たかが水、されど水E383A9E383BCE382BDE383B3E382BBE3839FE3838AE383BCE38080E3839CE38388E383AB.jpg)
本邦初!
(左から供出順)世界最優秀ソムリエが解説する〝水〟と〝ワイン〟と〝料理〟の関係
ファインダイニングウォーターとして定評あるイタリアのアクアパンナ(スティルウォーター/非発泡性)とサンペレグリノ(スパークリングウォーター/発泡性)の2種を使い、まず、特徴的な4種のワインをテイスティングして、相性を考察。その後、実際に料理と合わせて。会場は銀座のフレンチレストラン
エスキスで、リオネル・ベカ シェフ・エクゼクティブの料理と成田一世シェフ・パティシエのデザートと共に、〝水とワインと料理〟との関係を探究。プレスランチの間には、若林英司シェフ・ソムリエの実体験に基づくミネラルウォーター解説もありました。
画像協力:Spindle当日のフルメンバーをご紹介すると
(左から)2007年世界最優秀ソムリエのアンドレアス・ラーソンさん、『エスキス』シェフ・エクゼクティブのリオネル・ベカさん、シェフ・パティシエの成田一世さん、支配人兼シェフ・ソムリエの若林英司さん
ミネラルウォーターとはミネラルウォーターという用語は、地下水盤・水脈に由来し、単数もしくは複数の源泉を通して放出してくる天然の水のことです。水源は水のサイクルに依存しています。初期段階では下層土を通り抜ける雨水の浸透で、ここでは雨水や雪解け水が岩盤のなかにある沈殿物の主要な穴や断層、割れ目を通って地下に流れ込みます。次の過程で、水は帯水層まで到達していきます。帯水層には主として〝水が自由に流れている地下水帯水層〟と〝高圧水路のような状態の帯水層〟があります。そして最後に、下層土内で移動、滞留していた水の物理的、化学的特性が変化して、最終的な組成が形成されます。
帯水層に留まる時間が短いミネラルウォーターは母岩からの溶解度も低く(石英、変成岩、深成岩等)、水自体ミネラル含有レベルが低くなります。一方、深度の深い帯水層のなかで数十年を経る水もあります。水源として表面に出てくる時には高温であることが多いのですが、これは地下の非常に深いところを流れてきた時に温度が非常に高かったことを示しています。火山活動や溶解性の高い岩の溶解に関連しているので、塩類含有量も高く(石灰岩、カリウム塩)なります。
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伊トスカーナ州スカルペリアとバルべリーノ・ディ・ムジェッロ(フィレンツェ)自治体が水源のアクアパンナ。水源は海抜900mほどで、典型的な山岳地域で、深い森に囲まれています。採水はパイプを通して水源から工場まで送られてきます。帯水層は泥灰土層と粘土質の間にある典型的な石英と長石の砂岩質
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サンペレグリノの水源はベルガモ県サンペレグリノ・テルメのブレンバーナ渓谷右岸にあります。継続的に降雨がある集水地から岩の割れ目や隙間を抜けて数百メートルまで浸透した水は、石灰岩でできた不浸透性の層にたどり着きますが、この段階で(重力により)下向きの流れはより流れが遅い(不浸透性の層を横切る形)水平の動きへと移行し、ここで物理的、化学的特性を蓄積していきます。その多くは硫酸カルシウムで構成されています。地層はさらに深くなるので、最終的な温度は26度に達します。その後、水は地球内部をめぐる旅を続け、約30年を経て、サンぺレグリノの源泉に放出されます。
出典:Water Codex from The S.Pellegrino & Acqua Pannaラーソンさんの水セミナー
第一のエレメント(右から)目の前に、
#1 アクアパンナ、
#2 水道水、
#3サンペレグリノが並んでいました。
「水には味があるかどうか」とラーソンさん
まず、スティルの
#1の香り、味わいを利き水。これは正直言って難しいです。そこで、
#2の水道水でも同じことを。
#1 の後に水道水を飲むと、明らかに資質の違いを感じます。味わいは双方を比較することで、ピュアさの違いを明確に感じました。では発泡性のある
#3はどうか。泡があるので聴覚(泡の音)の差はあります。嗅覚ではミネラル感、味覚では微量なビター感、舌の上の爽快感
![[黒ハート]](https://blog.seesaa.jp/images_e/136.gif)
11月第2週の
ワインのこころで概略を紹介させていただきましたので、補足はこのブログで!
