日バカンス

ガジェ社長とは1年振りの再会でした。
仕事オンリーで、来日しても、観光地訪問はままならなかったガジェ社長。でも、今回は奥様同伴で金沢、京都、奈良、福井等、2週間のバカンスを取ることに。まさに念願成就!


旅立ち前のアットホームな昼食会@資生堂ロオジエ


ガジェ社長を囲んで輸入元日本リカーの竹内社長、同ブランド担当の佐々木さん
参加メンバーは私、WANDS誌名越さん、ワイン王国村田さん、ADVの奥山さん

ブルゴーニュの最新情報
■2017年は良年で収量的にも完璧
■2016年は少量生産なれど高品質。白ワインは瓶詰が完了、赤ワインの瓶詰はこれから3ヶ月間かけて。2016年ヴィンテージは数量が少ないので価格に影響が出る可能性が高い
■著名ドメーヌの買収に関して
・ドメーヌ・ボノー・デュ・マルトレは米国人実業家スタンリー・クロンク(英国のプレミアム・リーグ アーセナルのオーナー)
・クロ・ド・タールはフランス人のフランソワ・ピノ-(シャトー・ラトゥールやグッチ等を所有)

[わーい(嬉しい顔)]ランチにはオレゴンの『レゾナンス』は出ませんでしたが話題として登場! 
「ピノ・ノワールを生産している世界の銘醸地は、NZとカリフォルニアのソノマ・コースト、そしてオレゴン」とガジェ社長。ルイ・ジャドは2013年ヴィンテージからオレゴンでワイン(PN)を生産しています。
建設中の新醸造所は完成間近で、2018年ヴィンテージから稼働とのこと。醸造所に加えて、一般のワイン愛好家の皆さんが見学できるような施設も併設されるそうです。醸造責任者のジャック・ラルディエールさんは通常ボーヌ在なので、アシスタント・ワインメーカーとしてギヨーム・ラルジュさんが任命され常駐なさる由。ラルディエールさん指揮のもとで活躍なさいます。
昨年4月、ガジェ社長が来日した折、語ってくださったレゾナンスのホット情報はコチラ

に記載してあります。併せてご覧いただけると嬉しいです。


4アイテムのワインを味わいながら

五感を刺激するロオジエのメニュー

食通のガジェ社長はフランスの由緒あるグルメの会『Club des Cent (Club of One Hundred/100人クラブ) 』のメンバー。1912年に創設された同会はマキシムに本部があり、毎週木曜日にランチを開催、ムエックスさんもお仲間のようです。今回のランチでも100人クラブの会員らしく、料理を味わうだけでなく、画像撮りも楽しんでいらっしゃいました。


アミューズ・ブーシュ


「“ピノ・ノワール”と、その遺伝子を受け継ぐ子供たち“シャルドネ”、“ガメイ(ガメ)”の3品種が重要」と語っていたガジェ社長。スタートのワインはドメーヌJ.A.フェレのプイイ・フュィッセ(シャルドネ)。10年前(2008年)にルイ・ジャドが所有(18㌶)、代代女性当主だったので、醸造責任者も女性です。オドレ・ブラチーニさんをリーダーに7名で運営しています。ちなみに、オドレさんのご主人はボジョレ地区シャトー・デ・ジャックの醸造責任者シリル・シルーズさんなので、ブルゴーニュのシャルドネとボジョレのガメイはガジェ社長が全幅の信頼を寄せるご夫妻に委ねられています。


ドメーヌ J.A. フェレ プイイ・フュイッセ“レ・メネトリエール”2015
初代当主ジャンヌ・フェレは50年前に、通常の畑の他に、優れたいくつかの畑を、テート・ド・クリュ(PCクラス)、オール・クラッセ(GCクラス)と、3カテゴリーに分類していた、先見の明ある女性!
昨今話題のプイイ・フュイッセ、プルミエ・クリュ昇格については、まだプルミエ・クリュ委員会からの正式発表は出ていないようです。ルイ・ジャドでは「最終決定は今秋か2019年の初めになる可能性が高く、早ければ2018年ヴィンテージから認められるようになるのでは」と推測しています。



フランス産ホワイトアスパラガス 花紫蘇とグリーンアスパラガスのクーリィ
アスパラガスのババロワと帆立貝のラメル オレンジのヴィネグレット カルダモン風味
「旬の食材アスパラガスを樽と相性の良いオレンジ系のスパイスを使うことで、フレッシュ感と豊かさのあるひとさらに」と井黒ソムリエ


イベリコ豚のロティ 白神あわび茸のファルシィ チョリソとフレッシュハーブ
トリュフ入りポテトのピュルプ 酸味の効いたプティ・オニオン セージ風味のジュ



「ポークとソースのバランスがボーヌにもクロ・ヴージョにも合っていた」とガジェ社長



ボーヌ プルミエ・クリュ オマージュ・オー・クリマ2015(左) クロ・ヴージョ グラン・クリュ2010

少し脇道に逸れますが ファーストヴィンテージはジャック・ラルディエールさんのサイン入り
ラルディエールさんが今年7月に来日なさるというお話を伺いました。
実現すれば、2012年以来の再会になります。その時に、頂戴したワインが、ランチの3番目に出てきた『ボーヌPC オマージュ・オー・クリマ』、ファーストヴィンテージの2009でした!


ガジェ社長は「2009年は4,000~5,000ケース生産して早い時点で完売!」と語っていました。このアイテムは、ボーヌのテロワールに敬意を表し、プルミエ・クリュの畑のワインのブレンドして仕上げたもので、良年のみの生産。ブレンドするワインはヴィンテージによって異なり、2009年は17畑、2012年は18畑、7月に発売予定の2015年は19畑、ラベルにはすべてのクリマが記載されています。

ボーヌPCのファーストヴィンテージ2009はプルミエ・クリュ17畑のブレンド
Le Clos des Ursules、Les Boucherottes、Les Pertuisots、Les Theurons、Les Avaux、Les Aigrots、 Les Coucherias、Les Tuvilains、
Les Chouacheux、Les Montrevenots、Les Champs Pimonts、Les Reversees、Les Belissands、Les Greves、Les Perrieres、Les Toussaints、Les Cents Vignes

セカンドヴィンテージ2012はプルミエ・クリュ18畑のブレンド
Le Clos des Ursules、Les Boucherottes、Les Pertuisots、Les Theurons、Les Avaux、Les Aigrots、Les Cents Vignes、Les Greves、Les Perrieres、Aux Coucherias、Les Tuvilains、Les Chouacheux、Les Montrevenots、Les Sizies、Les Reversees、Les Toussaints、Aux Cras、Les Bressandes


ボーヌ PCのラベルを説明中のガジェ社長とワインをサービス中の井黒ソムリエ

すべてのクリマを記載したラベルの発想は・・・10年前に見つけた1枚のポスターでした。そこにはルイ・ジャドと関わったきた多くの栽培者や従業員等の名前が載っていました。ガジェ社長いわく「それらの人たちがいるからこそメゾンが成り立っているわけで、ボーヌPCもテロワールを反映するクリマがあってこそ」と。オマージュ・オー・クリマにはそのような賛辞が込められています。


プレ デセール


ピスターシュとノワゼットのクリームとアイスクリーム 香ばしいノワゼットのクロカン





コルクについて

(左上から時計回りに)
コルトン・シャルルマーニュGC(DIAM)、クロ・ヴージョGC(天然コルク)、プイイ・フュイッセ(DIAM)

白ワインは2011年ヴィンテージからGCまでのすべてのレンジにDIAMを導入。
赤ワインは天然コルクを使用。ガジェ社長は「DIAMを使ってからはブショネのトラブルはゼロ。赤ワインはゆるやかな酸化と熟成が大事。その点を考えると天然コルクが最適」と。


(左から)
#1:プイイ・フュイッセ “レ・メネトリエール”2015 8,500円(税抜)
アカシア、カリン、ミネラル、ピュアな酸味、凛としたスタイル、フォアグラやバターを使った魚介と合わせて
#2:コルトン・シャルルマーニュ グラン・クリュ2014 23,500円(税抜)
100年前に購入した古い畑。ルイ・ジャドの畑はアロース・コルトン側にあり、赤ワインのコルトン・プジェ畑に隣接。「酸の存在感があるのでソムリエはデキャンターをすすめる」とガジェ社長。芳醇な香り、上質な酸味、蜂蜜、アーモンド、白胡椒、シナモン、ミネラル、長い余韻。時間の変化で複雑味や重厚感、魅力的!

#3:プルミエ・クリュ オマージュ・オー・クリマ2015 8,000円(税抜) 7月発売予定
ステンレスタンクでPC毎に分けて3~4週間発酵。フレンチオーク(自社製)でキュヴェ毎に樽熟成。通常ルイ・ジャドは18ヶ月ですが、オマージュ・オー・クリマの熟成期間は24~26ヶ月(18ヶ月の樽熟後ブレンドしてタンクで6ヶ月熟成)。若さを感じる酸、赤・黒系果実、若干タイト、タンニンは滑らかで繊細、厚みのあるテクスチャア、熟成のポテンシャルあり。
#4:クロ・ヴージョ グラン・クリュ2010 26,000円(税抜)

ルイ・ジャドはヴォーヌ・ロマネ寄りの斜面中腹から麓にかけて2区画(画像参照)合わせて2.15㌶を所有。「2009と2010を比較すると、2009年はアメリカ人好み。2010年はエレガントでミステリアス、日本人好み」とガジェ社長。深みのある色調、黒系果実、アーシー、スパイス、タンインはきめ細かくシームレス、今飲んで美味しい1本!!  


ガジェご夫妻が、日本で素晴らしいバカンスを満喫なさいますように!

■ワインについてのお問い合わせは日本リカー(株)事業部 ℡03-5643-9772
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2018年04月07日

6月には記念ボトルをリリース シャンパンメゾン『ビルカール・サルモン』創業200周年

祝 ビルカール・サルモン200周年

春爛漫の東京で



輸入元JALUXの招聘で来日した6代目でゼネラル・ディレクターのアントワン・ローラン=ビルカールさん。
1818年創業のビルカール・サルモン

は6月に200周年を迎えます、おめでとうございます!
それを記念して、3月と4月には美食がテーマの世界ツアー(シンガポール、東京、NY、ロサンゼルス、ロンドン)を実施。6月には創業地マレイユ・シュール・アイ村で一族揃っての200周年の祝宴を開催予定。2019年1月には6代目フランソワ・ローラン=ビルカール当主(アントワンさんの兄)のご子息ニコラ・ローラン=ビルカールさんや、2017年末からフランソワ当主のもとで学んでいた、いとこのマチュー・ローラン=ビルカールさんが7代目として就任しますが、彼らはすでにメゾンに参画し、活動しています。

プレスランチ冒頭、アントワンさんは次の100年に向けての決断として、「これ以上数量は増やさない」と宣言。今年の出荷分からパッケージ変更、ロゴを少し大きくするとの話でした。

 

ディスプレイは4月から京都で先行発売の限定スペシャル・ボックス
アントワンさんが京都の妙心寺退蔵院を訪問した折、感銘を受け、それがきっかけで誕生したコラボレーションで、漢詩は唐代の詩人于武陵の“勧酒”を、同寺松山大耕副住職がしたため、水墨画は現代美術家の椿昇さんが“龍”をイメージして描いたものです。限定1,000箱、小売価格7,500円(税別)


とうふ屋うかいでマリアージュ

磯香さざえ  蛸もずく  鯛桜すし


あげ田楽


お造り


色合わせで楽しんだロゼ×海老とアスパラ
ぶどう品種はシャルドネ60%、ピノ・ノワール20%、ムニエ20%、ドザージュ9g/L。赤ワインはマレイユ・シュール・アイとアンボネイ村のPNを10%以下ブレンド。アンボネイのPNについて「マレイユ・シュール・アイのぶどうより複雑でストラクチュアがあり、ファンタスティック」とアントワンさん。


うかい亭の大桶寄せとうふのプレゼンテーション


昔懐かしいお豆腐屋さんの香り


白で合わせるマリアージュ
ブラン・ド・ブランと予想以上の相性の良さにびっくり


美味、口中にこってりとした旨味と複雑味、思わずお替りを!


芝特製ローストビーフでも色で合わせるマリアージュ、ロゼ体験


桜海老ご飯


春苺と抹茶よせ



(左から)
#!:ブリュット・レゼルヴ
ぶどう品種はムニエ40%、シャルドネ30%、 ピノ・ノワール30%、 ドザージュ7-8g/L。ムニエがポイント、果実感とフレッシュ感、小売価格7,500円(税別)

#2:エクストラ・ブリュット
2008年に完成したドザージュ・ゼロのキュヴェ。アントワンさんいわく「世界的にドザージュは減少傾向、ビルカールのアイテムも2005年くらいから減らし気味」と。ぶどう品種はブリュット・レゼルヴの比率と同程度。ムニエ40%、ピノ・ノワール35%、シャルドネ25%で瓶熟はブリュット・レゼルヴより1年長く、ドザーシュなし。小売価格8,000円(税別)

#3:ブラン・ド・ブラン グランクリュ
ぶどう品種はシャルドネ100%、グラン・クリュのコート・デ・ブランのアヴィズ、シュイィ、クラマン、メニル・シュール・オジェ(30%)で自然の果実感を生かすため、早目に収穫を行うのが特徴。瓶内熟成は約4年、ドザージュ 7g/L、小売価格11,000円(税別)

#4:ブリュット・ロゼ
1954年にリリースされ、シャンパン界では先駆者的ロゼ。きれいなサーモンピンク、甲殻類(海老)、ローストビーフ、桜海老ご飯、春苺まで、幅広く楽しめたロゼ。小売価格12,000円(税別)

#5:キュヴェ・ニコラ・フランソワ ビルカール2002
1964年に創始者ニコラ・フランソワへのオマージュシャンパンとしてデビュー、ぶどう品種はシャルドネ40%、 ピノ・ノワール60%(一部樽発酵)、ドザージュ5-6g/L、10年間の瓶熟を経てリリース。小売価格28,000円(税別)


200周年記念ボトル情報

ビルカール・サルモン刊行
『Champagne Billecart-Salmon, Two Centuries of Adventure』

6月の祝賀会でお披露目される200周年記念ボトルはぶどう品種PN92%、CH4%、ムニエ4%で、2012年、2008年、2006年そして若干2001年をブレンド。容量はマグナムとジェロボアムのみで数量はそれぞれ1,818本、118本、希少です!!

メゾンでは醸造施設もテコ入れし、 区画(コート・デ・ブランやモンターニュ・ド・ランス)毎に対応できるように5hl、10hl、15hlの小容量タンクを導入。また大型のオーク樽専用の醸造所を開設予定とのこと。締めの挨拶で、100年、200年後に向けて、家族経営の継承とさらなる品質重視のシャンパン造りを続けていくと強調していました。ますますの飛躍を期待しています!


ビルカール・サルモンについてのお問い合わせは

(株)JALUXワイン・フーズ部 ℡03-6367-8756
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2018年03月21日

SENA 100 POINTS CELEBRATION セーニャ100ポイント獲得記念ガラ・ディナー@グランド・ハイアット東京

21歳を迎えたチリのアイコンワイン〝セーニャ〟が100点獲得

I received this picture from Chadwick-san, thank you very much!

来日したヴィーニャ・セーニャ

のメンバー
(左から)アジア・パシフィック地域担当ディレクターのジュリアン・プルティエさん、マーケティング・ディレクターのロレト・ケイローロさん、ヴィーニャ・セーニャのエデュアルド・チャドウィック当主
グスタボ・アジャレス駐日チリ共和国特命全権大使とマダム マリア・イザベル・コンポスもご臨席くださいました。私は今回リリースされた『Seña ~ィンスピレーションに満ちた旅路~』流通のサポートで、メンバーの一員として動いていました。

ウェルカムドリンクはアルボレダのシャルドネ2016

〝森の茂みや木立〟を意味するアルボレダ。太平洋沿岸に位置する平地の産地アコンカグア・コスタのワインで、土壌はシスト(片岩)、フレッシュ&フルーティ、切れの良い酸味、豊かなミネラル感、ピュアな印象

80名のゲストがグランド・ハイアット東京に集って






エデュアルド・チャドウィック当主のあいさつ

photo by Y.Komatsu

国内消費が主流だったチリにおいて、政策転換により、流れが変わってきたのが1980年代から1990年代でした。チャドウィックさんは1983年に父親が経営するエラスリス社に入社、ボルドーでワイン醸造を習得し、帰国後はその知識を生かし、ファインワイン造りに励みます。
1991年カリフォルニアワインの先駆者ロバート・モンダヴィがチリを初めて訪問、その時に案内役を務めたチャドウィックさんとのご縁から、ジョイント・ベンチャーの話が持ち上がり、『セーニャ(〝シグナル(信号)〟の意味)』を立ち上げることになります。
2015年に開催したセーニャ20周年記念ヴァーティカル・テイスティング@八芳園

に、ファインワインの歴史、チリ初のアイコンワインの誕生、品質向上のために飽くなき追求をし続けるチャドウィックさんの姿勢についてまとめてあります。
また、昨年9月にセーニャを訪問した時のリポートを【ワインのこころ】480㍍の展望台で味わったセーニャ2015

と題して紹介しましたので、画像と併せて是非ともご覧いただきたいと思います。


photo by Y.Komatsu
世界を驚愕させたベルリン・テイスティングのビデオシーン、仕切り役のステーヴン・スパリュアさんと


〝マン・オブ・ザ・イヤー2018〟受賞



7日当日届いた嬉しいニュース!!
英国ワイン誌デキャンターのマン・オブ・ザ・イヤー2018をチャドウィックさんが受賞!
「栄誉ある賞を受けましたが、これで私の人生が終わるのでなく、これからも素晴らしいことが続くと確信しておりますし、賞によってチリのワインがより高評価されると思っています」と述べました。
セーニャ2015の100ポイント祝賀会と重ねての朗報、おめでとうございます!!!

来賓のグスタボ・アジャレス駐日チリ共和国特命全権大使はあいさつで「エデュアルドが本当に幸せなことがよくわかります。彼が言った通り、これが到達点ではなく、この先にまだ多くの可能性があります。セーニャ100点の偉業は彼の精進のたまものです。私は日本におけるチリ大使ですが、本当の意味での大使はチリワインだと思っています」とユニークさも交えて語りました。


photo by Y.Komatsu
ワイン界の重鎮、数多くの書籍の執筆や翻訳を手掛けていらっしゃる山本博先生

ガラ・ディナーには5ヴィンテージのセーニャ登場

(右から供出順に)1997、2004、2009、2011&2015


ワインについてチャドウィック当主が解説
チャドウィック:チリワインは産地と生産者の特徴が良く出ています。1997年は比較的温暖でパワフル。2004年は冷涼年でフィネスとエレガンスが感じられます。アコンカグアのワインにはボルドーのエレガントさや複雑さ、チリの果実の純粋さが現れています。カベルネ・ソーヴィニヨンに加えてカルメネールのスパイス風味があるので、口開けのワインにふさわしいと思います。


photo by Y.Komatsu
昨年セーニャを訪問した第8回全日本最優秀ソムリエの岩田渉ソムリエが各ヴィンテージについてコメント

ファーストコースは鴨胸肉とセーニャ1997&2004

鴨胸肉のティースモーク、ブラックガーリックとビーツのロースト、ラズベリー



1997年ヴィンテージ
CS84%、カルメネール16%、全般的に低収量、成長期の初めの天候はかなり冷涼、成熟期は通常より温暖。発酵はステンレススティールタンクで約3週間の醸しの後、各ロットのワインはフレンチオーク(新樽43%)に移され、各ロットは1997年9月ブレンド後、再度樽に戻され16ヵ月熟成。
岩田:オレンジの色調が全体を覆っているので、外観からもワインが発展した状態であることがわかります。クランベリーやカシス、動物的なニュアンスのレザー、ドライミート等、様々な香りが層になって広がり、セイボリーなアクセントがあることでワインに奥行きを与えています。味わいには若々しさ、ジューシーな酸味があり、磨かれているようなタンニンが、ミドルパレットからフィニッシュまで口中をぐっと引き締め、ぶどうの質、ワインメーキングの質、熟成のポテンシャルの良さが実感できます。

2004年ヴィンテージ
CS51%、ME35%、カルメネール6%、CF5%、PV3%、通算醸し時間は各ロットで異なり、20~40日。澱引きされたワインはフレンチオークで18ヵ月熟成。
岩田:香りに発展的なニュアンスがあり、より甘味を思わせるようなドライフルーツ、腐葉土、樽由来のダークチョコ、ブーケガルミのようなドライハーブ、スパイス等、複雑味にあふれています。味わいに凝縮感があり、力強いアタック、それを支えるのびやかな酸味がストラクチュアを生み出しています。口中で穏やかに広がってくるので充実感、飲みごたえがあります。2つのヴィンテージの個性、アコンカグアの素晴らしいテロワールが熟成のポテンシャルに出ています。


セカンドコースは仔羊とセーニャ2009&2011

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ハーブでマリネした仔羊のグリル筍と芹、セミドライトマトのサラダ、ミモレットチーズのシェーブ



チャドウィック:カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロに加え、2009年にはプティ・ヴェルドやカベルネ・フランをブレンドしています。2005年から導入したビオディナミの効果もあり、根は健全で、ここ10年で素晴らしいヴィンテージになりました。夏は暑く、秋は涼しかったので、美しい酸や凝縮感のあるフィネスやパワーを備えています。2011年はやや冷涼年、フレッシュ感があり、今までのセーニャとは異なる趣になり、綺麗な酸やアロマが生かされています。セーニャは貴婦人のようなワインなので、フィネス、エレガンスがあります。このような冷涼年にこそ、その特徴が出ており、フェミニンで感性豊かです。


余談ですが、チャドウィック当主が2016年に来日した折、「ビオディナミでは、バランスの取れた生態系を作り出すことができるので、根は地中深く伸びます。ぶどう樹は健康に育つので、質の良いぶどうが収穫でき、エネルギーを感じるワインができます。醸造面では、新樽の使用率を減らし、果実のピュアさを表現するようにしています」と語っていました。

2009年ヴィンテージ
CS54%、カルメネール21%、ME16%、PV6%、CF3%、樽熟成22ヶ月。
岩田:温暖な年を反映した熟したカシス、ブラックチェリー、樽由来のヴァニラ、シナモン、タバコ、西洋スギ。タンニンや酸が滑らかで心地良いテクスチュアを生み出しているので、アプローチしやすいワインになっています。口中でフレーバーが複雑に絡み合い、立体的に広がっていく充実感があります。

2011年ヴィンテージ
CS58%、カルメネール15%、ME15%、PV7%、CF5%。樽熟成22ヵ月(新樽75%)
岩田:赤・黒系果実、清涼感のあるミントフレーバー、若さを感じさせるラベンダーや軽快さを感じさせるヴィネガー、味わいに凝縮感があり、酸の高さは口中でフィニッシュまで伸びていく印象。タンニンの質は2009年ヴィンテージと同じく甘く熟していて、ヴィンテージに関わらず、品質の高さを継続性に感じ取ることができます。

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メインコース国産牛に2015ヴィンテージを合わせて

国産牛サーロインのロースト、黒七味風味、ビーフジュ、柚子風味の大根のブレゼ

ジェームズ・サックリングが満点評価したセーニャ2015

2015年ヴィンテージ
CS57%、カルメネール21%、Ma12%、PV7%、CF3%。樽熟成22ヶ月(新樽65%) フードル12%
岩田:すでに完成されたワイン。ジューシーで甘さを連想させるカシスやブラックチェリーに加え、ラベンダー、スミレ、西洋スギ、タバコの葉、黒鉛を思わせる香りが素晴らしいハーモニーを奏でています。香りの緻密さから10年後、20年後発展していくポテンシャルを感じます。凝縮した果実味を支える活き活きしたきめ細かい酸がストラクチュアを生み出し、2015年はマルベック(12%ブレンド)がもたらす柔らかなタンニンがより洗練された印象を与えています。エネルギーと集中力に満ちた味わいで、タンニンと酸と果実味が調和し、すべてがシームレス。セーニャが追及している〝フィネス〟と〝エレガンス〟がワインのなかで見事に表現されています。

チャドウィック当主とCheers!

photo by Y.Komatsu

チャドウィック当主は2015年ヴィンテージで杯を挙げた後、名誉なことにお席まだ来てくださってCheers!!
胸にはチリ&日本友好バッジ、カフリンクス(カフスボタン)は、チリ原産の〝Lapis-lazuli ラピスラズリ〟、ラピスは石、ラズリは青の意味を持つパワーストーンです。 実は私の当日の指輪もラピスラズリ、チリイベントの時はいつも身に着けています!

デザートはあまおうのスープ

クレーメタンジュとあまおうのスープ、バニラアイスクリーム



photo by Y.Komatsu
抽選で1名にセーニャマグナムのスペシャルプレゼント、おめでとうございます!
アジャレス大使が引いた番号は30番・・・あと7つずれていれば(笑)


セーニャには真紅の薔薇が似合いますね


photo by Y.Komatsu
終宴後、リクエストにお応えしてセーニャ本にサインを


[わーい(嬉しい顔)]INFORMATION

代官山蔦屋書店の3号館洋書の書架にあります!


3月6日の夕方から行ったサイン会のひとこま
ご購入くださったワインラバーさんにはセーニャ2014を味わっていただきました、感謝!


セーニャ本の翻訳者白須知子さんも応援に駆け付けてくださいました。記念の3ショット!


セーニャ ブック〝インスピレーションに満ちた旅路〟の取り扱い店
価格:7,870円(税別)
代官山蔦屋書店3号館  ℡03‐3770‐2525
自由が丘ワインスクール ℡03‐3724‐4146
◆セーニャ ブックの購入、お問い合わせはNon Solo Vino

/ 青木冨美子迄
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2018年03月03日

【緊急告知】 3月6日17時~チリのスーパー・プレミアム・ワイン 『セーニャ』のチャドウィック当主サイン会

チリの『セーニャ』 エデュアルド・チャドウィック当主来日!

完成したセーニャ本『インスピレーションに満ちた旅路(日本語版)』

1991年、カリフォルニアワインのパイオニア、故ロバート・モンダヴィが初めてチリを訪問し、新進気鋭だったチャドウィックさんの案内でアコンカグア・ヴァレーやマイポ・ヴァレー、コルチャグア・ヴァレーを視察。当時、モンダヴィはすでにバロン・フィリップ・ロスチャイルド家とのジョイント・ベンチャーを立ち上げ、高い名声を得ていました。2つのファミリーが4年間かけて、理想的なテロワールを探求し、完成させたのが『セーニャ(“シグナル”の意)』です。1997年にリリースしたファーストヴィンテージ1995はチリ最初のアイコンワインになりました。
チャドウィック当主がセーニャ誕生から、世界屈指のワインに挑んだベルリン・テイスティング、チリワインの熟成具合について言及したリポート

を添付しておきます。お目通しいただけましたら幸いです。


2005年からビオディナミ農法導入

photo by Fumiko (2018年9月撮影)

ジェームズ・サックリングが100点評価した2015年ヴィンテージ

超時代的なワイナリー&セーニャ2015年ヴィンテージ、ともに素晴らしい!
photo by Fumiko (2018年9月撮影)


[晴れ]刊行記念サイン会
Seña

, An Inspiring Journey / セーニャ ~インスピレーションに満ちた旅路~

日時:3月6日(火) 17時~17時45分
場所:代官山 蔦屋(TSUTAYA)書店3号館 1階 ブックフロア
書籍:セーニャ インスピレーションに満ちた旅路 (7,870円・税抜) 限定30部
お問い合わせ先:蔦屋書店 ℡03-3770-2525
協力:青木 冨美子(ワインジャーナリスト)

詳細は蔦屋サイト

をご覧ください!

当日は数量限定でセーニャのワイン販売(2011VT~2015VT)も行います。
また、セーニャ本をご購入くださった来店者さまには100点をゲットした希少ワイン『セーニャ2015』をグラスでサービス(40ml程度)させていただく予定です。
チャドウィック当主初のサイン会です!
ワインラバー&セーニャファンの皆さまと当主との貴重な交流の場になります。
万障繰り合わせてご来店いただけましたら幸いです。会場でお待ちしております。
どうぞよろしくお願いいたします!
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2018年02月07日

歴史あるメゾンの次世代 ~ピオ・チェーザレのひとり娘フェデリカ&M.シャプティエの愛娘マチルダ

ピオ・チェーザレのフェデリカさん

20歳(1997年生)になったばかりのフェデリカさんはイタリアの老舗ワイナリー『ピオ・チェーザレ』の4代目ピオ・ボッファ当主が溺愛するひとり娘です。

M.シャプティエのマチルダさん

コート・デュ・ローヌ地方の敏腕醸造家ミッシェル・シャプティエ7代目当主の愛娘マチルダさん。2009年にワイン界に参入し、2011年同メゾンのアジア・ブランドアンバサダーに就任、中国で3年間活動し、中国語もマスター。その後、事業開発マネージャーとして総合輸入販売会社の立ち上げに参画、2017年6月からゼネラル・マネージャーとしてシャプティエ社全体を総括。今後の活躍に注目です!

第1部はイタリアから
ピオ・チェーザレ
ピオ・チェ-ザレは伊ピエモンテ地方にあります。その昔、ピオ・ボッファ当主が来日した時、「ローマの作家プリニウスは、ジュリアス・シーザーの戦争について書いていますが、同地方にシーザーの軍隊が来た時に、ランゲでおいしいワインを飲んだという記述があります」と語っていました。ピエモンテ地方でのワイン造りの歴史は古く、2000年以上前から行われていました。

昨年11月下旬、輸入元アルカンの招聘で父親と共に初来日したフェデリカさん。最終日の夕方から同メゾンのアンバサダー伊藤啓介さんの仕切りで、フェデリカさんを囲むプレス女子会があったので、お邪魔してきました。日本での滞在を大いに満喫なさっていたようです。うるさい(笑)マダムたちとの会話にも物おじすることなく堂々としていたので、次回の来日では、さらなる成長が期待できそうです。



20歳を機に、136年(1881年創業)の歴史を有す『ピオ・チェーザレ』の次期当主となる意思を固めたフェデリカさんは世界各国を訪問して見聞を広めている最中です。
そんな彼女が、我々に聞いて欲しいと強調していたのが、2014年ヴィンテージから、バローロとバルバレスコのラベル下部に赤字で記されている「Please don't call it regular」のフレーズでした。

先代と同じスタイル(トラディショナル)のワインを造ること
「単一畑から造る『“オルナート”バローロ』と『“イル・ブリッコ”バルバレスコ』には、ラベルにそれぞれの畑名(オルナート、イル・ブリッコ)を表示していますが、それ以外のバローロとバルバレスコは複数の畑のぶどうをブレンドして造るので、畑名が書いてありません。とは言え、このブレンドこそが伝統的製法であり、異なる区画はそれぞれ異なるキャラクターを持っているので、ブレンドの技でバランスの取れたバローロやバルバレスコができるのです。つまり、これこそがバローロであり、バルバレスコなので、“普通の”とか“レギュラーの”とは呼ばないで欲しいのです」と。
画像が小さくて読みにくいのですが、Please don't call it regular のフレーズは左から3本目(バルバレスコ)と4本目(バローロ)のラベルに記載してあります。

故デュブルデュー教授との関わり
ドュニ・デュブルデュー教授と言えば、白ワインの大家ですが、ボッファ当主からの依頼を受け、亡くなるまで醸造のコンサルタントをしていました。現在は、一番弟子だったクリストフ・オリビエさんが引き継いでいます。
また、栽培については、2004年から参画しているクラウディオ・ピラさんが担当。殺虫剤を使わず、有機栽培同様のコンセプトで畑の改革に力を入れています。

フェデリカさんは3年前、父親が還暦を記念して購入したモンテフォルテ・ダルバのモスコーニについても言及。広さは約10㌶で、日本円で超2億円。人気のあるバローロ地区で土地を入手するのは年々難しくなっているようです。

供出されたワイン
#1:ガヴィ DOCG2016
コルテーゼ100%、契約農家からの購入ぶどう。フレッシュさを生かすためにステンレスタンクで澱と一緒に低温で発酵。ピュアな果実の風味、スムースな口当たり
#2:ラルトロ シャルドネ・ランゲ DOC2016
シャルドネ90%、ソーヴィニヨン・ブラン10%、75%ステンレスタンク、25%フレンチオーク。フレッシュ&フルーティ、ミネラル、ハーブニュアンス
#3:ピオディレイ シャルドネ・ランゲ DOC2014
“イル・ブリッコ”のシャルドネ100%、初VTは1985年。同メゾンのなかで、トラディショナルでないタイプ、ネーミングは“ピオの女性にためのワイン”。フレンチオークで発酵・熟成。白桃、洋梨、トロピカルフルーツ、白胡椒、上質な酸、口中クリーミー

#4:バルバレスコ DOCG2012
ネッビオーロ100%、35%バリック(3分の1新樽)&65%使用済カスク(20~50hl)、スミレやバラ、熟した果実、スパイス、エレガントさと力強さを併せ持つワイン
#5:バローロ DOCG2013
ネッビオーロ100%、30%バリック&70%カスク(20~50hl)、力強さがあるので、ワインの王様、王様のためのワインと呼ばれているワイン、果実味と豊かなタンニンのバランス
#6:バルベーラ・ダルバ DOC2015
バルベーラ100%、バリック20%&カスク80%。プラム、ブラックベリー、若干オークのニュアンス、スパイス、レザー、甘草、酸味とタンニンと厚みのバランス良好
#7:ネッビオーロ・ランゲ DOC2014
ネッビオーロ100%、バリック20%&カスク80%(20hl、50hl)。熟した果実、赤黒いベリー、上質なタンニン

#8:モスカート・ダスティ DOCG2016

日本未入荷(参考出品)、モスカート100%、異なる3区画の厳選した畑の古樹、少量生産、くちなし、アンズ、アカシア、熟したカリン、長い余韻、癒し系の魅力的なワイン


松坂豚のローストにバローロを合わせて
表参道『misolaミソラ』はイタリア北部の伝統料理にシェフの創造性を加えた料理でもてなすリストランテ。1階のワインショップSasalaで好みのワインを選び、階上のレストランに持ち込んで楽しめます!


第2部はコート・デュ・ローヌ地方の北ローヌにフォーカス
シャプティエ
1月末に初来日したマチルダさんは、服部栄養専門学校別館ANNEXEでセミナーを実施。会場では服部料理専門学校の生徒さんも聴講していました。


シャプティエでは
(1)セレクション・パーセレール(Fac & Spera/ファック・エ・スペラは“人事を尽くして天命を待つ”の意味) 区画ごとに細分化された単一畑で栽培されている古樹から造られる同社最高峰のワイン
(2)偉大なる遺産(Prestige)ローヌ・ヴァレーを代表する伝統あるクリュワイン
(3)確かな品質(Tradition)同社の中核を担う、毎日の食卓に欠かせないワイン
等のレンジがあり、テイスティングでは北部ローヌの代表的な品種シラーとマルサンヌにフォーカスして、(2)のプレステージのなかの5つのワインが供出されました。

シラーの起源については2001年6月のDNA鑑定で、フランスのアルデッシュ地方の『DUREZA デュレザ』とフランスのサヴォワ地方の『MONDEUSE BLANCHE モンドゥーズ・ブランシュ』が自然交配して誕生したことがわかっています。最近では香り物質ロタンドン(胡椒やスパイスのような特徴香)も話題になっていますね。余談ですが、日本の椀子ヴィンヤードのシラーにこの香りが強く、検知される数値も高いので、私は興味引かれています。
マルサンヌは、シャプティエさんが2009年に来日した時に、「このぶどうは瓶熟中、眠りに入る時期があるので、その段階で開けると良さが伝わらない。飲むタイミングがとても難しい」と語っていたのが強く印象に残っています。

マチルダさんは、シャプティエのビオディナミ農法、点字ラベル、「悪いテロワールは存在しない、それが生かされていないだけ」という言い方をしながら、同社が世界(国内はプロヴァンス、ルーション、アルザス。海外はオーストラリア、ポルトガル)でワイン造りに取り組んでいることについて言及していました。


(左から)
#1:クローズ・エルミタージュ ブラン レ・メゾニエ2016
マルサンヌ100%、白い花、黄リンゴ、カリン、吟醸香、口中で塩味、ビター感(ほろ苦さ)、ピュアな酸味と厚みのある味わい

#2:エルミタージュ ブラン シャンタルエット2015

マイ・ベスト!
マルサンヌ100%、ステンレスタンクとフレンチオーク(600L)で10ヶ月熟成、ドライフルーツ、カリン、蜂蜜、白胡椒、ミネラル、果実味と酸味とほろ苦さのバランス。撮影時、マチルダさんに「お好きなワインを持って」とお願いしたら、シャンタルエット(歌うひばりの意味)を選んでいたので嬉しい気分!


#3:クローズ・エルミタージュ ルージュ レ・メゾニエ2015
シラー100%、深みのある赤紫色、香りはフラワリー、スミレ、若干木香、甘やかな乳酸のニュアンス、口中では香りで感じた印象よりドライ、上質なタンニン
#4:コルナス レ・ザレーヌ2014
シラー100%、プラム、カシス、ドライレーズン、ジャム、黒胡椒、甘草、ロースト香、少し高めの温度で!
#5:エルミタージュ ルージュ モニエ・ド・ラ・シズランヌ2011
シラー100%、点字ラベルの短縮版を発明したモーリス・モニエ・ド・ラ・シズランヌさんが、その昔、所有していた畑“シズランヌ”に由来するワイン。赤・黒系ベリー、甘草、黒胡椒、墨汁、木香、スモーキーなニュアンス、中盤から広がる酸味、凝縮したタンニン、香りと味わいのバランス〇、パテよりワインのほうが強い印象


パテ・クルートと合わせて
昨年12月、パテ・クルート世界選手権2017の決勝戦がタン=エルミタージュ県のメゾン・シャプティエ で開催されました。シャプティエはコンクールのスポンサーです。競技の詳細はコチラ

で。日本人シェフも大健闘しています。
神楽坂『ルグドゥノム・ブション・リヨネ』のクリストフ・ポコオーナーシェフのパテ・クルートが供出され、ワインとの相性を診ました。個人的には、赤ワインより、パテのパイ皮由来のバターやロースト風味が白ワインの構成要素と合わせやすかった気がします。

最後に・・・愛を感じる“ル・パヴィヨン”ストーリー


セレクション・パーセレールのトップアイテム『エルミタージュ ルージュ ル・パヴィヨン』
この1991年ヴィンテージには、シャプティエさんの親心がずっしりと詰まっています。愛娘マチルダさんのバースデーヴィンテージだからです。

子宝に恵まれなかった当主の念願が叶い、1991年にマチルダさんが生まれました。「結婚式で開けるワインを造ろう」と決意した当主は、「娘が20歳で嫁ぐなら問題ないが、晩婚になるかもしれない。その時にワインが劣化していたら、どんなに悲しいことか。そのために絶対に素晴らしいワインを造ろう」と。
1991年はいつにも増してグリーンハーベストに力を入れたそうです。

今回、初めてマチルダさんとお目にかかり、その逸話を思いながら、ご挨拶させていただきましたが、「マチルダさんなら良縁に恵まれ、シャプティエさんも大満足のル・パヴィヨンで乾杯するに違いない」と確信しました。シャプティエ当主はパーカー・ポイント(PP)100点を何度も獲得していることを自負していますが、ル・パヴィヨン1991も100点評価されています。
2012年に来日したピエール・アンリ・モレル常務取締役さんが語ってくださったセレクション・パーセレール

の内容はとても濃かったです。マリアージュも印象的でした。ご興味があれば覗いてください。


■製品についてのお問い合わせ
・ピオ・チェーザレ (株)アルカンワイン営業部 ℡03-3664- 6591
・M.シャプティエ  日本リカー(株) ℡03-5643-9772
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2018年01月29日

人気バローロの造り手ルチアーノ・サンドローネの2代目バーバラ・サンドローネ初来日

創始者が孫に託した新たなネーミング ~カンヌビ・ボスキスからアレステに~


伊ピエモンテ州ランガ地区バローロ村が拠点のルチアーノ・サンドローネ


ガレージで自らのワインを造り始めてから、2017年で丸40年を迎えた創始者ルチアーノさんと、孫のアレッシアさん&ステファノさん。
サンドローネのフラッグシップワイン、バローロ『カンヌビ・ボスキス』は2013年ヴィンテージ(VT)から、孫たちの名に由来するバローロ『アレステ』に変わりました。


新VT 『アレステ2013』と『カンヌビ・ボスキス2007』


2代目当主のバーバラ・サンドローネ女史が語る40年の歩み


輸入元ジェロボーム

の招聘で、ルチアーノさんの娘バーバラさんが初来日。1994年からファミリー・ビジネスに加わり、コミュニケーションや広報などあらゆる業務に従事。世界を飛び回り、父親が手掛けるワインを紹介しています。次世代を担うふたりの子供たちアレッシアさん(19歳)とステファノさん(17歳)はワイン醸造等を学んでいます。
バーバラさんはワインメーカーズディナー等で日本のサンドローネファンと交流していましたが、来日の主たる目的である、カンヌビ・ボスキスの名称変更の経緯についてもしっかりと発信できたようです。

ルチアーノ・サンドローネの沿革
ルチアーノさんの父親は家具職人だったので、ワインとは無縁の家系でした。15歳の時に家業を離れ、ワイン業界に。最初はジャコモ・ボルゴーニョ、その後はマルケージ・ディ・バローロの元で働きました。

1977年バローロの中心部にあるカンヌビ・ボスキスに畑(1㌶弱)を購入、1978年にマルケージ・ディ・バローロで働きながら、自らのワインも手掛け、自宅のガレージ内で約1500本のワインを生産。1981年ヴィニタリーにワインを出展。それがアメリカのワイン商の目に留まり、アメリカへの輸出がスタートします。

1990年マルケージ・ディ・バローロを辞めて独立。アルバの醸造学校を卒業したルチアーノさんの弟ルカさんが1992年にワイナリーに参画。1995年バローロに新しい土地を見つけて、1999年グラヴィティシステム(地下1階、地上2階)のワイナリーが完成。
現在、27㌶の畑の管理、6つの畑(5つがバローロ、1つがロエロ)で、栽培している品種は「ドルチェット」、「バルベーラ」、「ネッビオーロ」
直近の話題として、世界的に高評価を得ている『カンヌビ・ボスキス』が2013VTから『アレステ』に名称変更。

カンヌビ・ボスキスからアレステに変わった経緯
ルチアーノさんは孫のステファノさんが生まれる17年前頃から、「家族のため、次世代のために何かを変えたい」との思いを抱いていたようです。10年間にわたり、家族で話合いが行われていて、その結果、バーバラさんのふたりの子供たちの名に由来する、"アレステ"にすることで全員が同意。2013年VTからワイン名が変更になりました。
40年前に初めてカンヌビ・ボスキスをラベルに表記したルチアーノさんなので、決断に至るまでには、かなり悩んだことと思います。でも、この行動はルチアーノ・サンドローネの歴史の伝承、創始者が大切にしている家族&大事なワインを次世代に託した形象化だと思うので、サンドローネファンは十分に理解できると思っています。

ちなみに、プレスランチョンで、数年前に起きたサブリージョン表記問題(ボスキスを表記するのは違法との訴訟)の質問が出ました。裁判の結果は、カンヌビでもカンヌビ・ボスキスでも、どちらの表記を選択しても良いとの判決が出て、一件落着しているので、今回のネーミング変更の直接の要因ではないようです。


プレスランチョンで8アイテムをテイスティング

#1:ドルチェット・ダルバ DOC2015 
最新VT、畑はモンフォルテ・ダルバ、ノヴェッロで標高350~450m、収穫は例年9月第2週、ステンレスタンクのみ使用(10ヶ月熟成)、10区画(2つの畑)のワインをブレンド、7月末に瓶詰、9月リリース。フレッシュ&チャーミング、色調はルビーやバイオレット、ベリー系果実、リコリス、辛口ながら余韻にドルチェット(ドルチェ)由来の甘やかさ。ワインだけでも料理と合せても万能。
#2:バルベーラ・ダルバ DOC2015
最新VT、畑はモンフォルテ・ダルバ、ノヴェッロで標高350~450m、風が強い区画、収穫は9月下旬から10月初旬。バルベーラは酸が高く、多産なので収量のコントロールが大事。溌剌とした酸味があり、タンニン分が少ないので、スランス産トノー500㍑(新樽30~35%)で12ヶ月熟成。7区画のワインをブレンド。深みのある濃紫色、黒系果実(ブラックベリー、プラム)、ココア、コーヒー、長熟な品種なので10~15年楽しめる。


タナロ川を越えたロエロ地区にあるヴァルマッジョーレ(大きな谷の意)は扇状の地形で東から西向きの畑、65~70度の急傾斜、土壌は砂質。6~8区画に分けて収穫を行うが、機械は入れないので全て手作業。ルチアーノさんは28人の畑の所有者に地道に交渉し、1990年畑を購入。現在3㌶を所有。
#3:ネッビオーロ・ダルバ ヴァルマッジョーレDOC2015
最新VT、ぶどう品種はネッビオーロ、畑はヴェツァダルバ(ロエロ地区)、明るいルビー色、砂質に由来するフィネス、赤系果実満載の香り、新鮮な摘みたてのストロベリーやラズベリー、タンニンはソフトでシルキー
#4:同 DOC 2010  (Sibi et Paucis)
ぶどう品種はネッビオーロ、畑はヴェツァダルバ、赤系果実が熟したニュアンス、スパイス、豊潤でエレガント

#5:バローロ レ・ヴィーニュDOCG 2013
最新VT 、収穫時期は10月10日頃、ぶどう品種はネッビオーロ、畑はバローロ、ノヴェッロ、新しく購入したカステリオーネ・ファレット&セッラルンガダルバ、4つの区画のワインをブレンド、500㍑のフレンチオークで18ヶ月熟成、粘土石灰質土壌で一部砂質混在、ドライフラワー、プラム、レザー、スパイス、上質な酸味、木目細やかながら存在感のあるタンニン、熟成による変化が楽しみなアレステの弟分的ワイン。
#6:同 DOCG 2007 (Sibi et Paucis)
ぶどう品種はネッビオーロ、畑はバローロ、ノヴェッロ、モンフォルデダルバ(2区画/契約畑)で、4つの区画のワインをブレンド、プラム、ブラックベリー、スパイス、ミント、溶け込んだタンニン、バランス良好

#7:バローロ アレステ DOCG 2013
最新VT、単一畑、ぶどう品種はネッビオーロ、標高300mほどで畑がボール状、粘土石灰質の土壌、500㍑のフレンチオークでMLF後、24ヶ月熟成、赤系&黒系果実、甘草、レザー、ミネラル、凝縮感、複雑味、ポテンシャルあり、余韻も長い
#8:同 カンヌビ・ボスキス DOCG 2007 (Sibi et Paucis)
単一畑、ぶどう品種はネッビオーロ、果実とタンニンと酸味がワインに溶け込み、継ぎ目のないスムースな食感、アーシー、タバコ、レザー、きのこ、リキュール、旨味、時を経たネッビオーロが本領発揮した印象



ワインは手前から#1~ #4 、奥左から # 5~#8

エレガントな砂質土壌のネッビオーロ

左から#3#4
ヴァルマッジョーレは若い2015年VTのほうが色調も淡く、味わいは繊細でエレガント。得も言われぬ魅力があり、惹かれました。
色調の違いが何に由来しているのか、伺ったところ、ひとつは土壌、ひとつは醸造(新樽の使用)とのこと。「砂質土壌で育つネッビオーロは若いうちは色が淡く、熟成するにつれて、濃い色調になり、複雑味が出てきます。醸造面では新樽を使わず、2~3年の使用樽を用いています。バローロは熟成すればするほど深みを増し、茶色やレンガ色のトーンになるのですが、ヴァルマッジョーレは樽を使ってもバローロと違って新樽は一切使わないので、その特徴がより顕著に出ています」とのお返事でした。

2004年から導入したSibi et Paucis(熟成プロジェクト)

バーバラさんが手にしているボトルのラベル右下にご注目
熟成プロジェクト“シビ エ パウチ”のロゴがあります。

イタリア人の哲学者でワイン醸造家でもある友人の言葉からヒントを得たネーミングで、シビはラテン語で“私自身”、 パウチは“限定された友”を意味しています。
バーバラさんは「家族のためにワインを遺すこと。そして、限られた数量のワインを大事な人たちとわかちあうためのファミリーライブラリーで、構想は父がジャコモ・ボルゴーニョにいた時に、ネッビオーロの熟成プログラムの大事さを体験したことがベースになっています」と語っていました。

ネッビオーロの熟成の変化がわかる

対象のアイテムはネッビオーロのワイン『ヴァルマッジョーレ』、『レ・ヴィーニェ』、『カンヌビ・ボスキス』で、それぞれ生産量の10%だけストックしておきます。ヴァルマッジョーレは6年間、レ・ヴィーニェとカンヌビは10年間、セラーでさらに瓶熟させて、その後再リリースさせるプロジェクト。
余談ですが、バローロの規定は樽熟2年、瓶熟1年ですが、サンドローネでは瓶熟期間を2年にしているので計4年。いかに熟成期間を大事にしているかがわかります。

熟成プロジェクトに関して、「ネッビオーロは若いうちはタンニンが強く、飲みにくいことがあるのですが、熟成するとそれがまるくなり、アプローチしやすくなります。父には熟成したバローロを知って欲しいという思いがあり、ワイナリーが完成した時にスペース的にも余裕ができたので、実行しています」とバーバラさん。

バローロをOUT

の黒トリュフパスタと合わせて

たっぷりの黒トリュフ、お部屋中に香りが広がりました!


