2025年05月24日

2000万年前の時が織りなすワイン産地サンタバーバラ・カウンティ&初代「カリフォルニアワイン・ソムリエアンバサダー」決定


 カリフォルニアワインの多様性を発信しているカリフォルニアワイン協会(CWI)
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カリフォルニアワイン協会主催のカリフォルニアワインAliveテイスティングは試飲会とセミナーの2本柱です。2019年から“テーマ産地”を定め、ナパ・ヴァレー、ソノマ・カウンティ、ローダイ、パソ・ロブレス等を深堀りしてきましたが、今年は冷涼エリア、映画『サイドウェイ』の舞台にもなった「サンタバーバラ」にフォーカスしました。
業界関係者対象の試飲会には、東京64社791品、大阪49社645品の出展数があり、参加者は東京674名、大阪308名で、過去最高数を記録との公式発表もありました。


カリフォルニアワインAliveテイスティング2025
第一部セミナー
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ABC、クラウン・ポイント、フェス・パーカー、ブリュワー・クリフトンの各生産者
最右はサンタバーバラ・カウンティ・ヴィントナーズのアリソン・ラスレットCEO

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総面積68万5,000ヘクタール以上
総栽培面積4,450ヘクタール以上
ぶどう品種は75種以上
栽培のトップ5品種はシャルドネ、ピノ・ノワール、シラー、ソーヴィニヨン・ブラン、カベルネ・ソーヴィニヨン
AVAは7つ(2025年現在)

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■サンタ・マリア・ヴァレー/太平洋に近いエリア、CHやPNやシラーを栽培
■サンタ・リタ・ヒルズ/PNやCHに適したエリア、日較差は10度程度
■バラード・キャニオン/サンタ・リタ・ヒルズの東側に位置し、ローヌ地方のミストラル似の風が吹くローヌ系品種向きのエリア

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■ハッピー・キャニオン・オブ・サンタバーバラ/ 海から離れた30度超の日もあるエリア、栽培品種はボルドー系のCSやSB
■ロス・オリヴォス・ディストリクト/50のテイスティングルームを備え観光に力を入れているエリア、SBが主役
■サンタ・イネズ・ヴァレー/5つのAVAを包括、土壌も品種も様々、多様性に満ちたエリア
■アリソス・キャニオン/暑すぎず&涼しすぎずの気候状況に恵まれた最も小さなエリア、ローヌ系品種向き

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1.フェス・パーカー シャルドネ“アシュリーズ” 2023
サンタ・リタ・ヒルズAVA。2023年は冷涼年。太平洋に近い冷涼エリアで畑は砂質土壌。ぶどう樹は1990年代後半にパーカー家が植樹。100%樽発酵(新樽37%)、7カ月熟成。柑橘系果実、黄リンゴ、洋梨、レモンクリーム、バニラ、ブリオッシュ、口中なめらかな、好印象。

2.ブリュワー・クリフトン 2023  ピノ・ノワール
サンタ・リタ・ヒルズAVA。1996年にワイナリーを立ち上げ、ワイン業に関わって30年のブリュワーさん。造りのスタイルは10~30年の使用樽を活用。全房発酵を取り入れているのは「“梗”が、繊細な植物的なアロマを生み出し、果実の力強さを引き立て、タンニンやストラクチャー、旨味の要素が表現できるから」とコメント。果実と酸味のバランスが良く、丁寧さが伝わってくる味わい。

3.オー・ボン・クリマ ピノ・ノワール“ノックスアレキサンダー” 2020
サンタ・マリア・ヴァレーAVA。1982年創業のワイナリー。サンタバーバラの地で造るブルゴーニュスタイルの魅力を世界に知らしめた創業者ジム・クレンデネンさんは2021年に他界し、現在は長女イザベルさん&息子ノックスさん、ワインメーカーのジム・エデルマンさんとセラーマスターのエンリケ・ロドリゲスさんの4人体制で活動中。父親亡き後も、ワイン造りの標語は“バランスと個性”。ノックスアレキサンダーはぶどうは3つの畑、ワイナリーが位置するビエン・ナシード、自社畑ル・ボン・クリマ、隣接するランウェイの一部を使用。発酵は5トンの開放型発酵槽を使い、25%全房発酵、フランソワ・フレールの新樽100%で熟成は22ヵ月。ラズベリー、ベーキングスパイス、ナツメグ、アーシーさ、ミネラルのニュアンス。