ラーソン:アクアパンナ(右)は固い砂岩質土壌を経由、15年間の旅をして放出されます。ミネラル分は低め、硬度は106mg/ L、香りは単独では難しいのですが、水道水と比べることでピュアさ(まじりけのなさ)を感じます。さわやかな空気を吸っているような印象です。味わいはベルベットのなめらかな口あたりで、柔らかい余韻。pHは高く、アルカリ性寄りなので、日常我々がコーヒーを飲んだり、ワインを飲んだりして酸性に傾きかけている体内のバランスを取るのにちょうど良いミネラルウォーターです。
サンペレグリノはアルプスの麓が水源で、30年間地層を旅して採水されます。香りは
#1より強さを感じます。pHは
#1より、さらに高いです。テイスティングすると後味も
#1より長く、フレッシュで、ミネラルからくる塩味があります。サンペレグリノはスティルウォーターにボトリング時、CO2を注入しています。炭酸ガスはトスカーナ地方の地層内に滞留しているものを取り込み、それを添加しています。
第二のエレメント水と4種のワインとの相性を探りながら第一のエレメントで試した3種類の水を飲みながら典型的なスタイルの4ワインを試飲
#4発泡性/モンテベッロ スプマンテ ブリュット
#5白ワイン/ベルターニ ソアヴェ〝ベレオーレ〟2013
#6赤ワイン/メリーニ テッラロッサ キアンテイ・クラッシコ2011
#7甘口ワイン/フォンタナフレッダ モスカート・ダスティ2012
まず
#4からスタート。アクアパンナを口に含み、口中を落ち着かせた後、ワインを試飲し、その後、再度アクアパンナに戻り、印象をまとめる。次は水道水、最後はサンペレグリノ。すべて同じ手順で実施します。
北の冷涼なエリアから産出されるスプマンテ。ミネラルや酸の高いスパークリングの代表として試しました。アクアパンナ・スプマンテ・アクアパンナで飲むと、口中に果実の余韻が残ります。酸味がしっかりしたワインを飲んだ後に、まろやかな味のアクアパンナを飲むことで、ワインの持っているピュアなフレーバーが広がり相性が良くなります。水道水の味わいは口中に余分な余韻を残し、決してプラスにはならないことを実感。サンペレグリノは水自体に骨格があるので、軽やかでフレッシュなスプマンテだと多少バランスが崩れます。
#5は単一畑でミネラル分の高いワイン。これもアクアパンナ・ソアヴェ・アクアパンナの順で試飲。水との関係はスプマンテと同様の印象。水道水・ソアヴェ・水道水だと、最初に酸味を強く感じてしまい、ワイン本来の味わいが楽しめない気分。サンペレグリノ・ソアヴェ・サンペレグリノで試した場合は、ワインよりミネラルウォーターのほうが強すぎる印象
#6の場合は、サンペレグリノ・赤ワイン・サンペレグリノの順で。続いて、水道水・赤ワイン・水道水。最後にアクアパンナ・赤ワイン・アクアパンナで。サンペレグリノだと口中をリフレッシュさせ、若いドライなタンニンの印象と隠れていた果実味が新しく出てくる感じ!
#7の甘口ワインは、果実風味や全体のバランスを取る意味で、アクアパンナのほうが舌に優しく、馴染みました。
ラーソン:基本的に泡vs泡は合わせません。シャブリやリースリング、北イタリアのフレッシュで酸味が強いワインには味わいが柔らかくてミネラル分の低いものが合います。ただ、芳醇な白ワインや酸味が低く、余韻も長い白ワインなら、サンペレグリノとの相性は良いです。若い赤ワインはある程度のタンニンがあるのでサペレグリノ、甘口ワインの場合はアクアパンナと合います。甘口でもソーテルヌのように樽を使用したタイプならサンペレグリノをお薦めします
第三のエレメントエスキスの料理と合わせながらE38080E382B7E383A3E383B3E38391E383B3E381A8E38080E2978B.jpg)
ジャクソン キュヴェ#737
アヴィズが本拠地、2009年のワインがベース、ドザージュ3.5g/L
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セップ茸のサブレ、ゴルゴンゾーラ
パンフリッタ、いちじく、コロナータのラルド
椎茸、ヘーゼルナッツ、黒カルダモン
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栗のなめらかなフラン、トランペット茸、オレンジ、木の芽
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ゆっくり火を入れた帆立貝、バターナッツかぼちゃ、アニス、柿
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熱々のハタ、百合根、銀杏、発酵させたぶどう
若林:帆立は昆布出汁で45分低温で火を入れ、帆立の筋の間に旨みが入り込んでいます。それをさっと焼いてフルーツバターナッツ等で味付けしています。
アクアパンナはまろやかでスムース。繊細なワインと同じ印象。サンペレグリノはガス圧は低くても、赤ワインのような要素があると思います。銀杏の香ばしさ、キノコのフレーバーが出てくるとミネラル感のあるサンペレグリノが合います。