土地のワインと土地の食材との言わずもがなのマリアージュ
#8のカンヌビ・ボスキスの枯葉的な要素、溶け込んだタンニンのまるみがトリュフと合わせると口中で渾然一体。シビエパウチの素晴らしさも実感できました!

バーバラさんはネッビオーロで造る3アイテムのワインについて、「同じ品種のワインですが、ヴァルマッジョーレは砂質土壌、レ・ヴィーニェは粘土石灰質に若干の砂質が混在、カンヌビは粘土石灰質なので同じ言語を話していますが、生まれた場所が違うので、それぞれ異なるアクセントで話しかけてくるワイン」と表現していました。何というお洒落な言い方!
イタリアの土着品種“ネッビオーロ”に対する強い愛を感じました。


ユニークなOUT


お店のコンセプトは、ひとつの料理(トリュフのパスタ)、ひとつのワイン(リッチな赤ワイン)、ひとつの音楽(レッド・ツェッペリンのサウンド)の三位一体感。来店者は販売機でチケットを購入するシステムになっています。
店舗構想を立ち上げたのは、豪州メルボルンでレストランを経営するデビッド・マッキントッシュさん、起業家のトム・クレイゴさん、東京でフードコンサルタントとして活躍するセーラ・クレイゴさんの3人。
私がお邪魔した時は、“ひとつのシャンパン(ポル・ロジェ)”も仲間に加わっていました。できれば、ウインストン・チャーチルを黒トリュフのパスタに合わせてみたいです!

■ワインについてのお問い合わせは輸入元ジェロボーム(株) ℡03-5786-3280
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2018年01月11日

Arrivé au Japon Leroy45ans  髙島屋&≪ルロワ≫提携45周年記念テイスティング

髙島屋とルロワ社

髙島屋のイメージフラワーは薔薇、1952年に包装紙に初登場したのが1本の薔薇でした!

ブルゴーニュの至宝ルロワ

(C)髙島屋
1868年、フランス中部オクセー・デュレスに創設され、ブルゴーニュの至宝と称されるルロワ

髙島屋がルロワの輸入・販売を開始したのは1972年。その16年後(1988年)には資本提携し、両社のつながりはより強固になりました。そして、昨年(2017年)11月21日、ルロワ日本登場45周年を記念した特別テイスティングセミナーが行われました。


赤いエチケット・ホルダーは2012年の40周年記念テイスティングの為に、マダム・ラルー・ビーズ・ルロワが用意してくださったもので、中には同日供出されたワインのラベルが入っています。この時はVTごとにマダムからのメッセージがあったので、お立ち寄りいただけると嬉しいです。


45周年はマダム厳選の12本
 
(左から)2007年から10年毎に遡ったVTで、1997年、1987年、1967年、1957年


マダムがセレクトした〝7〟に因んだワイン


ナビゲーターは40周年の時と同じく、今イベントの為だけに来日したフレデリック・ロメール取締役

第1フライトは2007年

#1:サヴィニレボーヌ プルミエ・クリュ レ・ナルバントン(ドメーヌ・ルロワ)


当日のベスト3だったサヴィニレボーヌ!
芳醇なアロマ、果実の凝縮感、ピュアな酸味、バランスの取れたエレガント系ワイン
#2:ヴォーヌ・ロマネ プルミエ・クリュ レ・ボーモン(ドメーヌ・ルロワ)
赤系果実の要素、果実由来の旨味、レザー、トリュフ、焙煎香、酸の広がり、長い余韻
#3:クロ・ド・ヴージョ グラン・クリュ(ドメーヌ・ルロワ)
香り閉じ気味で後半重厚&複雑味、カシス、ブラックチェリー、樹皮、黒蜜、芯のある酸、さらなる熟成に期待

ロメール:2007年はやや難しい年で、一部病害虫の発生もあったので収量は少な目。このヴィンテージ(VT)はバランス良く開いていて、この先30年、40年、50年の熟成に耐えることができます。2007年と前後するVTですが、2005年は強い凝縮感があり、2006年はポマールやサヴィニレヴォーヌとも今飲み頃。2008年は酸が強め、2009年は果実味、フルーティさがよく出ています。


ドメーヌ・ルロワの誕生は1988年。シャルル・ノエラが所有していたグラン・クリュ畑(リシュブール、ロマネ・サン・ヴィヴァン、クロ・ヴージョ、ヴォーヌ・ボー・モン、オー・ブリュレ等)、その後、ドメーヌ・フィリップ・レミーの畑(クロ・ドゥ・ラ・ロッシュ、ジュヴレ・シャンベルタン・レ・コンボット、ラトリシェール・シャンベルタン、シャンベルタン)を買収。
ビオディナミ農法への着手も1988年からで、当時ブルゴーニュで取り組んでいたのは1~2ヶ所だけでした。ビオディナミ農法を導入するとワインの品質については問題なしですが、収量は減ります。調剤は500(根に効果)、501(葉に効果)、マリアトゥーンの堆肥等を活用。1999年には完全に「芽かき」を止め、新芽はそのまま伸ばす。また、パリサージュ(枝の誘因・固定)をしないことで、樹は160~170cm の高さになり、これにより、ぶどう樹は地中からの養分をまっすぐに吸い上げることができるようになりました。
化学肥料を排除し、天体の動きを利用する自然農法。ルロワではこの農法が極めて有効な方法あると考えています。

醸造面では、2007年は18~19hl/ha、2008年はさらに少なく15~16hl/haで、過去最低の数字でしたが、作業は通常と同じ。すべて手摘みで、8~10kgの箱に入れて、温度調整した車で輸送。選別は17名が2組(34名)で行い、その際、ぶどうは除梗も破砕もせず、房のまま。重さが60kgになった段階で醸造所に搬入。アルコール発酵は15~20日間(年により異なる/天然酵母使用)。新樽で14~16ヶ月寝かせてから瓶詰。


第2フライトは1997年

#4:ポマール レ・ヴィーニョ(ドメーヌ・ルロワ)
97年のポマールにしては控えめでおとなしい印象、ブラックチェリー、アールグレイ、ダークチョコ、アーシーなニュアンス

#5:ジュヴレ・シャンベルタン プルミエ・クリュ レ・コンボット(ドメーヌ・ルロワ)
当日のベスト1、アメリカンチェリーやグリオットチェリー、ピンクペッパ―やレザー等、様々な香りの連鎖。中盤以降の酸とタンニンのナイスハーモニー、滑らかできめ細かい食感





#6:ラトリシエール・シャンベルタン グラン・クリュ(ドメーヌ・ルロワ) 
凝縮した赤系果実、香りにミント系ハーブ、アルコール由来の甘みが酸の存在を押し上げていく印象、持続性のある酸味、タンニンのストラクチュア、口中にボリューム感、今後の熟成が楽しみ!




ロメール:収穫は比較的遅かった年で、フルーティさが強めに出ています。少し前に飲んだ印象では、コート・ド・ニュイは最初は閉じ気味で時間の経過で開き、一方、コート・ド・ボ―ヌは早くから飲めると思っていましたが、今、味わってみると、双方ともにバランスが良くなったきた感じです。ポマールは四角ばったまじめな印象ですが、熟成と共に硬さが取れてくると思います。
#5、#6ともにシャンベルタンですが、シャンべルタンは隣の畑同士でも異なります。マダムが畑を購入する時にも、「周囲と違う印象」との思いがあり、ラトリシエールは優雅で上品、飲み比べると良くわかります。

第3フライトは1987年

#7:ボーヌ プルミエ・クリュ オー・クシュリア(メゾン・ルロワ)
#8:ジュブレシャンベルタン レ・グレーブ(メゾン・ルロワ)
#9:ジュヴレシャンベルタン プルミエ・クリュ レ・シャンポー(メゾン・ルロワ)

ロメール:1987年の収穫は9月半ばから下旬迄で、収量は多め。今、熟成を迎えている飲み頃のVTです。マダムは1955年から家業であるネゴシアンの仕事に関わっていますが、ぶどうやワインの買付にあたっては十分な選別をしてきました。良いものを選び続けるのはなかなか難しいのですが、ブラインドで自身の感覚だけで選び抜き、30年、40年という時を経たワインがカーブで眠っています。メゾン・ルロワが果たしてきた役割はとても重要だったと思っています。

ラストフライトは1967年と1957年

#10:ニュイ・サン・ジュルジュ PC レ・シャブッフ1967(メゾン・ルロワ)
(他メンバーのグラスと比べて)色調、香りが異なり、ボトル差があった印象。5年前に体験したNSGらしいミネラルを感じられなかったのが残念。

#11:シャルム・シャンベルタン グラン・クリュ1967(メゾン・ルロワ)

当日のベスト2、オレンジを含む色調なれど50年の歳月を感じさせない若さ、若干シェリー的アロマ、エスニックスパイスやハーブ、おだやかな酸、シームレスな味わい、層になって広がる余韻

#12:ジュヴレシャンベルタン PC レ・カズティエ1957(メゾン・ルロワ)
質量ともに平凡な年と言われる1957年ゆえに、ルロワの心意気が伝わってくる1本。スワリングでレザー、タバコ、アーシーな香り。ワインに溶け込んだ渋味と旨味のバランス、ぜい肉を取り去った余韻、貴重な体験!

ロメール:1967年の収穫は10月初めから半ばにかけて行いました。ぶどうがなかなか実らない年で、マダムいわく「人間と同じで、時間をかけて熟した方が味があるのよ」と。その甲斐あって、今、味わいがとても良く出ています。シャルム・シャンベルタンは馥郁(ふくいく)たるイメージがあり、#6のラトリシエール・シャンベルタンに似ています。

最後のジュブレ・シャンベルタンは60年を経たワインであり、ありきたりの言葉で説明しようという気持ちにはなれません。メゾンの畑や醸造所では多くの人が働いており、彼らの仕事の成果が60年の歳月を経て、我々に手渡され、残されていることを思うと、心からの感動を覚えます。

コルクに関して


1967年VTにリコルクしたものがあり、参加者から質問がありました。
ちなみに、リコルクした時期は「5年前」とのことでした。


ロメール:現在100万本を超える在庫があります。マダムと品質管理の4名が定期的に点検していて、2~3年周期で必要に応じてリコルクしています。その際は特殊な装置を使い、ボトル内の液体が空気にふれない形でコルクを取り換えることができます。補充する場合は同じクリュの同じワインです。ルロワでは1950年代以降、スペインのサングレラ地方のコルクを使用しているので、以前ほどリコルクする頻度は少ないのですが、それ以前のものはコルクが小さめの規格だったのでリコルクしています。

Hors d'oeuvres


すべてのテイスティングが終り、6種の料理とのマリア―ジュをチェック!
(1) フォアグラのソテーとブルオッシュ マルサラワインの香り
(2) キャビアと蟹のタルタル エクレア仕立て
(3) 青豆のムースに雲丹とイクラをあしらって
(4) 合鴨とオレンジのパイ包み コンソメジュレとトリュフ
(5) 白エビのフリット'
(6) 帝国ホテル伝統のビーフシチュー パルマンティエール風

甲殻類(蟹、白エビ)や魚卵系(キャビア)、ビーフシチューに寄り添っていた#7、クリーミーで脂分が口中に広がるフォアグラは #8、タンニンの存在感がある#9は青豆のムース&雲丹と好印象。いずれも第3フライトのワインたちで、単独で味わった時より、料理と合せると、一層精彩を放ち、マリアージュの本質を十分に感じ取ることができました。当日のベスト2だった#11 は白エビと合わせて良好。



3ヶ国語(仏・英・日)対応のルロワ本『Domaine LEROY, Domaine D'AUVENAY』


マダムからのお土産は≪ルロワ≫の真髄が詰まった書籍

40周年、45周年ともマダムは来日なさいませんでしたが、加齢(85歳)しても、エレガントで凛としたたたずまいは変わらない偉大な醸造家マダム・ラルー・ビーズ・ルロワ、これからも素晴らしいワインを造り続けて欲しいです。最後に、貴重な機会にお招きくださった髙島屋&グッドリブ様に御礼申し上げます。
ありがとうございました!
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2017年08月21日

本邦初のメディアランチでシャトー・ラトゥール・マルティヤックの魅力全開!

シャトー・ラトゥール・マルティヤックの白ワインにフォーカス


ボルドー地方グラーヴ(レオニヤン)地区のシャトー・ラトゥール・マルティヤックは、1953年に赤ワイン、1959年に白ワインの格付けを得ています。近年、赤ワインの評価があがっていますが、ブランドアンバサダーのエドゥアール・クレスマンが来日して行ったメディア・ランチでは白ワインにフォーカスし、過去から今に繋がる、その魅力について語りました!

19世紀からの歴史を振り返って 
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初代エドゥアール・クレスマンはポーランドから仏ボルドーに移住し、1853年にクルティエ(ワイン仲買人)としての活動を開始します。ボルドー中を駆け回っているうちに、彼は12世紀にモンテスキューの祖先によって建てられたシャトー・ラトゥール(当時のシャトー名)の白ワインにほれ込みます。クルティエ業から2~3年を経てネゴシアンとして独立した彼は『エドゥアール・クレスマン・カンパニー(現CVBG)』を立ち上げ、毎年、シャトー・ラトゥールの白ワインを購入、扱っていました。

シャトー購入& ネーミング変更
それから50年後、息子のアルフレッドが社長に就任。1929年から30年にかけて売りに出されたシャトーを購入し、オーナーに。1930年に入手して早々に行ったことはシャトー名の変更。正面広場に据えられている塔(ラトゥール)に由来する名を、村名のマルティヤックをつけて、シャトー・ラトゥール・マルティヤックに改名します。

曽祖父のテイスティングブックを手本にラベルチェンジ
来日したエドゥアールは「祖父ジャンはアーティストだったので、曽祖父のアルフレッドが使用していたテイスティングブックの表紙を模して、1934年、当時流行っていたアールデコ風(直線的なデザインで黒と金を使用)なラベルを作成」と解説。新ラベルになったワインは1937年、英国のジョージ6世戴冠式にも使われたそうです。

グラーヴの格付け
1952年、ジョンの時代はネゴシアンとしては成功していたものの、戦争の影響を受けてシャトーとしては今ひとつ波に乗っていなかったので、品質向上に努めました。結果、1953年には赤ワインが、1959年には白ワインがグラーヴの格付けを得ます。

現在、ジョンのふたりの息子トリスタンが経営を担当、ロイックが技術責任者として従事、生産量を抑えた良質ワインの生産に力を入れています。今回来日したエドゥアールはロイックの息子で、中国・北京でアジア担当として研鑚を積み、今はブランドアンバサダーとして活躍しています。

ワインコンサルタントはデュブルデュ・チーム
白ワインのコンサルタントは2016年までドゥニ・デュブルデュ教授でした。赤ワインは1995年から2005年までミシェル・ロランで、2006年からは白と同じ同教授。現在は教授の右腕と評されたクリストフ・オリヴィエとデュブルデュ・チームが担当しています。


1983年9月生まれのエドゥアール・クレスマンは「収穫の繁盛期に生まれたので樽と樽の間で育った」と。醸造を学び、IT関係の会社にも勤務。カリフォルニア、アルゼンチン、ボルドーで実地研修。シャトーのアンバサダーとしての活躍に期待したいと思います。

余談ですが、ジョージ6世(エリザベスⅡ世の父)の戴冠式の話が出た時、プレスメンバーから、映画『英国王のスピーチ』でジョージ6世を演じたコリン・ファースに似ているとの声が出て・・・ご本人はご不満だったのか、マット・デイモン似と主張していました(笑)


白ワインはバレルサンプルを含め4アイテム

アプローチしやすいラグラーヴ・マルティヤック・ブラン2014 / 4,600円(税別) 

ぶどう品種はSB80%、セミヨン20%。セカンドラベル。手摘み収穫、小樽発酵、1月にバレルセレクションをして、5ヶ月間樽熟(新樽率25~30%)、さらに2ヶ月タンク(この時にSBとセミヨンをブレンド)で熟成させ、ボトリング。ファーストヴィンテージは白1990、赤1986

1995、2013そしてバレルサンプル


熟成した白ワイン1995のバランスの良さを実感。ハーブや蜂蜜のニュアンス。ファミリーが昔から力を入れている白ワインはエレガントかつ熟成による複雑味を備えたスタイル。近年、フルーティさを求めて、SBの比率が多くなっているとの話でしたが、直近の2015年と2016年はセミヨン60%、SB40%(2010年はSB70%、セミヨン30%)とセミヨンが増えている模様。セミヨンの使用率はグラーヴの他の生産者より多いラトゥール・ラルティヤック、時を重ねたセミヨンから醸し出されるふくよかさは魅力です。

(右から)
■シャトー・ラトゥール・マルティヤック・ブラン1995
ぶどう品種:セミヨン55%、ミュスカデル5%、SB40%
■同2013 / 7,200円(税別)
ぶどう品種:SB70%、セミヨン30%(Gratte-Capのセミヨンをブレンド)
手摘み収穫、圧搾、発酵後、10~11ヶ月樽熟(新樽率30%)、6~7ヶ月タンク熟成、非MLF
■同バレルサンプル2016
ぶどう品種:セミヨン100%
初の試みで持参したバレルサンプル。Gratte-Capと呼ばれる1884年に植樹したセミヨンの区画0.8㌶。エドゥアールいわく「2~3年前に土壌を耕したところ、ぶどう樹が強くなり、収量もあがってきた」と。

シャトーの誇りグラット・キャップのセミヨン

『Gratte-Cap グラット・キャップ』区画のセミヨン100%

1998年にグラット・キャップの畑でマサルセレクションを開始。ぶどうを観察して (セミヨンは房が大きくなりがちなので)房が小さくておいしいぶどう樹に印を付け、翌年も同じ作業を繰り返した中から、40~50のぶどう樹を選択。そこから20~25の苗木を作り、2000年にコンサバトリーの区画に植樹。次の3年間で、房の数、ベリーの大きさ、ぶどうの味(味わい、テクスチュア、果皮の厚さ等)を調査。作業の結果は2006年までにリストアップされ、このデータに基付き、ベストなクローンを選び、シモンヌと名付けた区画に、最終的に3つのクローンを選択して植樹。収穫されたぶどうは14年以上にわたる調査研究の成果として、シャトー・ラトゥール・マルティヤック・ブランの2014年ヴィンテージに反映されています。シモンヌのぶどう樹はまだ若いので、これからですが、樹齢を重ねることでシモンヌのセミヨン100%のワイン誕生も期待できるかも知れません。


ワインと料理のマリア―ジュはザ・リッツ・カールトン東京@Azure45
「事前にワインを送り、シェフに試してもらった」とエドゥアール。
ブラン1995はハーブやスパイスの要素があり、スナップエンドウやグリーンアスパラと合せて絶妙、和食にも合わせやすいワインだと思いました。


新玉ねぎのムース


スナップエンドウ ゴーダゴールドスター ニョッキ フュメエキュム


グリーンアスパラバス 卵黄ピュレ レモンサヴァイヨン


鮑のアンクルート 紫蘇 昆布
ブラン1995と予想外の相性、生臭さも出ず、熟成した白の包容力を実感


■シャトー・ラトゥール・マルティヤック・ルージュ2005 / 12,000円(税別) 
CS65%、ME32%、PV3% 
■同2014 / ※現行VTは2013 6,500円(税別)
CS66%、ME27%、PV7%


仔羊のロースト ラベンダー風味


ショコラ ドモリ グレープフルーツのムース


(左から)
ラグラーヴ・マルティヤック・ブラン2014、シャトー・ラトゥール・マルティヤック・ブラン2013、同1995、同ルージュ2014、同ルージュ2005
http://www.latourmartillac.com/

ワインのお問い合わせは富士インダストリーズ(担当:堀江) ℡03-3539-5415
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2017年08月14日

スペイン最高のワイン・ガイドブック『ギア・ペニン』の最優秀ワイン・テイスティングセミナー2017

2017版の取扱いアイテムは11,650以上


『ギア・ペニン』はスペインワインの権威、ワイン評論家・ジャーナリストとして42年間活動しているホセ・ペニン氏が1990年に創設したワイン・ガイドブックで、スぺインワインに関して最も充実しており、スペインワインの国際取引においても影響力があります。スペイン政府が認めているガイドブックで、唯一、表紙に同国の国旗が記載されています。

創始者ペニン氏は3年ほど前からテイスティングに関わっていませんが、氏の意志を継いだ専従者7名、うち4名が試飲を担当しています。現在、スペイン語、ドイツ語、英語版があり、近々中国語版が仲間入りの予定。webでワインは検索可能 http://suscripciones.guiapenin.wine/ 

最新版『ギア・ペニン2017』の取り扱いアイテムは11,650以上(スペインで造られているワインの85%に相当)。赤6,451本(55%)、白3,044本(26%)、スパークリング990本(8%)、ロゼ759本(7%)、酒精強化407本(3%)。価格満足度抜群のワイン5,700本以上(全体の49%)、東京で開催されたプロ向けのセミナーには95点以上の最優秀ワイン(175本)から8本が供出されました。
 
スペインの多様性を感じるトップワイン

(左から順に/最後の数字は点数)
#1:ラ・リオハ・アルタ・グラン・レセルバ890 2004(ラ・リオハ・アルタ)98
#2:レセルバ・レアル2010(ボデガス・トーレス)95
#3:エル・カベルネ・フラン・デ・チョサス・カラスカル2014(チョサス・カラスカル)95
#4:1902 センテナリー・カリニャン2012(セリェール・マス・ドイシュ)96
#5:スカラ・デイ・マスデウ2013(セイェールス・デ・スカラ・デイ)95
#6:エノテカ・グラモナ2001 グラン・レセルバ(グラモナ)99
#7:マヌエル・ラベントス・ネグラ2010(ラベントス・イ・ブラン)95
#8:V ドゥルセ・デ・インビエルノ・ベンディミア・タルディア(ハビエル・サンス・ビティクルトール)95


(左から)#1~#8

95点以上の最優秀ワイン


95点以上の最優秀ワインと90点以上の高品質ワインとはどう違うのかという質問に対して、「他と差別化できるものが95点以上。個性、アイデンティティーが大事」とペニン氏。175本の最優秀ワインからセレクトした8本は「各産地の特徴がわかるもの。土壌、品種、造り方がポイント」と述べていました。

#1:ラ・リオハ・アルタ・グラン・レセルバ890 2004(ラ・リオハ・アルタ)

DOCa:リオハ、品種:テンプラニーリョ95%、グラシアーノ3%、マスエロ2%
古典的なワイン。色調は時間の経過と樽からの変化で茶色がかったルビー。スパイス香(ロウ、杉、皮等)、続いて煮詰めた果実の香り。タンニンはオイリーでビロードのように滑らか。マスエロからの酸味、グラシアーノのハーブ系のアロマのニュアンス。


アメリカンオークで6年間熟成、下の文字が読める色の明るさ

#2:レセルバ・レアル2010(ボデガス・トーレス)
DO:ペネデス、品種:カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネ・フラン
地中海に面した産地、2年樽熟させたグラン・レゼルバ。トーレスは世界的に知られているボデガで、スペインで最初にCSを栽培。ブラックチェリーのような濃い色調、香りも黒系果実。乾いた土地、ハーブ&干し草、これらは土壌(カコウ岩質の痩せた土壌)に由来。タンニンは2年間の熟成により非常にソフト

#3:エル・カベルネ・フラン・デ・チョサス・カラスカル2014(チョサス・カラスカル)

VDP:ピノ・デ・パゴ・チョサス・カラスカル、品種:カベルネ・フラン
スペインの格付けのビノ・デ・パゴ。赤い果実とフレッシュ感。標高が高いのでボルドーとは異なるCFの印象、暖かいエリアで育ったぶどう(ぶどう自体が熟した印象ではない)のニュアンス。スペインでは雨が少ない地方が多いので、ぶどう樹は水を求めて根を地中深く張り、地盤まで到達。土中のミネラル分、微生物等、様々な影響を受けるのでそれが味わいに反映。CSよりCFはストラクチャアがソフト

#4:1902 センテナリー・カリニャン2012(セリェール・マス・ドイシュ)
DOQ:プリオラート、品種:カリニェーナ100%
ワイン名は国際的に通用するようにカリニャンを使用。多くは標高の低いところで栽培する品種、地中海沿岸に生息、暑くても育てやすく、高温への耐性あり。フィロキセラ以前のぶどう樹、古樹なので収量は少なく、凝縮したワインに。新樽率16ヶ月、ペニン氏は「私なら古い樽を使う」と。香りは熟した黒い果実、暑い地域の乾いたリコレーリャ土壌に感じる焼けたニュアンス。「カリニェーナで果実感を出すのは難しいが、このワインはその特徴が良く出ている。他のワインより個性的、それが高く評価できる」とペニンコメント。

#5:スカラ・デイ・マスデウ2013(セイェールス・デ・スカラ・デイ)

DOQ:プリオラート、品種:ガルナッチャ・ネグラ、ガルナッチャ・ペルーダ  
カリ二ェーナもガルナッチャもスペインワインの特徴的な品種。ガルナッチャ・ネグラはエレガントでタンニンはソフト、ガルナッシャ・ペルーダは野生味があり、タンニンも感じる。丁寧な造りの長熟可能なワイン。土壌は粘土石灰質。オークを使うと品種の個性を隠してしまうことがあるので、セメント槽を使って熟成。標高800㍍の高いエリアで造られた印象は感じられず、ゆっくりと熟したぶどうの質感。ユーカリやバルサミコ、ハーブはぶどうの梗に由来(全房発酵)。3つの容器フードル、セメント槽、素焼きの壷で熟成させ、最後にブレンド。赤い果実(ストロベリー、ラズベリー) ミネラル、ハーブ的要素


「お気に入りを1本持って」とお願いしたら、スカラ・デイ・マスデウを選んだペニン氏
スペインにおける全房発酵について伺ったところ、「昔回帰の動きと重なり、それに挑戦していこうという動きが増えているのは確か。梗由来の土の感じが果実味と溶け合わさることにより深みが出るので、導入する造り手は少しずつ増え始めている」とのお返事でした。

#6:エノテカ・グラモナ2001 グラン・レセルバ(グラモナ)

DO:カバ、品種:チャレロ75%、マカベオ25%
ビオディナミ農法。2001年VTながら口中フレッシュ、長い余韻。ボトル内で熟成したナッツ、アミノ酸由来の旨味。長い年月を経て複雑味を増した、シャンパンに比肩しうるエレガントで上品なアイテム!
本当は100点をつけたかったが、ギア・ペニンは100点を付けない主義なので99点、これは最高点。ワインの個性が良く出ていて、これから10年、20年熟成可能なカバ。味、香り、造り、すべての面でバランスが取れていて、気泡も繊細」とペニン氏。

#7:マヌエル・ラベントス・ネグラ2010(ラベントス・イ・ブラン)

DO:ビノス・エスプモソス、品種:チャレロ70%、マカベオ20%、パレリャーダ10%
ビオディナミ農法、ラベントスはカバの先駆者のひとり、カバから脱却した泡もの(カバ非表示)、果実味、イースト香、ハーブやミント、ラベンダー。まとまりのある繊細な気泡。土壌は砂質、粘土質、石灰質。
「スペインでは瓶内2次発酵で造るスパークリングワインをカバと呼んでいたが、ラベントスではピノ・デ・パゴのコンセプトと同様に〝ここの土地で造るスパークリングワイン〟ということで、他のカバとの差別化を強調。スパークリングワイン呼称にしている」と。

#8:V ドゥルセ・デ・インビエルノ・ベンディミア・タルディア(ハビエル・サンス・ビティクルトール)

DO:ピノ・デ・メサ、品種:ベルデホ80%、モスカテル20% 
ぶどうの糖分を3つの方法(遅摘み、冷凍、自然乾燥)で濃縮させたワイン。蜂蜜、オレンジジャム、モスカテル由来の甘い香り、「オーク樽の使い方に造り手の技が反映されており、甘味が酸味と絶妙なバランスになっている」とペニンコメント。
  

第4回ギア・ペニン・セレクションTOKYO会場から

来場者から質問を受けるペニン氏


酒質の良さが際立ったロゼはセイェールス・デ・スカラ・ディ(プリオラート)のプラ・デス・アンジェールス


ボデガス・プロトスはルエダのベルデホとリベラ・デル・ドゥエロのテンプラニーリョ
9月1日からファインズが販売開始http://www.fwines.co.jp/news/pdf/20170801_Protos.pdf


エレガントなアバディア・レトゥエルタのパゴ・ネグララーダ2014(カスティーリャ・イ・レオン)

マイ・ベスト・カバ『グラモナ』

スペイン最高のカバの造り手グラモナ


ワインのこころFBでも紹介し、シャンパン講座でも特別参加させたグラモナ
カバの主要品種の1つ、パレリャーダは絶対に使わない生産者。シャンパンに負けないポテンシャルがあるので、泡好きの皆さまには注目していただきたいと思っています!
関連記事:https://www.facebook.com/heartofwinefumiko/posts/624915374352106

ギア・ペニンに関する窓口は(株)アケヒ ℡03-3303-3789
ラベル:ギア・ペニン
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2017年08月08日

冷涼地シラーの先駆者チリの『マテティック』 × ロオジエ

上質なワイン造り、その基本はビオディナミ


チリの首都サンチャゴの西に位置するサン・アントニオ・ヴァレーとカサブランカ・ヴァレーに広大な敷地16000㌶を有するマテティック・ヴィンヤーズ

は、1999年にチリの資産家マテティック家が興したワイナリーです。
4つの自社畑160㌶はいずれも太平洋から13~19kmの距離にあります。
レンジはEQとコラリージョの2つ。前者はequilibrium(均衡の意)の略で、ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ、ピノ・ノワール&シラー。後者はその昔、ミッション用ぶどうでワインを造っていた古いワイナリーの名前に由来し、シャルドネ、ゲヴュルトラミネール、シラーを生産しています。なかでもシラーは従来からのチリのシラーの概念を根底から覆し、冷涼産地で造るシラーの底力を世界に示しました!



チリ唯一のビオディナミ100%ワイナリー
マテティック家はワイン業界に参入するにあたり、1年間かけて、世界の主要な産地を視察。最終的にカリフォルニアに注目しました。ビオディナミ農法のコンサルタントのアラン・ヨーク、ワインメーカーのケン・バーナーズ、栽培コンサルタントのアン・クレイマーとの出会いから彼らを招聘、指導を受けることに。ワイナリースタート当初からオーガニック&ビオディナミに取り組み、その結果、2004年にオーガニックの認証を。2001年から導入したビオディナミについては2013年にすべての畑が“デメター”を取得したので、チリ唯一のビオディナミ100%ワイナリーになりました。

ロオジエの料理に合わせた3アイテム

左から)コラリージョ・ゲヴェルツトラミネール2015、EQ・シャルドネ2014、EQ・シラー2012

マテティックが本拠地サン・アントニオヴァレーで経営するホテル&レストランは、富裕層を対象にした国際的な大手旅行代理店のネットワーク『バーチオソ・グループ』に登録されているので、世界各地からの来訪者も多く、そのため、地元の料理と上質なワインとのマリアージュには全力を注いでいます。


質の良いワイン造りを理念にしているマテティックのワインをロオジエ

で実証!

中本聡文シェフソムリエが高く評価しているEQ・シラー


2014年に東京で開催された『チリプレミアムワインセミナー』で、講師を務めた中本氏は、マテティックEQ・シラーのポテンシャルの高さを語っていました。今回、中本シェフソムリエのホームベース『ロオジエ』でマテティックとのマリアージュを実現させることができて嬉しく思いました。


台湾、香港、中国、韓国と回った2週間のアジアンツアーの最終日に来日したマテティックのアルトゥーロ・ラライン ゼネラル・マネージャー(GM) 、トマス・アロンソ輸出担当マネージャー、個室担当の井黒卓ソムリエ

ウンドラーガ、コイレ、マテティック&テラプラ

大学で経済学を学んだラライン氏の最初の勤務先はウンドラーガでした。
ここは19世紀末から6世代にわたるワイン生産者の家系で、年間100万ケースを輸出するほどの大きなワイナリーでしたが、2006年に“ウンドラーガ”という商標を売却。その資金でコイレ

を立ち上げました。
また、『マテティック』は1999年の設立で、現在4代目のホルヘ・マテティック・ハート氏が当主(48歳)。彼の兄弟の妻がウンドラーガ家の娘なので、コイレとは親戚関係の間柄になります。
さらに、2006年に設立されたテラプラ

は、マテティックが100%出費しているワイナリーなので、上記3社には深いつながりがあります。
但し、コンセプトはそれぞれ異なり、■コイレはテロワール ■マテティックはビオディナミ ■“ピュア・テロワール”の意味を持つテラプラはエントリーレベルでの質の良いワイン造りを旨にしています。



料理とワインのマリアージュ


当日はヴィレッジ・セラーズが取り扱っている豪州プラム社のグラスをワインのタイプに合わせて使用。EQ・シラーは重厚感のあるハンドメイド『レッドA』で



ウェルカムシャンパンはエリス・コラン ブラン・ド・ノワール エクストラ・ブリュット“レ・マイヨンNV”
ピノ・ノワールの個性をブルゴーニュグラスで体感


生姜やフヌイユの風味、タルトやゼリーの食感、色彩でも楽しめたアヴァン・アミューズ




アミューズ・ブーシュは貝尽くし(バカ貝、ミル貝、北寄貝)にアサリのゼリー
コラリージョゲヴュルツトラミネール

の総生産量は526ケース。ライチやアプリコット、南国果実、エスニックスパイス、清涼感のある酸と塩っぽさが貝と素直な相性、リーズナブルでフードフレンドリーなワイン!



ラングスティーヌのラビオリ ノワール/ブランシュ サマートリュフのラメル
フヌイユのサラダとムースリーヌ サフラン風味  コンソメ・オマールとフォワグラのエミュルション
ゲヴュルツトラミネールから感じるスパイス&ハーブ(生姜、エストラゴン、サフラン)、ミネラルが甲殻類の甘さやソースの旨味・複雑味と相乗してナイスハーモニー!


甘鯛のうろこ焼き 野菜のクロカン 
トマトコンフィとフレッシュハーブ ソースジャンジャンブル



サン・アントニオ・ヴァレーの最古の畑エル・ロサリオ・ヴィンヤード(海岸から19km)のシャルドネ

、総生産量1,535ケース。種の大きな果実(白桃、アプリコット)、蜂蜜、ヴァニラ、エレガントな酸、樽(新樽率20%)の印象も心地良く、余韻に塩っぽさ。甘鯛の皮の食感と樽由来の香ばしさがマッチ、今飲んで美味しいワイン


ディナー開始1時間前にデキャンタージュしておいたEQ・シラーを中本シェフソムリエがサービス



ロンドンのインターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)2015で、バイオダイナミック部門トロフィーを受賞したEQ・シラー2012





フランス産仔鳩胸肉のロティ クルミとタイムのクルート もも肉のコンフィ
キャベツのエテュベ ブーダンピジョンとセロリのフイユ 甘酸っぱいスリーズのソース

シラーの複雑味を鳩のロティとコンフィに合わせて
深みのある濃紫色、最初にクミンやターメリックのようなカレースパイス、甘草やユーカリ、ヴァニラやココア、リッチで木目細かなタンニン、中盤以降酸の広がり。スリーズ(さくらんぼ)ソースの甘味と酸味はマリアージュのつなぎ役!



中本シェフソムリエ、輸入元ヴィレッジ・セラーズのリチャード・コーエン社長と中村芳子GM


ワゴンから自分好みのチーズ(白カビ、ハード、ウォッシュ)を選択、コンテが良い印象


コクリコのパルフェグラッセ グレープフルーツのフレッシュ フランボワーズとバニラのソルベ
GFやフランボワーズの酸味がシラーの酸味と重なるので、守備範囲の広さ再認識


ワインのポリフェノールとタンニンはチョコとイイ相性


ワイン王国の村田惠子編集長から〝扇子〟をプレゼントされたララインGM


(前列左から)村田編集長、中村GM、ララインGM、アロンソ氏
(後列左から)プラムグラスレンタルのテリー・ホワイト氏、コーエン社長、ヴィレッジ・セラーズ波木居恵一取締役

この8月で記念すべき100号を創刊したワイン王国、おめでとうございます!
ワイン王国101号誌上で、EQ・シラーの魅力、中本シェフソムリエ&井黒ソムリエのワインコメント、マテティック・ヴィンヤーズの秀逸性等を紹介させていただきます。
また、9月は現地チリからホットな生情報もお伝えできると思いますので、お楽しみに!


マテティックの輸出相手国第1位はスウェーデン
「チリは安価なワインの生産国というイメージが強いのですが、国内でのワインの平均価格は毎年少しずつ上がっていて、プレミアムワインも増えています。とは言え、それは本当にゆっくりとした動きです」とララインGM。

輸出相手国の第1位は、北欧のスウェーデン、以下アメリカ、オランダ、ブラジル、デンマーク、ペルーです。アルコール販売を役所が管理しているスウェーデンでは、地球環境への配慮だけでなく、産業や労働面についてもサステイナブルを大事にしている国なので、ビオディナミ100%ワイナリーは好意的に受けとめられており、マテティックのワインも順調に伸びているとのこと。

また、南米ぺルーは数年前から美食ブームに沸いており、世界中から注目されています。農作物や海産物に恵まれ、料理もスペイン、アフリカ、中国、日本等の影響を受けているので、フュージョン料理も散見できます。ペルーではニッケイ料理が人気のようですが、チリワインの躍進も期待できそうです。


■ワイン&プラムグラスに関する問い合わせ先はヴレッジ・セラーズ(株)
 ℡0766-72-8680

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■Chile Food & Wine 2014
http://non-solo-vino.blog.so-net.ne.jp/2014-12-30
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2017年07月25日

&lt;第2部&gt; 日本初開催のニュージーランド “The Family of Twelve” セミナー

第2フライトはフェルトン・ロード、フロム&ペガサス・ベイ
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<第1部>

ではアタ・ランギ、クラギー・レンジ、ノイドルフについて触れました。
ここからは第2フライトに登場したフェルトン・ロード、フロム、ペガサス・ベイを紹介していきます。

フェルトン・ロード


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フェルトン・ロードのブレア・ウォルター、ノイドルフのトッド・スティーヴンス両講師

1991年設立、拠点はセントラル・オタゴのバノックバーン、所有者はナイジェル・グリ―ニング(ワイナリー設立当初のオーナーはステュワート・エルムズ。2000年に現オーナーが購入)。1996年に醸造家のブレア・ウォルターが参画。南緯45度に位置するセントラル・オタゴは世界最南端のワイン産地、バノックバーンはボウル状のおだやかな盆地で、夏季は昼夜の日較差が大きく、準内陸性気候のもと、多様な微気候と地形に恵まれている。2002年からビオディナミ導入。
「私はアタ・ランギやノイドルフのようなパイオニアではありませんが、NZで26 年間ワインを造り続けてきました。⾃分自身NZのピノ・ノワールとともに成⻑してきたと感じているので、今⽇はNZのピノ・ノワールの進歩について話す機会を得て、とても嬉しく思っています」とブレアさん。

テイスティング
セレクトしたのは2015 年&2012 年のブロック5、ともにフィネスとエレガンスがはっきりと表現されたヴィンテージ
#7:フェルトン・ロードPN ブロック5 2015(12,000円) / #8:同2012(12,000円)
ブロック5は自社畑エルムズ(14.4㌶)内のピノ・ノワールの単一区画(1.7㌶)名、畑全体は13区画に仕切られている。2002 年に有機農法とビオディナミ農法に切り替えたので、ビオディナミ農法歴10 年目と13 年目のワイン

乾燥した気候で、⽇照時間が⻑く、紫外線の強いNZでは、ぶどうは簡単に熟す。過去においてはぶどうを過熟させていたが、今ではぶどうの熟度への理解が深まり、ビオディナミ農法で、より早い段階での成熟が達成され、ワインにフィネスが備わる絶好のタイミングを的確に捉えるようになっている。
両ヴィンテージとも⾃然なスタイル。これまでの学習から、最近は隣接する他の⽣産者よりも早摘みを実施。それによりスムーズで穏やか、フィネスのあるワインに。

ビオディナミがワインに与える影響について
ブレア:有機でもビオディナミでもない畑を同時に所有しているわけでないので、よくわからないのですが、近隣の畑や他の⽣産者のワインと比較することで何が変わったか想像することはできます。最大の違いは、ぶどうが早く熟すようになってきたことです。ぶどうがしっかりとした⾵味を持ち、タンニンが熟すまで以前は⾟抱強く待たなければならなかったのですが、今ではピンポイントでワインを捉えることが可能になりました。それはフィネスであり、エレガンスであり、精密さであり、そして、ミネラルがワインにはっきりと表現されています。畑らしさをより忠実に反映させること、それらはNZのトップワインの多くから感じていただけるはずです。

クローンについて
ブレア:ピノ・ノワールのクローンは選択肢が多く、ピノ・ノワールに取り組んでいる畑では、少なくとも6~8種類のクローンを使っています。フェルトン・ロードは11 種類です。他のピノ・ノワール⽣産者も同じことを⾔うと思いますが、いずれも大事なクローンです。いずれ特定のクローンを強⼒に推薦するリーダーが出てきて、植え替えに優先的に使うべきクローンが出現するとは思いますが、それは⾃分の孫の時代の問題だと思っています。


第2フライトのワイン

(奥左から右へ/手前左から右へ)#7~#12

フロム


1992年設立、拠点はマールボロ。スイスのワイナリーの4代目ゲオルグ・フロムは家族旅行で訪れたNZに惹かれ、フロムを立ち上げ、単一畑のパイオニアに。NZのリーディング・ワイナリー、最も⻑い歴史を持つ⾼品質のピノ・ノワールの⽣産者

フロムの功績はマールボロでも⾼い品質のピノ・ノワールを造ることができることを他の⽣産者に示したこと。期待する結果を得るためにはピノ・ノワールを植える場所の選定と、栽培の質に充分な注意を払う必要がある。

テイスティング
#9:フロムPN フロム・ヴィンヤード2015(6,800円)/ #10:同PNクレイヴィン・ヴィンヤード2015(8,000円)
醸造家ハッチ・カルベラーがセレクトした2種。有機栽培の認証を受けた畑と適正な⼟壌で育つピノ・ノワールの栽培への取り組みを理解することができる。
当初、フロムはソーヴィニヨン・ブランを植えた同じ⼟壌でピノ・ノワールを栽培していた。ソーヴィニヨン・ブランはマールボロの平地の河床砂利層の⼟壌でよく育つが、ピノ・ノワールにはもっと粘⼟層が必要で、⾼品質なピノ・ノワールを造るには⾼密度の⼟壌が不可⽋だった。
#9はソーヴィニヨン・ブランの畑に囲まれたワイラウ・プレインズで、ピノ・ノワールでは考えられない場所に位置している。しかし、ワイラウ川は平野いっぱいに広がり、あちこちに移動してきたことで、平野には低地と⾼地があり、結果、畑がある場所はシストと沖積⼟壌、砂利や粘⼟等が豊かで、ピノ・ノワールに適したテロワールになっている。
#10は、サザン・ヴァレーズとして知られる丘陵地の斜⾯にあり、多くの⾕間が⼭々へと⼊り込み、その⼭腹の⼟壌は粘⼟質を多く含んでいる。現在、⾼品質のマールボロ・ピノ・ノワールの多くがこの⼭腹で造られている。

今⽇のワインを造った醸造家たちはすべて、ニュージーランドだけでなく、オレゴン、カリフォルニア、ブルゴーニュ、オーストラリア等、海外での醸造経験も豊富であり、そして今、⾃分たちの場所の気候⾵⼟にあうように微細な調整をしながらワインを造っている。より良いワインを⽣み出す魔法のテクニックというものは存在しない。The Family of Twelveは⾃分たちの畑にあう醸造⽅法を探究し続けるだけであり、10 年前、15 年前と今の違いは、その点のみ。

ペガサス・ベイ


1985年設立、拠点はワイパラ、クライスト・チャーチから約40km 北にあるエリアのパイオニアで、樹齢35 年の最古のぶどう樹の存在も。
ペガサス・ベイは“野生人”との異名がある醸造家のマシュー・ドナルドソン抜きには語れない。昔からワインは豊かで特徴あるワイパラの果実を表現していたが、違った言い方をするなら、繊細さに欠ける面があり、⼀昔前のNZのピノ・ノワールスタイルだった。加齢したマットが、以前より痩せて⽩髪が増えてきたのと同様に、彼が造るワインも変化してきた。醸造、特にピノ・ノワールへのアプローチで、強さだけでなく、今ではフィネスとエレガンスを追求しているように思える。

テイスティング
#11:ペガサス・ベイPN2015 (6,800円) / #12:同PN2013(6,800円)
ペガサス・ベイが多⽤する醸造テクニックのひとつに全房発酵の⽐率の⾼さがある。全房発酵はワインにストラクチャーとしっかりしたタンニンを加えると考える⼈もいるが、ペガサス・ベイでは、よりきめ細やかなタンニンやシルキーさが得られると考えている。ワイパラではかなり濃厚で、抽出もしっかりした、⼒強いスタイルのピノ・ノワールを造ることができるので、ぶどうを全房発酵で手なずけ、さらに柔らかさやエレガントさを追求することがペガサス・ベイにとってのおもしろい試みと言える。感受性、尊敬、⼿を加え過ぎないことは、マットだけではなく、我々メンバーにとっても、ピノ・ノワールを造る上での最近の決まり⽂句である。

全房発酵の比率について
ブレア:樹齢が⾼くなると梗の成熟も⾼まるので茎っぽさがなくなります。それにより、全房にしても味わいがワインに溶け込み、梗特有の草や野菜の⻘臭さの影響がワインに出ないのです。この⾵味が強すぎるのはワインにはマイナスだと思います。
フェルトン・ロードでは全房使⽤の率に⼤きな変動はありません。冷涼な年は全房からの野菜っぽさが多くなり過ぎ、暑い年は、果実が単純になり過ぎるのを危惧しているので、フェルトン・ロードでは常に使用率は20〜30%です。


試飲会場には12ワイナリーのワイン

ペガサス・ベイの『ベル・カント・ドライ・リースリング2014』、『アリア・レイト・ピックト・リースリング2014』、貴腐のほのかな甘やかさ、アロマチックでオイリー


ローソンズ・ドライ・ヒルズ パイオニア・ゲュルツトラミネール2015
ライチの香りが魅力的、程よい甘さが心地よく癒される味わい、入荷が楽しみ!


セミナーには登場しなかった6ワイナリー
ブレア:セミナーで紹介した6 ⽣産者の12 アイテムのピノ・ノワールはNZの中でも特別のワインであり、NZのワインすべてがこのような品質と価格ではありません。NZでワインが容易に熟すということは、中間から低価格帯ワインにとってはとても⼤事なことで、そのおかげでNZのワインは、世界市場でも競争⼒があると思っています。きれいで優しくスムーズな⼝当たり、それでいて凝縮感のあるデイリー・ワインを造るのには、ぶどうが熟す必要がありますが、例えばブルゴーニュなどでは、年によりぶどうの成熟が難しいこともあります。ですから、しっかり熟した果実が収穫できるということは、とても恵まれたことです。

ローソンズ・ドライ・ヒルズ


クメウ・リヴァー


ヴィラマリア


ミルトン・ヴィンヤーズ


パリサー・エステート


ローソンズ・ドライヒルズ


紹介できなかったワイナリーは輸入元のサイトにリンクしてあります。
NZファインワインへの関心を深めていただけましたら幸いです。


最後に

ヴィレッジ・セラーズのリチャード・コーエン社長と中村芳子専務を交えた4ショット

セミナーの終盤、ブレアさんは「ファミリー・オブ・12のセミナー開催にあたり、他のインポーターとコミュ二ケーションを取り、ワインを調達し、セミナーの資料の翻訳をしてくれたヴィレッジ・セラーズのチームの皆さんにお礼申し上げます」と述べていました。

セミナー用のピノ・ノワールだけでなく、試飲会場に用意されていた12ワイナリーの様々な品種のワイン調達のために時間を割いてくださったコーエン社長と中村専務のサポート、素晴らしいものでした。また今回のこのリポートも、中村専務の英日対訳に大いに助けられました。心から御礼申しあげます!