4.ラバージ グルナッシュ 2021 来日中止
サンタ・リタ・ヒルズAVA。同エリア西側の敷地に点在する17エーカーの畑にアルバリーニョ、ピノ・ノワール、グルナッシュ、シラーを栽培。動画で「健全な畑から産する果実味・骨格・酸味を備えたバランスの取れたぶどうが重要であり、そのためには収穫のタイミングが大事」とのメッセージ。世界で最も冷涼なグルナッシュの栽培地のひとつで、全房発酵の比率は23%、ブルゴーニュ樽(228L)で18ヵ月育成、アルコール度数15.4%、ボディ感ある味わい。

5.クラウン・ポイント “カベルネ・ソーヴィニヨン” 2021
ハッピー・キャニオンAVA。太平洋から北へ18㎞、サンタバーバラ・カウンティの東端、標高290ⅿで畑は15ヘクタールで岩が多い火山性土壌、南向き30度の斜面。ぶどう品種はCS97%とPV3%(自社畑100%)のブレンド。新樽と一空樽各50%で22ヵ月熟成、赤紫の色調で粘性もあり、カシスやブルーベリーのアロマ、若々しいテクスチャーで中盤からシルキーなタンニン。


供出ワイン
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供出順に
1.フェス・パーカー シャルドネ シャルドネ“アシュリーズ” 2023
2.ブリュワー・クリフトン ピノ・ノワール 2023
3.オー・ボン・クリマ ピノ・ノワール“ノックスアレキサンダー” 2020
4.ラバージ グルナッシュ 2021
5.クラウン・ポイント “カベルネ・ソーヴィニヨン” 2021


午後からの試飲会
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大盛況!

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フリーマンアキコさんのワインスタイルは上品
和の要素を感じます!

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桃井隆宏さんが手掛けるアーサーセラーズのワインは超お薦め

余談ですが・・・
椿山荘主催『日本で飲もう最高のワイン2015』で専門家審査員を担当した時、
最高賞プラチナに選ばれたワインのひとつが桃井さんのピノでした。
10年ほど時が経ちましたが、今回、久々に桃井さんと再会し、懐かしく嬉しく思いました!

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上記は2015年の受賞式の記録
ここにも書いてありますが、
アキコさんと桃井さんのワインの師匠はエド・カーツ氏
品のある造りが共通しています。

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マージュラムのブース

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当日のマイベスト
シラー好きには最高でした!


✨✨✨

 サンタバーバラのワイン試飲とHAL YAMASHITAの新和食の食体験
試飲会翌日のプレスイベント

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   出典:CWI


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Haru YAMASHITA シェフのオリジナルメニューに合わせて

勢揃いした来日メンバー
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アリソン・ラスレットCEO(2列目中央)&来日した9生産者


オーボンクリマ ブースの設定はABC順でした
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イザベル・クレンデネンさん 
ヒルデガードホワイトワイン2021はサンタ・マリア・ヴァレーAVA
PB50%、PG45%、アリゴテ5%をブレンド
新樽100%で品種毎に2年間熟成、私には樽若干強め


ブリュワー・クリフトン
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グレッグ・ブリュワーさん
サンタ・リタ・ヒルズ ピノ・ノワール2022

ジム・クレンデネンさんを尊敬し、彼の造りを模範にしてきたグレッグさん
使用樽を使い、全房発酵に注力する彼のワインは繊細
ABCの後に試飲したことで双方の造りの違いを実感

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愛媛の真鯛のカルパッチョと新鮮なハーブとナイスなペアリングだったシャルドネ
ブリュワー・クリフトンのワインに感じる“塩味と旨味”


クラウン・ポイント
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エージェー・フェアバンクさんはカベルネ・ソーヴィニヨンを2種


ディアバーグ・ヴィンヤード&スターレーン・ヴィンヤード
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タイラー・トーマスさん
シャルドネ ドラム・キャニオン・ヴィンヤード2019
スターレーン アストラル2013

う~ん、見覚えあるお顔・・・
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当時の画像をお見せして確認しました。
2014年当時はワインメーキングディレクター、今は醸造長兼社長
サンタバーバラの素晴らしさが体感できた貴重な訪問記はコチラ


フェス・パーカー
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スペンサー・シュールさん
ブースではシャルドネ2023とピノ・ノワール2023を紹介


ラバージ
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来日できなくなってしまったラバージ
サンタバーバラ・カウンティのフィル・カーペンタ―さんが代役!