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シャトー・ド・フューザル2005 ペサック・レオニャン
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秀逸年、黄金色の輝き、熟した黄色系果実、蜂蜜、カラメルソース、エスニックスパイス等、複雑味
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ジュヴレ・シャンベルタン2004 メ・ファヴォリットVV(Dアラン・ビュルゲ)
ヴィエイユ・ヴィーニュ由来のミネラル感、喉に優しい口当たり、バランスの良いワイン
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蝦夷鹿、根セロリのロティ、リンゴ、〝チュアオ〟のカカオ
若林:蝦夷鹿はカルバドスで軽くマリネして、最後にショコラ、桑の実を添えています。 本来鹿にはシラー等に合わせますが、ベリーが効いているので、ミネラルウォーターはサンペレグリノと合わせて。ただ、タンニンが溶けきって酸が落ち着いているので、アクアパンナと合わせることでベルべットのような肉質の柔らかさがわかります。
コーヒーのスフレ、落花生、いちじく、小さな赤い果実
デザート時間まで在席できずで・・・残念ながら、この画像はないのです<(_ _)>
私感:タンニンがある熟成タイプの赤ワインには舌の上をきれいに洗い流してくれるサンペレグリノが素直に合うと思います。熟成したブルゴーニュのワインにはアクアパンナでもサンペレグリノでもワインの熟成具合次第で考えたいと思いました。今回の貴重な体験で、今までとは違った角度から、ミネラルウォーター選びができると確信。今後さらに探究したテーマだと思いました。
ラーソンさんに簡潔インタビュー「私の主食は和食。基本的に和食に合わないワインはないと思う」とラーソンさん。週に1度はお刺身とドイツのリースリングかシャンパンを合わせるのが楽しみとのことでした。
「ブルゴーニュ地方でブルゴーニュワインを飲んだり、ドイツでリースリングを合わせるのは当たり前のことですが、遠く離れた日本の料理とドイツのワインやフランスのシャンパンが合うことに感動を覚えます」
日本ワインについても造詣が深いラーソンさん。「シャトー・メルシャンの熟成したものは良いです」とひとこと。数年前に佐藤陽一ソムリエの『マクシヴァン』で、ラーソンさん等、世界のトップソムリエが集まっていた時に、佐藤さんがブラインドテイステインを仕掛け、ソムリエメンバーが挑戦。供出されたのはボルドーブレンドのワインで、他のソムリエはフランスの銘醸ワインの名をあげていたようです。その時、ラーソンさんはどれも違うと思い、「シャトー・メルシャンの19●●VT」と回答。それがまさにビンゴ!だったようで佐藤ソムリエもびっくりしていたとの思い出話が出ていました。
母国スウェーデンでモダンスカンジナビアレストランを経営していますが、地産地消がモットーで、扱いワインは3500アイテム、凄いです! お水に関しては、お仕着せではなく、お客様にボトルを見せながら、「これが料理に合っているのではないか」という形でサービスしているとのこと。最後にグラスをプレゼントすることで、お水にも気配りがあり、すべての面でがきちんとしているレストランという印象を与えることができる」と
すでに10回ほど来日していますが、「日本とスウェーデンは似ています。まず、ワイン伝統国ではない点。ワインは外国のものであり、両国ではすごく飲まれていて、中立の立場で銘醸地のワインを見ることができます。さらに海に囲まれた国という共通点があります。食の部分では保存食を作ることで、自分なりの工夫をしている国です。厳しい自然状況の中で何とかしなければと頑張る精神力や創造力も似ていますし。快楽を善としない文化である点も似ていると思っています」と日本びいきのラーソンさん
まとめにかえてラーソンさん&若林さんの意見&Water Codexのデータを総括してみると・・・
アクアパンナフレッシュ&フルーティーな白ワイン
樽熟成の白ワイン
香りの高いスパークリングワイン
フレッシュで軽めのロゼ
甘口ワイン(ライトなタイプ)
サンペレグリノアルコール度数の高いロゼ
若い赤ワイン(赤い果実を連想、ある程度のタンニンが感じられるタイプ)
ミディアムボディの赤ワイン(熟成果実、スパイスを連想させるタイプ)
芳醇な白ワイン&酸味が低く、余韻が長い白ワイン
フルボデイの熟成赤ワイン(複雑な芳香、なめらかな食感)
甘口ワイン(ソーテルヌ)
アクアパンナ&サンペレグリノ若い赤ワイン(ボージョレ)
シャンパン
※ラーソンさんはアクアパンナ派食通の皆さまには是非お試しいただきたいと思っています。
とても興味惹かれる内容のセミナーでした。ワインや料理の味わいを200%生かすための工夫。そのひとつが水であることは間違いありません。〝たかが水、されど水〟ですね。
主催のサンペレグリノ アクアパンナ様、Spindleの糸賀代表、石丸様に改めて感謝いたします。
ありがとうございました!