初開催のセミナーで講師を務めてくださったブレアさんとトッドさん、ありがとうございました!
第1部&第2部はThe Family of Twelve に報告する予定ですが、メンバーの皆さまに日本でのNZワインの浸透度がお伝えできれば嬉しいです。
The Family of Twelveの今後ますますの躍進を願っています!

■関連ページ
NZの『フェルトン・ロード』&『ノイドルフ』両醸造家によるランチセミナー
http://non-solo-vino.blog.so-net.ne.jp/2017-07-02

2017年07月23日

&lt;第1部&gt; 日本初開催のニュージーランド “The Family of Twelve” セミナー

ファミリー・オブ・12をご紹介

The Family of Twelve

(以後ファミリー・オブ・12)は2005年に、ニュージーランド(NZ)南北にまたがる8 つの産地の家族経営の12 ワイナリーによって結成されたグループです。NZの主要産地を代表するワイナリーが協⼒し合い、プレゼンテーション、プロモーション、マーケティングを⾏いながら、各産地を代表するNZのファインワインを世界に紹介しています。

2012年の香港インターナショナルW&Sフェアで

photo by Fumiko (2012年11月)
私が初めてをファミりー・オブ・12を知ったのは香港インターナショナルW&Sフェアのセミナーでした。(左から)フェルトン・ロードのナイジェルさん、フロム・ワイナリーのウイリアムさん、ヴィラ・マリア・ワイナリーのシャルロットさん、ノーチラス・エステートのクライヴさん&ペガサス・ベイ・ワイナリーのポール・ドナルドソンさんが講師でした。


あれから5年!
東京で日本初のセミナーが開かれ、フェルトン・ロードのブレア・ウォルターさん(左)とノイドルフのトッド・スティーヴンスさん(右)が講師として来日、6ワイナリーのピノ・ノワールを紹介しました。

ブレアさんは冒頭、「グループはかなり⾃然に結成されました。どのワイナリーもニュージーランド最⾼のワインを造ろうという使命感が強く、メンバーはグループ結成前からの友⼈でした。NZのワインの歴史はまだ浅いので、我々は全速⼒で学習し、良いワイン造りをしていくために、競争ではなく、協⼒しながら前進しています」と挨拶。

ニュージーランドの地図
セミナーで取り上げたワイナリーには赤印
(クリックで拡大)

























NZにおけるピノ・ノワール

ピノ・ノワールはNZのどの産地でも栽培されています。
多くは南島、特に国内最⼤の産地マルボローに植えられており、スティルワインだけでなく、スパークリングにも使われています。栽培面積で群を抜いているのは、ソーヴィニヨン・ブランで、2番目がピノ・ノワール。過去7年間で輸出量は2倍。⽣産量は⾚ワイン全体の7割を占め、この15 年で栽培⾯積も2倍に拡大。63%は樹齢15 年以下ですが、セミナーに供出されたワインには20 年から30 年以上のものもあり、樹齢としてはNZで最も古いピノ・ノワールと言えます。

第1フライトはアタ・ランギ、クラギー・レンジ&ノイドルフ

気取りのない講師ブレアさんとトッドさん


左から順に各2本ずつ供出#1~#12



アタ・ランギ


1980年設立、拠点はマーティンボロー、アタ・ランギはマオリ語で“新しいはじまり”の意、所有者はクライヴ&アリソン・ペイトン、フィル・パティ

北島に位置するマーティンボローは、気候的には南島に似ていて、⽇中は高温、夜間は急激に温度が下がる。乾燥した気候なので病害リスクも少ない。カイクラ(南島カンタベリー地区北東部、東海岸に面した半島)で跳ね返ってマーティンボローを直撃する南極からの冷たい南⾵サザリーズの影響を受ける産地なので、NZの栽培地の中では最も⾵が強く、結果、収穫は⾮常に少ない。⼟壌は主に古代河川の洪⽔と氷河によって形成された沖積砂利質層、地域全域では多様な⼟壌構成が散見できる。

テイスティング
醸造家ヘレン・マスターズがセレクトした良年の2013 年ヴィンテージ
#1:アタ・ランギPN2013 / #2:同マクローン・ヴィンヤードPN2013
#1は樹齢20~25 年。畑は排⽔性に優れており、800m 離れたところにある#2も土壌は#1と同じ沖積砂利層、そこに若干の含水粘⼟層が加わる。#2は樹齢13 年の若い畑だが、古いアタ・ランギの畑を念頭に置き、植樹・育成しているので、クローンの選択・組み合わせは2つのワインともほぼ同じ。「ノン・インターヴェンショナリスト(⼈的無介⼊主義)」と形容できる伝統的醸造法。#2には粘⼟質に由来するフレッシュ感、密度の⾼さ。

今後の課題:最⾼のワインを造ることを目標に、樹齢および単⼀畑にフォーカス。醸造家ヘレンは「アタ・ランギの樹齢の⾼い樹は酸がより安定している」との考えなので、樹齢への期待度大。

クラギー・レンジ


1998年設立、本拠地はホークス・ベイ。最⾼の場所からワインを造るという理念から、ピノ・ノワールとソーヴィニヨン・ブランに関してはマーティンボローのテ・ムナ(マオリ語で“秘密”、“特別な場所”の意)・ロードが拠点。ピーボディ・ファミリーとスティーブ・スミスによって設立されたワイナリー。
ぶどう畑は地震によって河床の上層に⼟が移動して形成されたテラス。畑の⼀部は緩やかに傾斜しているテラスなので、結果、収量は通常より少なめ。土壌は、茶褐⾊のローム層が河床の上層を覆い、河床には砂岩が堆積、⽕⼭灰や粘⼟がゆっくりと崩壊したユニークなもの。アタ・ランギとテ・ムナの間にある唯⼀の気候の違いは、テ・ムナの⽅が少し⾼台なので、若干冷涼。

テイスティング
#3:クラギー・レンジ・アロハPN2015 / #4:同2014
日本未発売のアイテム。ヴィンテージは2014 年と2015 年、最⾼の区画のぶどうから造られるクラギー・レンジのトップ・キュヴェのアロハ(マオリ語で“愛”の意)
醸造家はマット・スタフォード。樹齢が若かったこともあり、数年前まではぶどうをしっかりと熟させ、樹齢の若いぶどうの果実味を樽の⾵味を効かせることで、テ・ムナ・ロードらしさを表現しようとしていたが、今では畑への理解度も深まり、ぶどうの適熟に加えて、ヴィンテージによる違い、特に難しい年や暑い年への対応を深めた。全房発酵でワインにフレッシュさを。抽出を抑えることでワインにエレガントさが加わるようになった。

今後の課題:クラギー・レンジの畑は100㌶ を超え、うち、17年前に植樹したピノ・ノワールは36%を占める。残りの多くはソーヴィニヨン・ブラン。品質向上の次なる展開は有機栽培への取り組み。

ノイドルフ


1978年設立、拠点はネルソン地⽅のアッパー・ムーテリー(マオリ語で“浮かんだ地”、“浮遊した島”の意)、所有者はティム&ジュディ・フィン。 NZでファインワインを造るというヴィジョンを掲げてスタート。
最も⽇照量に恵まれた場所で、夏は穏やか、暑過ぎない気候。南島の他の産地に比べて、より温暖な気候帯にある栽培地域。⼟壌は粘⼟砂利層。陥没によって生じた窪みに、⻑年にわたる氷河や沖積河川による粘⼟と砂利が被さり形成された。砂利層の肥沃度は低いが、保⽔性に⾮常に優れているので、灌漑をしなくてもぶどう栽培は可能。

テイスティング
#5:ノイドルフ・ムーテリーPN2014 / #6:同2012
#5は穏やかで暖かく、#6は冷涼年で低収量。2012 年はムーテリー地区の古樹のぶどうがベースで30年超の樹も。樹齢の⾼さはワインに緻密さや凝縮感を与えるだけでなく、ムーテリーの筋⾁質的な特徴も表現していることが理解できる。ワインはアッパー・ムーテリーの2つの畑で栽培されたぶどうをブレンド。ひとつの畑はノイドルフ所有でも有機栽培でもない。

今後の課題:2014年以降の目標として、■よりエレガントな表現 ■⾃社畑のぶどう ■可能な限り有機栽培を導入。これら3点は、今後のノイドルフの⼀層の進展にとって何よりも大事なポイント。

トッド・スティーヴンス:以前から抽出は控えめにして、バランスのよいタンニンを大事しています。醸造においても、テクニカルなことより基本的信念を優先しています。40 年を超えた今も、畑を広げ、アタ・ランギ同様、樹齢が⾼まるのを待ち、より良いクローンの選択、有機栽培を導⼊し、⾃分たちの⼟地を⼤切にすることを考えています。あまり⼿を加え過ぎないことを良しとしています。

樹齢の高いぶどう樹は皆が欲するものですが、ある意味捉えどころがなく、樹齢が⾼いから良いワインができるというわけではありません。他にも多くの要素があります。アッパー・ムーテリーの古い樹は昔のクローン・セレクションから選んでいるので、⾃分たちの気候に向いていないかもしれません。樹齢を犠牲にするのは残念ですが、⻑い⽬で⾒ると、この⼟地にあったクローン・セレクションにしたほうが良いと言えます。まだ38年しか経っていませんが、その間でやっとわかってきた⼀例です。NZは南北に⻑く、マーティンボローで良年と言われる年がネルソンでも同じように良いとは限りません。と⾔いながら、ここで付け加えたいのは、NZのヴィンテージに関しては「良い」、「悪い」ではなく、あるのは「年による違い」です。

第2フライトはフェルトン・ロード、フロム&ペガサス・ベイにフォーカスしました。
講師のブレアさんとトッドさんがとても熱く語ってくださったので、予想以上の長さに! 
第2フライト以降は、次回<第2部>でリポートいたします。

2017年05月03日

注目! オレゴンでマスター・ソムリエのラリー・ストーン × ドミニク・ラフォンが新コラボ

2016年にワイナリーも完成した『リングア・フランカ』
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輸入元ワイン・イン・スタイル

の招聘で来日したラリー・ストーンMSがリリースされたばかりのワインを披露。会場はリッツ・カールトン東京の『ひのきざか』

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ラリー・ストーンさんは世界に236人(2017年現在)しかいないソムリエ界最高の称号マスター・ソムリエMSの所持者。『リングア・フランカ』はブルゴーニュの奇才『コント・ラフォン』の四代目ドミニク・ラフォンさんとのコラボレーションで誕生したワイナリーです!

ネーミングの由来はフランク王国ですが、現在は〝共通語〟としての意味で使われています。異なる文化や経歴を持つワインラバーさんにワインを通しての喜びや感動を共有して欲しいとの思いを込めて付けられました。

ブルゴーニュをイメージして造っているワイン
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左から供出順
#1:AVNI Chardonny Willamette Valley2015/6,900円(税別)
#2:Sisters Chardonnay Willamette Valley2015/14,500円(税別)
#3:Avini Pinot Noir Eola-Amity Hills2015/6,900円(同)
#4:Joshua, Junichi& Siri Pinot Noir Ribbon Ridge2015/7,900円(同)
#5:Tongue's Cheek Pinot Noir Eola-Amity Hills2015/9,600円(同)
#6:Ryan's Plow Pinot Noir Willamette Valley2015/9,600円(同)
#7:Mimi's Mind Pinot Noir Eola-Amity Hills2015/14,500円(同)

リングア・フランカ立ち上げまでの動き
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画像の3人は左から)ラリー・ストーンMS、ブルゴーニュ出身のコンサルタント ドミニク・ラフォンさん、ワインメーカーのトーマス・サーヴさん。トーマスさんはイヴニング・ランドやドメーヌ・デジャック、DRCで栽培やセラーの仕事に携わっていました。

ラリーさんとドミニクさんとの関わりはオレゴンの『イヴニング・ランド・ヴィンヤーズ』からです。
ラリーさんには20年前からオレゴン構想がありました。
サンフランシスコにあるルビコンのレストランでソムリエをしていた時に、お店に来てはルロワやジャイエのワインを注文する大顧客がいました。ラリーさんはフランスワインだけでなく、カリフォルニアやオレゴンのワインに興味を持ってもらおうと画策したようです。そんな折、大顧客から「フランス以外で優れたシャルドネやピノが造れる場所は」と聞かれ、彼は「サンタ・リタ・ヒルズかソノマコーストかオレゴン」と答えます。

その大顧客はハリウッド映画のプロデューサー、マーク・ターロフさんだったのですが、最終的にターロフさんはオレゴンの銘醸地ウイラメット・ヴァレーのエオラ・アミティ・ヒルズに土地を買い、『イヴニング・ランド・ヴィンヤーズ』を設立。ラリーさんがオレゴンで最高と思っていたぶどう畑『セヴン・スプリングス』も手に入れ、ラリーさんはこのワイナリーのプロジェクトメンバーとして活躍します。ここにはブルゴーニュのドミニク・ラフォンもコンサルタントとして加わり、最強のチームになりました。

そして、ワイナリーを立ち上げる夢を抱いていたラリーさんは、2010年から2年間画策し、エオラ・アミティ・ヒルズのセヴン・スプリングスの前にある畑を手に入れ、2013年にぶどう樹を植樹、2016年には建築家ローレンス・フェーラーがデザインした待望の新ワイナリーが完成。この『リングア・フランカ』はマスター・ソムリエのラリー・ストーンさんとドミニク・ラファンさんががっつり組んだ新コラボレーションです!

余談ですが、現在、おふたりとも『イヴニング・ランド・ヴィンヤーズ』からは離れています。ここを仕切っているのはラリーさんの弟子にあたるラジャ・パーさん(IPOBの創設者)だそうです。

ジョリとネカイアの土壌

ラリーさんが強調していたのはJoryジョリとNekiaネカイアの土壌。ともに風化した赤みを帯びた玄武岩で、前者は表土が深く、後者は表土が浅く、砂利質が多い土壌。ストレスを受けて育つシャルドネはネカイアに向いていて、イヴニング・ランド・ヴィンヤーズで造った最高のシャルドネもネカイア土壌でした。


緯度45度の共通項
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資料提供:リングア・フランカ
「オレゴンのウイラット・ヴァレーのなかにあるエオラ・アミティ・ヒルズはフランスならローヌ地方のエルミタージュと同じ緯度です。ワイン栽培において日照量はとても大事ですが、これは長くても短か過ぎてもダメ。その意味から日照時間と日照量が最適と言えるのが45度のエリアです。太陽の光はぶどうのフレーバーを豊かにします」とラリーさん。
オレゴンは大気を通してぶどう畑に優しい光が注がれます。それは例えて言えば、給水ホースから水を撒く時に、勢い良く出るのがカリフォルニアで、ミストのように柔らかいのがオレゴンと表現していました。

宇宙をイメージしたラベル
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AVNIシリーズのラベルは宇宙を表現した作品で、作者は版画家のタルマッジ・ドイル女史
これは〝Soil & Sun〟を意味しています。

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先附け:春キャベツ 桜海老煮浸し、鱒利休揚げ 甘長唐辛子
  
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AVNIはラリーさんのお名前“ストーン”の意味ですが、サンスクリット語でマザーアース、母なる大地。ラベルの作者はタルマッジ・ドイル女史


(左から)#3#4

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お椀:相並葛叩き 蕨 花弁人参 大根 木の芽
ラリーさんを満足させていたのが、お椀の出汁。昆布由来の塩分がピノの旨味とナイスハーモニー

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お造り:鮮魚三種

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鮪の脂分をピノが洗い流してくれる感じ、山葵を少し使ってあわせてバランス〇

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焼き物:京鰆の酒盗焼き 焼き空豆 近江蒟蒻、 南京カステラ 葉地神

#4から#7のラべルは世界的なガラス作家、デイル・チフリーさんが描いています。
自動車事故で左目を失明してしまったチフリーさんは現在ガラス作品を自分で造ることができないので、下絵を描いて、それを配下の者に委ねて完成させているそうです。リングア・フランカのラベルはチフリーさんの下絵を使っています。

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#5のタングン・チーク ピノ・ノワールの旨味、厚味、複雑味

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温物:春野菜 白魚 小鍋仕立て、筍 若芽 新牛蒡 独活 芹 黒七味


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酢の物:蛍烏賊 帆立貝焼き目 寄せ若芽 酢蓮根、うるい 柚子胡椒酢味噌

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参加者全員が納得したのは、蛍烏賊とあわせても生臭さが出ることなく、魚介にうまく寄り添っていたピノの味わい。ラリーさんは「酢の物はワインに合わない」とおっしゃっていましたが、シャルドネ&ピノの品の良い酸が、酢の物の強すぎない酸とバランス〇

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食事:桜蕎麦、山菜天麩羅 蕗の薹 たらの芽 こしあぶら、大根おろし 葱
桜湯を連想させるような、桜の香りほんのりのおそば
視覚と香りで風流を楽しむ一品。天麩羅の汁(醤油と出汁の風味)、蕗の薹やたらの芽のかすかな苦みがワインのロースト感、スパイシーさと相まって

エピローグ
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その昔、ジャンシス・ロビンソンMWのワイン番組(BBC)をまとめたビデオに、ドミニク・ラフォンさんのメゾンを訪ねるシーンがありました。英国で人気の豪州産シャルドネを持参して、ドミニクさんに試飲してもらう構成でしたが、反応は、けんもほろろ。コメントもなく、吐き出しもメゾンの外で行うという具合でした。
あれから20年以上経過して・・・ブルゴーニュ至上主義のドミニクさんが、新天地オレゴンに食指を動かしたことが大きな驚きです。それだけにラリーさんとドミニクさんのコラボワインは本当に期待できます!

ラリーさんは「どれをとってもオレゴンワインですが、ブルゴーニュをイメージして造っているワインです」と語っていました。2015年ヴィンテージはすべて買いぶどうで造りましたが、ミネラル感があり、エレガント。2013年には自社畑28㌶に植樹したので、2016年産のワインには自社畑の若樹も少しだけ使うことも考えているようです。
ブルゴーニュの名醸造家たちの進出が続いているオレゴン、その動きから目が離せません!

2017年04月22日

来日したルイ・ジャドのガジェ社長が『コトー・ブルギニョン・ロゼ』&新天地オレゴンの『レゾナンス』を紹介!

ピエール・アンリ ガジェ社長をワクワクさせた新プロジェクト
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ブルゴーニュの名門『ルイ・ジャド』のガジェ社長が2年半ぶりに来日し、プレスランチで、5月発売の2アイテムとブルゴーニュの最新情報について語りました。
最近ではオレゴンを年に3~4回訪問しているのですが、その理由は、昨年同社のオリビエ・マスモンデ輸出部長が発表したオレゴンワイン『レゾナンス』にありました。ワイン誕生の経緯は昨年の2月18日付ブログ

で報告しています。

ガジェ社長からの新情報
まずは、ニューフェイス『コトー・ブルギニョン・ロゼ』から始めます!
新アイテム『コトー・ブルギニョン・ロゼ2016』 5月9日新発売/ 2,500円(税抜)


ルイ・ジャドでは2012年(2011年ヴィンテージ)からコトー・ブルギニョンの赤と白を発売しています。これらは定番のアイテムとして人気があります。ロゼの品種に関しては、後述の定義にあるようにガメとピノ・ノワールが使えます。同社では、1985年に買収したドメーヌ・クレール・ダユのロゼ・ド・マルサネ(ピノ・ノワール主体)を造っているので、5月9日に新発売するコトー・ブルギニョンのロゼは、それとは違ったスタイルにしています。ひと言で表現するなら〝早いうちから飲めるガメ主体の辛口ロゼ〟短期間のマセレーションによってガメはフルーティかつ美味しいワインになります。

買付ぶどうから造るロゼは2016年がファーストヴィンテージ
ピュアでフレッシュ、「びりびりとしたバイブレーションを感じる、夏に心地良く飲めるワイン。フェミニンなタイプなので、1杯飲んだら、ついつい2杯目に手が伸びてしまうはず」とガジェ社長。加えて「ブルゴーニュは伝統的な面が多いので、それを打ち破って新たなものを興すのは大変ですが、このようにモダンで新しい息吹を感じるようなワインを登場させることで、地域を若返らせることができると思っています」とコメント。輸出相手国の米国、日本と欧州のいくつかの国々で発売予定

AOCコトー・ブルギニョンの定義
INAO(国立原産地・品質研究所)によって2011年11月24日に認定されたAOCワイン、2011年ヴィンテージから適用。AOCブルゴーニュ・グラン・オルディネールに代わるもので、AOCコトー・ブルギニョンはオーセロワからボージョレまでのブルゴーニュ全域のぶどうで造ることが可能、複数品種のブレンドが認められ、ブレンド比率の規定はない。
色:赤・白・ロゼ
品種:
白)Aligote, Chardonnay, Melon, Pinot Blanc,Pinot Gris
赤)Gamay, Pinot Noir, Cesar(ヨンヌ県のみ)
ロゼ)Gamay, Pinot Gris, Pinot Noir,Cesar(ヨンヌ県のみ)


オレゴンで造るレゾナンス


ブルゴーニュに特化していたルイ・ジャドが海外進出した新天地はオレゴン
ガジェ社長は「ブルゴーニュでは限界があるので、何か新しいこと&現代的なこと、情熱を傾けることはないかを考えていた時、オレゴンでのワイン造りが実現することに。弊社はガメ、ピノ・ノワール、シャルドネのスペシャリストであり、ガメはボージョレ地区なので、ピノ・ノワールとシャルドネがとても大事です。そして、この2品種にフーカスして世界全体を見回すと、素晴らしい生産地として挙げられるのは、ニュージーランド、米国のカリフォルニアとオレゴンの3ヶ所」と述べました。

2013年からの新プロジェクト
ルイ・ジャドにとって極めて大事なプロジェクトがオレゴンにおけるレゾナンスです。
2012年にルイ・ジャドの天才醸造家ジャック・ラルディエールさんが定年退職しましたが、ガジェ社長はまだエネルギーが残っているラルディエールさんのために何かを見つける必要があると考えていました。折しもガジェ社長のご子息チボーさんが入社してきたことで、1組のチームが完成。そして2013年にチャンス到来。友人からオレゴンに8㌶の畑があるとの連絡が入り、現地に向かいました。そこは1981年からぶどう樹が植樹されている自根の畑で、栽培はビオディナミと有機栽培。地元のワインメーカーの間では良く知られていた畑でした。

ルイ・ジャドは購入を決め、2013年8月に契約。翌月9月からチボーさんが総括となり、ラルディエールさんとワイン造りを開始。醸造所がないのでフレンドリーなオレゴンの生産者から施設を借り、3年間そのような状態で活動してきました。

ネーミング&ぶどう畑
ワインは昔から畑につけられていた呼称『レゾナンス』から命名。レゾナンスの畑を購入して6カ月後に2つ目の畑(6㌶)を購入。これはダンディー・ヒルズにあり、découverteデクヴェルト(発見の意味)ヴィンヤードと命名、2015年から生産しています。そして、3つ目としてレゾナンスに隣接する畑(100㌶)を購入。 100㌶の畑のうち、半分はぶどう畑にして、ピノ・ノワール主体でシャルドネを少々植樹。ワイナリー建設も視野に入れています。レゾナンスではすでにシャルドネのトライヤルを行っており、買付ぶどうで2015年に3樽、2016年に7樽を生産。「非常に興味深いものができているので、将来的には展開する予定。ただ、比率はピノ・ノワール8割、シャルドネ2割」とガジェ社長

ピノ・ノワールは3つのレンジで構成
ブルゴーニュのヴィジョンを持って、オレゴンのおいしいワインを造る
1)単一畑のワイン/自社畑レゾナンス・ヴィンヤードと自社畑デクヴェルト・ヴィンヤード
2)自社畑のワイン/ウイラメット・ヴァレー ピノ・ノワール(2015年ヴィンテージからリリース予定
3)買付ぶどうのワイン/ウイラメット・ヴァレーピノ・ノワール

ドメーヌ J.A. フェレ

「首掛けシールが貼ってあるのはキュヴェ・オール・クラッセかテート・ド・クリュ」とガジェ社長

1840年に設立したドメーヌ J.A. フェレ(18㌶)。2008年からルイ・ジャドが運営。フェレは初代女性当主が自らのワインを最初に瓶詰めしてリリースしたドメーヌであり、ワインをカテゴリー別に区分するというコンセプトも導入。キュヴェ・オール・クラッセ(グラン・クリュに匹敵)、テート・ド・クリュ(プルミエ・クリュに匹敵)、プイイ・フュイッセ(村名クラスに匹敵)の3区分。フェレは代代女性当主だったことから、ルイ・ジャドも女性醸造家のオドレ・ブラチーニさんを指名、一任しています。


プレスランチに供出されたワイン

(供出順、右から)
#1:コトー・ブルギニョン・ロゼ2016 2,500円(税抜)
淡いサーモンピンク、フレッシュ&フルーティ、香りはベリー系果実、味わいは柑橘系果実、凛とした酸
#2:レゾナンス・ヴィンヤード ピノ・ノワール2014 8,800円(税抜) 5月15日発売!
明るいルビー、赤系果実、ミネラル、スパイス、滑らかなタンニン、旨味、深みのある余韻、ポテンシャルあり
#3:シャブリ・プルミエ・クリュ フルショーム2013 6,400円(税抜)
輝きのある黄金色、豊潤、口中まろやか、柔らかな熟成感、包容力。今飲んでおいしいワイン
#4:プイイ・フュイッセ メネトリエール2013 8,500円(税抜)
黄金色、黄桃、カリン、蜂蜜、ミネラル、酸味は穏やかでエレガント、フードフレンドリーなアイテム
#5コルトン グラン・クリュ2008 14,000円(税抜)
ルビーオレンジ、果実の旨味、アーシー、葉巻、酸はソフトでタンニンスムーズ、単独で飲んで美味!


ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町『蒼天』の和食にあわせて
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前菜 海月芥子マヨネーズ和え 貝割菜 ポテトサラダ、芹と黄ニラお浸し ズワイ蟹 糸がき、蛍烏賊とカマンベールチーズのフライ グラナ・パダーノ
お浸しやズワイ蟹はロゼ、マヨネーズ和えやカマンべールのフライはレゾナンス


吸物 桜豆腐オニオンスープ 菜の花 白魚 繊人参 サラダクルトン
オニオンスープとレゾナンス双方の旨味が好印象


お造り 甘鯛胡麻マリネとお造り盛り合わせ、妻野菜 山葵 醤油
白身はシャブリやプイイ・フュイッセ、まぐろ(わさび添え)はレゾナンスとあわせて

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煮物 甘鯛唐墨焼き蕪蒸し 柚子味噌餡掛け
プイイ・フュイッセの複雑味と上品な甘味が味噌の餡かけや柚子の風味と◎

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焼物 栄縲プロヴァンスバター焼、甘鯛塩焼 敷トマト 鱈子ソース
レゾナンスがバターや塩と相乗して美味


天麩羅 蕗のとう 目鯒 天出汁 岩塩
シャブリは岩塩、コルトンは天出汁でバランス良好、食材では蕗のとうの苦みとロゼの相性◎

食事 桜海老と竹の子炊き込みご飯 大江戸甘味噌汁 香の物
桜海老の甘さとプイイ・フュイッセの柔らかな口当たりとミネラル感がナイスバランス

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photo by Kozaki
天豆と花巻(次の取材のため出なければならず・・・食せず・涙


最近の話題、懸念事項
■ユネスコの世界遺産に登録されたことは大きな話題。
■素晴らしいヴィンテージが続いているが、近年気象状況が悪く、収穫量減で価格上昇。
■今の時期に好天が続くと霜が発生する恐れがあり、不安要素になっている。
■若い世代の活躍は目覚ましく、海外に出て醸造を学んできた若者が新しいアイデアを提供。
■ブルゴーニュからオレゴンに進出するドメーヌが増大傾向。
ドルーアンは先駆け、ルイ・ミシェル・リジェ・ベレールやドミニク・ラフォンはコンサルタント的役割、ジャン・ニコラ・メオ・カミュゼはアメリカのパートナーとコラボ、直近ではアンリオ(ブシャールP&F)がボー・フレールの株を取得


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最後にボージョレ
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今年の2月、ルイ・ジャドが所有するボージョレ地方のシャトー・デ・ジャックにフォーカスしたイベント

を行いました。日本ではボージョレと言うと、ヌーヴォーばかりがイメージされてしまうのですが、ボージョレの品種ガメの底力、実力を知るには、クリュ・ボージョレを体感するのが一番です!

イベントは日比谷・松本楼で開催しました。ガジェ社長からの多大なサポートをいただき、蔵出しの20年以上熟成させたワインたちも登場したので、テイスティングした参加者からはたくさんの賛辞を頂戴しました。

ボジョレーの本質はクリュ・ボージョレ!

2月23日のクリュ・ボージョレイベントより

4月19日のプレスランチの席上、ガジェ社長は「日本でもっとクリュ・ボージョレの良さを知って欲しいし、もっと飲まれるようになって欲しい」と語っていました。私も2月のイベントを思い返しながら、シェア2%しかないクリュ・ボージョレの伝道に力を入れねば、と気持ちを新たにしたところです。この機会にワインラバーの皆さまに、シャトー・デ・ジャックの『ムーラン・ナ・ヴァン』や『モルゴン』に関心を持っていただると嬉しいです。

シャトー・デ・ジャックについては日本リカーのURL

で!
ブログ内の製品についてのお問い合わせは日本リカー(株) ℡03-5643-9770

2017年04月17日

来日したピエール・リュルトンが語ったシャトー・シュヴァル・ブラン&シャトー・ディケム

ワイン愛好家垂涎のシャトー・シュヴァル・ブラン
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2011年、建築家クリスチャン・ド・ポルザンパルクがデザインした新施設が完成!

サンテミリオンのスーパースター、プルミエ・グラン・クリュ・クラッセAのシュヴァル・ブラン

は1998年にLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)のベルナール・アルノーCEOとアルベール・フレール男爵によって買収されましたが、1991年から支配人をしていたピエール・リュルトン氏が継続して活躍しています。1855年の格付けでプルミエ・クリュ・クラッセ・スペリウールを取得した甘口白ワインの最高峰『シャトー・ディケム』も、LVMHが1999年に筆頭株主となり、リュルトン氏はここでも社長兼CEOとして才覚を発揮しています。プレスランチの席上、来日したリュルトン氏は「シュヴァル・ブランでの仕事に関わってすでに26年、イケムに関しては12年間責任者として働いてきました」とあいさつしていました。

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ルモワンヌ マーケティング&コマーシャルディレクター、リュルトン氏、フェーブル社長

輸入元ピ-ロート・ジャパン(代表:ローラン・フェーブル氏)の招聘でピエール・リュルトン氏(シャトー・シュヴァル・ブラン マネージャー/シャトー・ディケム 社長兼CEO)とシャトー・ディケム マーケティング&コマーシャルディレクターのジャン・フィリップ・ルモワンヌ氏が来日。ピーロートのアンテナショップ『ワールドワインバーbyピーロート神楽坂店』でワイン愛好家垂涎のワインについて語りました。


プレスランチのスタートはイグレック2015
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イグレックはイケムが造る辛口ワインで、1959年から生産されています!

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北海道産ホタテ貝のカルパッチョ × イグレック2015
魚介類のミネラル感はもちろん、塩漬けした葉のソルティさとソースの甘さがワインの辛味、甘味、酸味を引き立てイグレックの複雑さを実感。包容力のあるヴィンテージ!

ソーヴィニヨン・ブラン主体でセミヨンが少々(貴腐ぶどう使用)、白桃やアプリコット、蜜のあるリンゴ、カモミール、フレッシュで軽快な酸が糖分をマスキングして程よいバランスに。年間1万本の希少ワイン。2015年は赤も白も甘口もすべてパーフェクトなコンディションでした。

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シャトー・ディケムはソーテルヌで400年の歴史を有し、アメリカのトーマス・ジェファーソンやロシアのロマノフ王朝、日本の明治天皇からも愛されていたワインです。ぶどう畑は100㌶、栽培比率は80%セミヨン、20%ソーヴィニヨン・ブラン。秋口になると朝方濃い霧が立ちこめ、ぶどう畑に湿気をもたらしますが、東からの風が吹き込むことで、ぶどうは乾燥し、ボトリティス・シネレア菌による貴腐化が起こります。この独自のミクロクリマによって果汁と糖分が凝縮し、比類なき貴腐ぶどうが収穫できます。

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フォアグラと鴨肉のパテ × シャトー・ディケム2014
フォアグラとソーテルヌの定番の組み合わせ
フォアグラの滑らかさと脂分がワインのオイリーさと相乗しとろける食感

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シャトー・ディケム2014 はフレッシュで酸味と糖分のバランスが絶妙
甘口ワインは酸味を残すことがとても大事。2014年は冷涼年だったので、十分な酸を備えたセミヨンが収穫できたそうです。収穫の開始は9月5日、終了は10月末で正味9週間かけています。イケムではぶどうの状態を見ながら、数回にわけて収穫していますが、隣のシャトーは、イケムの2回目の収穫時からスタートしたとのことなので、2014年がいかに早摘みだったかがわかります。9週間あまりを費やしたことで、9月時のフレッシュさと10月時の複雑さを兼ね備えたぶどうが穫れ、エレガントかつ力強さのあるワインに。若いうちから楽しむことができ、熟成にも耐えうるヴィンテージ。アペリティフでは冷たくして飲むのがおすすめです!


時を超えてメルロを招いたシュヴァル・ブラン
ぶどう畑は40㌶、栽培比率はカベルネ・フラン60%、メルロ40%。サンテミリオンの格付けでオーゾンヌと双璧のシュヴァル・ブランはシャトー・ペトリュスのあるポムロールに隣接。リュルトン氏は「カベルネ・フランが時を超えてメルローを招いた」と形容し、「シルクのような滑らかなタンニン。カシミアタッチで時を超えて長く続くエレガントさが特徴」とコメント

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(左から)プティ・シュヴァル2011、シュヴァル・ブラン2011、同2006

プティ・シュヴァルはシュヴァル・ブランのセカンド・ワイン
「セカンドですが、ひとつの銘柄と考えています」とリュルトン氏。語られることが多い2009年や2010年と比べると、やや陰に隠れた存在の2011年。リュルトン氏のお気に入りのヴィンテージということで、「洗練されています。深い色調、フレッシュで、赤系果実の要素を備えており、バランスが良く、樽の香りもワインにうまく溶け込んでいます」と。

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シュヴァル・ブラン2011はプティ・シュヴァルより色調も濃く、ブルーベリー、カシスやミント(完熟したカベルネ・フランの特徴香)、コーヒー、西洋スギ、焙煎香があり、若いうちから飲みやすく、長期熟成にも耐えるヴィンテージ。エレガントさと複雑味を併せ持つシュヴァル・ブランの特徴が出ているワイン

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シュヴァル・ブラン2006は評価が高い2000年や並外れた出来と言われている2005年のようなエキゾチックなタイプでなく、古典的なタイプ。香りは開いていて、黒系果実や甘草、滑らかでシルクのようなテクスチュア、長い余韻

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牛フィレ肉のロースト 赤ワインソース × 3アイテム
プティ・シュヴァル2011は若さがあり、素直に飲みやすいワイン。グラスワインとしても楽しめます。シュヴァル・ブラン2011は黒コショウ(スパイス類)より赤ワインソースのほうが馴染みが良くすんなり。シュヴァル・ブラン2006は酒質の柔らかさ、上品な酸、熟成状態が良好でフードフレンドリー、お肉との相性◎。グラスの減りが一番早かった2006年、今飲んでおいしいワイン!

シャトー・デイケム1987年はマグナムで
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マンゴーパンナコッタ ~フレッシュマンゴーのナリネとマンゴーのシャーべット~
美味でした。もう少し“酸”の要素が加わっていれば、ワインとの相性もより完璧になったのでは・・・

神の甘露シャトー・ディケムはぶどう樹1本からグラス1杯しか穫れない極上甘口ワイン
1987年は雨が多い年だったので、収穫についてかなり心配したそうですが、滞りなく進んだ由。ワインは黄金色に輝き、香りはアプリコットのコンフィや蜂蜜、クリームブリュレ、ジンジャー、古いイケムの特徴香であるサフラン。残糖は100g、甘さの裏に隠れた上品な酸の効果がべたつきを感じさせない味わいに。冷やしすぎないで飲みたいワイン

欠番ヴィンテージは
降雨量が多かった2012年は生産していません(イグレック2012は生産)。20世紀の欠番は1992年、1974年、1972年、1964年、1952年、1951年、1930年、1915年、1910年の9ヴィンテージですね。

贅沢な1時間のプレスランチョン
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超多忙なピエール・リュルトン氏を囲んでの1時間だけのランチタイム!
フランス・ボルドー地方のサンテミリオン地区とソーテルヌ地区を代表するワインを手掛けるリュルトン氏のガイドで、仕事冥利な時間を共有させていただき、リュルトン氏の気さくなお人柄にも触れることができました。ピーロート・ジャパンにも御礼申しあげます。

製品についての問い合わせはピーロート・ジャパン ℡03-3458-4455
https://www.pieroth.jp/

2017年01月28日

ジャン・バティスト・レカイヨン醸造責任者が語ったシャンパン『ルイ・ロデレール』のすべて

1776年創業のシャンパンメゾン『ルイ・ロデレール』

画像協力:エノテカ



初来日したルイ・ロデレール副社長兼栽培・醸造責任者のジャン・バティスト・レカイヨンさん
1989年入社、カリフォルニアや豪州での経験を経て1994年にシャンパーニュに戻り、1999年醸造責任者に就任。2006年からロデレールグループが生産する全ての総括を担っています。


同社はポルトガルの『ラモス・ピント』、シャンパンメゾンの『ドゥーツ』、ボルドーの『シャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランド』等を所有

ルイ・ロデレールの特徴
ルイ・ロデレ-ルは家族経営のメゾンで、現社長は7代目のフレデリック・ルゾーさんです。シャンパン業界で、ひときわ輝く存在感を誇示している同社の際立つポイントは・・・

栽培面
■ぶどうの75~80%が自社畑
現在240㌶(GC26㌶、PC87㌶)を所有。フィロキセラ禍で多くの人が畑を手放した1880年代に初めてヴェルズネイに100㌶(1845年)取得、世界恐慌でシャンパン業界が停滞していた1929年にも多くの畑を入手。これが自社畑拡大の基礎になっています。すべてのヴィンテージシャンパンは自社畑のぶどうでまかなわれています。自社畑だと細かいチェックができるので、より良いシャンパン造りのための大事な要因になります。
■ビオディナミ農法
取り組みは十数年前。すべての作業はカレンダーに添って実施。『クリスタル』と新アイテム『ブリュット・ナチュール・フィリップ・スタルクモデル』にはビオディナミのぶどうを使用
■マサル・セレクション
クリスタルを構成しているピノ・ノワールとシャルドネはルイ・ロデレールの〝メモリー〟を反映させた昔からの遺伝子的な多様性を備えた苗木を使用
マサル・セレクションはマス・セレクション、集団選抜と呼ばれるもので、畑から優秀な株を複数選び、補木を取って苗木をつくり、元の畑に戻す方法。代々引き継がれてきた自分の畑で、時間をかけて優秀な株を選抜し、それを苗木として使用するので、テロワールに即したものと言える。苗木はクローン苗が一般的になる前に植樹された畑の株でなければならない。株は例えば、果実の豊かさ、果皮の厚み、果粒の大きさ、香りや酸の強弱等、これらが混在することで、複雑味のある表現ができる(筆者記載)
■樹齢
ひとつの基準として25年超のぶどう樹はクリスタルに使用。クリスタル用のぶどう畑で25年以下の樹はブリュット・プルミエNVに使用。25年以下のワインは大樽で3年間熟成させ、リザーヴワインとして活用


醸造面
20世紀前半のワイン造り同様、できるだけ手を加えないスタイル
240㌶は410区画に分類、それぞれ単一畑と同じ捉え方で醸造を行っています。
■MLF
必要に応じて行うが、ヴィンテージシャンパンには行わない方針
近年では2010年、2011年には実施。2012年、2015年、2016年はノン・マロ
MLFをしない理由は「フレッシュな味わい、正確な味わいを残すため」とレカイヨンさん
■醸造施設
7ヶ所に施設(クリスタル、クリスタル・ロゼ、ブラン・ド・ブラン等)があり、個々に対応
■5気圧
シャンパンは通常6気圧ですが、ルイ・ロデレールのアイテムは5気圧(平均5.2気圧)。この方針は1930年頃からで、ブラン・ド・ブランは4気圧
2次発酵で添加する糖分は炭酸ガスを造るのが目的。結果的にアルコールがあがる。24gの糖分がすべてアルコールに変わった場合は約1.5%に相当。但し、この数値は2次発酵の温度、酵母によって若干変化する。シャンパンに必要なガス圧は20度で5気圧以上。
◇4気圧(10度)=5.4気圧(20度)
補糖16g/Lあたりアルコール約1% アップ
◇5気圧(10度)=6.8気圧(20度)
補糖20g/Lあたりアルコール約1.2%アップ
◇6気圧(10度)=8.2気圧(20 度)
補糖24g/Lあたりアルコール約1.5%アップ (筆者記載)




(左から)
メゾンの顔『ブリュット・プルミエNV』、『ブリュット・ナチュール・フィリップ・スタルクモデル2009』、『ブリュット・ヴィンテージ・ロゼ2011』、『ブリュット・ヴィンテージ2009』、『ブラン・ド・ブラン ヴィンテージ2010』、『クリスタル2009』

ブレンドの妙 ブリュット・プルミエNV
PN40% 、CH40% 、M20%(5%くらい前後
ベースワイン(2012年/14GCと37PCの51区画)70%、リザーヴワイン(7VT)30%
65%前後が自社畑で残りは毎年同じ契約農家からの買付ぶどう。現行のプルミエはベースワインが力強かったので、リザーヴワインは優しいタッチのものを選択

レカイヨン:看板商品であり、ベースとなるヴィンテージの味を感じるのでマルチヴィンテージではなく、NVと呼びたい。最初に清涼感、その後、舌の中ほどから付け根にかけてソフトでベルベットのような滑らかな感触、舌の付け根に塩味。
ドザージュ量は9g、15年前は12~ 13g/ L。減量の理由は気候の変化と栽培条件(15年前から化学肥料、除草剤の不使用)で、ぶどうの熟度によるもの。ドザージュの役割は酸味と甘味のバランスを保つことであり、このシャンパンはMLFをしていないので、酸が高い。ゆえにドザージュは多め(9g/L)。MLFを行って酸味を下げた状態であればドザージュ量は4gで十分。リリースしたばかりのブリュット・プルミエはリザーヴワインの味が顕著なので、3~4年保存して、熟成のポテンシャルが出てきた頃に飲むとベースヴィンテージ(2012年)が良くわかる。1998年からアプリで詳細情報を公開中

感性に訴えかけるブリュット・ナチュール・フィリップ・スタルクモデル2009

「ノン・ドゼを造ろうと思ってトライしたのではない。ぶどうが熟したので何も手を加えないで、ミニマリズム(極限まで無駄を省く)で行こうと決め、完成したのがこのキュヴェ」とレカイヨンさん


フレデリック・ルゾー社長とフィリップ・スタルクさん 画像協力:エノテカ

PN55%、CH20%、M25%
ヴァレ・ド・ラ・マルヌのキュミエールのぶどうはビオディナミで栽培。ぶどうの特徴を最大限に生かすため、3品種を同時に収穫。発酵はステンレスタンク70%、木樽30%、5気圧弱を目安に熟成させ、ノン・ドゼで生産。
[バー]追加情報:自社畑のキュミエールではM(ムニエ)を栽培しています。ただ、極小区画なので、PNとCHを全面に出しています。

レカイヨン:フィリップ・スタルクとのコラボは、今までにないものを作りたいとの思いがあったからそれを実願するために、彼のインスピレーションを生かして、極限までそぎ落としたシャンパンを造った。2006年、2009年に続く、次のヴィンテージは2012年。粘土石灰質土壌由来のまるみがあり、早い段階から塩味を感じる。口中では幅広で密度があり、濃厚で凝縮感がある。単一畑で品種が固定しているので、ヴィンテージで個性が異なる。2006年は暑かったので力強さ、ふくらみがあり、2009年は暑かったものの、2006年程ではなかったのでシャープでエレガント



ビオデイナミへの取り組みは十数年前から


ノン・ドゼのきっかけは「10年前に自然農法の提唱者福岡正信氏の思想に影響されたから」とレカイヨンさん。福岡さんは2008年に他界なさいましたが、アンセルム・セロスも福岡シンパ

独自製法のブリュット・ロゼ2011

PN63%、CH37%
粘土石灰質土壌(キュミエール)のピノ・ノワールと石灰質土壌のシャルドネを使用
2011年は難しいヴィンテージ、生産したのはロゼとブラン・ド・ブランの2アイテムだけ
ピノ・ノワールを低温(4度)で7日~10日間マセレーション(セニエ法)。色を抽出したピノにシャルドネのジュースをブレンドしてアルコール発酵。

レカイヨン:ピノ・ノワールは朝方収穫すると朝露がついてしまうので、午後に行う。南向き斜面で収穫したピノは酸味が低いので、フレッシュなシャルドネを加えて発酵させることで、調和がとれた味わいになり、瓶内熟成をした時にその特徴が出てくる。香りはブラッドオレンジ、酸味の印象が強いので、黒いグラスで試すとロゼではなく、フレッシュな白ワインだと思うはず。全体の20%程度をオークの大樽で熟成させることで、スモーキーなニュアンスが出てくる。クリスタル・ロゼも同製法。違いはぶどうの出所で、ピノはアイ、シャルドネはアヴィズとメニル・シュル・オジェ




クラシックなスタイルのヴィンテージ2009
PN70%、CH30%
ピノ・ノワールは1845年に初めて購入したヴェルズネイの畑、北東向き斜面、冷涼エリアなので新鮮なぶどうが収穫できる。ぶどうがフレッシュなので木製発酵槽30%を使い、まろやかさを表現

レカイヨン:クラシックなシャンパンの味わい。マリアージュのヒントとして最初にピノベース、最後にシャルドネベースにするのがロデレールスタイル。フルコースで合わせるなら、最初にロゼ、次にブリュット・プルミエ、ヴィンテージ、クリスタル、そしてブラン・ド・ブランを最後にすることで、口中をリフレッシュさせることができる。このシャンパンは粘土質と石灰質土壌から構成されているので、味わいにも最初に粘土、後から石灰質のニュアンス

4気圧のブラン・ド・ブラン2011
CH100%
アヴィズ(地下水が少ない乾燥した土壌)の4区画のぶどうを使用。グラン・クリュになればなるほど石灰分が多く、土壌の特徴としてぶどうはゆっくり熟す。シャルドネは香りや果実味をより多く出すために少しだけ遅らせて収穫。発酵はステンレスタンク80%、木製発酵樽20%

レカイヨン:ルイ・ロデレールのアイテムのなかで一番ガス圧が低いシャンパン。泡が前面に出るのではなく、最初にワインの塩味を感じ、後から、泡を感じるように設計。ぶどうの熟度が高いのでMLFはしていない。石灰質土壌のシャルドネは鋭角的な味わいで、舌に直接働きかけてくるような広がりがある。2010年ヴィンテージは難しい年だったが、アヴィズのぶどうは熟度も高く、良いぶどうが収穫できた。

王者の風格クリスタル2009
PN60%、CH40%
1876年ロシア皇帝アレクサンドラ2世の要請により誕生したシャンパン。石灰土壌でPNを栽培すると低収量。結果としては香り・味わいに凝縮感が出る。PNの畑はヴェルズイ、ヴェルジ、ボーモン・シュル・ヴェスル、アイの4つのGC。すべて丘陵の中腹。クリスタルの畑は全部で45区画、実際に使うのは32区画。ぶどう樹は25~82年で平均樹齢42年。ブレンドを決めるのは収穫年の冬で1か月を要する。ピュア、チョーキー、プレサイズ(寸分の違いもない)であることがスタイルの基本。今後リリースするヴィンテージは2008年、2012年、2013年、2014年、2015年 2016年

レカイヨン:2009年はリリースの順序を入れ替えたヴィンテージで、これはメゾン初のこと。クリスタル2009は2016年に発売したが、2008年はまだ熟成中。ドザージュ量を1g減らして8g/Lにしたのも初めて。今までのクリスタルのなかで一番ドザージュ量が少ない。
クリスタルはビオディナミに転換中で2020年には100%ビオディナミのぶどうで生産する予定。ドザージュ量を下げたのは熟度が高かったことに加え、ビオディナミ農法だと、味わいに力強さと奥行きが出るので、通常年より1g下げることに成功した。
若いので奥行きはまだ出ていないが、石灰土壌由来のニュアンス、熟成のポテンシャルは感じるはず。飲む2~3時間前に抜栓を!


2008年と2009年のリリースを入れ替えた理由
順番を変えようと考え始めたのは3~4年前。2008年はタイトで、1988年(PN40%、CH60%)と似ている。通常では考えられないくらいポテンシャルがあり、熟成期間が長い。粘土質のシャンパンなら、そのままの順番で出したが、石灰質のシャンパンは熟成がゆっくり進むので決断した。
クリスタルは全部瓶詰めするのでななく、一部大樽でキープしている。樽は瓶より早く熟成するので、将来的に瓶詰めされたクリスタルの変化が予想できる。


シャンパン講座でマスタークラスセミナーを再現

2017年最初の講座で、ルイ・ロデレ-ルの6アイテムを再検証

左から
#1:ルイ・ロデレール ブリュット・プルミエNV
生産者: ルイ・ロデレール
ぶどう品種:PN40%、CH40%、M20%
ドザージュ:9g/L
価格: 6,800円(税別)

#2:ルイ・ロデレール ブリュット・ナチュール・フィリップ・スタルクモデル2009
生産者:ルイ・ロデレール
ぶどう品種: PN55%、CH20%、M25%
ドザージュ: 0g/L
価格: 15,000円(税別)

#3:ルイ・ロデレール ブリュット・ヴィンテージ・ロゼ2011
生産者:ルイ・ロデレール
ぶどう品種:PN63%、CH37%
ドザージュ:9g/L
価格: 10,000 円(税別)

#4:ルイ・ロデレール ブリュット・ヴィンテージ2009
生産者: ルイ・ロデレール
ぶどう品種:PN70%、CH30%
ドザージュ:9g/L
価格: 10,000円(税別)

#5:ルイ・ロデレール ブラン・ド・ブラン・ヴィンテージ2009
生産者:ルイ・ロデレール
ぶどう品種:CH100%
ドザージュ:9g/L
価格: 15,000円(税別)

#6:ルイ・ロデレール クリスタル2009
生産者:ルイ・ロデレール
ぶどう品種:PN60%、CH40%
ドザージュ:8g/L
価格:32,000円(税別)


石灰質土壌由来の〝凛〟としたスタイル、エレガント!
ブラン・ド・ブランは2009年ヴィンテージ(セミナーは2010年


シャンパンの状態も完璧、充実した2時間になりました!




ドザージュ後の瓶内熟成に興味を持っていたので、ドザージュの有無で、瓶内熟成はどのように変化するか、質問させていただきました。

レカイヨン:ドザージュすると瓶内で抗酸化(酸化を防ぐ)の働きをしてくれるので、ノン・ドゼのものは、ドザージュをしているものより、熟成のポテンシャルは短いかも知れません。ちょうど1週間前に2006年を試す機会がありました。酸化はしてなくて、健全な状態で熟成していました。(1)原料ぶどうがビオディナミで栽培されている。(2)発酵にオーク樽を使っているので木樽からタンニンが溶け込むことで、それが抗酸化の働きをしている。(3)酸が高い。
これら3つの要素で、ドザージュをしなくても、ポテンシャルはまだまだあるのではないかと思っています。

レカイヨンさんの解説を伺いながら、私は彼の優秀さに通じるある方を連想していました。
昨年3月に逝去なさったシャトー・マルゴーの総支配人ポール・ポンタリエさんです。ポンタリエさんはパリ国立農業大学に入学し、その後、モンペリエ国立高等農業大学でぶどう栽培&ワイン醸造を習得。シャトー・マルゴーで30年以上にわたり、総支配人兼最高醸造責任者として活躍なさいました。

輸入元エノテカのサイトにあった 「フランス国立農業学院で醸造と栽培の両部門を首席で卒業」というレカイヨンさんの紹介文を見て、その共通性にひとり納得。
天才醸造家とお目にかかり、お話を伺えたことはとても光栄でした!

エノテカ様にはマスタークラスセミナーでお世話になりました。またNHK文化センターのシャンパン講座でもデータ等のサポートをいただき、感謝しております、ありがとうございました!!

2017年01月22日

〝テイスト・ナパヴァレー〟でナパワインと肉料理の相性を探る!

TASTE NAPA VALLEY


ナパヴァレー・ヴィントナーズ(NVV)主催の「TASTE NAPA VALLEY(テイスト・ナパヴァレー)」が1月17日から1月20日までの4日間にわたり、東京・大阪・京都の3都市で開催されました。これは2年に1度、日本国内で催されるワイン生産者の来日イベントで、今年は15ワイナリーが参加。ワイン業界関係者対象のセミナーや試飲会およびワイン愛好家向けのメーカーズディナー等で、ナパヴァレーのワインの魅力を紹介しました。

期間中、8ワイナリーが参加したセミナー「ナパヴァレーワインと肉料理の相性を探る」にお邪魔してきたので、肉料理をメインにしたワインと料理のペアリングについてまとめておきます。
セミナーでは、CIA(カリナリー・インスティテュート・オブ・アメリカ)を卒業後、カリフォルニア料理のスペシャリストとして活躍しているNVV日本事務所

の小枝絵麻さんがMCを担当。
ペアリングに関しては、カリフォルニアワインに精通している西麻布『ルエ・ヴェル・ロール』の千葉和久ソムリエのコメントをベースにしながら、小枝さんがワインと4つの肉料理(供出順に、塩&タレの焼鳥、ハンバーグ、牛カツ、焼肉)との相性を解説しました。

セミナーに参加した8ワイナリー
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右から)トレフェセンのジョン・ルエルCEO、トゥーミー&シルバー・オークのヴィヴィアン・ゲイ インターナショナル・セールスマネージャー、サン・スペリーのエマ・J. スウェインCEO、ケークブレッドのニコール・カミングスさん、シレノスのスコット・メドウズジェネラルマネージャー、レイモンドのリ・アン・リードさん &ダリオッシュのダニエル・デ・ポロ社長

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NVV日本事務所の小枝絵麻さん

ワイナリー&ワインついて


1) トレフェセン・ファミリー・ヴィンヤード /2014ドライ・リースリング
オーク ノール地区、1968年創業、来年50周年、家族経営でぶどうはすべて自社畑、冷涼エリアでエレガントなワインを産出。ドライ・リースリングはぶどう畑をそのまま表現したぶどうなので樽は使わず、非MLF、12月に瓶詰め、料理に合わせやすいワイン

2) レイモンド・ヴィンヤード/2013リザーヴ・セレクション・メルロ
ラザフォード地区、1970年創業のワイナリー。創始者ロイ・レイモンドは1933年からベリンジャーで働き、当主の孫娘と結婚。ベリンジャーがネスレに買収されたのを機にレイモンド・ヴィンヤーズを興す。1974年に植樹してワイン造りを開始。2009年にレイモンドが引退、現在オーナーはジャン・シャルル・ボワセ(JCB)。リザーヴセレクションメルロはME90%、CS9%、プティ・シラー1%のブレンド、フレンチオーク熟成18ヶ月、平地のぶどうのワイン

3) トゥーミー・セラーズ/2012メルロ
1999年創業、オーナーはシルバー・オーク(CSに特化)。CS以外のワインを生産したいということで興したワイナリー。ぺトリュスやドミナスでワイン造りの経験を持つワインメーカーによる伝統的な製法。メルロはすべて単一畑。2012のメルロはME80%、CF16%、PV4%のブレンド、フレンチオーク熟成13ヶ月(32%新樽)

4) シレノス・ワイナリー/2013 カベルネ・フラン
オークノール地区、1968年創業、CS、CF、PVを植樹し、少量のワイン生産とぶどう販売(モンダヴィ・ワイナリーのリザーヴに使用されていた)を経て、本格的なワイン造りに着手。2013カベルネ・フランは年間50ケースの希少ワイン(日本へは10ケース)、5%程度アメリカンオークを使うことで、スパイシーな風味を表現。CF75%、CS15%、PV10%のブレンド

5) シルバー・オーク・セラーズ/2012カベルネ・ソーヴィニヨン
1972年ダンカンファミリーが立ち上げ、現在3代目。米国のステーキハウスで人気のアイテム。創業以来の方針は■カベルネだけを生産(現在2アイテム)■樽はアメリカンオークを使用。ミズーリー州に樽工場を所有、2012カベルネは米国(2月発売予定)より、日本先行披露。樽熟成24ヶ月(新樽100%)後、瓶詰め24ヶ月、市場に出るまで4~5年を要す。CS80%、ME10%、CF7%、PV3%のブレンド

6) ケークブレッド・セラーズ/2013カベルネ・ソーヴィニヨン
ラザフォード地区、1973年の創業以来、ぶどう栽培から販売までケークブレッド夫妻と息子夫妻が仕切るワイナリー。2013カベルネ・ソーヴィニヨンはナパヴァレー全域のぶどう(温暖なエリアから冷涼なエリアまで)を使ったワイン。契約農家の5つの異なる畑の300区画のワインを個々に100%フレンチオーク(新樽50%)で6ヶ月熟成させ最終ブレンド。仕上げたワインは再度フレンチオークに戻し12ヶ月熟成。ブレンド比率はCS81%+CF、ME、PV

7) サン・スペリー・エステート・ヴィンヤーズ&ワイナリー/2013エステートカベルネ・ソーヴィニヨン
1982年創業、ナパヴァレーに2つの自社畑620㌶(うち植樹されているのは3分の1)、ワインはすべて自社のぶどうを使用。土壌13タイプ、品種も様々。ラザフォードではCS、ME、CF、PVを栽培。2013カベルネ・ソーヴィニヨンはフレンチオーク熟成18ヶ月、CS86%、PV8%、マルベック6%をブレンド
 
8) ダリッシュ/2013カベルネ・ソーヴィニヨン
1997年創業、3つの自社畑(各30エーカー)を所有、ワイナリー周辺(スタッグス・リープ地区の南)、オークノール(ME、ヴィオニエ、シラー)、標高600メートルにあるマウントヴィーダー(CS、ME、CF)。2013カベルネ・ソーヴィニヨンはCS80%、ME10~12%、CF6~8%(年による)、山のぶどうを40%使っているので、重量感とエレガントさを備えたワイン

ナパワインとのペアリング


■ワインは8種類
前列左から1)~4)、後列左から5)~8)
■ブリッジ食材は12種類
手前左から万能ネギ、黒胡椒、わさび、フェンネルスパイス、ドライハーブスパイス
奥左から煮切り赤ワイン、とんかつソース、ゆず、たまり醤油、焼肉のタレ(甘口)
粒マスタード(左端の黒いケース)と塩(画像外

ナパワインの日本でのイメージ

果実味が強く、アルコールが高いと表現されることが多いのですが・・・
実際はバランスが良く、無数の味わい

ワインと料理の方程式

ワインのボディ、タンニン、酸の3要素と料理が同じバランスであること
ブリッジ食材(ワインと料理を結びつける食材)を活用することで幅広い相性が楽しめる

実際に試してみると


第1フライト 焼鳥×1)、2)
千葉コメント
1)はシトラス、フレッシュ、ぺトロール、ミネラル、冷涼なオークノールの個性、酸が特徴的
2)は赤系果実、ジャムまでいかない熟度、クローブ、ナツメグ、滑らかなタンニン

ペアリング
ドライリースリング:焼鳥を食し、2割残っている状態でワインを口に含む。融合するが、何か特出する印象ではない。ワインにはライムやレモンの香りはあるので、焼鳥にユズをたらして食する。まずワインの味が鮮明に変化、クリアになる、フレッシュ感、ワインを生き返らせる。余韻が伸び、アロマが豊かになる。ハーブ、白胡椒の香りも。
メルロ:最初は単体、次にハーブミックス。焼鳥は塩とタレ(奥)。焼鳥(タレ)にハーブミックスをつけると余韻が伸び、鶏肉の甘さを引き立てることができる。

第2フライト ハンバーグ×3)、4)
千葉コメント
3)赤系果実、ドライフルーツ、ココナッツ、ヴァニラ、クローブ、チョコ、2)よりこなれた柔らかいタンニン、アルコール高め(温度があがった影響)
4)赤系&黒系果実、ジャムのニュアンスはあるがフラッシュさもある、冷涼エリアのオークノールの特徴、若干ハーブ、ナツメグ、酸の印象(1~3より)、タンニンの量は3と比べ、少ないが鋭角的

ペアリング
赤ワインはデミグラスソースとは当然合うので、今回は和風系のハンバーグにしてトライ。ポン酢役として、たまり醤油と煮切り赤ワインを使用。たまり醤油は肉を食した時に旨味を感じさせてくれる。加えて樽の味わいも出てくる。ポン酢役の2食材に万能ネギを添えることで、口中に清涼感、CFのなかのハーブの要素、アロマ。さらに、たまり醤油と煮切り赤ワインにフェンネルのスパイスを添えることでハーブの香りがより顕著。
ここでは果実味に酸味を加える意味で煮切り赤ワインを使用

第3フライト 牛カツ×5)、6)
千葉コメント
5)黒系果実のブラックチェリー、ブラックベリー、カシス、熟した状態とジャムの中間、ドライフルーツ、若干杉の香り、ココナッツ、ベーキングパウダー、ヴァニラ、クロ―ブ、タンニンは豊かで滑らか、柔らかいタンニン、アルコール高め(温度があがった影響)
6)黒系果実のブラックベリー、鉛筆の芯、 杉の木、ボルドーワイン似の香り、シナモン、枯葉、供出された赤ワインのなかで一番しっかりしたタンニン
 
ペアリング
5)のタンニンが柔らかいので、とんかつソースだと余韻が途切れる。熟した果実が前に出ているので、ソースとバッティング。たまり醤油(樽を使って発酵させているので)と牛カツと合せると、とんかつソースだけでは感じなかったスパイス風味が出てくる。6)にはしっかりしたタンニンがあるので、とんかつソースと合う。たまり醤油にフェンネル(清涼感)、黒コショウ(辛味のフィニッシュ)のブリッジ食材を加えると、隠れていたワインの要素。奥行きが広がり、余韻も伸びる。 
たまり醤油がない時は普通の醤油に煮切りワインを10対1の割合で代用できます

第4フライト 焼肉×7)、8)
千葉コメント
7)黒系果実のブラックベリー、ブラックチェリー、杉、鉛筆の芯、ナツメグ、シナモン、骨格はケークブレッド似、ただし、タンニンはケークブレッドほどではない
8)黒系果実のブラックベリー、ブラックチェリー、熟した状態だがフレッシュさも出ている、清涼感、山のワインらしいしっかりしたタンニン
 
ペアリング
ジャム的要素がない7)だとあわせた時に軽い苦み。そこで、マスタード(酸や発酵した要素のあるブリッジ食材)をつけて食すと今度は余韻が伸び、アロマにはベリー系のニュアンスも。 8)にはコクと果実の甘味があるので甘口のたれとも合う。多くの要素(シナモン、ハーブ、タンニン等)があるので、わさび、たまり醤油、煮切り赤ワインであわせると、バランス良く、最後はわさびの清涼感でまとまる。また、万能ネギ、たまり醤油、黒胡椒だと、ダリオッシュの持つ果実味はもとより、ネギの旨さが広がり、最後に黒胡椒でフィニッシュ


小枝絵麻さんの経験に裏打ちされたペアリングの組み立てはお見事でした。
ブリッジ食材を使うことで、味わいだけでなく、隠れていたアロマの発見ができたことは収穫!

ナパワインのブリッジ食材

ワイナリーの皆さんはゆずやわさび、たまり醤油などの日本の食材への関心、揚げ物とCSのタンニンの関係、ネギやハーブを使った新たなアロマの発見に興味津々でした。

ダリオッシュのダンさんは「ルールを破りながら、ペアリングを楽しみたい」とおっしゃっていましたが、〝ブリッジ食材〟を使うことで、ナパワインの裏に隠れている様々な要素が発見できますので、一覧表を参考にしながら、料理とワインのペアリングをお楽しみください!

2017年01月12日

ディズニーゆかりの『シルヴァラード・ヴィンヤーズ』&新AVAクームスヴィルの『GEO』

ウォルト・ディズニーの娘ダイアンと夫ロンが設立したワイナリー『シルヴァラード』

ロゴが映える木目の質感、自然体のシルヴァラード・ヴィンヤーズ

9日の成人式では浦安の東京ディズニーランドで、1900名余りの新成人がおなじみのキャラクターたちに門出を祝福されていました。
今回ご紹介するのは、そのディズニーゆかりのワイナリー&ワインです。

1981年、ウォルト・ディズニーの娘ダイアン・ディズニー・ミラー(2013年11月逝去)と夫ロン・ミラーによって設立されたカリフォルニア州ナパ・ヴァレーのシルヴァラード・ヴィンヤーズ


ワイナリーはスタッグスリープ・ディストリクト(以後SLD)の中心にあるシルヴァラード・トレイル近くの小高い丘に位置し、リリースするすべてのワインは6つの自社畑(植樹面積は約180㌶)のぶどうだけで生産しているエステート・ワイナリーです。ネーミングは廃鉱となってしまった〝銀の鉱山〟に由来しています。

SLDはナパ・ヴァレーで最も有名な銘醸地の1つで、この地で造られたカベルネ・ソーヴィニヨンが1976年のパリ・テイスティングで、フランスの1級シャトーを抑えて第1位に輝いた『スタッグス・リープ・ワイン・セラーズ』に使われていたことはよく知られています。

16歳の少女を魅了したパリでのロゼ体験


昨秋来日したラス・ワイス総支配人はダイアンさんが、ワインに興味を持った経緯について、「16歳の時に両親から誕生日プレゼントについて聞かれた彼女はパリ旅行を希望します。念願叶ってパリを訪問した時、小さなカフェでロゼワインを口にするのですが、そこで〝ワインはぶどうから造られているのに何故イチゴのような香りがするのか〟と疑問に思い、その魅力に惹かれて、後年、ワインにかかわることになります」と説明していました。

ワイナリーのオーナーになったミラー夫妻は1983年に最初のヴィンテージ1981をリリースします。しかし、カリフォルニアは80年代後半にぶどう害虫のフィロキセラ禍が広がり、本拠地SLDにあるシルヴァラード・ヴィンヤーズのぶどう樹も大打撃を受けます。

そこで新たな畑を購入する必要に迫られ、入手したのがクームスヴィルにあるマウント・ジョージ

HPのvineyardsからMt.Georgeに)でした。

2011年にAVAに昇格したクームスヴィル


AVA(政府公認の栽培地域)申請でリーダー的役割を果たしたワイス総支配人は承認されるための3つの条件について言及
■産地としての歴史
クームスヴィルにおけるワイン造りの歴史は1840年にスペイン人によって植樹されたところからスタートします。1849年からのゴールドラッシュで欧州から多くの移民がやってきますが、ぶどう栽培やワイン造りに関わる人たちも現れます。1868年にはウイリアム・ウッドワードによってマウント・ジョージの畑に初めてぶどう樹が植えられました。1880年代に醸造・栽培のパイオニアとして活躍していたヘンリー・ヘイゲンは銘醸畑〝シーダーノル〟から卓越したワインを生産。1889年にエッフェル塔建設を記念して開催されたパリ万博でのワイン品評会で、第2位の快挙を成し遂げます。あのパリ・テイスティングを遡ること87年前の出来事です。

クームスヴィルは1862年にヴィニフェラ種が最初に植えられた歴史ある産地で、禁酒法時代(1920年~33年)の後、畑は荒廃しますが、1987年にミラー夫妻がかの銘醸畑〝シーダーノル〟の大部分を購入し、今に至っています。ちなみに シルヴァラード近隣のワイナリー(スタッグスリープ・ワイン・セラーズ、シェーファー、ファニエンテ等)もかなり前からクームスヴィルに畑を所有していました。まさに知る人ぞ知るエリアだったと言えます。

■気候の独自性
夜中の2時くらいに霧が入り込み、11時くらいには晴れるカーネロスと似た気候。冷涼な産地で本拠地SLDより、2週間遅れの収穫。マウント・ジョージは山に囲まれている劇場型の地形で、高低により植樹する品種は異なり、高い斜面にカベルネ・ソーヴィヨン、その下にメルロとカベルネ・フラン、暖かなエリアにシラー、カーネロスに近い涼しい場所にはシャルドネとピノ・ノワールを栽培しています。高い場所は西日が、畑に散在する石ころを温めてくれるので、陽が落ちた後も、暖かさを保てます。雨季(11月から3月)には500ミリの降雨

「メルロは暖か過ぎるとフェノールの熟度があがる前に糖度があがり過ぎてしまう。涼しい環境下で育てることで糖分と同時に皮や種の熟度があがっていくのでメルロに最適」とワイス総支配人

■土壌の独自性
土壌はクームスヴィル・グラヴェリー・ロームと呼ばれる特殊なもので、カコウ岩&頁岩&ツーファ(石灰岩の一種。多孔質炭酸石灰の沈殿物)から構成されています。ツーファは水分をキープできる利点があるので、灌漑は不要。畑のぶどう樹はツーファのおかげで健全に育っています。

ギリシャ語で〝地球〟を意味するGEO
クームスヴィルのメルロはシングル・ヴィンヤードとしてリリースされています。年間3,000~4,000ケース。同エリアで栽培されているカベルネ・フラン、マルベック、プティ・ヴェルドはSLDのシルヴァラードのカベルネ・ソーヴィニヨンにスパイスを加えるような役割でブレンドされています。また、シルヴァラード・ヴィンヤーズではプレスワインはほとんど使わないのでワインに骨格を与える役割はプティ・ヴェルドが担っています。

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ヴィンテージの差がないと言われがちなカルフォルニアワインについて、ワイス総支配人は#1~#3を例に言及
#1:2009 メルロ マウント・ジョージ マグナム
メルロ97%、カベルネ・ソーヴィニヨン3%
クラシカルな年。パワフル、果実のキャラクター、凝縮感のあるワイン
#2:2011 同上 マグナム
メルロ100%
雨に悩まされた涼しい年。収穫は雨が降る前に終了したが生育期間が短かくなった分、黒系果実ではなく、赤系果実を連想させるワイン
#3:2012 同上 クームスヴィル
メルロ95%、カベルネ・ソーヴィニヨン5%
暖かな年。果実の旨味、味わい滑らかで、タンニンはソフト
ジューシーで親しみを感じさせるワイン


2011年に昇格した新AVAクームスヴィル。2012年ヴィンテージからラベルに表記しています。シングル・ヴィンヤードのカベルネ・ソーヴィニヨン『GEO』は1987年にクームスヴィルの畑を購入し、ちょうど20回目の収穫となることを記念して初リリースしたワイン。現行ヴィンテージの2013年は1月に日本上陸したばかり、ただ今、発売中(13,000円)
#4:2011 カベルネ・ソーヴィニヨン マウント・ジョージ マグナム
カベルネ・ソーヴィニヨン92%、プティ・ヴェルド8%
冷涼年。枯葉、タバコ、スパイス、繊細な酸、ハーブ的なニュアンス
#5:2012 GEO クームスヴィル マグナム
カベルネ・ソーヴィニヨン98%、カベルネ・フラン2%
暖かな年。カシス、ブラックベリー、甘草、木目細かなタンニン、丸みのある味わい
#6:2013 GEO クームスヴィル マグナム
カベルネ・ソーヴィニヨン88%、プティ・ヴェルド12%
スーパーストラクチュア、凝縮感、芯のある酸、長期熟成が期待できるワイン

ワイス総支配人は「クームスヴィルのワインの特徴は何と言っても酸のエネルギー。酸があるので果実が引き立ち、複雑味が出てきます。余韻にも綺麗な酸が出てきます」とコメントしていました。
ギリシャ語で〝地球〟を意味するGEO、マウント・ジョージ〝George〟にもかけたネーミング。故ダイアンさんが恋したナパ・ヴァレーのワイナリー『シルヴァラード・ヴィンヤーズ』の意気込みを感じます。

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セミナーの後のディナー会場はアマン東京33階のレストラン、スカイツリーも視界に
天井が高く、贅沢な造りの空間

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左から
■2015 ソーヴィニヨン・ブラン ミラー・ランチ ナパ・ヴァレー 3,300円
ソーヴィニヨン・ブラン93%、セミヨン7%
■2014 シャルドネ ヴァインバーグ・ヴィンヤード 4,300円
シャルドネ100%
■2013 ジンファンデル ソーダ・クリーク ナパ・ヴァレー 6,400円
ジンファンデル100%
■2012 カベルネ・ソーヴィニヨン ナパ・ヴァレー 7,000円
カベルネ・ソーヴィニヨン81%、メルロ15%、プティ・ヴェルド4%
■2012 ソロ カベルネ・ソーヴィニヨン スタッグスリープ・ディストリクト 14,000円
カベルネ・ソーヴィニヨン100%
UCデイヴィス校の観察と研究の結果で、このカベルネ・ソーヴィニヨンはSLD唯一のヘリテージュ・クローンであることが判明。プラム、カシス、レッド・カラントの香りが特徴。複雑味のある果実としなやかな舌触り、厚みのある骨格のワイン。クームスヴィルのカベルネと双璧になるワイン


鰆のカルパッチョ チコリーとリンゴのサラダ オシェトラキャビア添え


バカラマンテカート ポレンタとグリーンアスパラガス


タイムが香るタリオリーニ ズワイ蟹とカリフラワー


糸撚魚と帆立と貝のソテー 茄子のフォンデンテと長芋 ペーストジェノベーゼ


山梨県中村農場産甲州頬落鶏のロースト ポルチーニ茸と根セロリのピュレ バルサミコ酢のアクセント


モンテビアンコ ロビオラチーズのジェラート



すべてが終わってロビーでラス・ワイス総支配人のワン・ショット

ロバート・モンダヴィでインターナショナル・マーケットを担当し、カリフォルニアのワイン産業を知り尽くしたワイス総支配人。新ワイン『GEO』にかける期待は大きいです。

シルヴァラード・ヴィンヤーズおよびGEO2013への問い合わせ
ワイン・イン・スタイル ℡03-5212-2271

2016年11月05日

贅沢なマリア―ジュ! シチリア『タスカ・ダルメリータ』 × 銀座『久兵衛』

アルメリータ伯爵家の7代目アルベルト・タスカダルメリータ当主
シチリアのタスカ・ダルメリータ

から7代目のアルベルト・タスカダルメータCEOが来日しました。
同カンティーナの創業は1834年、シチリアにおける農業改革に大きく貢献し、2代目のルチオ氏の時にアルメリータ伯爵の称号を授与されています。
1957年、祖父ジュゼッペ伯爵が当主になってから、ワインビジネスの再構築を開始、高品質なワイン造りに着手し、高評価を得るようになります。ファミリーは〝伝統を引き継ぎ明日への扉を開く〟をモット―にしています。

日本の自然、伝統を愛するアルベルトさんは定期的に訪日し、その折には「日本の名店の味」を研究しているようです。今回は和食の旨味とご自身のワインとの相性を探るということで、銀座『久兵衛』でマリア―ジュを楽しみました。

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(右から左の順に供出)
#1:テヌータ・レガレアーリ アルメリータ・ブリュット2013
パレルモとカルタニセッタの境、約500㌶を所有
#2:グリッロ・モツィア2015(日本未入荷
アルメリータ・ブリュットとグリッロ・モツィアについては10月27日付のワインのこころ

で紹介しています。ご笑覧いただけましたら幸いです。

#3:カポファーロ ディディメ2014
エオリア諸島にあるサリーナ島に約5㌶を所有。マルヴァジア100%のワイン。パッシート(収穫したぶどうを棚で陰干させ糖度をあげる)の甘口ワインを生産していましたが、ある時、豊作だったので、それを機に辛口ワインを生産。ワイン名はサリーナ島のかつての呼び名(双子の意味)にちなんで命名。第一香は控えめながら、ミネラル豊か、アフターに残るビター感が好印象。

ディディメと和食との相性チェックをしているタスカ・ダルメリータPRジャパンの山田久扇子さんからは「苦みのある春野菜や貝のお刺身に合います」とのアドバイスがありました。イカ、ウニはもちろん、わかめに合わせることで、より香りが引き立つ印象でした。

#4:テヌータ・レガレアーリ ノッツェ・ドーロ2013
アルベルトさんの祖父ジュゼッペ伯爵と妻フランカさんの結婚50周年を祝した〝金婚式〟と命名されたワイン。同カンティーナを象徴するアイコンワイン。ぶどう品種はインツォリア72%、ソーヴィニヨン・タスカ28%。ソーヴィニヨン・タスカは1830年にエステートを購入した際、畑のなかから偶然見つけたぶどう。当時はソーヴィニヨンとかグレカニコとか呼ばれていました。専門家の鑑定でも100%出自が判明せず、ソーヴィニヨンの亜種であり、タスカの畑にあったソーヴィニヨンなので、現在、このように呼ばれています。畑は海から離れた内陸にあり、標高は450~800m。夏は昼夜の差が25度にもなるので、フレッシュで酸味を備えたぶどうが収穫できます。

#5:テヌータ・タスカンテ イル・タスカンテ2011
欧州最大の活火山エトナ山麓のシャラノヴァとボッカドルツォに18㌶の畑を所有。土壌の構成は火山が噴火した時期によって異なるので、変化に富み、多種多様。ぶどう品種はネレッロ・マスカレーゼ100%。シチリアは太陽の光が強いので標高が大事。畑は700~800m、エトナ山は急傾斜なので、地面が崩れないように段々畑にして耕作。ぶどうの根が地面から出ないようにするため、作業には苦労が伴います。収穫時に機械は使えませんし、同じ園内でも若干の標高差で収穫のタイミングは異なります。
発酵はステンレスタンク、熟成はスラヴォニア産の3000Lの大樽で約18ヶ月、MLF有。

ネレッロ・マスカレーゼとエトナの土壌との相性はピノ・ノワールとブルゴーニュ、ネッビオーロとバローロやバルバレスコの関係と似ていて、この品種を他の地域に植えてもワインに複雑味は出ないそうです。『イル・タスカンテ』はプロからの高い評価を得ています。その理由は「しっかりしたボディでアルコール度数が高いワインと形容されるシチリアワインと一線を画すスタイルだから」というのがアルベルトさんの分析。


凛としたスタイル、シャルドネ100%のスプマンテ

祖父が友人たちにプレゼントするために造ったという『アルメリータ・ブリュット』

フェニキア人の歴史を感じるモツィア

包容力のある味わい、和の素材に最適!
余談ですが、フェニキア人の主要産業は繊維業だったそうで、ポルポラ貝から取れる赤みがかった紫色の染料は貝をつぶして色を抽出して、その緋色は高貴な色として珍重されていたとのこと。フェニキア人の素晴らしい知恵を感じます。

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醤油とダシの旨味が効いたいくらの醤油漬けは、スプマンテの旨味と混然一体、文句なしのハーモニー。わかめとモツィアは海繋がりを感じる組み合わせで、すんなり馴染めました。


穴子のクリーミーな食感はスプマンテのなめらかさと◎


穴子の肝は合せた後、口中に残る生臭さが気になりました。当日は登場しなかったピノ・ネロ100%の『アルメリータ ロゼ・ブリュット』なら、タンニンがあるので、臭みを消し去ってくれるのでは、と思っています。

カウンター越しに

整然とした調理姿

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繊細な作業、職人芸


脂が乗ったカツオはスプマンテより、ボディのあるワインに合わせて!
「ガリには酸味があり、口のなかをさっぱりさせてくれる効果があります。ただ、ワインも酸味があり、口中を洗い流してくれるので、役目が重なり、ワインとガリを合せるのはなかなか複雑」とアルベルトさん。

ノッツェ・ドーロと
豊かな芳香、ミネラル、鉄分、温度変化で複雑味が広がる魅力
雲丹、マグロなどの高級食材と相性良好
アルベルトさんは「背骨がぴんと伸びたワイン」と表現!


視覚からおいしさが伝わってくる雲丹


口中でとろける食感

唯一の赤ワイン『イル・タスカンテ』
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色調は濃くはありませんが、タンニンがしっかりしているので、ワイン・メーカーとしては、この頑強なタンニンをいかに扱うかがポイント

光りものは



料理と合せて本領を発揮する『イル・タスカンテ』は個性のある味の食材がお薦め
光もののコハダやサヨリ(味わいは淡泊でしたが)とは予想外の相性の良さでびっくり!

久兵衛の3代目今田景久さんと
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銀座『久兵衛』の3代目今田景久さんとアルベルトさん
3代目の〝おもてなしのこころ〟、この日はワインのサービスもしてくださいました。

アルベルトさんが強調していたのが〝シェフこそアンバサダー〟という言葉。「ワインの造り手と料理人が一緒に考えていくことが大事であり、料理人が情熱をもってくれると、より楽しい作業になる」と。
アルベルト・タスカダルメータCEO、コーディネートしてくださった山田久扇子さん、贅沢な時間を共有させていただきました。ありがとうございました!

製品についてのお問い合わせは
■タスカ・ダルメリータPRジャパン ℡03-3461-2383
■(有)エトリヴァン ℡045-574-9815

2016年10月14日

初来日したモンテス親子が語るチリのスーパー・プレミアム・ワインの世界

〝プレミアムなワイン造り〟を実現させたモンテス

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1988年、サンチャゴから南に180km行ったところにあるコルチャグア・ヴァレー。ここを拠地にして創業したMontes

は同じ夢を抱いていた4人の男たちが立ち上げたワイナリーです。
アウレリオ・モンテス・シニア、ダグラス・ムライ、アルフレド・ヴィダウレ、そしてペドロ・グランデ。
彼らの夢、それはチリを代表するプレミアムワインを造ることでした。そして今、モンテスはエントリーレベルのワインから世界レベルのワインに至るまで幅広いレンジを有し、チリ国内のみならず、世界でも広く知られるようになっています。

モンテス親子初来日!
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今月初旬、輸入元エノテカの招聘で、モンテス社から創業者のアウレリオ・モンテス・シニア&後継者のアウレリオ・モンテス・ジュニア親子が初来日し、スペシャル・ディナーで過去、現在、未来について語りました。

シニアの夢を辿ると、修道士、消防士、医者、そして21歳の時にはワインメーカー。ワイン界に参入して、夢の実現のために設立した醸造施設はガレージワイナリーのような形態で、何から何まで手作業でした。当時10歳だったジュニアは「大きな変化を感じています。今のワイナリーはモダンでハイテク」とコメントしていました。

シニアは「人と同じことをやるのが嫌いです」と語っていましたが、1994年には丘陵地を開拓し、ぶどう畑に。チリでは平地での栽培が一般的だったので、周囲から異端視されたそうです。現在、素晴らしい出来のぶどう、高品質のワインを生産しているモンテス、見事な展開です!

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「親子で働いていますが、ふたりの情熱をシェアできることが幸せ」とジュニア
「世代交代は進めていきたいし、ワイン造りでもまだ息子に伝えたいことがあります。自分も重責を担っているので、息子が良いワインメーカーになって欲しいと思っています」とシニア

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シニアの朋友、パトリシオ・トーレス駐日チリ大使もお祝いに駆けつけ、エールを送りました。
「その昔、エノテカ主催のディナーでモンテス・アルファ・エムを初めて味わいました。ファースト・ヴィンテージの1996年で、とてもラッキーでした。当時チリワインは第5位か第6位に甘んじており、特にチリのスーパー・プレミアムワインについては全く認知されていませんでした。昨年チリワインが輸入量No1になりましたが、高品質のモンテスはチリワインに深く貢献しています。来年は日本とチリの国交樹立120周年になりますので、モンテスで乾杯しましょう!」

映像を見ながら~過去・現在・未来~
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モンダヴィに会ってジュニアが開眼した歴史的瞬間の写真

ジュニアは父親の情熱を感じ、ワインに興味は持っていました。息子にワイン造りを強要しなかったシニアですが、世界的にもハイテクで素晴らしいワイン造りをしているカリフォルニアのナパに息子を連れて行けば、「気持ちに変化が起きるのではないか」と思い、家族で出かけます。そして、故ロバート・モンダヴィとの出会いにより、ジュニアはワインに開眼。ワインメーカーとして生きることを決意します。

その後、彼は片道切符で豪州に向い、ローズマウントとケープメンテルで奮闘。現地での経験がモンテスの息子としてではなく、醸造家としてのジュニアを誕生させることになります。

余談ですが、前のブログに、故ロバート・モンダヴィから強い影響を受けたエラスリスやルーウィン・エステートのことを書きましたが、今回モンテス・ジュニアの話を伺い、再度、モンダヴィの偉大さを感じています。

アルゼンチンのカイケンで
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モンテス

がアルゼンチンに所有するカイケン

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Photo by F. AOKI (2013年9月撮影)
パタゴニア上空を飛行しながらチリ・アルゼンチン間を往来する雁、可愛いシンボル〝カイケン〟

ジュニアは2007年からモンテスの醸造責任者として参画、2011~2015年にはカイケンを担当。アペリティフで供出されたKAIKEN BRUT NV(カイケン・ブリュットNV)も生産しました。2016年以降は定期的に世界各国のマーケットを回りながら、モンテス・カイケンのプロモーション活動にも従事しています。

シニア会心のアイテム、モンテスのスパークリング
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ディナーのウエルカムドリンクとして登場したのは、シニアが満を持して生産したMONTES SPARKLING ANGEL NV(モンテス・スパークリング・エンジェルNV)。ジュニアのカイケン・ブリュットと対(品種&ブレンド比率)をなしています。
ワインのこころ

で2アイテムを紹介していますので、ご笑覧いただけましたら幸いです。

スペシャル・ディナーはエアーズの料理で
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鮑の粕漬 檜の香り 燻製セミドライトマトを添えて

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仔羊のサルシッチャを包んだラヴィオリと蕪のステーキ ファンデュータ仕立て

MONTES ALPHA SPECIAL CUVEE SAUVIGNON BLANC 2014 (モンテス・アルファ スペシャル・キュヴェSB2014)
海に近いエリアのワイン、ステンレスタンクだけを使うことで、フレッシュさを表現。「ワインは喜び、情熱を表現するために樽は使わない」とシニア。加えて、「鮑とSBのシャープな酸味が良く合っていました」と。
KAIKEN ULTRA CHARDONNAY 2014(カイケン・ウルトラCH 2014)
フレンチオーク30%、ステンレスタンク70%のワインをブレンド、果実味を生かした造り。カイケン・ブリュットと同じく畑の標高は1000m以上。冷涼エリアで、土壌は石灰岩、ワインから土壌由来のミネラルを感じます。

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(左から)
MONTES TAITA 2009(モンテスタイタ2009)、KAIKEN MAI 2012(カイケン・マイ2012)、MONTES PURPLE ANGEL 2013(モンテス・パープル・エンジェル2013)

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ボルドー原産のカルメネールはチリの気候風土と相性が良く、熟度の高いぶどうが収穫できます。カルメネールは冷涼なエリアと温暖なエリアとでは香り、味わいに違いが出ます。パープル・エンジェルはカルメネールを92%使いますが、海寄りの冷涼エリアと内陸の温暖なエリアのカルメネールを半分ずつ使用。残り8%はPVを使い、ワインに骨格を与えています。

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鰻の白焼き カカオの香る鰻だれ カシスのアクセント
デミカップのなかにはカカオとバジルのソースが入っていて、このソースを鰻にかけて

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ボトルには見事な細工の天使

タイタのブレンドの割合は
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タイタ CS2009
シニアは創業者のひとり、ダグラス・ムライさんと傑出したワインを造ろうと決意。ジュニアもワイナリーに入っていたので、3人でベストなワインを造るためのリサーチを行い、特別な場所を発見します。地質の起源はジュラ紀(2億万年以上前)に遡る沖積層の土壌で、構成は粘土と石灰岩。粒が小さく、アロマ豊かなぶどうができることがわかりました。チリのCSの特徴、テロワールの違い、味わいの違いを表現したワイン。
基本的にCS85%、残りの15%は秘密。その年によって醸造家が判断、シラーやメルロを使うとのこと。フレンチオーク18ケ月熟成、4年間の瓶詰期間を経てリリース。
〝タイタ〟とは、父親や祖父のことで、年長者の知識を持って息子、次世代を育てることを意味する言葉のようです。

スーパー・アイコン・ワイン
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モンテスの25周年を記念して誕生したタイタ
濃厚な赤紫色、ベリー系果実の凝縮感、ヴァニラ、ココア、黒鉛、甘草、木香、長い余韻

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黒毛和牛フィレ肉のソテー プルチーニモンテスソース
何と、このソースはマイとパープル・エンジェルを使った豪華版でした!

デザートは紫の天使
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メニューにはなかったサプライズ!
パープル・エンジェルに合わせて〝紫の天使〟をイメージ。天使は紫いも、羽根はホワイトチョコ、添えてある季節の果物のコンポートには3種の果実を使っていますが、柿にはパープル・エンジェル、梨にはモンテス・アルファSB、ぶどうはスパークリングワインで それぞれコンポートしてありました、贅沢!

次世代に夢をつないで
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モンテスの『Where Angels Trend The Story of Vina Montes』の序文は英国のヒュー・ジョンソンが書いています。アウレリオ・モンテス・シニアは冒頭のあいさつで、ジョンソンが「モンテスは無からスタートして、次第に品質をあげ、夢を実現させたワイナリーのひとつ」と表現したその部分を紹介、ドリーム・カム・トゥルー!

初来日したモンテス親子のワインへの情熱、次世代への継承、モンテスの自負を強く感じました。
最新アイテム、スーパー・アイコン・ワイン『タイタ』には愛を込めて、伝統をスムーズに継承していく意味がありますが、まさに、チリのモンテスの未来は〝タイタ〟そのものです。
製品についてのお問い合わせはエノテカ(株)ワインショップ事業部℡03-3280-6258
ワインの購入はエノテカ オンライン


2016年10月02日

豪州ルーウィン・エステートの歩みとアートシリーズ(CH&CS)オールドVTを利く

オーストラリアが誇る家族経営ワイナリー
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ルーウィン・エステート創設者デニス・ホーガンさん(CH2012)&共同最高経営責任者シモーヌ・ホーガン・ファーロンさん(CS2012 )。「お好きなボトルを持って」とお願いしたところ、ともに2012VTを選んでいました!

ヴィレッジ・セラーズの招聘で、先月、オーストラリア・西オーストラリア州マーガレット・リヴァーのルーウィン・エステート(以後ルーウィン)からホーガンさんと愛娘シモ-ヌさんが揃って来日。新丸ビルのソルト バイ ルークマンガンで、プレスランチョンを行いました。

1973年、デニス&トリシア・ホーガン夫妻によって設立されたルーウィン。彼らのリタイア後、長女シモーヌさんと長男ジャスティンさんが共同最高経営責任者に就任、今はシモーヌさんのお嬢さんも参画しています。

西オーストラリアの自然条件
西オーストラリアのマーガレット・リヴァーは州都パースから南に280km、風光明媚な場所でサーフィンのメッカとして良く知られています。穏やかな海洋性気候、冬から春にかけての降雨が多いので、ぶどうの生育期に降ることはきわめて稀。夏期の平均気温・最低気温はボルドーに近いのですが、気候は安定しているので、ぶどう栽培に適しています。地質は世界で最古のもののひとつ、カンブリア紀以前(5億4000万年以前)の花崗岩が風化した土壌でミネラル分が豊か。

ルーウィン・エステートについて
ルーウィンの初ヴィンテージ(VT)は1979年。1980年にアートシリーズのシャルドネ1982がワイン誌『デキャンター』で最高得点を獲得したことで世界的な注目を集め、ここからルーウィンの輝かしい歴史が始まります。

アートシリーズは同ワイナリーのトップレンジで、ワインを〝アート〟と捉え、毎年オーストラリアの気鋭のアーティストのオリジナル作品を購入してラベルに使用しています。

チーフワインメーカーは現在までに3人が担当。常時3名ほどのワインメーカーが勤務しています。初代はボブ・カートライトさんで20年間勤務、2代目はポール・アトウッドさん、2010年からは3代目のティム・ラヴェットさんが引き継いでいます。栽培担当も同様で重なる時期をおきながら継続する体制を取っています。ちなみに西オーストラリアのワイン生産量は豪州全体の3%、同プレミアムワインは20%、ルーウィンの生産量は全豪州の0.06%で輸出相手国は世界30ヶ国。

故ロバート・モンダヴィとの出会い

画像提供:ルーウィン・エステート
ワイン指導をするモンダヴィとホーガンさん、お若い!

ここ2ヶ月間に来日したワイン関係者のなかで、ロバート・モンダヴィ・ワイナリーの創始者故ロバート・モンダヴィとつながりある方々が多かったので、改めてモンダヴィの凄さを実感しました。
チリのエラスリス、チャドウィック当主はモンダヴィとのジョイント・ベンチャーで『セーニャ』を誕生させましたし、Yoshikiプロデュースの『Y by Yoshiki』のワインメーカーはモンダヴィの孫ロブ・モンダヴィJr.(父はマイケル・モンダヴィ)でした。今月来日が予定されているディナ・モンダヴィはロブの実妹で、現在マイケル・モンダヴィ・ファミリー・エステートで活躍しています。

ルーウィン・エステイトの場合は、1973年にホーガン・ファミリー所有の牧草地を買収するために来訪したモンダヴィから、ぶどう栽培に適した土地であることを聞き、それを機に自力で畑を開墾。モンダヴィは買収をあきらめ、ルーウィンのワイン指導を快諾。1974年にCH、CS、PNとシラーズの植樹を開始します。モンダヴィはCHに最適な畑の場所や〝量より質を重視したワイン造り〟を細かく指示し、若きホーガンさんに多大な影響を及ぼしました。チリや豪州に素晴らしい足跡を遺したカリフォルニアワインの先駆者モンダヴィ、先見の明のある偉大な方でした!

テイスティングはシャルドネとカベルネに特化
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アートシリーズから2品種シャルドネ&カベルネ・ソーヴィニヨンを選択。世界的にも高く評価されている2012年ヴィンテージ(9月に日本初リリース)と10数年以上を経たオールド・ヴィンテージ(VT)を試飲。

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(左から供出順)
ウエルカム・ドリンク
#1:シブリングス・ソーヴィニヨン・ブラン・セミヨン2015
ぶどう品種:SB68%、セミヨン32%
発酵はステンレスタンクと4年使用のフレンチオーク(40%)を併用。フレッシュ& フルーティ、ライム、レモン、GF、ガヴァや青リンゴ、青草のニュアンス、セミヨン由来のほど良い厚みと爽やかな酸とミネラル感、バランス良好。シブリングスは〝兄弟姉妹〟を意味し、2代目のシモーヌ&ジャスティンの気持ちを表現したワイン。
「シラーズを植えていた畑は白い砂質土壌だったので太陽の反射熱がシラーズに合わず、全て引き抜いてSBに植え替えました」とシモーヌさん。結果的に成功したようです!

シャルドネ
#3:アートシリーズ・シャルドネ2002
#2:同2012

カベルネ・ソーヴィニヨン
#4:アートシリーズ・カベルネ・ソーヴィニヨン2012
ぶどう品種:CS100%
#5:同2001
ぶどう品種:CS86.4%、マルベック9%、PV4.6%
#6:同1993
ぶどう品種:CS87.5%、マルベック7%、PV3%、ME2.5%
#4はSC、#5&#6はコルク(コルク仕様のものは1時間前にデキャンターを実施)

10年違いのシャルドネ比較
「力強さのなかにいかにエレガントさを表現するか」、「味わい深く、余韻の長いワインスタイル」が目標。樽に関しては25の樽メーカーを扱っていますが、コアは8つで、 毎年相談して樽を選択。クローンはぶどうの房が均一でないジンジンクローン(=メンドーサクローン)を使用、これは検疫が厳しい西オーストラリア州政府の推薦だった由

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アートシリーズのCHはパワーのある果実なので2012年は11ヶ月樽熟(100%新樽)。色調は輝きのあるイエロー、凝縮感があり、洋梨やネクタリン、ナッツ、スパイス(シナモン)、ミネラル、ふくよかで余韻も長い。エレガントでモダンなスタイル。
2002年は黄金色、第一香は控えめ、ドライフルーツやイチジク、ハチミツ、黄金飴、温度変化で熟した白桃、スパイス(白胡椒)、熟成した白カビチーズ、口中クリーミー、ねっとり感と長い余韻。フードフレンドリー!

2012年、2001年、1993年のカベルネの変遷
黒ぶどうの畑選びでは試行錯誤の繰り返しだったそうですが、2001年にレッドワインニュープロジェクトを立ち上げ、トライアルを実践。3VTの違いから良い結果が出ていると感じました。

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2012年は21ヶ月樽熟(40%新樽)。深みのある赤紫色、ブラックカラント、チェリー、甘草、丁子、黒鉛、ロースト風味、柔らかなタンニン、洗練されたスタイル、ポテンシャルあり!
2001年はプロジェクト直前のVT。9ヶ月樽熟。果実の要素(カシス、プラム、チェリー)もあり、後に続く心地良い酸味、木目細かなタンニン、バランスが良く、フランス的。今飲んでおいしいワイン!
1993年は2年間樽熟(30%新樽)、オレンジを含んだガーネット。若干ブレッド、ユーカリや青草、甘草、タバコ。タンニンはワインに溶け込みスムース。先の2つと比べると少し田舎風。

シモ-ヌさんのお気に入りは2006年VTなのですが、「記憶に残る冷涼年で、ぶどうはなかなか熟さす、今まで経験がなかった年でした。除葉を必死になって行いました。通常は4月後半の収穫ですが、2006年は5月8日。プロジェクトのひとつの形が出た年です」と語っていました。2006年VT、いつか、味見したいです!

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ひよこ豆の豆腐仕立て(茶碗蒸しのような食感)が熟成したCHの滑らかさと絶妙でした!

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メインの肉と合せて楽しめたのはCS2001
10年以上の熟成を経たフードフレンドリーな味わい!

おしゃれなデザートと合せて
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ショコラとCH2002のテクスチュア、ワインのなかのロースト風味がとても良い相性でした!

マーガレット・リヴァーの地に魅せられたホーガンさんは公認会計士からワイナリー当主となり、著名なジェイムズ・ハリデーさんから「オーストラリアが誇る最高の家族経営ワイナリー」と評価されるまでになりました。ホーガンさんの当初の目標〝最高のワイン造りを目指して〟を合言葉にして、2代目、3代目が頑張ると思います。ますますの躍進を期待しています。
オールドVTのストック等、商品についてのお問い合わせは
ヴレッジ・セラーズ

℡0766-72-8680

2016年09月23日

Look Back in Wonder ~1976年パリ・テイスティングと2004年ベルリン・テイスティングを振り返る~

世界のワイン界を驚愕させた出来事
ひとつは、当時無名に近かったカリフォルニア州ナパ・ヴァレーのワインがフランスの銘醸ワインを抑えて、白&赤ともに第1位になった「1976年のパリ・テイスティング」。もうひとつはベルリンを舞台に行われたブラインド・テイスティングで南米チリの赤ワインがボルドーの第1級格付けワインに圧勝した「2004年ベルリン・テイスティング」です!

当事者ふたりが語る歴史的テイスティング
アカデミー・デュ・ヴァン東京校が主催した『Look Back in Wonder』で、仕掛け人であるおふたりから当時の背景、エピソード等について伺うことができました。まさしく貴重な歴史の証人!

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スティーヴン・スパリュアさん&エデュアルド・チャドウィックさん

パリ・テイスティングの主宰スティーヴン・スパリュアさんは1972年にアカデミー・デュ・ヴァン(ADV)のパリ校創設、同東京校は1986年オープン。デキャンター誌のコンサルタント・エディター、デキャンター・ワールド・ワイン・アワードのチェアマンとして活躍中

ベルリン・テイスティングの主宰エデュアルド・チャドウィックさんはヴィーニャ・エラスリス社長、ヴィーニャ・チャドウィック創業者・社長、ヴィーニャ・セーニャ共同創立者として世界レベルのチリワインを伝道中


記念すべきヴィンテージも登場!
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スパリュアさんがイギリスで生産しているスパークリングも披露されました!

第1フライトはパリ・テイスティング、第2フライトはベルリン・テイスティング
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左から順に#1~ #12

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(左から順に)第1フライト 6本、第2フライト 6本

1976年の出来事に至るまでの裏話
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スパリュアさんはパリでワインショップ『カーヴ・ド・ラ・マドレーヌ』を経営しており、店にはフランスの銘醸ワインを数多く揃えていました。当時パリには英語で対応できるショップが他になかったので、来店するカリフォルニアのワイン生産者たちから、「自分たちのワインを評価して欲しい」と頼まれることが多かったとか。そのような経験を通して、彼はカリフォルニアで質の高いワインが造られていることを実感します。
1975年9月、ワインショップでのパートナー、アメリカ人のパトリシア・ギャラガーさんがバカンスでカリフォルニアに行き、その折、様々な生産者を訪問します。そこで、スパリュアさんはテーマを模索。パトリシアさんからの「来年(1976年)はアメリカ建国200周年なので、それをテーマにしては」との提案を受け、1976年4月夫妻でカリフォルニアに向い、最終的にCSとCH各6本のワインを選択します。

パリでのテイスター9名はすでに決まっていました。いずれも著名な方ばかりでしたが、カリフォルニアワインを飲んだことのある人はひとりくらいしかいなかったようです。テイスティング開催の2週間前に、公平にカリフォルアワインを試飲してもらうため、店にあるワインのなかからボルドーとブルゴーニュのトップクラスのワインを選択。テイスターには事前に「カリフォルニアワインを試飲していただきます」と話していたので、テイスティング当日に「今日はルールを変えて、ブラインドでフランスワインとカリフォルニアワインを試飲していただきます」と提案。全員から「問題なし」との返答があったので、5月24日午後、アメリカ建国200周年を記念して、白と赤10種類ずつのテイスティングが行われました。

この時、スパリュアさんはブラインドで無名なワインが上位に入れば、高い品質のワインが造れられていることが証明できると考えていました。しかしながら、結果は全く予想していなかった事態に! 白も赤もカルフォルニア産が1位を独占。ワイン界を仰天させます。ワインの世界を激変させたこの出来事は以後、長く語りつがれています。※末尾のデータ参照
今年はパリ・テイスティングから40周年の記念年になります。

過去20年の変革は過去200年の変化より目覚ましい
スパリュアさんは1986年にロンドンで行われたアンティノリ設立650周年イベント(スパリュアさんは650年と発言していましたが、アンティノリの創業は1385年なので600周年だと思います)で使われていた「過去20年間のワイン界の変革は、過去200年の変化より目覚ましい」というフレーズを引用して、1976年当時まだ無名だったカリフォルニアワインの変革に言及。そして今、注目すべき変化は英国のスパークリングワインであると述べました。

英国産vsカリフォルニアのスパークリング
#1:2013 Bride Valley, Blanc de Blancs
#2:2009 JCB by Jean-Charles Boisset, No. 9 Brut Sparkling

1990年代初め、英国産スパークリング『ナイティンバー』が話題になり、その後も素晴らしい泡ものが産出されるようになります。スパリュアさんは2007年にV&Sでジャン=シャルル・ボワセさんと出会い、それが縁でプロジェクトを立ち上げ、スパークリングワイン造りに着手。妻が南ドーセットに土地を購入、2009年に植樹、ボワセさんの協力のもと、ブラン・ド・ブラン(#1)を生産。 理想は「フレッシュで、白い花を彷彿とさせるアペリティフに合うスパークリングワイン」とのこと。
南ドーセットは冷涼気候でシャンパーニュ地方と同じ石灰質(チョーク)土壌。ここではボワセさんのNo9ブリュットスパークリング(#2)との利き比べ。カリフォルニアのラシアン・リヴァー・ヴァレー内のグリーン・ヴァレーAVAのCH100%、エレガントで温かい年を反映したふくよかな味わい。

パリ・テイスティングの優勝白ワイン『シャトー・モンテレーナ』
#3:2013 Chateau Montelena Napa Valley Chardonnay
#4:2009 Chateau Montelena Napa Valley Chardonnay

「パリ・テイスティングは20点満点の採点法でした。9名のうち、6名がモンテレーナ、3名がシャローンを1位に。4年後の1980年、ロンドンで同じ銘柄(ヴィンテージは若干若い)で行ったテイスティングではシャローンが1位、モンテレーナが3位になり、2つのワイナリーには一貫性があることが証明できました」とスパリュアさん。モンテレーナはMLFをしないワインなので、フランス人の味覚にあったスタイルだったようで、2013年(#3)は若々しくフレッシュ。2009年(#4)はきれいに開いたワインで、まだ果実感もあり、エレガント

優勝赤ワイン『スタッグス・リープ・ワイン・セラーズ』

#5:2013 Stag's Leap Wine Cellars S.L.V. Cabernet Sauvignon
#6:1998 Stag's Leap Wine Cellars S.L.V. Cabernet Sauvignon

「白ワインの結果でテイスターに動揺が見られ、赤ワインの審査では同じミスをしないようにしようとしていました。それにもかかわらず、スタッグス・リープ・ワイン・セラーズ(SLWC)が快勝。ムートン・ロートシルトと0.5点差とは言え、審査員は確実にフランスワインだと思っていたようです」とスパリュアさんは述懐。
今年の5月24日に行った40周年目の記念テイスティングでも結果は同じで、SLWCが1位だった由。「畑のぶどうをそのままワインにした印象。#5はピュアな果実味。アルコール度数が14.5%ありますが、それを感じさせないバランスの良さ。 #6 の1998年は18年経過し、カシス、胡椒、スパイスなど熟成のニュアンスを感じます」とコメント


なにごとも一番最初が大事
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チリはワイン造りの歴史はあっても、世界市場に向けての輸出は1990年からであり、日本は1995年頃で、わずか20数年しか経っていません。チャドウィックさんはチリワインのポテンシャルを理解してもらおうと試行錯誤しながら様々な挑戦をしますが成功に至らず、最終的に確固たる地位を得ているワインと比べることで存在価値を示そうと決断します。
パリ・テイスティングの仕掛人スパリュアさんを紹介してもらった彼はベルリン・テイスティングの構想を立ち上げ、テロワールを表現したワインを選択。「自分が造る5つのワインがトップ5のなかにひとつでも入れば上出来」ということで覚悟を決めテイスティングを開催。ところが1位、2位を独占する結果になり、彼自身も、スパリュアさんも、会場にいたすべての人が驚愕! この出来事も先のテイスティング同様、ワイン界の偉業として語りつがれています。※末尾のデータ参照

「ブラインドだったことに意義がある」と語っていたチャドウィックさんは、月面着陸のニール・アームストロング船長の話を例にして「なにごとも一番が肝心」と先人の重要性を力説。「チリワインがワールドクラスのワインと拮抗するまでになったことをわかってもらえました」と述べました。

ドン・マキシミアーノ・ファウンダーズ・リザーヴ
#7:2013 Viña Errazuriz, Don Maximiano Founder's Reserve Cabernet Sauvignon
#8:1984 Viña Errazuriz, Don Maximiano Founder's Reserve Cabernet Sauvignon

エラスリスの創始者ドン・マキシミアーノは1970年にはCS100%でワイン造りをしていました。チリは東にアンデス山脈、西に太平洋があり、冷たい海流の影響を受けています。ドン・マキシミアーノのぶどう畑は海から65㎞内陸のアコンカグア・ヴァレーに位置する85㌶のぶどう畑(チリ初の斜面に耕作した畑)で、CS等ボルドー品種を植樹、灌漑(ドリップイリゲーション)を行い、沖積土壌で粘土の多い場所にはカルメネール、砂利の多い場所にはCSを。もう少し海岸寄りの冷涼エリアではSBやPNを栽培しています。
#7の2013年(CS79%、マルベック10%、カルメネール6%、PV5%)は過去10年間で一番涼しかった年。冷涼年はエラスリスの求めるワインスタイルを反映。凝縮感がありエレガント、カシスやブラックベリー、酸味があり、切れがあってバランスの取れたワイン

スパリュアさんは「2013年は素晴らしいワインです。私は2004年から見ていますが品質の向上を感じます。ぶどう畑の特徴、テロワールを反映しています。ボルドーのトップシャトーもテロワールを重視、そこではぶどうを語るより、畑をいかに表現するかです。標高は400~500㍍、素晴らしいブレンド比率で、マルベックはワインにフレッシュな果実感を、カルメネールはスパイス感、PVは力強さ。このワインはパワフルでエレガント、調和が取れていて長熟が期待できます」とコメント

チャドウィックさんは「32年経過した1984年(#8)は2回目のヴィンテージで、当時15㌶しかなかった畑のぶどうの質の高さを感じて欲しいです。1960年代のボルドーと同じ造り、今より早いタイミングでの収穫でした。今より軽いスタイル、レザーのニュアンス、酸味、複雑味」と。

2005年からビオディナミ農法を導入したセーニャ
2015年セーニャ20周年のヴァ―ティカル・テイスティング・ディナーがありました。ここでは世界市場に向けての試行錯誤、故ロバート・モンダヴィさんとの対面からセーニャ誕生までの経緯、ベルリン・テイスティングでの快挙についてチャドウィックさんが多くを語っていますので、ご一読いただけると嬉しいです。 http://non-solo-vino.blog.so-net.ne.jp/2015-04-12

#9:2013 Seña
#10:2000 Seña
1995年に初めてセーニャが誕生。この時はヴィーニャ・エラスリスが所有する畑のぶどうから造りましたが、その後、海から内陸に40kmの場所に45㌶の畑を購入。岩が多い土壌で、CSやカルメネールが成熟する畑。2013年はサックリングが99点を付けています。ファミニンなワイン、エレガンスとフィネスを追及するエラスリスが、それを見事に証明したワイン。2000年は16年経過していますが、柔らかみがあり、スパイス、鉛筆、甘草のニュアンス

スパリュアさんは「2013年(#9)は冷涼年を完璧に表現したワイン。美しく、シームレス(継ぎ目がなく滑らか)。絶賛したいワイン、ワクワクするワイン。また2000年(#10)はスケールが大きなワインでリッチなスタイル。2013年と比べると2000年は温暖。フレッシュ感、果実感もあり」

ベルリン・テイスティングで活躍したヴィニエド・チャドウィック
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左が2014VT、右が2000VT

#11:2014 Viñedo Chadwick
#12:2000 Viñedo Chadwick
アコンカグア・ヴァレーから南に100km、マイポ・ヴァレーにあるプエンテ・アルトはチリの伝統的なぶどう栽培のエリアで、CSの銘醸地。1880年代からぶどう生産をしていた経緯があります。彼の父親はポロの名選手であり、競技場を所有。生涯をワインとポロにかけていました。1992年、父親がリタイアし、チャドウィックさんは会社に入社。ポロの競技場をぶどう畑にした変換した翌93年に父親が逝去。 
2014年(#11)はチリワインの歴史上の快挙100点評価。2014年は霜害を受けた年で50%の収穫減、夏は暑すぎず、ゆっくりと熟成させることができたので、カシス、ピュアな果実味 バランス良好。「2014年はまだ若さを感じるワイン。故ポール・ポンタリエさんが〝若い時に良いワインはいつまでたっても素晴らしい〟と表現していますが、このワインにはその形容がふさわしいです。偉大なワインは熟成で変化します。セーニャと比べると筋肉質、男性的、例えればラトゥール的。CS100%でこのようなエレガントさは素晴らしい」とスパリュアさん


2004年のベルリン・テイスティングで1位だった記念すべき2000年ヴィンテージ
「ブラインドでいつ飲んでもわかるワイン。残り数本となりましたが、皆さんと共有したかったので持参しました」とチャドウィックさん

12種類のそれぞれに意味あるワインをテイスティングしましたが、マイベストは2000年のヴィニエド・チャドウィック(#12)。スパリュアさんがセミナーのなかで何度か使っていた最適表現〝シームレス(継ぎ目のない)〟、滑らかな舌触り、ドライフラワー、スパイス等、複雑味のある熟成に耐えうるワイン。残り数本しかないという、2004年当時のヒーローワインを味わえたことは感無量!

ベルリン・テイスティング時の正直な気持ち
チャドウィックさんは当時を振り返って「本当にサプライズ」と表現。1回目はチリのテロワール、ポテンシャルが伝われば良いと思っていたそうです。特にフランスとイタリアのワインは2000年VTを選んでいて、シャトー・マルゴーにしてもシャトー・ラフィットにしても当時は100点をゲットしていたワインであり、それでチリのワインが1位になったのは運命だったと。

「1回目は何も失うものはなかったので、本当のチャレンジは2回目以降。1位で終わっていれば、素晴らしいストーリーで完結です。でも、2回目以降のチャレンジにはリスクがあり、正直言って怖かったのですが、ブラジルでも2位、3位を取り、日本でも1位のシャトー・ラトゥール以降、2位から5位まですべてチリワイン。ここには一貫性があり、それが真実を物語っていますし、今はそれが確信に変わっています」


この日いただいた本のあとがきは2016年6月付、何と日本語訳でビックリ! 
翻訳を担当したのは『パリスの審判』の訳者葉山考太郎さんだそうです。お疲れ様でした!

2006年に東京でベルリン・テイスティングの再現を行いましたが、当時の功労者はワインジャーナリスト、ヴィノテーク創始者の有坂芙美子さんでした。セミナーを仕切ったスパリュアさんとチャドウィックさんと有坂さんの3人が揃ったのは、東京で開催したベルリン・テイスティング10周年記念ディナー以来です。
一期一会の時間を共有させていただき、光栄でした!!!

参考データ
1976年5月24日開催パリ・テイスティングの結果
白ワインの部
1位:シャトー・モンテレーナ1973、2位:ムルソー・シャルム ギー・ルロー1973、3位:シャローン1974、4位:スプリング・マウンテン1973、5位:ボーヌ・クロ・デ・ムーシュ ジョセフ・ドルーアン1973、6位:フリーマーク・アベイ1972、7位:バタール・モンラッシェ ラモネ・プルドン1973、8位:ピュリニー・モンラッシェ ルフレーヴ1972、9位:ヴィーダー・クレスト1972、10位:デイヴィッド・ブルース1973
赤ワインの部
1位:スタッグス・リープ・ワイン・セラーズ1973、2位:シャトー・ムートン・ロートシルト1970
3位:シャトー・モンローズ1970、4位:シャトー・オー・ブリオン1971、5位:リッジ・モンテ・ベロ1971、6位:シャトー・レオヴィル・ラス・カーズ1971、7位:マヤカマス1971、8位:クロ・デュ・ヴァル1972、9位:ハイツ・マーサズ・ヴィンヤード1970、10位:フリーマーク・アベイ1969

2004年1月23日開催ベルリン・テイスティングの結果
主催:スティーヴン・スパリュア、ルネ・ガブリエル、エデュアルド・チャドウィック
1位:ヴィニエド・チャドウィック2000、2位:セーニャ2001、3位:シャトー・ラフィット・ロートシルト2000、4位:シャトー・マルゴー2001、同点4位:セーニャ2000、6位:ヴィニエド・チャドウィック2001、同点6位:シャトー・マルゴー2000、同点6位:シャトー・ラトゥール2000、9位:ドン・マキシミアーノ・ファウンダーズ・リザーヴ2001、10位:シャトー・ラトゥール2001、同点10位:ソライア2000

2016年06月14日

満を持して日本市場にデビューしたシャンパン 『シャトー・ド・アヴィズ』

まずはプロローグから

今年1月末(4月からのNHK文化センター青山校講座開始前のウォーミングアップ編)に〝ウチ飲みスパークリング・レッスン〟を行いました。カリテプリ、新参アイテム、私が惚れ込んでいるブランド等、世界各国から7アイテムを選んで比較試飲しました。

最終フライトとしてお出ししたのが、オーストラリアのアラス グランド・ヴィンテージ2005(青木一押しの豪州産スパークリング)、フォリアージュ キュヴェ エクストラ ブリュットNV(昨年11月日本市場に初登場したシャンパン)、キャメル・ヴァレー ピノ・ノワール ブリュット2009(マイブームは英国産スパークリング、そのなかでもお気に入りの造り手)の3アイテムでした。

いずれも酒質がきれい! 講座生の多くはアラスもキャメルもシャンパンと思っていたようです。シャンパン『フォリアージュ』は熟成感と主張し過ぎない酸が印象的でした。今回、輸入元アズマコーポレーションの招聘で初来日した醸造責任者のリデリック・ルスールさんのセミナーに参加して、シャトー・ド・アヴィズのシャンパンスタイルがよくわかりました。
以下、そのセミナーのリポートです。

『フォリアージュ』の指南役はビオディナミ農法の大家
シャトー・ド・アヴィズ

は2010年にシャンパーニュ地方コート・デ・ブラン地区のアヴィズ村に設立されたメゾン(NM)です。ぶどう栽培、ワイン醸造まですべての監修を行っているのはエルヴェ・ジェスタンさんで、彼は1982年から2006年まで女性オーナー、キャロル・デュヴァル=ルロワが率いる『デュヴァル=ルロワ』の醸造責任者として活躍していました。なによりビオディナミ農法&シャンパン造りに精通した人物で、1つ前のブログで紹介したビオディナミの先駆者的存在の『フルーリー』とも交流があります。


この画像はデュヴァル=ルロワの『オーセンティス・キュミエール2003』
エルヴェさんが理想とするシャンパンのひとつで、デュヴァル=ルロワに在籍していた時に造った傑作。奥行きがあり、混じりけのないピュアなシャンパン。私も大好きです!

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ラベルにあるアグリキュルチュール・ビオロジック(Agriculture Biologique:AB)はフランスを中心にしたEU諸国(オーストリア、スウェーデン等)、スイスの他、イスラエル、オーストラリア、アルゼンチン等に支部を持つ認証機関のロゴ


~ 無農薬有機栽培の葡萄畑によって、より簡単に優れたワインを造り上げるという哲学から、すべてが始まるのです。フォリアージュはそのもっとも優れた証明です。 エルヴェ・ジェスタン ~


自然を最大限に生かしたシャンパン造り

広報担当ペギーさん()とリデリック・ルスール醸造責任者(
 
リデリックさんはアヴィズの醸造学校を卒業後、ボーヌでピエール・マッソンさんを知り、ビオディナミに開眼。その後各地のワイナリーで研鑚を積み、アヴィズの醸造学校に講師として戻り、2010年から2011年の間にエルヴェさんとの出逢いがあり、彼の信頼を得て、シャトー・ド・アヴィズ プロジェクトに参入

栽培と醸造に関して
■発酵はタンクと樽(225L/ソーテルヌのシャトーから3年使用した樽を購入、入手して6~8年使用。「内部がコーティングされているので酸化の速度がゆるやか」とリデリックさん) 
■MLFは樽内で行うが、あくまで自然の成り行きに任せて 
■2次発酵は14~15度で実施。その後、12~13度のカーブでゆっくり熟成
■門出のリキュールに使う糖分はサトウキビを精製した蔗糖
■総生産量は約25,000本

シャトー・ド・アヴィズのこだわり
■自社ぶどうはシャルドネ。買付ぶどうはオーガ二ック栽培をしている生産者のものを使用
■ヴァン・ド・レゼルヴは一切使わない。理由はその年の個性を明確に表現したいから
■ヴィンテージ・シャンパンは本当に良い年だけしか造らない

今夏入荷予定のアイテムを加えた3種をテイスティング
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#1:()フォリアージュ グラン・クリュ ブラン・ド・ブラン エクストラ・ブリュット2011  
希望小売価格9,240円(税抜) (2016年8月頃入荷予定
ぶどう品種はシャルドネ100% (メゾンの前に広がる2.5㌶のアヴィズGCの自社畑のぶどう/ビオディナミ)。ドザージュは4.5g/L、気泡はワインに溶け込み、泡の刺激はソフト、新鮮さとぶどうの熟度に由来する厚み、エレガントな酸味、バランス良い

#2:()フォリアージュ キュヴェ・エクストラ・ブリュットNV 希望小売価格8,900円(税抜)
ベースワインは2009年ヴィンテージ。シャルドネ40%、ピノ・ノワール30%(コート・デ・セザンヌ)、ピノ・ムニエ30%(ヴァレ・ド・ラ・マルヌ)、ドザージュは5g/L

シャトー・ド・アヴィズの最大の特徴はヴァン・ド・レゼルヴ(リザーヴワイン)を使わないこと。多くのメゾンではNVを造る場合、毎年同じ味わいにするため、数多くの原酒をブレンドし、ヴァン・ド・レゼルブを使用することで、均一さを表現しています。でも、シャトー・ド・アヴィズでは、その年の個性を明確に表現したいということで、前述のコンセプトを厳守。ドザージュ量もわずか5g/Lということなので、まさに直球勝負のシャンパンです。今回が3回目の試飲でしたが3アイテムのなかで、個人的にはこのNVが好きです。

#3:(中央)フォリアージュ キュヴェ・ミレジメ2004  希望小売価格16,800円(税抜)
ぶどう品種はシャルドネ60%、ピノ・ノワール30%、ピノ・ムニエ10%、ドザージュは約8g/Lですが、その量については輸出する相手国やその時のボトル内の状態によって若干変えているとのこと。熟成期間は120カ月、デゴルジュマンは2014年初旬

#1や#2と同じく、フレッシュさと複雑味を兼ね備えたシャンパンでアフターに蜂蜜のニュアンス。興味深かった点は、「デゴルジュマンを終えたシャンパンは熟成はしないで酸化していく」とリデリックさん。市場にリリースされたシャンパンはできるだけ早めに飲むことを薦めていました。

Q:2010年に立ち上げたメゾンなのに、なぜ2004年ヴィンテージ?
A:エルヴェ・ジェスタンさん自らアッサンブラ―ジュ(ブレンド)したシャンパンで、彼がかかわるオーガニック栽培のぶどうを使い、シャトー・ド・アヴィズの名でリリースしたもの。エルヴェさんは多くのメゾンのコンサルタントとして活動しており、これは2004年当時、他のメゾンで仕込み、そこで熟成させていた樽をシャトー・ド・アヴィズに持ち込み、完成させたシャンパン

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セミナーが終わり、一安心のリデリックさんとペギーさん


セミナーでは木村硝子店がグラス協力をしていました。
木村硝子店のグラスで#3のシャンパンを試したリデリックさんは「グラスの形状の繊細さが印象的で、このグラスで飲むと2004年にもかかわらず、新鮮さが感じられ、ワインらしい味わいが出てくる」とコメントしていました。

クープ型のニューバージョン〝ピーボオーソドックス 64983-230〟は、顔がそのまま入りそうな広い口径109mm、長くて細いステムで高さは150mm、容量は240cc。ボウルの底辺部を平らにしているのは、少量で液面が均一になり、その液面から漂ってくる香りを素直に楽しんで欲しいという意図からです。
一昨日、ワインのこころ Non Solo Vino版

で紹介させていただきましたので、ご笑覧いただければ嬉しいです。

シャトー・ド・アヴィズについての問い合わせはアズマコーポレーション ℡03-5275-3333

2016年05月17日

ニコライホーフのクリスティーネ・サース夫人を囲んでのメーカーズ・ディナー@南青山ポルトゥス

2000年の歴史を有すオーストリアの名門ニコライホーフ


世界遺産の地ヴァッハウにあるニコライホーフ

、ウィーンから西に70㎞の場所に位置しています。
長い歴史のなかで修道院だった時代もあり、ウィーンのシュテファン寺院の古文書にニコライホーフ修道院のことが最初に記載されている由、当時から影響力があったことがわかります。



ニコライホーフは当主ニコラウスさんの曽祖父が124年前に買い取り、現在に至っています。
中庭のチャペルの前はアスタリスク(〝聖なる場所〟の意)のマークがあるスピリチュアルなエリア。ラベルにもこのロゴを載せています。

生命力のあるワイン


南青山のポルトゥス

に20名ほどのニコライホーフファンが集い、サース夫人を囲んでスペシャルな時間を過ごしました。ニコライホーフのワインを熟知しているミシュラン星付きフレンチ出身の富樫陸也シェフと、オーストリアワイン大使の称号を持つ岩井穂純ソムリエの見事な料理展開にサースさんからも感激のお言葉が!


笑顔が良く似合うサースさん、ピンクのドレス姿も素敵でした!




ニコライホーフのワインは軽いけれどもパワーがあります。ディナーの最中、サースさんが多用していた言葉が〝生命力〟でした。これは〝種〟、土に戻って新しい命を育む種にすべてが凝縮され、それが生命力になっています。

「土壌にはストレスをかけず、除草剤や殺虫剤を加えないことが大事です」とサースさん。続けて「人工的なものを加えると、土壌にストレスを与えてしまうので、健全なぶどうは育たなくなります。それは子育てに例えることができます。子だくさんの母親がストレスを受けていると、ひとりずつの子供に十分な愛情を注げなくなるのと同じで、土壌が健康でないとぶどうも健全に育ちません」


ニコライホーフの中庭を感じさせる一皿


季節の野菜(ツルナ、キャベツ、イタリアの菜の花、からし菜)にレモンの皮を添えて。パスティスを加えたキャベツのピュレ × #1グリューナー・フェルトリーナー2013(以後GV)
ラベルの色とピュレの色が見事にマッチ!

GVは全オーストリアで36~37%の栽培面積を誇る代表的な品種。ぶどう畑、土壌、生産者の心意気で、エントリーレベルから高級レンジまでのワインが造れます。


ラベルのオレンジに料理がフィット。ハーブでマリネした静岡県産の富士レインボートラウト(功刀芳康さんが育てた鱒)、新玉ねぎのピュレ、ホワイトスター、炭の香りをつけたホワイトパウダー(つけると燻したニュアンスになる)を添えて × #2イム・ヴァイン・ゲビルゲ グリューナー・フェルトリーナー(GV)フェーダーシュピール2013

中央ヨーロッパで最も日照度が高いイム・ヴァイン・ゲビルゲ(〝ワインの丘〟の意)はオーストリアの守護聖人セヴァリンゆかりの地で、古文書にも最古のぶどう畑との記述があります。白コショウ、ミネラル、切れの良い酸が魅力の私のお気入りワイン!


手前の濃ブルー色のラベルがエリザベート2012
ウィーンの伝統的製法ゲミシュター・サッツ(畑に混植しているぶどうを一度に収穫して混醸するワイン)で、使用しているぶどう品種はGV、リースリング、ヴァイス・ブルグンダー、ノイブルガー、シャルドネ。各ぶどうの個性が合わさってひとつのハーモニーを表現。料理によってワインを構成している各品種の特徴が出るので、その時々で印象も異なり、面白さが広がります。

ニコライホーフの収穫は数回に分けて実施。ぶどうの熟度を見ながら手摘みで行います。
#1GV2013はニコライホーフの複数の畑から一番最初に穫れたぶどうで、樹齢は若樹から古樹まで様々。#2は2回目の収穫となるフェーダーシュピールで単一畑のぶどう、樹齢は50~60年(樹の植え替えは古樹を少しずつ)。3回目がスマラクト、4回目以降がアウスレーゼクラス


ニコライホーフのワインを使って蒸しあげたラングスティーヌ(手長エビ)、トマトのジュース、無菌のホワイトマッシュルームをスライスして × #3エリザベート2012


メインは低温でじっくりローストしたうさぎ、焼いた時の骨をダシに使い、アンズも一緒に煮詰めたソース。野菜はビーツ、辛み大根 × 2種のリースリング


(左から)
#4フォンシュタインリースリング フェーダーシュピール2006
ドナウ川の南側に位置するヴァッハウ産。9年間寝かせて瓶詰したにもかかわらずフレッシュさがあり、同時に力強さも併せもつ余韻の長いワイン。生命力を感じるワイン。
#5シュターナー・フント リースリングレゼルヴ2010
ドナウ川の北側にあるクレムスタール産。ミネラル、エレガント、クラシックなスタイル。ロバート・パーカーはシュターナー・フントを「世界最高のリースリング」と評価。毎回95~97点を得ています。

木樽で17年寝かせたヴィノテーク1995

ヴィノテーク・リースリング1995は一期一会のワイン



2004年6月、7500Lの大樽による長熟ワインに挑戦。完成したのがヴィノテーク・リースリング1990でした。ローマ時代からのセラーで14年間熟成させた後デビューさせ、ウィーンのワイン見本市でお披露目。その後、世界のワイン市場に向けて発売し、あっという間に1万本が完売。ヴィノテークシリーズとしては、グリュナー・フェルトリーナー1991、グリュナー・フェルトリーナー1993、そして、このリースリング1995年がデビューしました。

サースさんは2013年の来日時、「ワインは子育てと同じです。1990年ヴィンテージをリリースした段階で、私たちは素晴らしいワインができたと確信しました。ヴィノテークは毎年リリースしていませんが、7500L、5000L、3500L等の木樽で熟成させています」とおっしゃっていました。

#6ヴィノテーク・リースリング1995は、17年間木樽で熟成させていますが、信じられないくらいの若さを備えています。グラス内の温度変化で複雑味が増してきました。「ロバート・パーカーは今まで辛口リースリングに100点を付けたことはなかったのですが、これはPP100です」とサースさん。ワインは完売しているので、まさに一期一会のワインになりました。余談ですが、100点をゲットした後、オーストリアのネットで販売されたヴィノテークは350~1万€になったとか。


サースさんのピンク色のドレスにぴったりの、きれいなさくらをイメージしたデザート!


ビオディナミの調剤


サースさんは結婚した1971年に、夫の友人の医者からルドルフ・シュタイナーの人智学の本を譲り受け、その教えに心酔。ぶどう栽培やワイン醸造に導入していきます。当時はまだ、ビオディナミという言葉すらなかった時代で、周囲からは変人にみられることもあったとのこと。そのような経緯から言って、世界に先駆けてビオディナミを導入したワイナリーと言えます。この日はビオディナミ農法に欠かせない調剤をオーストリアから持参して披露してくれました。

(左から)
501は石英、珪石、長石、正長石の練り物状で、粉末にして水を加えたものを雌牛の角に入れて夏中、地中に埋めて晩秋に取り出す。茎や葉の成長を刺激し、葉緑素の同化作用を促進
502は鹿の膀胱に包まれたノコギリ草で、カリウム作用を適正化し、硫黄分を供給
503は牛の腸に詰めたカミツレ(カモミール)で、カルシウムの作用を適正化し、有害な結実を除去、石灰分を供給
504は乾燥させたイラクサで、樹液を循環させ、土壌に鉄分と窒素を与える
505はヨーロッパ・ミズナラ(オーク)で、樹皮を砕いたものを家畜の頭蓋骨に詰めて、ひと冬埋めておく。その効果は植物の力を強め、病気への抵抗力をつける
506は西洋タンポポで、頭花を乾燥させて圧縮し、牛の腸間膜に包み、ひと冬埋めておく。宇宙から放射される珪酸を取り込み、カリウムとの適正な相互関係を作る

調剤はほかにもまだありますが、この日は6種の色や香りを体験。存在感を主張する調剤は503と502がキングとクイーンでした。特に503は強烈で、匂い(土っぽさ、発酵臭)の効能も。自然界にあるものだけを使った調剤です。


上から見た調剤の色や形もご覧ください。

サースさんと一緒に満月の夜のワイン・メーカーズ・ディナーを楽しませていただきました。輸入元ファインズ様には大変お世話になりました。ありがとうございました!!


聖なる収穫祭のお祝い


ニコライホーフの家族と親しい仲間だけで祝う新酒の洗礼式にお声がけいただき、昨年11月にお邪魔してきました。サーフ夫人が進行役を務め、家族を紹介。ニコライホーフの建物は文化財指定になっているので、改装ができなかったそうですが、国からの許可が下りたので、「プライベートルームも増築できた」との思わずにっこりの報告もありました。



儀式はローソクだけを灯したセラー内で行われました。
司教さんは、「毎日ミサで説教をしていますが、新しいワインのために話をするのは年に1度、この日だけです」とあいさつ。キリストのパンとワインの話をしてくださいました。



2015年のヴィンテージは長男ニコラウスさんが醸造責任者になって10回目の新酒でした。
「冬は雨が少なかったのですが、春になって3日間豪雨が続いたので、水分も潤い、9月19日から開始した収穫も順調に進みました。質も量も理想的なので、2016年4月の瓶詰が楽しみです」と解説、その後、全員が新酒で乾杯しました。


収穫祭を祝うディナーでは

イチョウに名前が! 翌日、このイチョウはニコライホーフのお庭に戻されて土に戻る準備



サースさんの実妹2名 (最右)はガイヤホーフのイルゼさん、そのお隣はトラウディさん。ちなみにトラウディさんは愛媛伊予生まれの自然派農法の先駆者故福岡正行さんに傾倒。サースさんが来日していた今時期に、四国88ヶ所巡礼を遂行しました。

ニコライホーフのゲストハウス


サース家の4人の子供たちは親の教えと人智学に多大なる影響を受けています。長女エリザべートさんはワイン名にもなっていますが、ゲストハウスのオーナーで、ホテルも自然との融合を大事にしています。次女クリスティーネさんはお医者様。長男ニコラウスさんは2005年から醸造責任者として活躍。次男マーティンさんはデメターの化粧品に関わっています。

ニコライホーフの化粧品


サースさんがお土産にくださった化粧品の主たる原料はグレープシードオイルです。
「種は命の根源。種から花が咲き、実をつけて、また、土に戻り、新しい種となって、再生する」とおっしゃっていました。多忙な現代社会ではストレスからくる肌へのダメージや大気汚染からの影響もあります。心の窓ともいえる“皮膚”には水分補給や保湿を与えてあげることがとても大事。私は女性の年が出ると言われる首回りのケアに使っています(笑)

サースさんが語っていた、今、一番の宝物!
それは次世代、ニコラウスさんに引き継いだ健康な〝ぶどう畑〟とそこから生まれる〝ワイン〟だそうです。サースご夫妻にとって4人の子供たち、7人の孫も、素晴らしい宝物、財産ですよね。

いつも私をやさしく迎えてくださるサース家の皆様、本当にありがとうございました!

2016年03月22日

ヴィーニャ・エラスリスのエドゥアルド・チャドウィック当主が語るチリのファイン・ワイン

パッションが卓越した偉大なワインを造る
チリの名門ヴィーニャ・エラスリスから当主のエドゥアルド・チャドウィックさんが来日しました。
当日はワイン王国主催による〝チャドウィックさんとセーニャ4ヴィンテージを楽しむランチ〟@帝国ホテル『レ・セゾン』にお招きいただき、午後からはアカデミー・デュ・ヴァンで『アイコニック・テロワール・フロム・チリ』と題するセミナーも行われたので、まさにチャドウィック・デーでした!


『ヴィーニャ・エラスリス』のエドゥアルド・チャドウィック当主と『帝国ホテル レ・セゾン』のティエリー・ヴォワザン エグゼクティブシェフ、ダンディなおふたり!


チャドウィックさんが全幅の信頼を寄せる有坂芙美子さん@アカデミー・デュ・ヴァンADV青山校

この日は6時間以上、ご一緒させていただき、チャドウィックさんのワインに対するパッションをガンガン感じました。セミナーではヴィーニャ・エラスリスが手掛けるファイン・ワイン全体の解説がありましたので、まずはセミナーリポートから始めます。


アイコニック・テロワール・フロム・チリ
エラスリス家の沿革

チリのアコンカグア・ヴァレーにあるヴィーニャ・エラスリス



1870年、ドン・マキシミアーノ・エラスリスによって設立されたヴィーニャ・エラスリス
当時チリからボルドーにわたり、カベルネ・ソーヴィニヨンや他品種を持ち帰り植樹。ボルドー品種の産地として知られるようになります。創始者には先見の明があり、サンチャゴで銅産業を興し、ガス灯設置の事業にもかかわっていました。エラスリス家は4人の大統領と2人の大司教を輩出している家系で、チリの発展に重要な役割を果たしています。

現当主チャドウィックさんが初めて渡航したのはフランス。醸造学を学ぶためにボルドーに向かいました。ボルドー大学のエミール・ペイノー教授はリタイアしたところで、「ペイノーさんに会いにアルカションまで行きました」とチャドウィックさん。フランスではトップクラスのワインを試飲し、偉大な生産者を訪問し、世界のトップにはどのようなワインが君臨しているかを学習。彼が目標、お手本とするのはボルドーワインです。その後、チリに戻り、チリでなにができるか、世界を視野においたチャドウィックさんの挑戦が始まります!

セーニャの沿革とエラスリスの功績
昨年、東京・八芳園で、チリのアイコンワイン『セーニャ』のブランド立ち上げから20周年を記念したヴァ―ティカル・テイスティング・ディナーが開かれました。故ロバート・モンダヴィさんとのジョイント・べンチャーによって誕生したセーニャ、その沿革、チリワインの実力を世界に知らしめたチャドウィック当主の華麗な奮闘についてはコチラ

をご覧いただけましたら幸いです。

2004年からセーニャがチャドウィック家単独所有になったのを機に、現在はボルドーのネゴシアン経由での販売に変わっています。

セミナーでの供出ワイン

(左から)
#1:ドン・マキシミアーノ・ファウンダーズ・リザーヴ1989
カベルネ・ソーヴィニヨン100%、Alc12%
ワインの近代化以前のボルドースタイルを踏襲したワイン、27年の経過を感じさせない果実味、ぶどうの糖度、酵母は近年のエラスリスとは異なる印象
#2:同2013
カベルネ・ソーヴィニヨン79%、マルベック10%、カルメネール6%、プティ・ヴェルド5%、Alc14%、フレンチオーク22か月、新樽率65%。
力強い凝縮感と繊細な味わいが共存、チャドウィックさんは「例えるとポイヤック、パワーとシルキー」と
#3:ラ・クンブレ2013
シラー100%、Alc14%、フレンチオーク22か月、新樽率50%
北部ローヌスタイル、温暖な産地(ミンティなフレーバー)と冷涼な産地(オリーヴのフレーバー)のブレンドで複雑味が備わる、エレガント・シラー
#4:カイ2013
カルメネール90%、プティ・ヴェルド7%、シラー3%、フレンチオーク22か月、新樽率60%
カルメネールの特徴を最大限表現したワイン、バルサミコ、スパイス、ペッパー、コーヒー、緻密でなめらか
#5:セーニャ1996
カベルネ・ソーヴィニヨン91%、カルメネール9%、Alc12.7%
冷涼年のワイン、初ヴィンテージが95年で、この時代にはまだ2品種しか植樹されていなかったとのこと。「ピノ・ノワールを連想させるようなエレガントさ」とチャドウィックさん
#6:同2013
カベルネ・ソーヴィニヨン58%、カルメネール15%、マルベック12%、メルロー10%、プティ・ヴェルド5%、Alc14%、フレンチオーク22か月、新樽率75%
世界の評論家たちから高評価を受けているワイン、果実の凝縮感、甘草、アーシーさ、複雑味

#7:ヴィニエド・チャドウィック2013
カベルネ・ソーヴィニヨン100%、Alc14%、フレンチオーク22か月、新樽率90%
ヴィニエド・チャドウィックはマイポ川流域マイポ・アルトにあるワイナリーで、父親が所有していたポロの競技場を1993年にぶどう畑にしたもの。チャドウィックさんの父親は2つのパッションを持っていました。ひとつはポロ(ナショナルチームのキャプテンでした)、もうひとつはワイン造り。その昔は海底だったところで、氷河期に形成された土壌。砂利や小石が多く、世界屈指のカベルネの産地になっています。他界した父親に敬意を表し、父親の名を冠したワイン、1999年が初ヴィンテージ。特徴的なバラの香り、きめ細かなタンニン、時間の経過で複雑味、ボルドー的、フィネス&エレガンス

2013の価値ある利き比べ

ここ10年間で一番冷涼だった2013、構成するぶどう品種、土壌等の違いを感じる興味深い試飲になりました。#4のカイは酸がソフトで飲む人を包み込む印象 #7のヴィニエド・チャドウィックはマイポのカベルネ・ソーヴィニヨンの奥深さ、力強さがあり圧巻。ボルドーワインのイメージです! #6のセーニャはまだ赤ちゃん状態ですが、ポテンシャルがあり、チリワインが長熟することを示す最良の見本になると確信しています。


世界から高い評価を受けているカルメネールの逸品カイ


記念画像の撮影時、「一番のお気入りを」とお願いして、手になさったのは、やはりKAI!
カイは彼にとってのテディ・ベアだそうで、「いつでも抱いていたい」と(笑)

当日のベストワインはKAI2013
最後に、挙手による「2アイテムのお気に入り」調査をしました。
私のベスト1は#4 のカイ2013、ベスト2は#7のヴィニエド・チャドウィック\(^O^)/

皆さまの反応は・・・No.1がカイ2013(14票)、No.2はヴィニエド・チャドウィック2013(13票)で、No.3 はセーニャ1996、No.4はセーニャ2013、No.5はラ・クンブレ2013、No.6はドン・マキシミアーノ1989、そしてNo.7がドン・マキシミアーノ2013という結果になりました。

質疑応答から
Q:アルコール度数に対する考え方
1970年代のフランス・メドックの1級シャトーではアルコール度数が12%くらいでしたが、今では14%を超えることもあります。世界的にワイン造りのトレンドが〝ぶどうの熟度の追及〟に向かっています。我々もぶどうの純粋な果実味やフレッシュさ、エレガントなスタイルを求めているので、今以上のアルコール度数や完熟度に向かうことはないですが、青臭い味わいにはしたくないので、しっかり熟したぶどうを求めています。昔のようなアルコール度数に戻ることないと思います。

Q:ビオディナミを導入して変わったこと
ビオディナミに切り替えてから10年経過しましたが、バランスの取れた生態系を作り出すので、根は地中深く伸び、ぶどう樹は健康に育ち、質の良いぶどうが収穫できます。それにより、素晴らしい結果が得られ、エネルギーを感じるワインが生まれています。醸造面ではワイルドイーストを使用(ワイナリーのスタート当初は培養酵母を使用)、フィネスを大事にしているので、新樽率を減らし、果実のピュアな味わいを表現するようにしています。ワイルドイーストの働きでワインがより複雑になってきていることを実感しています。



セーニャ4ヴィンテージを楽しむランチ@レ・セゾン

落ち着いた雰囲気のレ・セゾン

FullSizeRender  セーニャ2013.jpg
More Great, Fresh wines from Chile
と題する記事でセーニャ2013を称賛したサックリング

ワイン王国の村田惠子編集長は冒頭のあいさつで、セーニャはチリのウルトラ・プレミアムワインであり、ワイン評論家ジェームス・サックリングによる評価が2012年ヴィンテージはチリワイン史上初の98点、2013年は99点だったこと。加えてチャドウィック当主が2005年に英国のデキャンター誌から、ワイン業界で影響力のある50名のなかのひとりに選ばれていることについて触れました。

レ・セゾンの料理とのマリア―ジュ

白ワインはアルボレダ・シャルドネ2014、赤ワインはセーニャ2008、2009、2011&2013


チャドウィック:カルメネールは熟すのに時間がかかる品種です。しっかり熟させないとピーマンのような青臭さが出てしまうので、それを避ける意味で、収穫は5月(北半球の11月)頃の遅摘み、場所、気候、土壌(粘土)を選ぶ品種と言えます。海から40㌔離れた涼しい区画、傾斜のある日照量の多い畑に植えています。収量は少なくなりますが、その分、凝縮度が高いぶどうが収穫できます。ファイン・ワイン造りは簡単にはできません。ボルドーで、カルメネールが根付かなかったのは、収穫期の雨の影響で、しっかり熟させることが難しかったのでは。チリの場合は、収穫中には降雨はないので、完璧に熟させることができます。

冷涼品種に適した注目の産地アコンカグア・コスタ

アルボレダ・シャルドネ2014は太平洋沿岸部に位置する平地の産地アコンカグア・コスタのワイン。土壌はシスト(片岩)で、冷涼品種(CH、SB、PN)に適したエリアです。アルボレダは〝森の茂みや木立〟を意味し、その名の通り、緑豊かな環境で、自然に配慮した栽培を実践しています。2014年は2013年に続く冷涼年。海に近い畑なので、フレッシュな酸と豊かなミネラル、芳香があり、透明度が高く、ピュアな印象

ファイン・ワインの名銘醸地カサブランカ・ヴァレーとアコンカグア・コスタの違いは・・・
土壌の構成。前者は1990年代の初めから冷涼品種が栽培されていました。海岸から20~40㌔内陸にあり、標高もアコンカグア・コスタより高く、土壌も砂質ローム、上部は粘土ローム層なので、熟れた果実、トロピカルな風味が特徴。後者はシストや火山性土壌なので、ミネラル感や酸味のキレ、強さが特徴

チリのファイン・ワインのアンバサダーとして

チャドウィック:チリワインは1990年代中頃から日本市場に流通していますが、今では高い評価を得ています。昨年ワイン輸出量が第1位になったことは記念べきことで、日本の皆さんに感謝したいと思います。同時にチリのファインワインを知っていただきたいと思っています。ワインは5000年も前から造られていますが、現在では100年くらい前から、ブランドとか産地というものが広まり、チリに関して言えば、次の世代に向けて、品質の高いファインワインを広めていく必要があると思っています。ボルドーではAOC制度や1855年の格付がアンバサダー的な役割を果たしてきました。私自身、日本を含む世界に対してチリのファインワインのアンバサダーとして邁進していきます。ワインを造る人のパッションが卓越した偉大なワインを生み出すのです。


アミューズは日本酒の升を使って!
この升(なかのゴマは飾り)をティエリーさんはNYで使い、大好評を博したそうです。
ババロア(左)と竹串に刺した帆立貝(まわりを帆立の水分やミルクでコーティング)


赤座海老のカルパッチョとキャビア、海藻と柔らかいジュレと


フォアグラのロワイヤルにバターナッツカボチャのヴルテ クルスティヤントにしたカカオとトンカ豆 × アルボレダのシャルドネ2014


鮑のシヴェ仕立て(ソースは鮑の肝、ゴマと合せたフォアグラ) 雲丹を添えて × セーニャ2008&2009

■2008年は冷涼年、エルニーニョの発生で海面が上がり、大量の雲が発生したことで、曇りがちの天気に。色調は濃く、ダーク・チェリーやオリーブの香り、フレッシュな酸味、果実味とタンニンのバランスも良く、8年経過していますが長熟に耐えるポテンシャルあり、クラシックなヴィンテージ

■2009年は温暖な気候でアルコール度数は14.5%ですが、ワインはエレガントでシルキー。ブラック・チェリーや熟れた果実のニュアンス。「アメリカでは温暖な気候2005、2007、2009のようなヴィンテージが好まれ、欧州では逆に冷涼なヴィンテージが好まれます。日本やアジアは欧州に近く、冷涼な気候のヴィンテージに人気があります」とチャドウィックさん



午前中に京都から戻ったばかりのティエリーさんがトリュフをスライス


豪華に仕上げた薩摩シャモのファルシ フォアグラを加えたバスマチ米のピラフとトリュフ × セーニャ×2011&2013

チャドウィックさんは2011年と2013年ヴィンテージについて「ビオディナミの効果が出た、フィネスのあるワイン」と力説。私の印象は2011年のエレガントさ、2013年の将来性!
■2011年は冷涼年、フローラルで心地良い酸味、ブラック・ベリーやブルーべリーの香り、フェミニンでエレガント、バランスの取れたワイン。スティーヴン・スパリエは「ナチュラルなリッチさがあり、凝縮度は高いが重さがない」と絶賛
■2013年はここ10年で最も涼しかった年、ぶどうが熟すのに時間がかかったので、収穫は4月末から5月初めに実施、ピュアな酸味、2011年と同じようにブラック・ベリーやブルー・ベリーの香りがあり、リッチでシルキー。ジェームス・サックリングは「ボルドー第一級シャトーのストラクチュアを表現しながらも依然としてチリらしさがある」とコメント


マーケティング・ディレクターのロレトさんとは1年ぶりの再会!


温かなホスピタリティの持ち主エドゥアルド・チャドウィック当社と


チリは昨年フランスを抜いて国別輸入量ナンバーワンになりました。チリの輸入数量は849万ケース、フランスは615万ケース。しかしながら、金額ではチリ218億円vsフランス507億円という大差!出典:酒販ニュース

チリワインにはエントリーレベルから、ファイン・ワインまで、様々なレンジがありますので、量販ワインを楽しむだけでなく、年に何回かはファイン・ワインに目を向けていただきたいと思っています。その要となるのが・・・このブログで紹介したヴィーニャ・エラスリスです!
チリと日本が締結したEPA効果の恩恵もありますので、世界が認めたチリのファイン・ワインの実力をお試しいただきたいと思っています。

2016年03月14日

ホワイトハウスでも供されたフリーマン・ヴィンヤード&ワイナリーのシャルドネ、人気のピノ!


輸入元ワイン・イン・スタイル

の招聘で、カリフォルニア ソノマ・カウンティのフリーマン・ヴィンヤード&ワイナリー

からオーナー兼ワインメーカーであるアキコ・フリーマンさんが来日しました! 


ソノマ・ヴァレーの冷涼な生産地で造られる人気のピノ・ノワールとシャルドネが今月(3月)から販売開始です! テイスティング・セミナー後のランチでは、ザ・リッツ・カールトン東京『アジュール45』のこだわりの料理に合わせたマリア―ジュも堪能できました。

フリーマン・ヴィンヤード&ワイナリーの概要
ケン&アキコ・フリーマンさんが2001年に立ち上げたワイナリーで、自社畑は10㌶、生産量は4,500~5,000ケース。カリフォルニアでは映画『サイドウェイ(2004年公開)』の大ヒットで、ピノ・ブーム到来。同ワイナリーでも2004年に初めてリリースしたピノが完売しました。シャルドネ造りに関しては「ワインメーカーズディナーでは自分たちが造ったワインを出したい」ということで手掛けることに。

ワイナリー設立当初からのワインメーカーは元テスタロッサのエド・カーツマンさん。作業を手伝っていくうちに、発酵学に興味を持ったアキコさんは、エドさんから指導を受けるようになります。7年間、彼とともにワイン造りに関わり、2010年にワインメーカーとして自立。現在エドさんは同ワイナリーのコンサルティング・ワインメーカーです、

ワインは100%MLFを実施。ハングタイムが長いと果梗が茶色になるので、一部梗を使用(2005年と2009年)、「入れることで紅茶のようなニュアンスが得られる」とアキコさん。樽はフレンチオークを使用、トヌリエは5社程度(シャルドネはダニィ、ピノはフランスソワ・フレールがメイン)


ホワイトハウスで供された涼風シャルドネ
アキコさんとは昨年7月に初めてお目にかかりました。その折、Ryo-Fu(涼風)シャルドネが安倍総理とオバマ大統領のホワイトハウスでのディナーに供された話を伺い、ワインのこころ

で紹介しました。海外で活躍する日本女性醸造家の素敵な快挙です。
(左から)
#1:2014 涼風シャルドネ ロシアン・リヴァー・ヴァレー/7,400円(税別)
2004年から生産しているワイン。西ソノマは海に近く、アラスカからの寒流の影響で毎日冷たい風が吹いてくるので、そこで育ったぶどうから造られるワインに〝涼風〟と命名。キーファー・ランチ、ハインツ・ランチ、アーウィンからの買付ぶどうを使っています。グレープフルーツや白桃、ヘーゼルナッツ、ミネラル、清涼感のある酸が印象的
#2:2013 PN ロシアン・リヴァー・ヴァレー /7,700円(税別)
赤いチェリー、ラズベリーを連想させるチャーミングなピノ・ノワール。それほど暑くなく、収量は若干落ちた年。自社畑と買付ぶどう(キーファー・ランチ)をブレンド
#3:同2011
霜や降雨があった冷涼年、少収量。きれいな酸を備えたエレガントなワイン
#4:2013 グロリア・エステート〝輝〟PN ロシアン・リヴァー・ヴァレー /9000円(税別)
シングル・ヴィンヤード。「カレラのクローンはワインに骨格を、スワンのクローンからはスパイス感が」とアキコさん。色調は濃く、果実の凝縮感、オレンジの皮、スパイス、ロースト香、穏やかな酸味があり、スワリングで複雑味が増すのが魅力。料理の素材とワインが互いの要素を引き立て、飲み飽きさせない味わい

ワイナリーのトップ・キュヴェ
その年の最良のワイン(樽選別ワイン)。ワインメーカーのアキコさんとコンサルタントのエドさんとケンさんが熟成中の樽を試飲してブレンドし、スタッフ等を交えたブラインド・テイスティングで最良のワインを選びます。ファーストヴィンテージの2002年はアキコさんがブレンドしたワインがトップになったので〝アキコズ・キュヴェ〟と命名。当初は7樽(全22樽)のブレンドでしたが、今は200樽ほどあるので15~20樽からブレンド
#5:2013 アキコズ・キュヴェ・PN ソノマ・コースト/11,700円(税別)
ルビー色、ブラックベリー、シダ、アーシー、ロースト香、フリーマン・ヴィンヤードのなかで一番個性あり
#6:同2012
カリフォルニアらしいピノ。収量も多く、赤系果実の果実味にあふれた快活なワイン


アジュール45の料理と合わせて

(左から)さつまいものフランとムースにレモンのオイルとパウダーをかけて、かぼちゃのムース、パプリカのピザ
レモンパウダーと涼風シャルドネの酸味、ワインのクリーミーさとムースの滑らかな口あたりが良い相性


2013 ピノ・ノワール ロシアン・リヴァー・ヴァレー&同2011


ブリのマリネ、大根のプティサラダ
ブリの腹身はコンフィにして少し脂を落として。背身の部分はお刺身(軽く塩でマリネ)で。サラダは薄くスライスした大根のゼリー寄せと種々の大根に、大根と生姜とライムのソースをかけて

「ブリ大根はシャルドネにも合いましたが、腹身は2011のピノに合わせて楽しめました」とアキコさん。ワイン・イン・スタイルの渋谷社長は「シャルドネと大根のテクスチュア&ミネラル感が良かったです。ブリは2011のピノ・ノワールで」

ハリケーン・グロリアがキューピット!

当日のマイ・ベスト『2013 グロリア・エステート〝輝〟ピノ・ノワール ロシアン・リヴァー・ヴァレー』

フリーマン夫妻が出逢うきっかけとなったのがNYを襲ったハリケーン・グロリア。ヨットで旅に出る予定だったケンさんが出港できなくなったことで、あるパーティーに参加。そこでNYに留学中だったアキコさんとの運命的な出逢いに! また、エステートのぶどう畑は以前はリンゴ園だった所で、所有者の名前が奇しくも〝グロリア〟だったので、これらの理由から命名されました。


牛ほほ肉と豚足 アンクルート
67℃で30時間火入れし、スライスした豚足と和牛の頬肉とジャガイモをミルフィーユのように重ねて、それをキャベツとパイで包んでカリッと焼きあげた一品。付け合せにはグリーンピース等の野菜類


アニスの香りを利かせたソースで

アキコさんは「ソースを使わないと2013年ヴィンテージのピノと。ソースをつけると2013のグロリアが合います。2つの味わいが同時に楽しめました」と。渋谷社長は「アンクルートのサクサク感と柔らかいテクスチュアのソースが2013年のグロリアに良く合いました」と回答。私の一押しも2013年のグロリア。スパイシーなニュアンスが料理のつなぎ役をしていました。


紅茶のジュレ 栃木県産イチゴ フロマージュブランのソルベ


左から)柑橘コショウのチョコ、キャラメルチョコレートのケースにゼラチンで薄い膜を張ったパッションフルーツとマンゴーの球体、ピスタチオのパウダーをまとわせたアールグレーのフィナンシェ

父親の食育が愛娘の五感を磨きあげて

45階から見える東京タワーを背景にして

「おせちを食べないとお正月を迎えた気にならない」ということで、お正月は必ず帰省し、日本で過ごすというアキコさん。フリーマン・ヴィンヤードのワインは日本人の味覚に実に良く合うと私は感じているのですが、そのヒントになるようなお話を伺いました。

食道楽のお父上に連れられて、幼少の頃から高級レストランに行っていたというアキコさん。弟さんはいつもお留守番役だったことに触れた後、お父上の〝食への哲学〟が披露されました。
それは・・・
 ~~女子はいずれ家族のために料理を作るようになるので、おいしいものを食べていないとおいしい料理が作れない。でも男子は、どのような女性と結婚するかわからないし、相手がお料理下手な女性かもしれないので、おいしいものを食べ慣れてしまうと困ることになる。おいしいものが食べたくなったら自分で稼いで食べればよい~~
その結果、アキコさんの五感は見事に磨かれ、いまではワインメーカーという天性の仕事に就いています!
昨今、日本でも、子供たちへの食育教育・指導が行われるようになりましたが、五感磨きに、食育は重要だと感じています。

ワインについてのお問い合わせはワイン・イン・スタイル株式会社 ℡03-5212-2271まで

2016年03月05日

アルザスの名門ヒューゲル・エ・フィスがファミーユ・ヒューゲルに社名変更&ラベルも刷新!

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1639年創業のヒューゲル家は仏アルザスのリクヴィール村を本拠地にして家族経営を貫いてきました。現在は12代目と13代目が経営を坦っています。

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12代目当主エティエンヌ・ヒューゲルさん
ヒューゲルカラーの黄色と赤色について、「マギー社の色からヒントを得ました。当時、同社でマネージャーをしていたのが私の祖母です」

日本好きで何度も訪日しているエティエンヌさんですが、今回の来日では2つのことを力説。
1つめが社名の変更です。ヒューゲル・エ・フィス(父から息子)から、ファミーユ・ヒューゲル(女性も含めた家族一丸となって)へ。ヒューゲル家はPFVプリムム・ファミリエ・ヴィニのメンバーです。フランス、ドイツ、イタリア、ポルトガル&スペインの最高級ワイナリーを所有する11ファミリーによって構成されている団体で設立は1992年。91年にスペインのミゲル・トーレスとブルゴーニュのロベール・ドルーアンの対話が契機となって発足しました。同家はその一員であるコート・デュ・ローヌのファミーユ・ぺランと特に親しく、ぺラン家同様、〝ファミーユ〟呼称に変わりました。


2つめが95年間変化がなかったラベルの刷新です。 新ラベルの日本上陸は3月22日頃の予定

テイスティングではヒューゲルの神髄〝リースリング〟を中心に
#1:ジョンティ・ヒューゲル2014
#2:ファミーユ・ヒューゲル・リースリング・クラシック2013
#3:ファミーユ・ヒューゲル・リースリング・エステート2011
#4:ファミーユ・ヒューゲル・リースリング・グロシ・ローイ2010
#5:ファミーユ・ヒューゲル・リースリング・レゼルヴ・エクセプショネル1981 マグナム


「粘土石質土壌のリースリングは開くのに時間がかかる」とエティエンヌさんはおっしゃっていましたが大容量ボトルで熟成させた最上級のリースリングは果実味、酸味ともに35年の歳月を感じさせない若さがあり、ぺトロール香、黄色系果実のコンポート、蜂蜜、白コショウ、口中ドライで長い余韻、度量の大きいワイン!

#6:ファミーユ・ヒューゲル・リースリング・シェルハイマー2007
口中に何層にもなって広がる果実味、果皮由来のビターさ、きりりとした酸とミネラル感、温度の変化で香り&味わいがより複雑に。リッチで豊潤なワイン

#7:ファミーユ・ヒューゲル・ピノ・グリ・クラシック2013
#8:ピノ・グリ・グロシ・ローイ2010
#9:ファミーユ・ヒューゲル・ゲヴェルツトラミナー・エステート2012
#10:ファミーユ・ヒューゲル・ゲヴェルツトラミナー・ヴァンダンジュ・タルディヴ2007

登場したレンジの紹介
最左はエントリーレベルのジョンティ・ヒューゲル、その上に以下の4レンジがあります。
クラシックの初ヴィンテージは2013年、自社畑と契約畑をブレンドしたワイン
エステートは自社畑100%のワイン、今回が世界初のお披露目。畑名と品種はGCグラン・クリュ、シュナンブールのリースリング、GCグラン・クリュ、スポーレンのゲヴェルツトラミナー
グロシ・ローイ

初ヴィンテージは2010年、グロシ・ローイはアルザスの言語で最高の〝テロワール〟を意味しています。ピノ・ノワールに白ラベルを使っている点もユニーク。従来最良の収穫年に仕込んでいた「ジュビリー」シリーズは2009年ヴィンテージで生産中止、それに代わるアイテムとして登場。
グロシ・ローイは単なる新製品ではなく、歴史ある畑のテロワールに深く根差したヒューゲル家の時を超えた文化的価値への真の回帰(1950年代、1960年代、1970年代に使用していたラベルの復刻版)を表現しています。
その象徴が〝Grand Vin d'Alsace〟表記。同地方では、この表記は認められていませんが、今回、ヒューゲルではラベルに使用。「今までラベルにグラン・クリュという表記は使ってきませんでした。グラン・クリュ制度(1975年)が導入されてから、その規定がワインの品質に見合ったものであるかどうか疑問視していたからです。斜めに書いてある赤字のリミテッド・エディション(限定生産)表記は、2015年VT(現在申請中)から、GCシュナブールのぶどうを100%使用しているので、リミテッド・エディションという表記の代わりにグラン・クリュという表記になる予定です」とエティエンヌさん
2009年はジュビリーに関して多大な功績を果たした叔父ジャン・ヒューゲルさんが逝去した年であり、ジュビリーの2009年ヴィンテージはジャンさんのオマージュワインになっています。また、この年はエティエンヌさんのご子息がヒューゲルに入社した年でもありました。

シェルハイマーは単一畑。シュナンブールの中央、斜面中腹の理想的な場所に位置し、2007年に素晴らしいぶどうを収穫した際、区画ごとに別々に仕込んだリースリング。長熟の可能性を秘めたワイン


ワインと戦争

第2次大戦時、エティエンヌさんの祖父が自宅から撮影したリクヴィールの市街
当時カラー写真はとても珍しかったようです。ナチスの旗が・・・


私の愛読書『ワインと戦争(ヒトラーからワインを守った人々)』

エティエンヌさんが「歴史に興味があればワインと戦争を読んでみてください」とおっしゃっていました。この本にはローラン・ペリエやドルーアン、そしてヒューゲル等が登場しています。アルザスはドイツの占領下でフランス語を使えない時代もありました。

95年ぶりにラベル刷新したヒューゲル家ですが、ワインと戦争の本によると・・・
  ~アルザス人はフランス国民としての市民権を取り戻し、安心してフランス語をしゃべれるようになった。(中略)通りや会社や市町村の名前にもフランス名が復活した。リッヒェンヴァイアーはリクヴィールになり、ヒューゲル・ウント・ゼーネ社はふたたび、ヒューゲル・エ・フィス社になった~ 

第2次世界大戦が終わり、フランス語による社名が復活した1945年から昨年2015年の社名変更までの70年間。この歳月から、ワインだけでなく、ヒューゲル家の歴史の重みも感じることができました。


リースリングの魅力をタトゥーシールで拡散
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腕にシールを貼ったら湿ったタオルを押し当てて

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ワイン界の著名人たちもエティエンヌさんの〝リースリングタトゥー〟に洗脳されています(笑)

コルク栓に関しては、2004年からハーフボトルにDIAMを使い始め、トライアルを重ねた結果、2009年以降すべてのレンジに導入。裏ラベルのQRコードから畑や醸造の詳細なデータを見ることができます。また、HPは日本語を含む8カ国語対応なので、一度、覗いてみてください。ワインのコメントは世界最優秀ソムリエでアルザスのオーベルジュ・ド・リル、シェフ・ソムリエのセルジュ・デュプスさんが担当しています!
http://www.hugel.com/jp/index.php

ファミーユ・ヒューゲルについてのお問い合わせはジェロボーム(株)℡03-5786-3280

2016年02月23日

The 20th Anniversary of Supertuscan "SIEPI" in Tokyo!


イタリア・トスカーナ州キアンティ・クラッシコ地区にあるカステッロ・ディ・フォンテルートリを名門MAZZEI

が取得したのは1435年です。この年から『SIEPI シエピ(〝生垣〟の意味)』の畑でもワイン造りが行われていました。

『シエピ』はスーパー・タスカンとして知られています。
初ヴィンテージは1992年。シエピ用の畑は全体で50㌶、ぶどう樹が植樹されているのは14.5㌶(サンジョヴェーゼ、メルロ、カベルネ)。ワインはサンジョヴェーゼとメルロを50%ずつブレンドしています。メルロの樹齢は35年です。最新の2012年ヴィンテージが20年目にあたることから、同家はここ数ヶ月かけて〝20周年記念のロードショー〟を展開。イタリア本国を皮切りに、英国、米国、スイス、オーストリア、ドイツ、香港で実施し、今後はカナダ、スウェーデン、ロシアでも予定しているとのこと。各国のジャーナリストを招聘し、対話ができるように少人数制で行われていますが、日本では2月3日にシャングリ・ラ ホテルのピャチェーレで開催されました。


20周年を記念して作成したSIEPIの冊子とメニュー


来日した24代目フィリッポ・マッツェイ当主とご子息で次期当主になるエリアエクスポートマネージャーのジョヴァンニさん。「日本は大事な市場。洗練されたワインを熟知しているので、高級ワインの価値も理解していただける市場です」とフィリッポさん。撮影に際して、フィリッポさんに「お好きなヴィンテージを」とリクエストしたところ、選んだのはアニバーサリーヴィンテージの2012年!

シエピの誕生について

「ファーストヴィンテージの1992年は良年ではなかったのですが、サンジョヴェーゼとメルロのブレンドを始めようと思いたちました。なぜなら個性的な味わいで、きれいな酸が際立っていたからです。その酸のお蔭で1992年は今も若々しくフレッシュさが保たれています」とフィリッポさん

メルロとのブレンドに関しては「1980年代初めにメルロを植樹(1.5㌶で、今は3.5㌶まで拡張)したのですが、当初から興味深い結果を出していました。キアンティ地域は石灰&粘土質が混ざったアルベレーゼ土壌ですが、特にこのエリアは粘土の比率が高く、30%程度含まれています。標高は250mで、サンジョヴェーゼには理想的な土壌と言えます。サンジョヴェーゼとメルロですが、前者には際立つ個性がありエレガント。後者はまるみと優しさがあるので、相性が良かったのです。
イタリアでは良年と言えないヴィンテージでしたが、まさにこれはチャレンジ。他の様々な品種でも試しました。カベルネ・ソーヴィニヨンは1.5㌶植えていますが、それは別のワイン『コンチェルト(サンジョヴェーゼ+カベルネ・ソーヴィニヨン)』に使っています」
 
ちなみに、サンジョヴェーゼはブルゴーニュ地方フランシュ・コンテにあるヴィニョーブル・ギョーム(アンリ・グザヴィエ・ギョーム)にセレクション・マサルを依頼。メルロは2種類のクローン(自社のものとフランスのギヨームから購入したもの)からスタートしたそうです。

50対50の比率の決定はシリンダーでミリ単位で何度もトライアルを行い、結果として50対50が最も良かったとのこと。メルロは国際品種ですが、このエリアでの栽培の歴史は長く、古くから根付いていた品種です。ゆえに味わいと他のワイナリーではやっていなかった点が気に入ったそうです。

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フォアグラのテリーヌとトリュフのジュース掛けキャビアと1992年
際立つ酸があった1992年ヴィンテージは20年以上の瓶内熟成を経て酸味はまろやかに、タンニンはワインに溶け込んでいました。今飲んで美味、料理に寄り添ってくれるワインでした。


テーブルクロスに映ったきれいなダイヤの陰影
口中滑らかで、最も料理に合わせやすかった1992ヴィンテージ

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甘海老のタルタル ズッキーニ ミントと大蒜(にんにく)の芽 キャビアと1997年
フィリッポさんはじめ誰もが驚いたマリア―ジュ。「タルタルにシエピを合わせる発想には驚きましたが、試してみて、この組み合わせに満足しています。オールドヴィンテージのほうが合いますね」とフィリッポさん。タルタルの隠し味に柑橘の搾汁が使われていたので、1992年の酸と良く馴染んでいました。

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ビーツのリゾット パルメザンチーズとオーガニックラデッシュのスライスと2004年
樽のニュアンスがチーズの風味と良い相性
1997年の酸と上質なタンニンがスパイスの効いたリゾットとバランス〇


ポークカツ 林檎のソテー ワインジュレ 海老芋と2012年
2012年の酸の要素は林檎の酸っぱさと拮抗、海老芋と樽風味と良好

進化するスーパー・タスカン『シエピ』

オールドヴィンテージの1992

から1997

2004

、そして最新の2012

を味わいながらシエピの変遷をたどりました。

1992年は多雨で、夏は暑く、昼夜の温度差があった年。気温があまり高くなることがなかったので、フィリッポさんいわく「フレッシュな一年」。造りの点ではサンジョヴェーゼとメルロはタンクで別々の発酵し、その後、ブレンドして熟成。
私的感想:良年ではなかったにもかかわらず、バランスが良く旨みあり、シルクのような舌触り。ボルドー的なスタイル。〝酸〟の存在が長期熟成にいかに重要かを実感

1997年は理想的な年。冬と春から6月の終わりまで多雨、夏は暑く雨が全く降らず、気温も高めに推移。9月末に多少雨が降り、メルロは9月末、サンジョヴェーゼは10月初旬に収穫。骨格があり、タンニンもこなれている印象。19年経過しても、フレッシュさや果実味がある驚きのポテンシャル。平均してサンジョヴェーゼが16ヶ月、メルロが18カ月と熟成期間が異なるため、1997年から発酵も熟成も別々に実施。樽はフレンチオーク225㍑、樽メーカーはRemond社を中心にして様々な業者のものを使用。
私的感想:秀逸年のワイン。酸とタンニンとアルコール(13.8%)のバランス良し。1992年ほど繊細ではなく、2004年ほどパワフルでない、品のあるスタイル。マイベスト!

2004年は冬と春は多雨、平年より暑い夏。メルロは9月13日、サンジョヴェーゼは10月7日に収穫。ストラクチュアがしっかりあり、タンニンもやや強め、味わいに新樽のニュアンス。メルロに関しては4つのクローンを使用。2004年から500㍑のトノー(全部で3樽)の使用を開始。トノーはサンジョヴェーゼの一部に使用。メルロは225㍑のフレンチオーク樽。新樽率は80~90%(2004年と1997年は新樽率多め)。瓶内熟成(10年)を長めに取ったことで、タンニンも熟成。「瓶内熟成がプロセスとして大事!」とフィリッポさん
私的感想:前の2つとは異なり、樽の使用&ワインの抽出に関して進化、変化ありのヴィンテージ。スーパー・タスカンの風格を感じさせるワイン

2012年は冬と春の降雨多め、夏は短く気温は高め。収穫は遅め。2004年ほどのパワフルさはないものの、きれいな酸、フェノールの熟度、ベジタル(メルロ由来)な要素もあり。ユニークで、他の年にはない独特なニュアンス。新樽率50%。サンジョヴェーゼの半分はトノーで熟成。サンジョヴェーゼに関しては現在36のクローンを使用。
私的感想:フレッシュでメリハリのある酸、ミネラル感、燻したニュアンス、木樽の風味。10年間の瓶熟による変化に期待したい1本。

フィリッポさんは「我々が造りたいのは、骨格がありながら、フレッシュさやフルーティさ、酸を兼ね備えたワインであり、その年独特の個性を表現していきたい」とコメントしていましたが、4つのヴィンテージは、シエピの変化を象徴するヴィンテージでもありました。その底辺にあるストラクチュアと酸の存在感、その一貫性をこれら4ヴィンテージから感じることができました。


サプライズ、感激&光栄でした!!

シャンパンのシャーベット 苺とカシスゼリーに薔薇の花びらを散らして
きれいな球形のデザートに、Happy Birthdayの文字が!!!


目の前のフィリッポさんが「今日はFumikoの特別な日なんだよね」とおっしゃって、差し出してくださったのが、なんと2008年ヴィンテージ、素敵すぎるプレゼントにホントびっくりでした!
何より、シエピの20周年の祝賀のお席で、誕生日祝いをしていただいたことが何よりの感激。身に余る光栄、本当にありがとうございました!!!

ラベルとメニューにフィリッポさんとジェヴァンニさんのサインを入れていただきました。ジョヴァンニさんは「2008年は良いヴィンテージだったので僕も好きなんだ」と。当分、セラーで大事に寝かせておきます。


同席していたイタリアワイン界の重鎮 林茂さんが画像を送ってくださいました。


シエピ20周年を心からお祝い申し上げます。ますますの飛躍を期待しております。
フィリッポ・マッツィエ当主&ジョヴァンニさん、ファインズの中西社長、森本さん&石井さん
皆さまからの素晴らしいサプライズに心からの感謝を! 
素敵な時間を共有させていただき、本当にありがとうございました。

■シエピについてのお問い合わせは株式会社 ファインズ

  ℡ 03-6732-8602
■4月23日(土)第6回ファインズ チャリティ試飲会2016は今日(2月23日)から受付開始、
お見逃しなく!! http://www.fwines.co.jp/news/release/2016/01.html

2016年02月18日

ルイ・ジャドの新境地オレゴンワイン『レゾナンス』デビュー&2014年のバレル・テイスティング

オレゴンで最高のグラン・ヴァン造りを目指して

1859年の創業以降、ブルゴーニュでネゴシアンかつ自社畑210㌶を所有する大ドメーヌとして活躍してきたルイ・ジャドが、2013年からホーム以外の地、米国オレゴン州でワイン造りを開始しました。

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来日したオリヴィエ・マスモンデ輸出部長によって披露された『レゾナンス・ヴィンヤード ピノ・ノワール2013(小売価格8,800円・税抜)』
総生産量2000ケース、日本での発売は3月22日(水)、米国7割、日本1割、その他2割がフランス、英国ほか

レゾナンスの醸造を仕切るのは

ラルディエールさんが一番好きなシュヴァリエ・モンラッシェGC レ・ドゥモワゼルの前で

オレゴンのプロジェクトはピエール・アンリ・ガジェ社長の息子チボーさんが総括しており、レゾナンスはルイ・ジャドで42ヴィンテージを生産してきた天才肌の醸造家ジャック・ラルディエールさんが担当しています。

20年以上も前からルイ・ジャドには米国からいくつものアプローチがされていましたが、そのような形態ではなく、「より良い場所で、ひとつのワインを造りたい」という願望を抱いていました。
オレゴンのワインフェアに参加していたラルディエールさんは、レゾナンスの畑が売りに出ている話を聞き、見に行きます。結果、「長い間かけて探していた畑を見つけた!」とガジェ社長に報告。それが2012年夏のことで、畑の境界線等の手続きのあと、2013年夏から本格的にワイン造りに着手します。そして、『レゾナンス・ヴィンヤード ピノ・ノワール2013』の誕生となりました。

ワインは畑名レゾナンスに由来。オレゴン州ウィラメット・ヴァレー地区にあるヤムヒル・カールトンに位置し、13㌶のうち、8㌶に黒ぶどうのピノ・ノワールを植樹しています。ぶどうは以前の所有者が1981年に植樹したもので、ビオディナミ農法を採用していたそうです。ルイ・ジャドはブルゴーニュで一部ビオディナミを導入していますが、それをラベルに表記してはいません。なぜなら、ビオディナミは昔から行われていたことなので、当たり前の作業としてとらえているからです。

レゾナンスは「ビオディナミと有機栽培の中間くらい」とオリヴィエさんは語っていました。
新規の取り組みとして、栽培面ではセレクション・マサル、醸造面では天然酵母&ステンレス製の開放槽使用、ルイジャド製(カデュス)のフレンチ樽使用、新樽率30%、除梗80%(=全房20%使用)があげられます。

プレスランチ@ マンダリンオリエンタル東京シグネチャー

マリネした平目のカルパッチョ ミモザと梅、キャビア


オマール海老のロースト ホウレン草のソテーとカリフラワーのピュレ 赤ワインソース


赤キャベツとカシスのムースで包んだ鹿フィレのロティと腿肉のブレゼ
じゃが芋と松葉のエクラゼ ソースディアン

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チョコレートのスフレ トンカ豆の香り カカオのソルベ ラズベリー風味


合わせたワインは

(左))ピュリニー・モンラッシェ PC クロ・ド・ラ・ガレンヌ ドメーヌ・デュック・ド・マジェンタ2013
マジェンタ侯爵家が所有する畑。ルイ・ジャドは1985年から契約していてすべてのぶどうを購入。ガレンヌ(栗色のウサギの意)は太陽の畑と呼ばれている日照が高い恵まれた畑。樹齢は低部は60年、高部は100年。上質な酸の印象、ミネラル、アーモンド、タイトで引き締まった印象。「2013年は冷涼でブルゴーニュならではのクラシックな気候、白ワインには特徴的な白コショーのニュアンス(スパイシーさ)が出ています。MLFは80%くらいで止めています」とオリヴィエさん


)レゾナンス・ヴィンヤード ピノ・ノワール2013
)ヴォーヌ・ロマネ2013(ルイ・ジャド)

オリヴィエ:レゾナンスがあるヤムヒル・カールトンはジュヴレ・シャンベルタンやヴォーヌ・ロマネに近く、ミネラル感や活き活きした躍動感、深みがあります。ダンディ・ヒルズはシャンボール・ミュジニーに近く、飲みやすく、エレガント。パーティーで出せば、誰もがおいしいと思うワインです。

ちなみに、ダンディ・ヒルズには1987年、ブルゴーニュからオレゴンに進出した先駆者ドメーヌ・ドルーアン・オレゴンがあります。

レゾナンスを試飲した私の第一印象は飲みやすさ! 海洋性の土壌の特徴には紫色の花やバラの香りがあるそうですが、色調にもバイオレットのニュアンス、凝縮した果実とミネラル感、若干のスパイシーさと樽香、緻密なタンニン、アプローチしやすいワイン。
ヴォーヌ・ロマネは明るいルビー、レッドチェリー、スミレ、清涼感のある酸味、ドライなタンニン、料理に合わせて楽しめるワイン

「オレゴンは自然に恵まれていて、気質もブルゴーニュ人と似ています」とオリヴィエさん、共通項も多そうです。

グラスを回転させる方向

ラルディエールさんが力説していた事柄にグラスの回転方向があります。
上記は2012年に来日したラルディエールさんにアロマのらせん図(黒点はアロマの分子)を書いていただきました。

オリヴィエさんが「ジャックの言ったことは24時間後にわかる」と語ったのを受けて、回転話に。
「地球の自転と同じ方向(時計回りと反対)に回すと、ポジティブな要素を立ち上がらせることになるので、フルーティさが出てきます。自転と反対(右回り)だと、土の持ち味、要素が出てきます。双方は補完する形で存在するので、両方することで、ワインを理解する力が向上します」と。
ただ、これは数回やってもダメで、「何千回行っているうちに、ある日、そうか!」と理解できるとか。

続けて、「私はジョルジュ・ブラン(ミシュラン3ッ星レストラン)で仕事をしていた時、ソムリエたちに、顧客が右利きか左利きか、注意するように言っていました。同じワインをサービスしているのに、顧客が異なる意見を言うので不思議に思っていたのですが、右利きと左利きでは回転が違うことに気がつきました。兄弟に左利きがいたことで、それが解明できました」とオリヴィエさん。
私はあと何回試せば体感できるのか、今回も理解できず(苦笑)



ルイ・ジャドの2014年バレル・テイスティング

移動して日比谷公園内にある日比谷パレスへ


会場には2014年ルイ・ジャドのバレルサンプル、ドメーヌ・フェレのバレルサンプル、シャトー・デ・ジャック(ボージョレ)のオールド・ヴィンテージ

昨年12月に樽から取り出して空輸で運んできた2014年ヴィンテージのバレルテイスティングで、オリヴィエさんから収穫年について解説がありました。

オリヴィエ:2014年は年間通じて、バランスの取れた気候だったので、フレッシュ感があり、フルーティ、アプローチしやすいヴィンテージです。6月に雹(ひょう)害があり、ポマールとボルネーに被害が出ました。平均で20~25%減。エリアによっては70%失った畑もあります、ただ、早い時期の雹だったので、量的には被害を受けたものの、質的には影響は少ないです。MLFが早く進んだので、エレガントで繊細なワインになりました。今飲んでもおいしく、熟成させても楽しめます。50年持つワインではありませんが、白は格別素晴らしく、ミネラル感が秀逸です。赤は果肉の風味が豊かで、タンニンもエレガント。口中シルキーで、1杯飲んでまた飲みたくなるワイン。収穫は9月11日から始まり、ドメーヌ・フェレは9月10日、シャトー・デ・ジャックは9月8日と、各エリアとも、日にちが近かったことで、均一性があり、同レベルのワインになっています。
2013年は冷涼年、ブルゴーニュらしいヴィンテージです。2014年は万人に好まれるタイプですが、2013年はワインのスペシャリスト向きです。2015年は少収量なので、市場に出る量は少ないです。赤ワインは素晴らしいのですが、熟成が必要なヴィンテージです。

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バレルテイスティングではペルナン・ヴェルジュレス〝クロ・ド・ラ・クロワ・ド・ピエール(小売価格5,500円・税抜)〟の凛としたミネラル感が好印象、品のあるブルゴーニュ!

ブルゴーニュの雹害、温暖化の影響
2013年は7月27日に雹害(コルトンからムルソーまでの範囲)があり、30分間続きました。この時は粒だけで、水滴がなかったため、攻撃を受けたぶどうに病害虫が出なかったのは救いでした。昔から雹害はありましたが、多くはマルサネやヴォルネイのエリアで発生する局地的なものでした。2013年は2000㌶にも及ぶ大規模なもので、今まで、そこまでの被害はありませんでした。

昨今の雹害について、オリヴィエさんは、「個人的には温暖化の影響が出ていると思っています。収穫については、90年代と今を比べると、10日から20日ほど早まっています。弊社では激しい気象条件については危惧しますが、熟したぶどうが収穫できるのは良いと思っています」と語りました。


参加者に『レゾナンス』について解説中のオリヴィエさん
ラベルの絵柄はモミの木。異なる木々の高さで〝共鳴〟を表現
畑は海岸山脈を起点の西から東に低く伸びる尾根の凸部にあり、標高は80~150m。土壌は古い海洋性の堆積物と玄武岩で、水ハケが良いので灌漑の必要はありません。


20周年となる1996年ヴィンテージも登場
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ルイ・ジャドが1996年から所有しているシャトー・デ・ジャック。今年は20周年という節目です。
「熟成ありきのクリュ・ボージョレです。1999年ヴィンテージは質・量的ともに恵まれていたので、神から祝福された年」とオリヴィエさん
ムーラン・ア・ヴァン1999(小売価格5,000円)と、成人式を迎えた方々への記念としてムーラン・ア・ヴァン シャン・ド・クール1996(小売価格6,500円)がお薦めです!


番外編 Happy Time!
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なんと、加茂文彦シェフソムリエが、ろうそくを2本立てたかわいいケーキを私の前に!
気心知れたオリヴィエさんに「昨日が誕生日だった」と話したので、私を気遣ってくださった(感涙)
「21歳になったことがわかったので、今日からワインが飲めるよ」とオリヴィエさん
嬉しいサプライズ、ありがとうございました!

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photo by Fumihiko Kamo chef sommelier
尊敬するワインジャーナリストの柳忠之さんと酒販ニュースの名記者佐藤吉司さんと一緒
日本リカーの竹内社長、オリヴィエ輸出部長、温かなお気遣い、ありがとうございました!

記載しているワインについてのお問い合わせは日本リカー ℡03-5643-9770

2016年01月30日

妥協はしないオリヴィエ・バーンスタインのワインスタイル

ブルゴーニュの新星オリヴィエ・バーンスタインさんと再会!
昨年の1月23日、輸入元BB&Rのオフィスで初めてオリヴィエさんのワインをテイスティングしてドッキリ! その上質な味わいに魅了されてからちょうど1年になりますが、今回の来日でも昨年と同ヴィンテージ(VT)にトライできたことはとてもラッキーでした。

昨年のブログ

で初めてオリヴィエ・バーンスタインさんを紹介しました。異業種からワイン業界に参入した彼のワインは2007年VTから日本上陸していますが、10年未満で、ブルゴーニュ屈指の生産者と同様の評価を受けるようになっています。生産量は4000ケース。ボーヌにあるセラーは15世紀の遺物で、4年前に古い納屋を購入して3年の歳月をかけて改装しました。「妥協はしない。妥協するくらいならワイン造りはしない」と言い切る彼の意志の強さ、それが完璧な形でワインに反映されていると確信しました。

プレスランチに登場したマジ・シャンベルタン2014
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マスタークラスセミナーの前にカロフェゴ赤坂店でプレスランチがあり、4アイテム+スーツケースに入れて持参した自慢のマジ・シャンベルタン2014(バレルサンプル)が披露されました。


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(ボトルもグラスも右から左の順に)
#1:シャンボル・ミュズニー プルミエ・クリュ レ・ラヴロット2010
#2:ジュヴレ・シャンベルタン プルミエ・クリュレ・シャンポー2010
#3:ジュヴレ・シャンベルタン グラン・クリュ2011
#4:クロ・ヴージョ グラン・クリュ2011
#5:マジ・シャンベルタン グラン・クリュ2014


ジュヴレ・シャンベルタンに憧れワイン造りの道に入ったオリヴィエ・バーンスタインさん

2012年に購入したマジ・シャンベルタン

マジ・シャンベルタンはマジ・オー(高)とマジ・バ(低)の2区画に分かれており、オリヴィエさん所有の畑は樹齢80年の古樹があるマジ・バに属しています。彼いわく「オーナーは同じなので、もう一方の畑もいずれ入手できれば」と

マジ・シャンベルタン グラン・クリュ2014(バレルサンプル

「2014年は美しくクラシックなVT。2013年より繊細、今まで生産してきたなかで一番。多くの人は温暖な年を好む傾向ですが、私は冷涼年が好き」とオリヴィエさん。2014年と対照的に昨年の2015年VTは温かな年だったようで、2015年については「まだMLFの最中なので、時期尚早」と回答。
ブルゴーニュから東京までの長時間フライト後のマジ・シャンベルタンは、閉じた印象ながら余韻は長く、ポテンシャルがありました。赤系果実のニュアンス、冷涼気候に由来する切れの良い酸、筋肉質でスパイシー。オリヴィエさんが推すVTの正式リリースがホント楽しみです! BB&Rでは1月6日からブルゴーニュ・アン・プリムール販売

を開始しています。


プレスランチ会場で

〝特製の薪窯で焼き上げるこだわりのお肉〟をコンセプトにした店舗の看板 薪窯


ニュージーランド産牧草牛のステーキとのマリア―ジュ



マスタークラス@ BB&Rg
オリヴィエさんが2011年VTまで生産していた白ワイン3種と赤ワイン4種に特別供出はマジ・シャンベルタン グラン・クリュ2013!

クリーミーなムルソー、凛としたピュリニュー、ミネラル感のコルトン・シャルルマーニュ
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(左から順に)
#1:ムルソー プルミエ・クリュ レ・シャルム/生産量3樽
クリーミー、まるみと厚みがあり、包みこんでくれるスタイル
#2:ピュリニー・モンラッシェ プルミエ・クリュ シャンガン/生産量3樽
ムルソーの畑より標高が高いので、冷涼エリア由来のミネラル感が顕著
#3:コルトン・シャルルマーニュ グラン・クリュ/生産量2樽
若くてタイト、鋭角的なミネラル感、ポテンシャルあり
「レストランで出すならデキャンターで」とオリヴィエさん

2012年も各1樽は生産したそうです。白ワインに関しては畑の所有者から果汁を購入してワイン造りをしています。製法はすべて同じ(#1と#2は新樽50%、#3は100%)なので、テロワールを表現。「2012以降は気候も悪く、雹害もあったので、十分な量が入手できなくなるのは予想できたので生産を中止した」とオリヴィエさん。3樽は造りたいとの思いがあるので、それが叶うようになれば、再生産もありうると思います。ここまで上質の白ワインなのですから、オリヴィエ・ファンなら、「白ワイン再び」を願わざるを得ません。


契約畑でも自らが管理

赤ワインに関しては、2008年からレンタルしている畑に出向いて栽培に関わっています。オーナーには「すべて任せて」と宣言。契約については「1㌶あたり最大45ヘクトリットル分の賃貸料を払っています。天候が悪く、その収量に満たない場合、あるいは自分で収量を落とす必要に迫られた場合は当然自分がリスクを負うことになります。書類上で契約を交わすのではなく、畑で握手による契約。オーナーとの良好な関係を保っています」とオリヴィエさん。

#4:ジュヴレ・シャンベルタン2010(村名ワイン)
唯一の村名ワイン、カルジョとレ・ゼポワンチュールの2区画のぶどうをブレンド。赤系果実が特徴、なめらかで親しみやすい味わい。良年2010年の片鱗を感じます。

2009年の特徴は力強さ、黒系果実、タンニン
#5~#7は2009年ヴィンテージの比較。力強さ、黒系果実、タンニンの3つが共通項。ブルゴーニュワインとしては珍しいですが、これが2009年の特徴とのこと

#5:シャンボル・ミュズニー、レ・ラヴロット2009
シャンボル(0.92㌶)は若樹(18~20年)から造られるワイン。親しみやすく、飲み頃に達するのは他のワインより早い。中盤以降の酸がきれいに出ていて、塩やレモンを使った和食との相性がイメージできました。

#6:ジュヴレ・シャンベルタン プルミエ・クリュレ・シャンポー2009
樹齢55年、2012年に購入した自社畑。黒系果実(ブラックベリー、ブラックチェリー)、上質な酸味、凝縮したタンニン。開くのに時間がかかる厳粛なタイプ

#7:ジュヴレ・シャンベルタン プルミエ・クリュ レ・カズティエ2009
樹齢80年、急斜面で表土がより少ないのでミネラル豊か、果実の凝縮感、力強さ、長い余韻。熟成に時間がかかるタイプ

#8:マジ・シャンベルタン グラン・クリュ2013
「8か月前に瓶詰め、お肉に添えてテーブルに載せたい」とオリヴィエさん。
まだ若くて少し堅めですがバランス良、口中に赤系果実がたっぷり、噛み砕いて飲みたい印象、酸もミネラルも十分、10年以上経過して本領を発揮するワイン

〝マジ・シャンべルタン〟はプリンス
ワイン造りの特徴について昨年伺った内容との変更点、加筆事柄は
■グラン・クリュは新樽100%、プルミエ・クリュは新樽50%使用
■樽はジュピーユとフォンテーヌブローの木材を使用。収穫したワインの状態を見てから、焼き具合を決めて注文。焼き具合は低い温度で時間をかけて。
■ビオディナミには興味がない、現在はビオロジックを実践


ブルゴーニュ人気は健在です。2007年にドメーヌを設立して8年以上経過したオリヴィエさんは過去を振り返って、「土地もぶどうも当時の3倍になっています。2005年のグレートヴィンテージ以降のブルゴーニュは天候に恵まれず、人気にも陰りが見えていました。そのような時期だったからこそブルゴーニュに参入できました。タイミング的にとても良かったと言えます。ブルゴーニュワインの需要は高まっており、年々収量も抑えられている状況なので、今だったら、ドメーヌを立ち上げるのは無理だった」と語っていました。

プレスランチに同席していたBB&Rのセールス・ディレクター、サイモン・アレクサンダー・ステープルズさんがマジ・シャンベルタンをプリンス、シャンベルタンをキング、そしてシャンベルタン・クロ・ド・ベーズをクイーンと表現した時、オリヴィエさんはすかさず、「時としてキングよりプリンスのほうが良い、何より素晴らしい将来があるから」と返答していました。これは自慢のマジ・シャンベルタンを形容した言葉そのものであり、オリヴィエさんの強い自信の現れです。
完璧主義者オリヴィエ・バーンスタインさんの今後に、ますます期待しています!

問い合わせ先:BB&R日本支社 ℡03-3518-6730/ http://www.bbr.co.jp

2015年11月01日

カリフォルニア『パッツ&ホール』のドナルド・パッツが語るシャルドネとピノ・ノワール

パッツ&ホールのワインスタイル
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10月の半ば、シャルドネとピノ・ノワールのスペシャリスト、パッツ&ホール

のオーナー、ドナルド・パッツさんが来日し、中央区銀座の『Kuma3』で、食とのペアリングを楽しみながら、ワイナリーと5種のワインについて語りました。居住するナパでは、韓国人の愛妻が作る韓国料理を毎日食べていというパッツさん。和食もお好き、古酒もお好きで70年代のボルドーワインを収集なさっているそうです。

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パッツ&ホールは、1988年に共通のヴィジョンを持つ4人、ドナルド・パッツ(買付、輸出担当)、ジェイムス・ホール(醸造担当)、アン・モーゼズ&ヘザー・パッツによって設立されました。スタート当初はシャルドネだけを生産していましたが、 1995年からピノ・ノワールにも着手。
1990年代前半にもピノ・ノワールは生産されていたのですが、味わい的には今ひとつだった由。でも、90年代半ばから、クローンの開発や土壌の研究が進み、より良いピノ・ノワールが造られるようになったので、ピノ・ノワールにもフォーカス。現在、シャルドネは10の異なる畑(単一畑を含む)、ピノ・ノワールは12の異なる畑(単一畑を含む)からワインを生産しています。

ワイン造りの特徴は■シャルドネとピノ・ノワールだけを生産、■ぶどう畑は所有せず、購入。ただし、契約している35のぶどう栽培農家には自分たちが求める方針で栽培を徹底しています。

樽へのこだわり
デリケートなシャルドネとピノ・ノワールだけにフレンチオークの木樽は重要。36ヶ月シーズニング(自然乾燥)させてから、主たるトヌリエ(樽業者)のフランソワ・フレールやスギャン・モローに製樽を依頼しています。


ウェルカムドリンクは門外不出のスパーリングワイン

ワイナリークラブのメンバーだけのアイテム、輸入元のワイン・イン・スタイルでも扱いなしです。
生産したのは「遊びごころ」とパッツさん。シャルドネとピノ・ノワールのスペシャリストであり、シャンパンと同じ2品種であることが理由です。切れ味の良い、このブリュット2012はシャルドネ63%、ピノ・ノワール37%、生産量300c/sのみ

当日は2種のシャルドネと3種のピノ
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#1:2014 ダットン・ランチ シャルドネ ロシアン・リヴァー・ヴァレー
希望小売価格7,700円・税別
ダットン・ランチは1969年にウォーレン・ダットンが西ソノマ・カウンティに開拓した最も古い畑のひとつ。灌漑をしないドライ・ファームで栽培されたぶどうは小粒でアロマ豊か。パッツ&ホールでは秀逸な5つの区画を選んでいますが、なかでも1969年に植樹された古樹から収穫されたぶどうも使用。「デリケートなパフューム」とパッツさん。樽香(新樽40%使用)、アロマ豊か、酸味があり、ナイス・バランス

#2:2012 ハイド・ヴィンヤード シャルドネ・カーネロス ナパ・ヴァレー
希望小売価格10,000円・税別
パッツさんの思い入れがこもった単一ヴィンヤードのシャルドネ。午後実施されていたカリフォルニアグランドテイスティングでも味わったのですが、プレス・ディナーではリーデル協賛でヴィノムシリーズのブルゴーニュグラスの印象がとても良く、パッツさんも絶賛。樽のニュアンスをうまく引き立てていました。 #1は香りが強く出ていましたが、#2は心地良い柑橘系果実、ミネラル感、エレガントな印象

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パッツ&ホールのピノ・ノワールは基本的に全体の15%は全房発酵、MLF100%実施、無濾過、無清澄
#3:2013 ジェンキンス・ランチ ピノ・ノワール ソノマ・コースト
希望小売価格10,500円・税別
ジェンキンス・ランチはジェンキンス一族の牧場で、ゆるやかな傾斜の約7㌶の畑の標高は150㍍、土壌は砂利混じりのローム、沿岸部特有の冷涼な気候。豊潤な香り、前面に出過ぎない果実味、ハーブ、スパイス、きめ細かいタンニン

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#4:2012 チェノウェス・ランチ ピノ・ノワール ロシアン・リヴァー・ヴァレー
希望小売価格10,500円・税別
パッツさんは「私が一票を入れなくてもピゾーニには皆さんが票を入れるでしょう。ゆえにそれを除くと、生産しているピノ・ノワールのなかで気にいっているのは骨格があり、タンニンの成分があることで長熟のポテンシャルを感じるチェノウェスです」とコメント。

1838年にソノマのグリーン・ヴァレーに移住してきたチェノウェス一族によって開拓された畑。元々はリンゴ果樹園でしたが、パッツさんが2000年代前半にぶどう畑への植え替えを進言。2004年にパッツ&ホールから待望のワインがリリースされました。畑はグリーン・ヴァレー内のロシアン・リヴァー・ヴァレーAVAで最も冷涼といわれる最西端に位置しています。フレッシュ&フルーティー、ハーブや果実、品のある酸、旨味が魅力

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#5:2012 ピゾーニ・ヴィンヤード ピノ・ノワール サンタ・ルシア・ハイランズ
希望小売価格15,500円・税別
生産量が少ない人気アイテム。ピゾーニ・ファミリーはモントレー・カウンティのサリナス・ヴァレーで何世代にもわたって野菜農家を営んできた一家。息子のジェフは著名な醸造家として活躍中。ピゾーニ・ヴィンヤードはサンタ・ルチア・ハイランズAVAの南の丘に位置し、砂質の台地の下はヴァレー・フロアーの肥沃な平らな土地が広がっています。グラスの下の文字が読めない濃いパープル、凝縮した果実味、リッチでパワーのあるワイン、優しく長く続く余韻
「ピゾーニの畑はユニークで、そこの畑のピノを他の畑に植樹してもピゾーニで収穫するぶどうと同じようにならない」とパッツさん

ペアリングの基本は会話のなかに
料理とワインのペアリングについて、パッツさんは「そんなに深く考えたことないよ(笑)」と。続けて「毎回様々な香りや味わいが一緒になって、これは合うねとか、これは違うね、という会話自体が楽しいものであって、そこにワインの楽しみが介在すると思っています。人生の面白さもそうですが、1つのものを求めてワインを造るわけでもなく、おいしいワインを造って、結果的にそのワインが食事に合えば良いし、合わなければ別のワインを飲もうというカジュアルな考え方で良いのでは」と。
今回は少人数のプレスディナーだったこともあり、ワイン談義だけでなく、パッツさんの結婚観にまで及び和やかな雰囲気になりました。パッツさんのほんわかしたキャクターはとても素敵です。ワイン・イン・スタイルの武村さま、遠藤さま、お疲れ様でした!


製品のお問い合わせはワイン・イン・スタイル ℡03-5212-2271まで
ラベル:パッツ&ホール

2015年06月23日

3回目の新たな試み〝シャブリと和食の相性〟

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〝Pure〟という形容が良く似合うChablis!


シャブリワイン委員会

が推奨している〝和食とシャブリ〟のマリアージュ
3回目を迎えた今回はプルミエ・クリュにフォーカス。過去2回はソムリエ主導でしたが、今年はプレゼンターに日本料理『菱沼』の当主菱沼孝之さんを迎え、料理人の視点からシャブリをコメントしてくださいました。

当日の概要は6月18日付のワインのこころ

で紹介しました。
また、ブログにまとめた2013年

2014年

のプレスランチをリンクさせていただきますので、シャブリ全体の流れをご確認いただけましたら幸いです。

供出ワインは7アイテム
準備されていた2ヴィンテージ(VT)について、「2010年、2011年ともに歴史的なVTで品質も素晴らしい」とモロー会長

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#1:シャブリ ドメーヌ・ダニエル・ダンプ・エ・フィス2011  輸入元:エノテカ
シャブリに16ha、シャブリ・プルミエ・クリュに14haの畑を所有、すべてステンレスによるピュアな味わい、フルーティさより、テロワールを生かす生産者。フラワリーで強すぎないミネラル、魅力的なシャブリ

#2:シャブリ・ブルミエ・クリュ モンマン ドメーヌ・ドルーアン・ヴォードン2011 輸入元:三国ワイン
左岸、南西に位置する渓谷にあり、土壌は石灰より粘土が多い。酸味はストレート、ミネラル感、余韻に軽いビター感。ビターさとアスパラガスとの相性良好、ストレートな酸と梅干しとの相性〇
モロー:ぶどうが熟すまで他より時間がかかるので、ワインを味わうにも数年かけたほうが良い。

#3:シャブリ・プルミエ・クリュ ヴァィヨン・セシェ ドメーヌ・ジャン・コレ2011 
輸入元:木下インターナショナル
左岸、なだらかなヴァイヨンの南東斜面に位置し、土壌は石灰質で小石が多い。コンポートした果実や芯のある酸、最初のフルーツ感から最後のミネラル感まで変化が楽しめるシャブリ。胡麻豆腐と合わせると口中にソフトな余韻が広がり好印象。

#4:シャブリ・プルミエ・クリュ モン・ド・ミリュー ラ・シャブリジェンヌ2011 輸入元:モトックス
右岸、シャブリ全体の4分の1という最大生産量、品質的にも秀逸な協同組合。アロマ豊か、ミネラル感、熟したフルーツのニュアンス。ステンレスと木樽使用。ウニと合わせるとなめらかで渾然一体感。

#5:シャブリ・プルミエ・クリュ レ・フルノー ドメーヌ・ルイ・モロー2011 輸入元:豊通食料
右岸、当主ルイ・モローの父ジャン・ジャック・モローによって拡大したメゾン。ステンレスのみ使用、果実のアロマ、歯切れの良い酸、フレッシュな味わいが長く残る。ウニと合わせると口中に厚みを感じ、その後、しっかりとした酸の存在あり。アスパラとの相性も良く、全体的に包容力があるワイン

#6:シャブリ・グラン・クリュ ヴォーデジール ドメーヌ・ジェラール・トランブレイ2011 
輸入元:日仏商事
日当たりの良い南西向きのグラン・クリュ。土壌は石灰、キメリジャン。自然な酸を生かすため、少し早目の収穫を行う。若いうちはフローラル、5~7年経過で砂糖漬けの果実。口当りはまろやかなれど骨格のあるワイン。焼き穴子と絶妙のバランス

#7:シャブリ・グラン・クリュ レ・クロ ドメーヌ・ロン・デパキ2010 輸入元:メルシャン
シャブリの全グラン・クリュの約1割にあたる10haのグラン・クリュを所有。レ・クロはシャブリ最大のグラン・クリュで、ドメーヌ・ロン・デパキでは2区画を所有。70%ステンレス、30%樽使用。湿った小石、果実風味、アーモンドやヘーゼルナッツ。すし飯の昆布出汁とまるい酸はレ・クロのミネラルとバランス良好。


六本木『菱沼』にて
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シャブリワイン委員会のルイ・モロー会長と菱沼孝之さん

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箸置きは百人一首、私のは喜撰法師の
「わが庵は 都のたつみ しかぞすむ 世をうぢ山と人はいふなり」の下の句、粋ですね

ワインと料理の酸味を生かす
菱沼当主は「酸味が足りないと料理もワインもすすみません。空飲み(ワイン単独で飲むこと)はしないで、料理と合わせることが大事です。酸に対して抵抗を感じる人が結構多いので、ワインだけで飲むとマイナスになります。攻撃的な酸もありますが、厚みのある酸や柔らかい酸など、酸にもいろいろあります。それらの酸を料理と合わせてどう生かすかがポイントです」と語っていました。

また、シャブリについては「和食との相性が良く、キレのある酸とミネラルが特徴です。食事と合わせると毎回口中をリフレッシュさせてくれます」と。

季節感を生かしたメニュー(5月13日実施)
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前菜:胡麻豆腐 生うに 山葵(わさび)のせ
北海道産のうに、たっぷりの胡麻を使った豆腐、昆布出汁(ミネラル豊か)でメリハリをつけた一品

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:帆立貝のムース 空豆のすり流し 叩き木の芽

帆立貝をムース状にして、昆布出汁でひきのばした生クリームを加える。日本料理で言うしんじょう(白身魚の正肉をすりつぶしたもの)。空豆もすり流しでポタージュ的
菱沼:普通の澄まし汁と違い、ワインとの相性も良いと思います。


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造り:鯛の昆布〆 アスパラガスと梅肉のソース

旬の明石の鯛の昆布〆と北道産グリーンアスパラとホワイトアスパラ。梅干しの実の部分をたたいて作ったソースをかけた一品
これは究極の酸vs酸のマリアージュ、目からうろこの体験になりました。料理だけだと梅干しの酸味が際立ちますが、ワインと合わせると、双方の酸が溶け合ってまろやかに。
モロー:西洋人にとって梅干しは驚きの食材ですが、合わせて違和感はなく、新たな発見がありました。


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蒸し物:海老のしんじょう蒸し

海老のしんじょうは桜の葉に包んで蒸し、香りを纏(まと)わせた一品
菱沼:魚介類はシャブリと絶妙の相性

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焼き物強肴:穴子と茄子のあんかけ(後方) 桜ますの木の芽寿し(前方

焼き物は焼き穴子と茄子を少し甘酸っぱい味付け
菱沼:ワインもコクのあるタイプになるので料理もそれに合わせて力強く

強肴は桜ますの押しずし、季節の木の実の香りを纏(まと)わせて。
菱沼:日本の食材や食材の香りとシャブリの相性は良く、桜ますの押しずしはレ・クロと良く合いました。


シャブリの最新情報
■2014年のシャブリワインの日本市場向け実績は金額ベースで第2位、数量ベースは第3位。
輸出量は189万5千本(ー12%/2013)、1425万4千ユーロ(-4%/2013)。内訳はプティ・シャブリとシャブリで79%、シャブリ・プルミエ・クリュとシャブリ・グラン・クリュで21%です。
ちなみに、シャブリの区分は下からプティ・シャブリ19%、シャブリ66%、プルミエ・クリュ14%、グラン・クリュ1%となっています。

■日本に輸出されているブルゴーニュワインの54%は白ワインですが、ここ6年にわたり、シャブリはそのうちの40%以上を占めています。
■シャブリの生産量は約4000万本、ワイン生産農家は300軒以上
■市場の内訳(2014年数量ベース)でEU圏内(仏除く)65%、EU圏外35%
圏内:英26%、独10%、ベルギー7%、スウェーデン8%、デンマーク3%、オランダ4%、その他7%
圏外:日本9%、米7%、カナダ5%、ノルウェー4%、スイス1%、ブラジル0.5%、香港0.7%、その他7.8%

日本のワイン層、ワイン市場に関する調査
■日本の主たるワイン消費者の年齢層は30~39歳で、女性が中心。女性の40%は月に最低1回はワインを飲んでいます(男性は31%)。女性によるワインの消費は、市場の約60%を占めると予想されています。
■ワインの消費は都会が中心、大都市の大型店舗ではワインの品揃えも充実しています。

日本料理店におけるシャブリワインの消費はまだ少数ですが、モロー会長は「1~2年前から、日本の大都市で少しずつ、メニューへの掲載率が増えてきました。レストランに対するグラスワイン(グラン・クリュ、プルミエ・クリュ)の訴求にも力を入れています」と語っていました。
今まで奥手だったシャブリが、積極的な態度に変わってきました。
2013年は少ない収穫量と為替の影響で金額(-4%)、数量(-12%)とも影響を受けましたが、数量ベースでは順位(4位から3位)を上げている日本なので、和食と相性の良いシャブリに対する関心も高まります!

2015年06月14日

オーストリアの銘醸地ヴァッハウ最高の造り手〝ニコライホーフ〟

歴史と実績に裏打ちされたワイナリー
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世界遺産の地オーストリア・ヴァッハウにあるニコライホーフ



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資料提供:ファインズ
ドナウ河沿いの斜面に銘醸地が連なるヴァッハウ


オーストリア大使館商務部との共催試飲セミナー
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クリスティーネ・サース夫人とオーストリア大使館商務部のミヒャエル・オッター商務参事官

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オーストリア大使館商務部の会場はアットホームな雰囲気


ニコライホーフの沿革
2000年前にローマ人がマウテルンに建設したワインセラーがベースの歴史あるワイナリー。聖ニコライ修道院は985年の建造物で、その地下にセラーがあります。施設は1894年サース家の所有になりました。

サースさんは「秘密とは言えない秘密ですが、ニコライホーフのワインが特別の味がするのは、ローマ時代からのセラーにワインをゆっくり寝かせておくことで、パワーとエネルギーを得ることができるのです」と語っていました。

2005年から長男ニコラウスさんが4代目となってワイナリーを仕切っています。伝統を守りつつ、新しいことをということで、新ロゴを考案。Nikolaihofの文字の左上にアスタリスクをつけました。これは〝神聖な場所〟を意味しているそうです。

アイコンワインの『ヴィノテーク リースリング』ですが、1995年ヴィンテージがPP100点をゲットしています。辛口のリースリングでは世界初の快挙になります。また今年、『ヴィノテーク リースリング1997』がPP95、『トロッケンベーレンアレーゼ2005』が同じくPP95を得ています。


1971年からビオディナミ農法で栽培
■化学肥料は一切使わない ■月の周期に基づいて作業を行う ■ビオディナミ農法の先駆者

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資料提供:ファインズ

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資料提供:ファインズ

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オーストリアワインに精通しているオーストリアワイン大使たちから質問を受けるサース夫人

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左から
#1:グリュナー フェルトリーナー ニコライホーフ2013/3340円
グリュナー・フェルトリーナー(GV)の入門ワイン。サースさんは「GVは果実味というより、白コショウ、スパイシー、植物的」と表現。辛口で、ミネラル感と切れの良い味わいが魅力

#2イム ヴァインゲビルゲ グリューナー フェルトリーナー フェダーシュピール2013/4000円
我が家の定番、守備範囲も広く、飲み飽きしないワイン。舌の上に広がるまったり感、程よい酸味、軽いビター感、品の良いミネラル、わさびとは絶妙の相性

#3:エリザベート2012/6300円
伝統に則った昔ながらの製法で完成させたワイン。ニコライホーフの名が世間に知られるようになり、それを記念して1985年に1000年祭を行いました。その折、1000年の古樹はないので、その代案として、すべてのぶどうを同時に仕込もうと決断、樹齢は50年~60年になります。

サース:すべての品種が同じ畑に植えられています。ウィーンの製法ゲミシュターサッツと同じで、GV (主品種で量が多い)、リースリング(酸が魅力)、ノイブルガー(一斉収穫時は過熟していることが多いが却ってそれが魅力に)、ヴァイスブルグンダー(PB)、シャルドネのブレンドでハーモニーを生み出し、抜栓後の時間の経過で各品種の個性をより感じることができます。

#4:リースリング2011/3340円
サース:多くの人に自然なミネラルを感じるリースリングらしいリースリングを味わって欲しいと思いリリースしました。ニコライホーフでは常時14万リットルのワインをストックしています。昨年(2014年VT)は十分な収量が確保できたので、2011年のリースリングを製品化しました。

#5:フォン シュタイン リースリング フェダーシュピール2012/4270円
サース:初めのうちは桃や杏のニュアンスがあり、歳月の経過でミネラル感が出てくるワインです。リースリングはワインのプリンスだと思っています。赤ワインと白ワインを比べると、白のほうが少なく、なかでもリースリングはさらに少ないです。ヴァッハウは世界で最もリースリングに合う場所であり、典型的なリースリングを生産するには寒暖差があることが大事です。

#6:シュタイナー フント リースリング レゼルブ2010/8000円
#1から#5までの生産地域はヴァッハウですが、#6はドナウ河北側にあるクレムスタール、畑はすべて南向き
サース:777年にはすでにぶどう畑として存在していました。2003年は猛暑の年だったので、ぶどうが焼けてしまうのではと心配しましたが、酸もアルコ-ルもバランスが良く、驚くべき出来になりました。100年に1度の暑さの年でしたが、ビオディナミを実践していて本当に良かったと思っています。

2010年ヴィンテージについては
サース:2010年は涼しい年でした。厳しい酸のニュアンスがあり、リースリングのキャラクターにはちょうど良い感じです。ミネラル感の強いワインですが、シュタイナーフントのリースリングは原生岩なので、ぶどうの樹も根を張るのに苦労します。ぶどう樹はゆっくりと成長するので、ワイン自体にパワーがあり、コンセントレートしています。でもアルコール度数は12.5 %しかありません。


2003年に初めてオーストリアを訪問したのですが、前年2002年は大洪水で、多くのワイナリーが被害を受けました。訪問先のワイナリーのセラーには洪水の痕跡が残っていました。でも、ニコライホーフのセラーには水が一滴も入ってこなかったので、何の跡もありませんでした。地下セラーだったにも関わらず、です。
そこで、改めて2002年の収穫状況をサースさんに質問してみました。

サース:2002年は昨年(2014年)と同じで、雨が多い年でした。化学肥料を使っている畑だと、雨水が浸透すると、土壌に堆積していた肥料があふれ出し、結果として、ぶどうの実が大きくなってしまいます。ニコライホーフでは化学的なものは一切使っていないので、例年と同じ状態でした。できたぶどうは実が小さく、皮が厚かったです。ビオディナミによる樹は必要以上の水分を吸収しないのです。


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ドナウ河の対岸がシュタイナー フント

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サース夫人が好きな品種リースリング
2010年のシュタイナー フント リースリング レゼルヴのバランスの良さ、凛として優しくてどこまでも長い余韻

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画像提供:Nikolaihof
(470年の古文書に記載されている)中央ヨーロッパ最古の畑イム ヴァィンゲヴルゲのアンズの花。このアンズから造られるジャム(デメテール)は一度食べたら忘れられない至福の味、機会があれば是非!

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料理名人サース夫人の2冊目の料理本『Wachau Cookbook』、英語と独語の2か国版。ニコライホーフ自慢のアンズが表紙を飾っています。日本の料理好きな皆さまにお薦めしたい本です!


2014年ヴィンテージですが、雨が多く、他の生産者のところでは50%くらい収量が落ちてしまったそうです。でも、ニコライホーフでは例年と変わらない収量だった由。ぶどうの果粒は小さく、果皮は厚かったとのこと。
これについて、サースさんは「厳しい自然から自分の身を守ることをぶどう自体が実践していたから」と。加えて「植物は害虫や菌から自分を守る力を備えているので、ビオディナミのぶどうにはそれができるのです。薬(肥料)を与えると免疫力がなくなってくるのは人間もぶどうも同じです」と語っていました。
ビオディナミという言葉などなかった時から、シュタイナーの理論に則った農法を取り入れ、実践していたサース夫人らしい力強いお言葉


今回の滞在では京都訪問も叶ったようで、ホント良かったです。
この後、香港、ボルドーVINEXPOとまだまだ多忙な日が続くようですが、元気な笑顔のクリスティーネさんと再会できて嬉しく思いました。次回は11月ヴァッハウで!

2015年06月12日

イタリアのアルト・アディジェ〝小さな土地の偉大なワイン〟

最北部のワイン産地アルト・アディジェ
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フランスだけを管轄していたSOPEXA(フランス食品振興会)ですが、現在ではEU加盟国のワイン活動にも尽力しています。今回はイタリアからのワイン関係者です。

アルト・アディジェ・ワイン協会のマーケティング・ディレクターのヴェルナー・ヴァルトボットさんが来日し、同州のワインの魅力を語りました。主要な輸出先はドイツ、アメリカ、スイスで、昨年から日本向けのプロモーションを開始しています。輝き始めた伊最北部のアルト・アディジェ

というタイトルで、昨日(6月11日付)の産経EXでも紹介させていただきました。

アルト・アディジェ概要
1919年までオーストリア・ハンガリー帝国に属していましたが、第一次大戦でオーストリアからイタリアに。第二次大戦後、独立自治州となり、公用語としてドイツ語とイタリア語を使用。住民の7割はドイツ語を母国語にしています。

アルト・アディジェのぶどう栽培面積は5,300㌶、全生産量は33万hl、イタリアの総生産量のわずか0.7パーセントという小さな産地。品種は20種超。大事な品種は白はピノ・ブラン、ソーヴィニヨン・ブラン、ゲヴュルツトラミネール、赤はラグレイン、スキアーヴァ、ピノ・ネロ。「近年の研究でゲヴュルツトラミネールは東仏原産と判明。とはいえ、数百年以上も前から栽培されてきたぶどうなので固有品種として捉えています」とヴァルトボットさん
印は固有品種

アルプス山脈が北からの冷たい風を遮ぎり、南からの暖かい風がぶどうの生育に良い影響を与えています。日照時間は年間300日、降水量500~800ミリ、昼夜の温度差が激しいことで、アロマ豊かな白ワインを造るのに適しているエリアと言えます。土壌は班岩、石灰岩、粘板岩など様々

ワイナリー数は160超 = 協同組合13、エステートワイン(ぶどうを購入してワインを生産)36、独立系生産者(ぶどうも自分で生産)100以上

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プレスランチで供出された白4、赤2、デザートワイン2を資生堂ファロの料理と合わせて

#1:ピノ・ビアンコDOC “シルミアン” 2013 / ナルス・マルグライド、協同組合
シルミアン畑のぶどうを使用、アロマ、ミネラル、酸味豊か、アスパラガスとの相性◎

#2:ピノ・グリージョ DOC 〝プルヴェマーイ” 2012 / カステル・ザレッグ

エステートワイン
2,700円という納得価格、種の大きな果実(桃、杏、プルーン)等のアロマ、ミネラル、活き活きした酸が楽しめるチャーミングなワイン

#3:ソーヴィニヨン・ブランDOC“クオルツ”2013 / カンティーナ・テルラーノ、協同組合
酸とミネラルが際立ち、レモン、マンゴー、パパイア、ハーブ的なニュアンスも。協同組合のなかでも重要なワイナリーであり、熟成できるタイプのワインを生産しているとのこと

#4ゲヴュルツトラミネール リゼルヴァDOC “ブレンタル”2012

/ コルタッチャ、協同組合
「樫の大樽で熟成させたリゼルヴァ。本来ゲヴュルツトラミネールでリゼルヴァは造らないが、このワイナリーでは造ります」とヴァルトボットさん。 ライチ、マンゴー、オレンジなどの南国フルーツ、ラベンダー、ゲヴュルツにはぴりっとしたアロマがあるのでエスニック料理に

#5:ピノ・ネロ・リゼルヴァDOC “プレポージトゥス”2011 / アバツィア・ディ・ノヴァチェッラ、エステートワイン
ロゼワインで有名な生産者、ロゼはアルト・アディジェの中で最も北にある畑のぶどうを使用。#5は修道院のぶどうと買付ぶどうを使用。赤系果実、ボリューム感、バランスの良さ。アバツィアとは修道院の意味で、このワイナリーはローマやヴェネツィアに向かう巡礼者の休憩所として利用されていた由

#6:ラグレイン・リゼルヴァ DOC “カステル・リングベルグ“2010 / エレナ・ワルク、エステートワイン
女性ワインメーカー(エレナさん)の手による繊細なワイン、20カ月バリックで熟成。ロースト香、ココア、ヴァニラ、タバコ、酸味穏やか、タンニンまろやか

#7:モスカート・ローザDOC 2012 / フランツ・ハースエステートワイン
レイトハーヴェストによる中甘口のワイン。青リンゴ、爽快な酸と甘味のバランス。エレガント!

#8:ゲヴュルツトラミネール ヴェンデミア・タルディーヴァDOC “テルミヌム”2011 / トラミン協同組合
レイトハーヴェストによる甘口ワイン。南国果実、ハチミツ、上品な味わい、長い余韻、ブルーチーズがお薦め

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グリーンアスパラガスのグラティナートと生ハムのクレマ

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真鱈のソテーとバッカラ・マンテカート 春菊のソース

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カボチャとビエトラのリゾットとピノ・ネロ・リゼルヴァDOC “プレポージトゥス”2011

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島根県産 猪のブラザート

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リンゴのストゥリューデル シナモンのジェラートと共に


資生堂ファロのシェフソムリエ、第3回JETCUP イタリアワイン・ベスト・ソムリエ・コンクール優勝者の本多康志さんはアルト・アディジェのワインについて「小さな産地ですが、白ワインに関しては重要な産地です。ワインはミネラル感やしっかりした果実味、酸味が魅力です」とコメント

本多ソムリエのおっしゃるように、白ワインはとても良かったです。上品で清冽、和食との相性もイメージできるワインたちでした。赤はタンニンもソフトで重厚過ぎない点が気に入りました。如何せん、ワインの価格帯が6000円、7000円だと、日本市場でアルト・アディジェ産がどこまで入り込めるかは疑問です。ヴァルトボットさんにはその点について忌憚ない意見を言わせていただきました。品質が良いだけに価格次第で、日本での動きにも期待できると感じています。

来年以降のプロモーションで、なんらかの変化を感じさせてくれれば嬉しいです。

2015年05月13日

ボランジェ『ラ・グランダネ2005』&ボランジェ傘下 ロワールの逸材『ラングロワ=シャトー』

007シリーズ最新作『スペクター』公開に先駆けて
ラ・グランダネ2004

のアジア圏初のお披露目から3年が過ぎました。その時、新輸出部長(現在はコマーシャル・ディレクター)として来日したギイ・ド・リヴォワールさんがボランジェ社の沿革について詳しく語っていたのでリンクしておきます。

今回の来日は5月1日発売

の『ラ・グランダネ』と『ラ・グランダネ・ロゼ』のヴィンテージ(VT)2005の紹介で、12月公開予定の007シリーズ最新作『スペクター』に先駆けてということもあったので、映画についても触れていました。007は3年ぶりの公開になります。


映画に登場するアイテムは『R.D.2002』のようです。
これは1952年VTから数えて50年目の記念VTで、24番目のボトルになります。撮影はすでに終了していますが、どのようなシーンにどのように登場するかは、現在編集作業中とのこと。ダニエル・クレイグの最後の作品になるのは残念ですが公開を楽しみに待ちたいと思います!

和の素材と合わせて
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会場は虎の門のアンダーズ東京の51階、ここでは景色もご馳走でした!
ウェルカム・シャンパンは『スペシャル・キュヴェ』
ベースワインは2011年(40%)と2010年(35~40% )で、そこにリザーブワイン(5年~15年のマルチヴィンテージ)をブレンド

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スペシャル・キュヴェのために52階からお寿司が! 新鮮なネタとすし飯とのナイス・マリアージュ


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『ボランジェ ロゼ』にはフォアグラとウズラのテリーヌ 山椒風味のイチゴのピクルス
アンダーズ東京では、すべての料理に和食器を使うこと。各皿に和の食材をエッセンスとして加えることをコンセプトにしています。一皿目は山椒が登場。ロゼのベリー系果実の味わいはイチゴに。ロゼのエスニックな要素は山椒の風味と適度なバランスを保っていました。

2005年はクラシックなヴィンテージ
2005年は難しい年だったにもかかわらず、秀逸なVTが造れた要因のひとつは〝自社畑の比率の高さ。生産に必要なぶどうの約70%が自社畑から供出できることは品質面でも優位にあることを示しています。

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新発売『ラ・グランダネ2005(PN70% CH30%、ドザージュ7g/L、デゴルジュマン2014年11月、希望小売価格17,500円)』をロブスターのポーチ、甲殻類ナージュ、ワサビ、ハーブ、蕪豆と合わせて。
ブリオッシュ、ナッツ、ドライフラワー、スモーキーなニュアンスがあり、温度の変化で複雑味が増してくるので、こくのあるソース(低温調理で旨味を抽出)と良い相性

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新発売『ラ・グランダネ・ロゼ2005( PN72% CH28% 、赤ワイン(ラ・コート・オーザンファン/PN100%)を5%ブレンド。ドザージュ6 g/L、デゴルジュマン2014年9月、希望小売価格22,000円(税別))』は北海道産蝦夷鹿オリエンタルスパイス(スターアニスやシナモン等)のポーチ、カラメライズしたルバーブ マッシュルームのフリッターと合わせて。
綺麗なサーモンカラー、GFやオレンジのような柑橘系果実、エレガントな酸味が魅力、フェミニンなスタイル。前菜、甲殻類から肉類まで幅広い範囲で相性が楽しめる逸品。当日のマイベスト、お薦めのロゼです!

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ボランジェが誇る赤ワイン『ラ・コート・オーザンファン2012(生産本数は240本)』
ブルゴーニュの銘醸ワインと比肩できるオーザンファンは、『ラ・グランダネ・ロゼ』にブレンドされています。
山梨鶏のコック・オー・ヴァン トリュフポテトのクレイポットと合わせて。
料理とワインの共通項である熟成感と香りをマリアージュさせることができました。

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季節のミニエクレア

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ボランジェの顔として活動中のギイ・ド・リヴォワール コマーシャル・ディレクターと供出されたシャンパン。
「マリアージュではスパイスがとても効果的でした。アジアンフードや和食はシャンパンと良く合います」とコメントしていました。

ウイリアム王子&キャサリン妃の第2子誕生で英国はお祭りムードです。
ボランジェは1884年にヴィクトリア女王からロイヤルワラント(英国王室御用達)を受け、以後、歴代の英国王に愛飲されています。すべてのボトルにロイヤルワラントの印が入っていますので、抜栓時に是非チェックなさってみてください。



ピュアでエレガントなラングロワ=シャトーのクレマン・ド・ロワール
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ボランジェの新ヴィンテージ紹介から一週間して、同社傘下のラングロワ=シャトー

からジェネラル・ディレクターのフランソワ=レジス・ド・フージュルーさんが来日しました。
ロワール地方ソミュール地区にあるラングロワ=シャトーは昨年3月からアルカンが正規代理店になっています。ちなみに、ボランジェ・グループにはシャンパン・メゾンのアヤラ(2004年)、ブルゴーニュのシャンソン(1999年)、そしてラングロワ=シャトー(1973年)が属しています。

沿革について
ムッシュ・ラングロワとマドモワゼル・シャトーの結婚で誕生したラングロワ=シャトー。
1885年、ロワールにメゾンと畑を所有していたラングロワさんが友人と共同でビジネスを開始。第1次大戦でラングロワさんは亡くなりましたが、彼の遺志は妻のジャンヌさんが引き継ぎました。 
1873年、ボランジェはシャンパーニュ地方から離れた場所に、家族経営で品質の高いワインを生産しているメゾンを探していました。「品質の高いワイン造り」をモットーにしていたラングロワ=シャトーに注目したボランジェは株の大半を購入し、同社を傘下におさめます。ラングロワ=シャトーが他のボランジェ・グループと違う点は今も株主のなかに創設時のメンバーが残っていることです。

畑に根差した生産者であることを自負するラングロワ=シャトーでは、ソーミュールに45㌶、ソミュール・シャンピニーに11㌶、サンセールに15㌶の計71㌶の自社畑を所有しています。当初はクレマン中心でしたが、今ではスティルワインも生産。スパークリングが50万本、スティルワインが40万本、全体の60%を輸出していて、日本は第6位の市場になっています。自然環境を尊重した栽培と醸造を実践し、「Terra Vitis(テラ・ヴィテイス/全フランス規模の健全なぶどう栽培と衛生的なワイン醸造による高品質なワイン生産のための認定機関) 」の認証を取得しています。

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丁寧な造り、こだわりが伝わってくるラングロワ=シャトーのアイテム

クレマン・ド・ロワールは手摘み、ソフトな圧搾、最低でも一年以上の熟成が必要。ラングロワ=シャトーでは、シャンパーニュと同じく一番搾りと二番搾りに分けて醸造。リザーブワインはシュナン・ブランのみ(全体の5% 、タンクで1~2年熟成させたVT )を使っています。


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会場はザ・キャピタルホテル東急『水簾』
和食に(左から)3種のクレマン・ド・ロワール、2種の白ワイン、2種の赤ワインを合わせて


#1:クレマン・ド・ロワール ブリュットNV
ぶどう品種:シュナン・ブラン60%、シャルドネ20%、カベルネ・フラン20%、ドザージュ12g/L
2年の熟成を経ているにもかかわらずフレッシュで爽やか、ピュアで生地の綺麗さは秀逸。「すべての泡ものと白ワインに関して、MLF(マロラクティック発酵)はしていません」とフランソワさん。その理由は「ワインを重くしてしまうから」とのこと。酸を大事にしている理由がここにありました。

#2:クレマン・ド・ロワール レゼルヴ2007
品種構成は#1と同じ。複雑な味わいのクレマン。瓶詰めは2008年、デゴルジュマンは2014年なので6年にわたる瓶熟。熟成感と同時にフレッシュさも備えたエレガントなタイプ。ドザージュ11g/L

#3:クレマン・ド・ロワール〝カドリーユ〟エクストラ・ブリュット2007
ぶどう品種:シュナン・ブラン50%、シャルドネ30%、カベルネ・フラン10%、ピノ・ノワール10%。2007年VTからピノ・ノワールを使用 (それ以前はカベルネ・ソーヴィニヨン)。50年かけて様々なトライアルをした結果、ピノに変更、重厚感のある味わい。
産経EXワインのこころでも紹介>>>http://www.sankei.com/life/news/150423/lif1504230016-n1.html

4つの異なる品種を使うことで4つの異なるテロワール(石灰、シスト、粘土石灰、粘土シスト)を反映。〝4〟にこだわったクレマンで一番搾りのみ使用。ドザージュは4g/L、最低熟成期間4年。ぶどう本来の味わいを感じるタイプ。ネーミングの〝カドリーユ〟は四頭の馬と騎手によるパレードを意味し、その後、馬なしで踊るダンスが流行したとのこと。もともとソミュールは馬術で知られており、地元の〝カドル・ノワール国立馬術学校〟とラングロワ=シャトーは長くパートナーシップを結んでいます。

#4:サンセール・ブラン シャトー・ド・フォンテーヌ・オードン2013
ぶどう品種:ソーヴィニヨン・ブラン100%、テラ・ヴィテイス認定自社畑のぶどう
サンセールの西側は石灰、ロワール河に近い東側はシレックス.。#4はシレックス土壌で南向きの畑(15㌶)。醸造担当者は3年前に同社に参入(2012年VTから生産)。豊かな果実味、ミネラル感、バランスの良い味わい

#5:ソミュール・ブラン V.V. ドメイヌ・ラングロワ・シャトー2008
ぶどう品種:シュナン・ブラン100%、テラ・ヴィテイス認定自社畑のぶどう
アロマの複雑さ、ハチミツやクルミ、重厚感。V.V(35年以上の古樹)で収量は40hl/ha、完熟ぶどう(2回に分けて)収穫。樽発・樽熟成(225L/ボランジェやシャンソンと意見交換を行い、それを反映させている由).。密度の濃いワイン

軽快でフレッシュなサンセール(SB100%)と樽使いでボディのあるソミュール・ブラン(シュナン・ブラン100%)との対比が面白く、お造りにあわせても生臭さが出ない点がとても良かったです。

#6:シノン2013
ぶどう品種:カベルネ・フラン100%(栽培農家のぶどう)、砂利を多く含む土壌、ベリー系果実、スパイシーさ、まろやかなタンニン、肩肘張らないで楽しめる軽快な味わい。パリのビストロで扱いの多い赤ワイン。「2013年は難しい年だった」とフランソワさん


#7:ソミュール・シャンピニー V.V.ドメイヌ・ラングロワ・シャトー2011
ぶどう品種:カベルネ・フラン100%/テラ・ヴィテイス認定畑の2区画のぶどう、古樹35年以上(V.V.) 、1年間樽(新樽率20%)で熟成させることで複雑なアロマ、味わいを表現。リッチで複雑味のあるワイン

桜懐石とのマリアージュ
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前菜 旬菜盛り合わせ
春野菜のお浸し、アスパラガスと白魚の黄味酢がけ、烏賊と竹の子の木の芽和え、桜のお寿司(タイの昆布〆)、姫サザエの旨煮、川海老のかき揚げ、巻き玉子

#1~#3のクレマンの個性(果実感、熟成感、重厚感)を生かして、料理は酢の物をベースに構成 (加熱によって出る味わいの深みや香ばしさ、ミネラル感等が感じられるような工夫がされていました)


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吸物 生海苔仕立て 安平 野菜 香り葉/ 旨味を生かした味付け
サンセール・ブランと合わせて


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造り しまアジ、イサキ、カツオのたたき サラダ仕立て ポン酢がけ
ソミュール・ブラン2008 とソミュール・シャンピニー2011 (CF100%)に合わせて
ポン酢と白ワインの相性の良さ、加えてカツオのたたきの血合いが赤ワイン(CF)の鉄分っぽさと相性良し

画像なし)焼物 鰆香り焼き 豆腐田楽 酢取野菜
さわらの木の芽焼き、豆腐(赤みそ)、蛍イカ、蝦夷アワビのバター炒め
サンセールのフレッシュ感、ソミュール・ブランのこってり感とマッチ
赤ワインのソミュール・シャンピニーは味噌の存在がワインと料理のつなぎ役に


煮物 豚角煮 人参、青味
出汁で炊いた豚の角煮にクリームソースを添えた一皿。プレスランチのメニューは料理長とソムリエの計3人が考案したもので、ここでは旨味と出汁の効果がマリアージュのポイントになっていました。フランソワさんいわく「長く煮込んだお肉の脂分がソミュール・シャンピニー2011のフレッシュ感と相まって」と
 

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桜海老の炊き込み御飯、留椀 味噌仕立て、香の物
海老のエキス分がしみこんだ炊き込み御飯に泡ものを合わせて。
同店お薦めのマリアージュが#3と炊き込みご飯。エキストラ・ブリュット(4g/L)のカドリーユより、もう少し糖分の多いレゼルヴ2007(11g/L)でも良かったと思います。


季節の水菓子
想定外の一皿でしたが、ゴマあんを春巻の皮で揚げたお菓子には口中の脂分を洗い流してくれる赤ワイン(やさしいタンニン)


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来日したジェネラル・ディレクターのフランソワ=レジス・ド・フージュルーさん

毎日シャンパン三昧だとお金がかかりすぎますが、ラングロワ=シャトーのクレマン・ド・ロワールなら2000円台で、上質な泡の世界に誘ってくれます。
3種類のクレマンをテイスティングして、生地の良さと酸味の綺麗さを実感しました。ロワール地方の食材には日本と共通するものが多いので、スパークリングワイン&スティルワインともに和食とのマリアージュが楽しめると思います。

ラングロワ=シャトーでは〝カドル・ノワール〟との提携の他、ル・マン24H耐久レースやロワールの街中を走行するトゥ―ル・オートのオフィシャル・サポーターとしてイベントのバックアップもしています。
初夏のテラスに良く似合うラングロワ=シャトーのクレマン・ド・ロワールおよびスティルワインに目を向けていただけると嬉しいです。

ボランジェ&ラングロワ=シャトーについてのお問い合わせは(株)アルカンまで
℡03-3664-6591まで

2015年03月11日

クリスチャン・ムエックスさんが目指す〝洗練されたカリフォルニアワイン〟

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クリスチャン・ムエックスさんと奥様のシェリーズさん@ エノテカ・ミレ銀座
オレンジ系ネクタイとスカーフで統一したおふたり、マダムの選択力はさすが!

愛好家垂涎のワイン、ボルドー地方ポムロ-ル地区の『シャトー・ペトリュス』の顔として長年貢献してきたクリスチャンさん。育ちの良さを感じさせる雰囲気は、そのままペトリュスの品格と重っていましたが、2011年ヴィンテージ(VT)から次世代(甥とご子息)にシャトーを委ねています。今後は30年以上頑張ってきたカリフォルニアワインにさらに力を入れていくそうですが、アメリカはマダムの母国でもあります。

ワイン愛好家へのこまやかな配慮
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エノテカの招聘で来日したクリスチャンさん。彼を囲むスペシャル・テイスティングが東京3会場で行われました。私は銀座店にお邪魔したのですが、彼の温かなホスピタリティーに愛好家の皆さんは大いに癒されていました。


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#1:レ・ロゾー・サン・テミリオン・セレクテッド・バイ・クリスチャン・ムエックス2012
#2:ポムロール・レゼルヴ・セレクテッド・バイ・クリスチャン・ムエックス2011
#3:シャトー・ベレール・モナンジュ2011

トロタノワとオザンナを2006年VTで比較
#4:シャトー・トロタノワ2006
2006年は良年。7.2㌶で生産量は約1,500ケース。ナポレオン1世の時代から耕すのが大変な土地(粘土と砂利)で、雨が降るとより堅固。〝tropennuyeux〟がシャトー名の由来で、固すぎて耕せないの意味。
クリスチャン:若干オレンジを含む綺麗に熟成した色調、果実味とボリューム感、香りの中にはトリュフ、ミート、なめし皮のニュアンス、味わいはリッチでまるみがあります。このワインは少し温度を下げて、17度くらいで飲むのがベスト。トロタノワはペトリュスのように骨格がしっかりした男性的なイメージ、ラ・フルール・ぺトリュスはトロタノワより女性的で繊細。土壌は砂利質がメインで大きな砂利が日中太陽の光を吸収してぶどうを温めてくれるので、一番最初に収穫できるシャトー。そのあと後、3週間ほどでサン・テミリオンの収穫。

#5:シャトー・オザンナ2006
1999年にセルタン・ジローを購入。ジローの名はそのままオーナーの家族が引き継いだので、別名を考案。
クリスチャン:エノテカ廣瀬社長と相談の結果、古いラテン語で、救いたまえ、賛美を意味する『オザンナ』に決定。ペトリュスやドミナスは男性的なので、「a」で終わる女性的な名前を考えました。
ポムロールの畑は全部で800㌶、中心部は約200㌶、なだらかな丘陵地。トロタノワ、オザンナ、ラ・フルール・ペトリュスの3つのシャトーはそれぞれ0.5㎞しか離れていないにもかかわらず、ワインの味はすべて異なる、そこがワインの面白いところです。ともに2006年VT、キャラクターは異なり、トロタノワよりなめらかでソフトなのがオザンナ、喜びのあるワインで余韻も長いです。


ジェネリックワイン 苦渋の決断
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これら2本はジャン・ピエール・ムエックス(J.P.M)がエノテカのために造るジェネリック・ワイン

#1:レ・ロゾー(〝葦〟の意味)はクリスチャンさんが居住するシャトー名
クリスチャン:2012年は良年、熟成を経てさらに良くなると思っています。果実味、チェリーのような甘さがあり、力強すぎないVTです。サン・テミリオンは石灰質土壌なので生き生きした酸味、土壌由来のフィネスが特徴です。
#2:10 年前からの定番ワイン。
クリスチャン:2011年は変化の激しい難しい年でした。スミレの香り、酸がやさしく、アプローチしやすいのがポムロールの特徴です。

クリスチャンさんの決断
ネゴシアンのJ.P.Mではぶどうを買い付けて醸造、ブレンドしています。#1や#2はエノテカのために生産しているジェネリック・ワインです。「ボルドーでは2011、2012、2013とぶどの収穫が難しかったため、原料調達が難しくなっています」とクリスチャンさん。続けて「ボルドーには9000のシャトーがあり、私でも400くらいのシャトーしか知りません。ぶどうの生産も良い年は問題ないのですが、難しい年は品質を維持することが困難です。品質が維持できなければやめるしかないと考え、私は今ある分を最後に生産を中止する決断をしました」と。
これにより、エノテカのみならず世界中で生産していたJ.P.M ジェネリック・ ワインの生産が終わることになります。

チャーミングだった祖母と天使の名を持つワイン
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#3
クリスチャン:2008年にべレール購入、1952年に父がシャトー・マグドレーヌを購入しており、2008年以降、INAOの承認を受け、2つのシャトーを併合することに。『べレール・モナンジュ』が誕生しました。ワインは花のような香り、繊細でやわらかい桜のようなイメージです。時間の経過でまるみが出てきます。石灰質土壌由来の酸がしっかりあり、サン・テミリオンらしいワインです。ボルドーにべレールという名は124あり、差別化したいとの思いから、マイ・エンジェル(私の天使)と祖母の名(モナンジュ)に由来する『モナンジュ』と付けました。ラベルの天使はドイツの画家の作品で16世紀に存在するラベルをコピーしています。長い歴史を持つべレールには古樹が多く、古いものでは1816年VTがあります。

カリフォルニアの『オテロ』
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日の丸をイメージしたラベル、デザインに精通するマダム・ムエックスが手掛けました。

#6:エノテカだけのアイテムで、このワインも廣瀬社長と京都の鴨川を散歩中に考案。命名にあたっては日本人が苦手な「r」が入らない工夫も。カリフォルニアのナパに30年以上前にたちあげたドミナス

、弟分の『ナパヌック』に次ぐ三男坊の『オテロ2009』。
クリスチャン:グラン・ヴァンのラトゥ―ル、セカンドワインのレ・フォール・ド・ラトゥ―ル、サードワインのポイヤック・ド・ラトゥ―ルと同じとらえ方で、オテロはジェネリック・ワインになります。濃い色調で、香りはタイム、スパイス、松林を歩いているような印象です。しっかり主張しているワインでパワーがあり、舌の上でスパイシーさが広がります。飲みやすいですが、寿司や刺身ではなく、煙が漂っているような場所で食す焼き鳥に良く合います。まだフィネスが足りないかもしれませんが、その上を行くのがナパヌック、さらにその上がドミナスです。

カリフォルニアでの挑戦ついて質問したところ、
クリスチャン:30年以上にわたり挑戦してきましたが、〝洗練されたカリフォルニアワイン造り〟が究極の目標です。カリフォルニアのワイン造りではまだ技術面が強調されているので、私は文化をもたらせていきたいと思っています。カリフォルニアでは土壌と向き合っていきたいです。

〝洗練〟こそがカリフォルニアでの目標
過熟を嫌うクリスチャンさんは2010年VTのオテロ生産を中止しました。メルロの熟しすぎが原因です。ミスター・メルロの異名を持つクリシャンさんですが、「メルロは良いタイミングでの収穫が大事で、カベルネ・ソーヴィニヨン(CS)よりデリケート」とコメントしていました。

基本的にナパではメルロではなく、CSが主要品種になっています。2006年が初VTのオテロのブレンド比率も2009年はCS94%、PV6%で、近年メルロは使用していません。ドミナスとナパヌックに関してもメルロは使用していません。

最後に・・・クリスチャンさんの人柄を感じさせる発言を
「オテロ2009は約6ヶ月の樽熟成、その期間を1年間にしていたら、もう少し〝洗練〟していたかもしれない。今飲んでみてそう思う。やっぱり自分はまだまだ学んでいるんだよね」

「自分としては98点や99点の方がいい。伸びる可能性や次回こそもっといいものができるという希望を持ち続けていたいから」(ドミナスの高評価を受けて)
偉大なワインの造り手のおごることのない言動から、ワインがより魅力的なものに感じられました。〝品格〟のあるクリスチャン・ムエックスさん、素晴らしい方です!

製品についてのお問い合わせはエノテカまで ℡03-3280-6258

2015年02月09日

ブルゴーニュの真新しくも秀逸な〝オリヴィエ・バーンスタイン〟& 老舗の”ルイ・ジャド〟

2007年ヴィンテージからデビューしたオリヴィエ・バーンスタイン
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1月23日、ベリー・ブラザーズ&ラッド(BB&R)

の招聘で来日したオリヴィエ・バーンスタインさん
2007年からブルゴーニュでワイン造りを開始しました。いくつもの会社を経営しながら、本業の合間を縫って、ぶどう栽培や収穫作業に関わり、ワインに強く惹かれていきます。35歳の時に南仏で8㌶のぶどう畑を購入し、ワイン界に参入。そして、魅了され続けていたジュヴレ・シャンべルタンの地で畑を借り、長年の夢を実現させます。現在、7つのグラン・クリュGCと3つのプルミエ・クリュPCと1つの村名ワインを生産、25か国に輸出しています。彼のワイン人生に影響を与えたジュヴレ・シャンベルタンの造り手はアルマン・ルソーやベルナール・デュガ=ピィとのこと。そのオリヴィエさんが手掛ける真新しいワインは魅力にあふれています。

仏ロワールのトゥーレーヌ生まれで、実家がクラシック音楽を生業にしている家系ゆえの芸術的センスがワイン造りに反映しているのか。「子どもの頃から異なるニュアンスを感じ取るように育てられた」とオリヴィエさんは語っていました。ドイツ人の母方の祖父は著名な作曲家(バッハやモーツァルト等)の楽譜で名高いベーレンライター出版社の創業者で、父(仏人)はクラシックメゾンのラベルを作る仕事に携わっています。

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ブルゴーニュのGC畑はわずか1%、PCは10%程度のみ。そのようななか、畑の所有者とコンタクトを取りながら、オリヴィエさんとスタッフは栽培作業を行い、畑を管理しています。

5アイテムをティスティング
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#1:2009 ジュヴレ・シャンベルタン
2区画をブレンドした村名ワイン、深く綺麗なルビー色、香り華やか、果実味とスパイシーさ、ミネラル感、喉の奥に広がる温かさとAlc由来の甘さ、骨太/参考小売価格8,860円(税込)

#2:2009 シャンボル・ミュズニー〝レ・ラヴロット〟(プルミエ・クリュPC)/500ケース(6本入り
1㌶にも満たないPC、樹齢60年、穏やかな斜面にあり、石ころの多い茶色い土壌。グラスの下の字が読めるくらいの明るいルビー色、ソフトなタンニンと上質な酸のバランス、口中に広がる滑らかな食感、シャンボール・ミュズニーが女性的と表現されるゆえんの典型的スタイル。2007年から2013年までの間でレ・ラヴロット名を冠しているのはオリヴィエ・バーンスタインのみ/参考小売価格15,340円(税込)

#3:2010 ジュヴレ・シャンベルタン
#1とのヴィンテージ違い。2010年のほうがよりフレッシュで、酸味、タンニンを感じさせるVT、ミネラル感、ぶどうの凝縮感、重厚さ/参考小売価格8,860円(税込)

#4:2011シャルム・シャンベルタンGC/350ケース(6本入り
シャルム・シャンベルタンとマゾワイエール・シャンベルタンの2区画をブレンド
(マゾワイエールはシャルムの下方にあり、モレ=サン・ドゥニに接しています。シャルムはシャンベルタンの真下にあり、法的に双方ともシャルム・シャンベルタンとして販売可)
シャルムの表土は鉄分を多く帯びているので赤みがかっていて石灰岩の小石が多く、マゾワイエールの表土はより深く、色も質感もシャルムより軽く小石も少なめ。果実味豊かな香り、スワリングでより複雑なニュアンス、肉感的で、Charmesの名の通り、魅力的なワイン/参考小売価格22,680円(税込)
 

映画バベットの晩餐会の触発されて
#5:2011クロ・ヴージョ GC/350ケース(6本入り
シトー派の修道僧たちによって開拓されたブルゴーニュで最も高名な畑。オリヴィエさんにクロ・ド・ヴージョを造る気にさせたのが映画『バベットの晩餐会』。拙著『映画でワイン・レッスン』について話をした時、大いに興味を示してくださっていたオリヴィエさんだけに、これは嬉しいことです!
若さを感じさせる紫の色調、香りはダブルデキャンター後でも注がれた時点ではまだ閉じ気味。黒系果実や黒系スパイス、口中に残るあたたかな余韻、洗練された力強さを感じさせる長熟ワイン/参考小売価格28,300円(税込)

ワイン造りの特徴
栽培について
■自社畑はジュヴレ・シャンベルタン〝シャンポー〟とマジ・シャンベルタンを所有。レンタル契約している畑の所有者名については非公開
■栽培担当はジュヴレ・シャンベルタンのヴィニュロン/ぶどう栽培醸造家出身リシャール・セガン
醸造について
■2009年から全房発酵(除梗しないで房のまま発酵)と除梗による発酵を半々ずつ実施。「良く熟した果梗はワインの構造をしっかりさせる要素になる」とオリヴィエさん
■グランクリュ、プルミエクリュとも新樽100%使用
■樽はステファン・シャサンから調達 
オリヴィエさんが所有する森林から樽材用の木を伐採、2年間のシーズニング(木材の自然乾燥)を行い、乾燥後の樽材はステファン・シャサンに運び入れて製樽。焼き加減は非公開

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ワインはダブルデキャンターをしてから供出されましたが、ブルゴーニュ型グラスを使うことで、シャンボル・ミュズニーの香りの華やかさや味わいの繊細さがより把握しやすい状態に

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オリヴィエ:年と共に繊細なものに惹かれます。自分にとって、まさにブルゴーニュの赤ワインがそれであり、世界一のワインだと思っています。ジュヴレ・シャンベルタンが好きなのは、そのミネラル感と厳格さです。ブルゴーニュのワインは最初からすべてを見せてくれませんが、自分が探し求めていたものが少しづつわかってきた時点で、それらは自分の血となり肉となります。絵画や音楽と同じです。

BB&Rのブルゴーニュ担当ジャスパー・モリスMWが2007年VTを初めて紹介してから、オリヴィエさんの名声は英国内だけでなく、世界中で注目されるようになりました。私もときめきました!
今世紀に誕生したオリヴィエ・バーンスタインさんのワインからは目が離せそうもありません。
ワインのお問い合わせはBB&Rまで/℡03-3518-6730




Maison Louis Jadot 2013 Barrel Tasting /メゾン・ルイ・ジャド2013 バレル・テイスティング

2月5日@パレスホテル東京で恒例のバレル・テイスティングがあり、業界関係者140名余りが参加しました。「空輸で運ばれたワインはフィルターをかけていない状態なので、この段階では将来を予想して試飲するのが肝要です」とルイ・ジャド

の日本市場担当輸出部長オリヴィエ・マスモンデさん。2013年ヴィンテージ(VT)のワインが瓶詰されて日本に届くのは12月上旬の予定です。

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今回初登場のブルゴーニュ〝ル・シャピトル(PN100%)〟、格付けはACブルゴーニュ。ルイ・ジャド社を経営するガジェ家が所有する畑(約1.5㌶)のワインで、畑名をラベルに併記することが認められています。9月に本国フランスと英国、米国&日本の4か国のみで販売予定。初ヴィンテージは2011年で、生産量はわずか400~500ケース(12本入

色調は赤い果実を連想させるルビー色で若干淡め、ソフトなタンニンとメリハリのある酸味が印象的でした。色や酸についてオリヴィエさんに伺ってみたところ、「覚えていると思いますが、2011年VTは暑かったので果粒は小さく、果皮も厚めでした。2013年は寒くて雨が多かった為、雨を含んだぶどうの果粒は大きくなり、果皮も薄く、そのため色調は若干薄いです。ル・シャピトルは粘土と泥灰土に由来する豊かな果実味と、強すぎない酸が特徴のワインです」とおっしゃっていました。

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ル・シャピトルはコート・ド・ニュイ地区の一番北のシュノーヴに位置しています。畑の中心には修道院があり、歴史が古く、スピリチュアルな場所として知られているそうです。

2013年ヴィンテージについて
寒くて冬が長く、春先は雨が多かった年。6月末の段階で生育サイクルは3週間ほど遅れていました。7月は異常な暑さからスタート、月末に大きな雹(ひょう)害があり、ムルソーからアロース・コルトンにかけての村々がダメージを受けました、2013年同様、収量面ではマイナスになりましたが、ワインの品質に問題はなく、9月に入って、「理想的な日照条件に恵まれ、品質の良い2013年VTができました」とオリヴィエさん。収穫は10月第一週から開始、過去10年間のなかでは遅めの収穫といえます。

白ワインはピュアでミネラル感があり、しっかりとした個性を備えています。親近感のあるワイン。10年は熟成させることができます。赤ワインはストラクチュアがあり、洗練されたタンニン、エレガントな酸味。2013年はブルゴーニュ人にとって〝上質でクラシックなヴィンテージ〟とのことです。

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バレル・テイスティングでは赤・白計22アイテムが並んでいました。全体のバランスが良かったのが白ワインの『コルトン・シャルルマーニュ グラン・クリュ』(写真)。
プイイ・フュイッセ(ドメーヌJ.A フェレ)の『テット・ド・クリュ〝レ・ペリエール〟(7,500円)』や同『キュヴェ・オール・クラッセ〝レ・メネトリエール〟(8,500円)』のミネラル感とエレガントさも魅力!
赤ワインではフェミニンでバランスの良い『シャンボール・ミュジニー プルミエ・クリュ レ・ボード(17,000円)』

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オリヴィエさんに「ワインと一緒の写真を撮りたいので、試飲ワインの中から1本だけ選んでください」とお願いしたところ、手になさったのは、やはり、コルトン・シャルルマーニュでした! 


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ビオディナミ農法を導入しているサヴィニー・レ・ボーヌ、標高220~360㍍、土壌は砂利や石の多い石灰質(2010年9月撮影)

2008年~2012年までのバックヴィンテージ(20アイテム)の試飲もありました。
ここでのマイ・ベストは『サヴィニー・レ・ボーヌ ブラン プルミエ・クリュ クロ・デゲット2011(5000円)』、切れが良く、ふくらみのある味わいで、今飲んで素直に美味しいワイン

追加情報2014年ヴィンテージに関して
昨年も6月末に雹害があり、コート・ド・ボーヌ地区の南の村々(ポマールやヴォルネイ等)が被害(80%)にあいました。ただ、時期的に早かったことが幸いし、ぶどう樹は自力で回復。一方、被害を受けなかったコート・ド・ニュイ地区は通常通りの収穫で、ぶどうの出来も素晴らしい由。2014年はコート・ドール全体でマイナス30%の予想。収穫は9月第一週から始まり、今はマロラクティック発酵(MLF)の最中。2014年をひとことで表現すると、〝フルーティーかつエレガントなワイン〟とのこと。来年のバレル・テイステングが楽しみです!

ルイ・ジャドのワインについてのお問い合わせは日本リカーまで/℡03-5643-9770

2014年02月21日

Ch Margaux2013 バレル・サンプルテイスティング& Margaux du Ch Margaux2009 のお披露目

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2014年2月17日の素晴らしい体験!
コンラッド東京でのシャトー・マルゴーと(一社)日本ソムリエ協会共催のセミナーで、マルゴー史上初の画期的な取り組みが行われました。2013年ヴィンテージ(VT)のバレル・サンプルのテイスティングです。同時に、シャトー・マルゴーが約1世紀ぶりにリリースしたサードワイン『マルゴー・デュ・シャトー・マルゴー2009』のお披露目もありました。

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総支配人&最高醸造責任者のポール・ポンタリエさんとは昨年9月以来の再会で、とっても嬉しかったです。撮影用ポーズのリクエストにも快く応じてくださいました。
手にしているワインがシャトー・マルゴーの新キュヴェ『マルゴー・デュ・シャトー・マルゴー2009』
ポンタリエさんのネクタイも、茶色のラベルに合わせた感あり。オシャレな気遣いも素敵です!

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セミナー開始前のテーブルには8脚のグラスが並んでいました。

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サービスしていただいた後の全グラス



シャトー・マルゴーの沿革をたどりながら
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「300年前から今日まで全く変わらないのはテロワールであり、我々はすべてを熟知しています。ただ、より良いものを造り出そうとする手段は変化しています。我々は〝生きている伝統〟と言えます」とポンタリエさん


~16世紀、17世紀になって、単に良いワインを造るのではなく、〝卓越したぶどうを造る〟ためにはどうすればよいかということがなされてきた。つまり、この時点から卓越したワイン造りの歴史が始まったと言える。自然環境に合わせ、世代を通じた人間のたゆまぬ努力と意欲がグラン・ヴァンを生み出し、現在のような素晴らしいワインが生産できるようになった。グラン・ヴァンがわかる人たちが形成している市場が常に我々とともにあったことはラッキーだった。当初は英国、アイルランド、ドイツが中心で、18世紀には米国が登場。20世紀になって世界各国で販売されるようになり、日本は30年前から販売の対象になっている~

ポンタリエさんから、「現在、シャトー・マルゴーのシェ、醸造所の大規模な改造を行っています。英国の著名な建築家ノーマン・フォスター氏に委ねており、中心部に新しい研究・開発部門を設置する予定です。いろいろな要素を加えてシャトー・マルゴーの伝統を守っていくことが大事です」とのお話もありました。


第1部はマルゴー初のバレル・サンプルテイスティング
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(檀上左から)アジア担当アンバサダーのチボー・ポンタリエさん、シニアVPコマーシャルディレクターのオーレリアン・ヴァランスさん、通訳高村伸子さん、ポール・ポンタリエさん、モデレーターを務めたソムリエ協会常務理事石田博さん

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冒頭、ポンタリエさんから「瓶詰め前のバレル・サンプルをシャトーの外に出すことは、今まで一度もなかったことです。この試飲は今しかできないことであり、皆さんのようにワインをしっかり理解してくださっている方々が対象でなければできないことです」との説明がありました。

ソムリエとプレスに限定した今回のテイスティングには、シャトー・マルゴーに使う9~10のキュヴェのなかから、ポンタリエさん厳選の〝4種のサンプル〟が用意されていました。現地では、ちょうど、この日にシャトー・マルゴー2013を造るためのブレンド作業が行われている由。記念すべきテイスティングになっています!

ポンタリエ:ブレンドすることでそれぞれの個性が出てきます。その個性とはアロマの繊細さやタンニンのタッチ、長い余韻です。いろいろな土壌がワインに複雑味を与え、同じぶどう品種でも土壌によって味わいが違うことがおわかりいただけるはずです。

ポンタリエ:3種はカベルネ・ソーヴィニヨン(CS)、1種はプティ・ヴェルド(PV)で、CSはマルゴーの〝こころと体〟を形成する大事なぶどうです。シャトー・マルゴーの2013年VTのブレンド比率はCS94%、PV1%。カベルネ・フランは樽が強すぎたので、今回のサンプルには持参していませんが、5%使います。

サンプルの詳細は(1) カベルネ・ソーヴィニヨン・ル・ミュール(Le Mur)/キュヴェ№43、 (2) カベルネ・ソーヴィニヨン・レ・パンテ(Les Pantes)/キュヴェNo19、 (3) カベルネ・ソーヴィニヨン・プシュ・センペイユ(Puch Sempeyre)/キュヴェNo20、 (4) プティ・ヴェルド・メレ(Mellet)/キュヴェNo50

ポンタリエ:(1) は粘土質が勝っている小石混じりの土壌、パワー、タンニン豊か (2) と(3) はマルゴーの中心部に植えられている樹で、小石主体。アロマが高く、タンニンまろやか、口中で溶けるようなタンニン、(4) は料理に使う時の調味料的な役割。スパイスそのものを味うだけでなく、使うことによってお料理の味が良くなる効果をもたらす。フレッシュさとパワーをCSに与えます。

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マイベストは(2)のレ・パンテ。マルゴーらしいエレガントさを感じました。4脚を並べてみると量も減り気味。セミナー後、チボーさんに「カベルネのなかのベストワンは2」とお伝えたところ、「僕は3!」とのリアクションが!ヴァランスさんも3がお好きとのことでした。2も3もシャトー・マルゴーのブレンド率の50%を占めるそうなので、2の繊細さと3の重厚感の合体効果、感じました!

石田ソムリエのコメントは
(1)若々しさがあり、チャーミング、輪郭がはっきりしている
(2)は(1)より色調に深み、香りには落ち着きと厚みがある、酸が余韻をぐ~っと伸ばす。
(3)は(2)より開いた印象、緻密で複雑味があり、包み込むような豊かさ、飲んだ時の充実感
(4)は香りと味わいにチェリーの要素、酸と渋みが強く、味わいにフレッシュ感あり

2013年ヴィンテージは
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ポンタリエ:ボルドーだけでなく、ボルドー以外でも難しい収穫年でした。春は湿っていて開花が遅くなりました。夏(7月、8月)は好天で乾いた暑さがぶどうの熟度に貢献し、9月は湿気の多さでカビが広がりました。結果、収穫は早目に行い(通常より1週間早く終了)、収量も減りましたが、特にメルローとプティ・ヴェルドは激減しています。こういう難しい年こそ、偉大なテロワールかそうでないかの差が出ます。

マルゴー・ファミリーのワインを紹介
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(左から順に)(5) パヴィヨン・ブラン・デュ・シャトー・マルゴー2011、(6) マルゴー・デュ・シャトー・マルゴー2009、(7) パヴィヨン・ルージュ・デュ・シャトー・マルゴー2004、そして(8) シャトー・マルゴー1999

マルゴー・ファミリーにはグラン・ヴァンのシャトー・マルゴー(平均本数 約130,000 本)のほか、1908年に生まれたセカンドワイン『パヴィヨン・ルージュ・デュ・シャトー・マルゴー(約130,000本)』。1920年に誕生した白ワイン『パヴィヨン・ブラン・デュ・シャトー・マルゴー』があります。

(5) の解説はポンタリエさんのご子息で、4年前から香港在で活動中のチボーさんが「畑は12haでソーヴィニヨン・ブランだけで造っています。フレッシュでソフト、リッチな白ワインです。和食(寿司、刺身)に合うワインだと思っています。問題は数量が少ないこと(約10,000本)、これはセカンドワインでなく、グラン・ヴァン!」と。

石田:輝きが強く、透明感があり、香りにはビスケットやバニラ、空気と触れ合うことでライラックのような清潔感のある花のイメージ、白桃、余韻にはフルーツ、花、ハーブ&スパイス、樽等がバランス良く感じられます。

マルゴー・デュ・シャトー・マルゴー誕生!
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昨日刊の産経EXにニューフェイス『マルゴー・デュ・シャト-・マルゴー』

というタイトルでサードワインを紹介させていただきましたので、併読いただけましたら幸いです。

シャトー・マルゴーでは基準に満たないワインはバルクワインとして売却していましたが、1997年からサードワインのセレクションを行っており、2009年ヴィンテージの酒質が素晴らしかったことで新キュヴェ、サードワインの発売を決意した由

ヴァランス:パヴィヨン・ルージュが造られている畑のぶどうを使っています。特徴は香りの豊かさです。深みがあり、優しさもあります。20年~30年持ちますが、今飲んでも美味しいワインです。デキャンタージュをしないでそのままサービスして欲しいです。比率は50%メルロー、40%カベルネソーヴィニヨン、残りはプティ・ヴェルド。次に何年VTが日本市場に出てくるかわかりませんが、2009年はあと1年半くらいするとさらに良くなります。

石田:色調は健全で艶があり、いきいきしています。カシスやブラックベリー、木の実、甘味とボリューム感、ふくよかさ、緻密なタンニンが口中をリフレッシュしてくれます。

石田:タンニンのテクスチュアーですが、(6) は包み込むような広がりが特徴で、ビロードの食感があり、心地よい収れん味があります。(7) はシルクのように歯茎に吸い付つくような印象、フルーツ、花、そこに湿った土、キノコの香りがあり、後味に複雑味が広がります。(8) には木やトリュフを思わせる香り、フローラルな印象があり、十分な若々しさ、活力も感じます。

ヴァランス:パヴィヨン・ルージュ・デュ・シャトー・マルゴー2004はクラシック、口当たりが良く、ソフトでデリケート。20~30年の長熟タイプです。飲む1時間前のデキャンタージュがおすすめ。余韻にまろやかながら、しっかりしたパワーを感じます。

シャトー・マルゴー1999
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シャトー・マルゴーの特徴は余韻に広がるパワーと柔らかさ

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ヴァランス:素晴らしい年でした。複雑味があり、花、モカ、赤い果実、レザー等、どれか1つが際立ってくるのではなく、複雑味が備わったワイン。口中ソフト、ボンボン(あめ)を口にした印象。タンニンの存在を感じない、なめらかさがあります。余韻の長いワインで、そのなかにパワーと柔らかさがあります。これから先、30年~40年熟成させることができます。


エピローグ
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質問のなかから・・・
シャトー・マルゴーでは全体の3分の1がグラン・ヴァン、3分の1がセカンドワイン、6分の1がサードワイン、残りの6分の1がフォースワインでこれはバルクで売却されています。ヴァランスさんはサードワインの解説時、「ヴィエイユ・ヴィーニュはグラン・ヴァン、樹齢の若い樹はサードワイン」と発言していました。
これに関連して、「それぞれのワインの平均樹齢を教えてください」との質問が出ていました。

ポンタリエ:各ワインの違いは〝ワイン品質の違い〟です。その違いは区画、ヴィンテージ、樹齢からくるもので、樹齢は1つの要素にすぎません。重要なのはテロワールであり、テロワールが良ければ若樹でも素晴らしいものができますし、テロワールが悪ければ古樹でも優れたものはできません。

セミナーが終わって・・・
サードワインはフランス以外、英国、米国、日本の4カ国だけで販売されます。マルゴー・ファミリーの他アイテムはネゴシアンを介しますが、『マルゴー・デュ・シャトー・マルゴー』だけは、シャト―と輸入元との直接取引きで、エノテカ、ファインズ、徳岡、モトックス4社の扱いになります。
ポンタリエさんは、新発売のサードワインが、若い世代にとって、シャトー・マルゴーに馴染むキッカケのワインになることを期待しています。『マルゴー・デュ・シャトー・マルゴー』を味わうことができるレストランのリストは、間もなく、シャトー・マルゴーのウェブサイトで公開されるそうです、これもお楽しみに!

2014年01月12日

Union des Grands Crus de Bordeaux Trade Tasting 2013 in JAPAN

40周年を迎えたユニオン・デ・グラン・クリュ・ド・ボルドー
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1973年に設立されたユニオン・デ・グラン・クリュ・ド・ボルドー

(以後UGCB)はジロンド県のアペラシオン(メドック、 オ・メドック、 サンテステフ、 ポイヤック、 サンジュリアン、 マルゴー、 ムーリス、 リストラック、 ぺサック・レオニャン、 ソーテルヌ、 バルザック、 サンテミリオン、 ポムロール)の生産者団体で、現在133シャトーが加盟しています。 シャトー・ムートン・ロッチルド、シャトー・シュヴァル・ブランとシャトー・ディケムが名誉会員になっています。

前回アップした7シャトーを味わう晩餐会

の翌日は、ANAインターコンチネンタルホテル東京でUGCB(本部フランス・ボルドー市)主催のトレード・テイスティングでした。来日したのは108シャトー、試飲するのは最新ヴィンテージ(VT)になるので今回は2010年。来場者はワイン業界およびプレスのみで約900名。出展ブースではシャトーのオーナーや代表者がワインのサービスや接客にあたっていました。

長熟タイプの2010年ヴィンテージ
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まずはシャトー・ランシュ・ムサス(ポイヤック)のフィリップ・カステジャさんに前日のお礼を!

カステジャさんは2010年について「ワインはソフトで、酸味もあり、バランスが取れたトップVTで、ボルドー的なワイン」と表現していました。カベルネ主体(CS70%、ME30%)、深みのある濃い色調、黒系果実の凝縮感、口中のドライ感。前日のディナーで味わった1996年VTの色調とタンニンの変化を思い出しながら、上質な果実味、酸味、タンニンを備えた2010年VTの十数年先の熟成具合を連想、今後が楽しみです。新樽率55%でVTによって比率は若干異なります。

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シャトー・ド・フューザル(ぺサック・レオニャン)のアナベル・ドゥニさん
「2010年はグレートVTで、白(SB70%、SE30%)はフレッシュ感と爽快な酸味が魅力、赤は少し熟成させてから」とアナベルさん。前日のディナーに登場した赤の2008年とフォアグラが素晴らしいマリアージュだっただけに、良年の2010年の熟成には期待したいです。

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元気なマダム、シャトー・ジスクール(マルゴー)とシャトー・デュ・テルトル(同)のロール・バスタールさん

「ジスクール(右のワイン)の2010VTは複雑味があり、長期熟成型のワイン」とロールさん、『神の雫』に取り上げられたことで、日本での知名度も上がっています。

そして、もう1つのワイン『シャトー・デュ・テルトル』の説明にはさらに力が入っていました。ロールさんはこのシャトーを〝スリーピングビューティ(眠れる美女)〟と形容。 同地区の一番小高い位置にあるテルトル(小さな丘の意味/標高25メートル)はジスクールと同じ所有者オランダ人実業家のエリック・アルバダ・イエルヘルスマさんが1997年に取得したもので、大規模な設備投資を行い、シャトーを甦らせました。エリックさんを眠り姫を目覚めさせた王子に例えていた訳ですが、テルトルは豊潤で香り豊か、チャーミングなワインです。前日の2002年VTも他のワインに臆することなく、料理との相性はとても良かったので、今後の躍進、楽しみです。

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気になるシャトーの1つ、スミス・オー・ラフィット(ぺサック・レオニャン)
毎年、営業マネージャーのダヴィッド・オルノンさんが来日しています。

「2010年はグレートVT、エレガントでクラシック、時間が必要です。2009年は表現力が豊かでわかりやすいワインです」と2つのVTの違いを説明後、赤ワイン(CS64%、ME30%、CF5%、PV1%)については「リッチで、ブラックベリーやダークチェリー、胡椒や甘草、スモーキーさを感じます。このスモーキーさは砂礫土壌からくるもので、樽由来のものではありません。新樽率は70~75%で使用樽はシャトー所有の樽工場で製造、樽の責任者はJean Luc Iteyです」とコメント

白い花、スパイス、ハーブ、樽のニュアンス(38ヶ月)を感じさせる白ワイン(SB90%、ソーヴィニヨン・グリ5%、SE5%)。ダヴィッドさんは「フラッグシップのレア物で、平均生産量は2000~2500ケース(12本入)。フレッシュでエレガント、土壌由来のミネラル感があります。2010年VTは凝縮感があり、10~15年の熟成に耐えられます。熟成により、ドライフルーツやアカシアの花、蜂蜜のニュアンスを感じます」と説明していました。パーカーポイントでも高得点を得ているシャトーなので、UGCBの会場でも人気があります。

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笑顔も素敵なシャトー・ラグランジュ(サン・ジュリアン)の椎名敬一副会長

「ボルドーは09、10と2年続きであたり年でした」と椎名副会長
「2010年は気候的には2008年をもっと暑くした年で、VT (CS75%、ME25%)はクラシック、正統なメドックスタイルで1986年VTに似ている長熟タイプ、まだタンニンは固いです。2009年VT(CS73%、ME27%)はエレガントで柔らかさがあります。2013年はCSとメルロが花ぶるいにあい、メルロは平均30hl/㌶、マルゴー地区では25hl/㌶というところもあります。しっかりした選果を行っているシャトーは品質はキープできますが、シャトーものになれは選果は相当厳しくしなければならないので、数量は少なくなりそうです」とのこと。

椎名副会長は「2010年は開くのに時間がかかるVTなので、しっかり待ってから飲んでください」とおっしゃっていました。10年以上経過してから本領を発揮するVTで、タンニンの質から言うと1986年VTに近い固さがあるそうです。2010年VTを入手なさった方は、あせらず飲み時を待っていてくださいませ。

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シャトー・ ランゴア&シャトー・レオヴィル・バルトン(サン・ジュリアン)のリリアン・バルトン=サルトリウスさんと愛娘メラニーさん

バルトン家初の麗しき女性ワインメーカー、10代目のメラニーさんはまさに〝Lady Langoa〟、ボルドー、デジョン、イタリアでワイン修業をしたそうです。初来日なのに、早朝日本に着いて、夕方には韓国へ。和食を楽しむ暇もない強行ツアー!

ランゴア・バルトン2010(CS57%、CF9%、ME34%)は「ファンタスティックでミラクルなVT、完璧なバランス、上質なタンニン、パワーもあるので数年待って飲んでいただきたい長熟ワインです」とリリアンさん。一方のレオヴィル・バルトン2010VT(CS74%、CF3%、ME23%)は「まだ閉じ気味で複雑。十分な時間が必要です」とコメント。リリアンさんはぶどう品種、栽培方法、醸造法は全部同じなので、ワインの個性の違いはテロワールであり、土壌や畑の角度(方角)等がその要因になっていると語っていました。

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シャトー・カノン・ラ・ガッフリエール(サンテミリオン)のオーナー、ステファン・フォン・ナイベルグ伯爵は現在37代目、800年の歴史を誇るナイベルグ家の当主です。

伯爵は「2010年は偉大な収穫年です。酸味があり、pHは低め、まろやかで深みがあり、フランス的なワインと言えます。2009年VTより複雑で長熟、私の好きなヴィンテージです」とコメント。使用ぶどう品種はCS45%、CF5%、ME50%で、 カベルネ・フランを使うことで、スパイスや花のようなフレッシュさが表現できている由。温かな気候だった2009年は2010年より、もう少しタンニンが丸く、アメリカ的 (よりシンプルで理解しやすいワインという意味)とのことでした!

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1306年、レイモンド・ギレム・ド・ファルグ枢機卿によって建造された歴史あるシャトー・ド・ファルグ

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シャトー・ド・ファルグ(ソーテルヌ)のアジア・アメリカ担当のフィリップ・ド・リュル・サリュスさん

「2009年は驚くべきVT、パワフルです。2010年はバランスが良く、凝縮しています」とフィリップさん。一般的に甘口ワインというとデザートワインとしてとらえられてしまうことが多いので、「ノーマルな食事と合わせて」というのが彼の主張です。シンガポ-ルで、鳩のロースト(塩で)と素晴らしいマリアージュを体験したことを語っていました。VTにもよりますが、刺身や生の牡蠣、シーフードにも合わせて楽しめると。2010年VTはフレッシュで甘さの後ろに控えた上品な酸味が好印象。個人的にはアンズのタルトやブルーチーズとの相性が一番好きです。

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テイスティングは15時30分に閉会。その後、UGCBのメンバーはアジアツアーの次の訪問先、韓国へ


[黒ハート]インフォメーション
5月17日&18日にボルドーで開催される〝ル・ウィークエンド・デ・グラン・クリュ・ボルドー
シャトーのオーナーや代表者と意見交換しながらの試飲会、シャトーでのデイナー、ぶどう畑訪問、ゴルフ・トーナメントなど、週末を満喫できるイヴェントです。ボルドーワインラバーさんにお薦めです。

5 月17 日(土)
■ 最新ヴィンテージ(瓶詰済みワイン)の大試飲会/対象はワイン関係者&ワイン愛好家。2011年VT と各シャトーがセレクトした計2 ヴィンテージを試飲。100超の生産者が出展。参加費(除 昼食代):60€(2014 年5 月15 日までの予約)、当日券は75€。学生とワイン業界関係者(証明証要)半額。9 名の購入で1 名無料
■シャトーでのディナー/UGCBのシャトーオーナーが各自のワインを供出。参加費:140€(2014 年5 月7 日までの予約)、ボルドー市中心部発着のバス代含
■ ソワレ・デ・グラン・クリュ/ボルドー市のオペラ座アーケードでUGCBの新世代のオーナーたちと軽食を。リラックスした雰囲気が好きな18歳から35歳までを対象にしたスペシャル・イベント。参加費:60€

5月18日(日)
■ぶどう畑ツアー/プレステージある3シャトーを訪問。ボルドー発の3コース(メドック方面、グラーヴとソーテルヌ方面、右岸方面)、参加費:90€(2014年5月7日までの予約)、昼食・バス代含
■オープン・デイ/UGCBの加盟する多くのシャトーがテーマ性のある見学を用意。訪問可能シャトーはサイトで。参加費:無料(予約制)
■ユニオン・デ・グラン・クリュ杯ゴルフ・トーナメント/ワイン&ゴルフ好きとシャトーのオーナーたちとの交流ゴルフ、グリーン・フィーと昼食代含。賞品はメンバーのグラン・クリュなどのシャトーワイン。会場はゴルフ・デュ・メドック。参加費:95€(2014年5月7日までの予約)

詳細&問い合わせ、お申込み等はユニオン・デ・グラン・クリュ・ド・ボルドー

のサイトで。イベントによっては定員に限りがありますので、お早目にチェックを!
Union des Grands Crus de Bordeaux-10 cours du XXX Juillet-33000 Bordeaux France
Tel.+33(0)5 56 51 91 91

2014年01月10日

ボルドー話題 ~三国ワイン主催 7シャトーを味わう晩餐会@恵比寿メゾン エメ・ヴィベール~

今回は三国ワイン

主催の『7シャトーを味わう晩餐会』の報告です!
2010年からスタートしたイベントですが、回を重ねるごとに〝食とワインとのマリアージュ〟がより重厚になっています。4回目の会場は、麹町に本店があり、2012年の9月にオープンした恵比寿のMaison Aimee Vibert メゾン エメ・ヴィベール

。ウエディングでも人気のレストランだけあって、建物も内装も、とってもお洒落です♪

リーダーはフィリップ・カステジャさん
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フィリップ・カステジャさんはボリー・マヌー代表、シャトー・ランシュ・ムサス、シャトー・トロット・ヴィエイユ等の所有者であり、格付銘柄シャトー協議会の会長さん。柔和なお人柄ゆえ、ボルドーのメンバーからの信頼度も高く、三国ワイン高栁社長 (来日者画像の最右端) の〝たかやなぎ〟という日本語も難なく発音なさる日本通でもあります。

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画像提供:三国ワイン

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左から順に供出されたワインと来日者名
#1:Ch ド・フューザル・ブラン2009、 #2:Ch ド・フューザル・ルージュ2008
 (右から3人目/広報担当のアナベル・ドゥニさん)
#3:Ch コス・ラボリイ2005
 (左から2人目/オーナーのベルナール・オードワさん)
#4:Ch ランシュ・ムサス1996
 (中央/支配人&取締役フィリップ・カステジャさん)
#5:Ch トロロン・モンド2004
 (右から2人目/広報&マーケティング担当のミリアム・ルアーさん)
#6:Ch ジスクール2002 、#7:Ch デュ・テルトル2002
 (左から3人目/広報マーケティング責任者のロール・バスタールさん)
#8:Ch ブラネール・デュクリュ2000
 (最左端/アジア担当グランド・アンバサダーのエチエンヌ・ペイエさん)

ボルドーワインと岡田秀俊シェフ考案のマリアージュ
エメ・ヴィベールでは事前にワインの味見して料理との組み合わせを熟考。供出に関してはカステジャさんから「今までは若いヴィンテージ(VT)から古いVTという順に進めてきましたが、今夜は各料理に異なるVT、異なるAOCのワインを合わせることでマリアージュの可能性も無限に広がるはず」との説明がありました。

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冷前菜は活・帆立貝とアワビのサラダ仕立て、アプリコとラヴィゴットのヴィネグレット
#1シャトー・ド・フューザル・ブラン2009と合わせて 
帆立やあわびの食感とアプリコットやケッパー等を使ったソースのハーモニー、きれいな酸味とのバランスが絶妙で五感で楽しめました。

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温前菜はフランス・ランド産のフォアグラ(カモ)のポワレ、バルサミコソース
ぺサック・レオニャンの#2シャトー・ド・フューザル2008(赤)、サンテステフの#3シャトー・コス・ラボリイ2005、ポイヤックの#4シャトー・ランシュ・ムサス1996と合わせて

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右から、新鮮な果実味、スパイシーでシルキーな#2、パワーとエレガンス、酸味に支えられたフレッシュ感が魅力の#3、17年の熟成を経た複雑味(甘草、タバコ、腐葉土等)のある#4
いずれも異なる個性の美酒なので、贅沢なマリアージュタイムでしたが、好みの相性はフォアグラとの共通項(スパイシーさと黒系果実の要素)を感じたシャトー・ド・フューザル2008。口中で一体感がありました。

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ヒメジのポワレ、ラタトゥユ添え
#5シャトー・トロロンモンド2004と#6シャトー・ジスクール2002に合わせて

全組み合わせのなかで、シェフが一番苦労なさったのが〝魚と赤ワイン〟だった由。ヒメジは海底深くに生息し、甲殻類を食べて過ごしているので、ポワレすることで旨味が出るとのこと。その旨味を生かした組み合わせではメルロ主体のトロロンモンドとラタトゥユと一緒に味わうヒメジとのバランスが良く、とても興味深い体験ができました。

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口直しは三国ワイン扱いのシャンパン『ゾエミ・ド・スーザ ロゼ・ブリュット ディスタンゲ』を使った美味な一品。できればゾエミ・ド・スーザのロゼとの相性も試したかった気分

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国産牛フィレ肉のパイ包み焼き ペリゴール風を#7シャトー・デュ・テルトル2002と#8シャトー・ブラネール・デュクリュ2000と合わせて

マディラワインとトリュフを使った凝縮感あるソースと良く合っていたのが新星テルトル。後半の4グラスを見ると#7の量が一番減っています(笑) 2002年VTが丁度飲み頃であったこととロールさんが強調していたCF効果(スパイシーさ)があったと思っています。
 


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ボルドーの皆さんから丁寧なサービスと供出温度ついて称讃されていた椨(たぶ)賢太郎シェフソムリエ

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#8のブラネール・デュクリュは、ロアルド・ダールの短編小説『味(Taste)』に登場しているワイン。ロンドンにあるスコウフィールド家の晩餐の席で繰り広げられる当主とリチャード・プラットという美食家がワインの利き酒をするお話で、当主は自分の娘、美食家は家と別荘を賭ける筋立ての短編です。ワイン好きなら是非!

2007年にカレッジの講座で1998、1999、2000、2003の4VTを試飲したのですが、その時のマイベストは2000年でした。6年ぶりに再会した感想は、サン・ジュリアンらしい上品な印象はそのまま、まだ果実味も豊かで、とても良い熟成状態、バランスの良いワインです。

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お魚からお肉までに登場した4種類の赤ワイン、右から
2006年の格付けでサンテミリオンのプルミエ・グランクリュ・クラッセに昇格した#5はエレガントかつ骨格のあるタイプ(CS10%、CF10%、ME80%)、マルゴー地区に約300㌶の広大な敷地を所有し、90㌶でぶどう栽培を行っている#6はカベルネ・ソーヴィニヨンによるリッチさが特徴(CS60% ME40%)、ジスクールと同じエリック・アルバダ・イエルヘルスマ当主が所有する#7は果実味があり、カベルネ・フランを使うことで胡椒のようなスパイシーさやフレッシュ感を表現。広報マーケティングの責任者ロールさんは「2本(ジスクールとテルトル)の個性の違いを感じていただくために同じVTを選びました」とコメント。そして最後に登場した#8は「果実風味、フレッシュ感(飲み飽きしない)、長熟」の3点をコンセプトにしています。

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チーズはフランスを代表するコンテ(24ヵ月熟成)、リヴァロ、ロックフォールの3タイプ。どれも食べ頃で4種の赤ワインとの相性◎

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デザートは80%カカオを使った温かいビスキュイショコラとバニラのアイスクリームとくるみのカラメルソース
筒状になった生地の中の温かいチョコと冷たいアイスクリームとの心憎いコントラスト。ブラネール・デュクリュとチョコも一興

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エメ・ヴィベールの小菓子

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画像提供:三国ワイン

同じテーブルだったシャトー・ド・フューザルの広報担当アナベル・ドゥニさんが技術責任者のステファン・カリエさんについて、「2007年から働いていますが、シャトー・ランシュ・バージュやナパのニュートン等で実績を積んできた人物です」とPR。近年評価が上がっているシャトーですよね。


この日の翌日、ANAインターコンチネンタルホテル東京で開催していたユニオン・デ・グラン・クリュ・ド・ボルドー・トレード・ティスティングで、皆さんと再びお会いすることができました!

2013年12月27日

スペイン固有品種アイレンとテンプラニーリョに特化するアレハンドロ・フェルナンデス

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マンダリンオリエンタル東京の最上階『KSHIKI(ケシキ)』の大きな窓から見える景色(けしき)を背景に、グラスに注がれたペスケラをキャッチ!  グラス壁面をゆったり流れるワインの涙が見えますよね。骨太かつ優雅、スペインが誇る銘醸ワイン

スペインのペトリュスと称されるペスケラ
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ペスケラのオーナー、アレハンドロ・フェルナンデスさんの次女オルガ・フェルナンデス・リベラさんが来日し、偉大な父親のこと、スペインの固有品種アイレンとテンプラニーリョに特化する理由、ワイン造りへのこだわり等を語りました。同行者はティント・ペスケラ・グループのマーケティングマネジャー&エイジェントのスティーブ・メツラーご夫妻とミゲル・エンジェル・ボコさん

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その昔、ジャンシス・ロビンソンMWのインタビューに対して、「テンプラニーリョは世界一のぶどう、他のぶどうの原型、精一杯守らないといけない」と答えていたフェルナンデスさん。同時に、シャトー・ペトリュスと同格的な発言もしていました。ボルドー右岸を代表する品種メルロ100%(カベルネ・フランを栽培していてもワインはほぼメルロ100%)で造られる銘醸ワインと、単一品種でのみ造る自分のワインが同じスタンスであることを強調したかったのだと、今回の取材を通して感じました。

また、ペスケラがスペインの革命的ワインと言われるゆえん、それはオルガさんの言葉を借りれば、「スペインを代表するワイン産地リオハで造られていた伝統的なワインとは全く異なるスタイルであること。つまり、色調は濃く、コクがあり、樽熟期間も短かい」という点にあると。

4つのボデガについて
グルーポ・ペスケラは家族経営で、現在4つのボデガを所有しており、起ち上げた順にティント・ペスケラ(1972年設立)、コンダード・デ・アサ(1987年から建設開始)、デエーサ・ラ・グランハ(1998年設立)、そして最新のエル・ビンクロ(1999年設立)になります。

試飲ワイン7アイテム
#1:2011 Alejairen Crianza (ボトルなし)
 参考上代3800円
画像左から
#2:2008 El Vinculo Crianza 
 参考上代3500円
#3:2006 Dehesa La Granja 
 参考上代3600円
#4:2009 Condado de Haza Tinto 
 参考上代3800円
#5:2010 Tinto Pesquera Crianza 
 参考上代4200円
#6:2009 Tinto Pesquera Reserva 
参考上代6500円(VT2008)
#7:2003 El Vinculo Gran Reserva Paraje La Golosa
 参考上代7000円

エル・ビンクロ
スペイン中央部ラ・マンチャにあるボデガ『エル・ビンクロ』は、昔、オルガさんの祖父と父親がワインを造っていた土地であり、今はこの地と離れた場所(リベラ・デル・ドゥエロ)にいるので、「いつも思い出し、忘れないようにしたい」との思いから命名したとのこと。年間生産本数は15万本、砂質土壌で、夏は暑く乾燥していて冬はとても寒いエリア。ぶどうは長い付き合いのある栽培農家から購入している由

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#1と好印象だったパンダンリーフで包みスモークした鴨胸肉 
梨とインゲンを一緒に ロジャックソース

#1の『アレハイレン・クリアンサ2011』はラ・マンチャに古くからある土着品種アイレン種100%(樹齢80年)、フレンチオークで2年間熟成後、瓶熟。ワイン名の〝アレハイレン〟はアレハンドロとアイレン種を合わせた造語。古樹で1本の樹になる房も少ないアイレンから丁寧に造りあげた卓越した白ワインで、粘性豊か。シャルドネに似た蜂蜜のニュアンスがあり、余韻も長い。フェルナンデスさんのアイレンへの思いを感じるワイン

#2の『エル・ビンクロ・クリアンサ2008』はテンプラニーリョ100%。フェルナンデスさんはスペイン固有のぶどう品種、白はアイレン、赤はテンプラニーリョの2品種のみを使い、ともに100%のタイプを生産していますが、「4つのボデガは気候、土壌等自然状況が違うので、各ワインもそれらを反映したものになります」とオルガさん。赤系・黒系の果実、スパイス、アーシーさ、口中なめらか

#7は『パラへ・ラ・ゴロッサ(ゴロッサは〝土地の単位〟の意味)』、アメリカンオークを使用。オルガさんは「父はテンプラニーリョとアメリカンオークの組み合わせ。ワインメーカーをしているの姉のエバはテンプラニーリョとフレンチオークの組み合わせを好んでいます」と語っていました。10年の熟成を経た赤ワインは酸化酵素を持たないテンプラニーリョ本来の濃い色調を残し、香りにはスターアニスや甘草のようなスパイスのニュアンス

デエーサ・ラ・グランハ
#3の『デエーサ・ラ・グランハ』はトロに近いサモーラ地方のワインで、カテゴリーはビノ・デ・ラ・ティエラ・デ・カスティーリャ・イ・レオン(=カスティーリャ・イ・レオン地方のワイン)。ボデガの年間生産本数は20万本、ぶどう品種はテンプラニーリョ100%、初VTは1998年、自社畑で全敷地面積800ha、うち、ぶどう栽培面積は150ha、1700年代後半からあった古いボデガを購入して、テンプラニーリョを栽培。地下にある4000㎡広さのカーブは自然の温度でワインをキープできるとのこと。深みのある色調、プラム等の黒系果実味、ドライフルーツ、ミネラル感

コンダード・デ・アサ
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タンドリースパイスを塗した戻り鰹のソテー 空芯菜と茗荷 タオチオと長葱のペースト
上記の料理の塩加減と#4『コンダード・デ・アサ2009』のミネラル感がとても良く、両者を合わせることでマイルドな旨味

産地はペスケラから30キロメートル離れたスペイン内陸部リベラ・デル・ドゥエロ。夏は短くて暑くて日較差が大きく、冬はとても長くマイナス8度~10度になることもあるとのこと。1987年に敷地を購入、ぶどう栽培面積は200ha。「父の持論はぶどう畑とワイナリーは至近距離であることが大事」とオルガさん。4つのボデガのなかでは一番北部にあり、標高も800~900mと高いので、収穫時期も一番遅い。ぶどう畑は南に面していて太陽の熱を吸収しやすくしているとのこと。年間生産本数は30~40万本、初VTは1994年。〝アサ〟の名は古いスペイン語で「作物を植える準備ができている」との意味。購入した時点では何もなかった更地でワイナリー設立に関して多くの苦労があったので、アサの意味はファミリーにとって大きな励みになっていた由

 
ティント・ぺスケラ
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国産牛リブロインのグリル ハマスとポータベラマッシュルーム 
オレンジが香る蜂蜜とアニスのソース

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ワインサービスはマンダリンオリエンタルの加茂文彦シェフソムリエでした!

ロバート・パーカーによって見いだされ、世界的名声を手にしたペスケラは凝縮感があり、果実味とタンニンのバランス良好、アルコール由来の甘さ、中盤以降広がる酸味のニュアンス

コンダード・デ・アサと同じリベラ・デル・デゥエロに位置する4つの先駆けとなったボデガ。年間生産本数は80~90万本。当初、フェルナンデスさんは甜菜(てんさい)栽培で生計を立てており、土地やぶどう樹を手に入れるために、農業で得たお金をワイン造りの資本に回すというやり繰りだったようで、「家庭崩壊寸前の状態を支えてくれていたのは母親」とオルガさんは述懐していました。

ぺスケラのワインについての問い合わせはミレジム(電話03-3233-3801 )まで