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握り寿司に合わせたのはアルバリーニョ2023(未輸入)


ロンゴリア
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ブルック・クリスチャンさん
手にしているのは日本未輸入のアルバリーニョ2023&メンシア2022


マージュラム
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ダグ・マージュラムさん
ローヌ系5品種を使用したM5

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照り焼き鶏もも肉にはマージュラムM5、メイン品種はグルナッシュやシラー
2014年のサンタバーバラ訪問時から気になっていた造り手が“マージュラム”


ネイティブナイン
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ジェームズ・オンティヴロスさん
ランチョ・ヴィネード シャルドネ2020とピノ・ノワール2020を手に!


プレスキィ―ル
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トニー・チャさん
日本未輸入のアリゴテ2023&ピノ・ノワール2022を披露



【最新情報】
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記載事項に関するお問い合わせ先
カリフォルニアワイン協会(CWI)
jpmedia@wineinstitute.org

posted by fumiko at 23:02| Comment(0) | カリフォルニア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年03月15日

カリフォルニアワイン協会公認のグローバルな教育プログラム キャップストーン・カリフォルニア 体験記

 カリフォルニアワイン協会CWI

が世界に向けて発信する教育プログラム

 昨年9月、カリフォルニアワインの輸入元&プレスを対象に、
 オンライン説明会が開催されました。
 MCを務めたのはCWI日本事務所扇谷まどか共同代表
 CWIオナー・コンフォート国際部長はカリフォルニアワイン教育のビジョンに言及し、
 主任講師の山本香奈エデュケーターはショートバージョンで模擬講座を行い、 
 プログラムの総監修者エヴァン・ゴールドスタインMSは2種の白ワインについてコメント
 試飲ではMSが用いるディダクティブ・テイスティング(演繹的試飲法)を採用
 マスター・ソムリエの略。有資格者は世界に約300名

Capstone Californiaの概要
開発したのはCWI輸出プログラムチ ームと世界のワイン専門家で、カリフォルニアワインに特化したコンテンツを多言語対応のマルチメディアを介して世界のワイン業界のプロや愛好家に提供するものです。初級から専門家レベルまでの4段階のカリキュラムによって構成されており、日本では2021年10 月下旬から初級/Level1がスタートしました。講座はアカデミー・デュ・ヴァンでの座学&テイスティングと、オンラインによるセルフ・スタディの2コースです。


 10月からスタートした座学@アカデミー・デュ・ヴァン
 カリフォルニアに精通する山本香奈講師による初級は10月から月1回ペースで4回開催
 内容は歴史、地理、気候、土壌、ぶどう品種、栽培や醸造、熟成、ワイン法令等


 供出されたアイテム
 1回目の講座で試飲した4種。テイスティングには、
 カリフォルニアの歴史を背景にしたワインも登場するのでお楽しみに!

 左から
 #1:マタンザス・クリーク ソーヴィニヨン・ブラン2019
 #2:シャトー・モンテレーナ シャルドネ2018
 #3:ブエナ・ヴィスタ ピノ・ノワール2017
 #4:ロバート・モンダヴィ カベルネ・ソーヴィニヨン2018


 第3回講座のディダクテイブ・テイスティングは森覚講師が担当
 切れの良い語りで、今講座の“売り”の1つである試飲法を丁寧に解説


 演繹的試飲法とは?
 コート・オブ・マスター・ソムリエCMSがテイスティングで取り入れている方法
 ディダクティブ・テイスティングは日本語では演繹的試飲法と訳されています。
 あらゆる要素に基づいて結論を導き出していくのが演繹(えんえき)法です。

 香りを利いて、柑橘類があるかないか、あるなら具体的な果実の名、その特徴
 果実以外なら、例えば、ハーブはあるかないか、バターやクリームはあるかないか
 項目ごとに利き分け、香り(アロマ)と味覚(フレ―ヴァ―)を組み合わせて結論に到達

 国際ソムリエ協会ASIや日本ソムリエ協会JSAのコンクールではテイスティングの際、
 ワインについて様々な“形容”を使って表現しますが、
 演繹的試飲では“ある or ない”の二者択一
 その積み重ねで、結論を導き出していくのが特徴です。


 テイスティングシートのフォーマット / (C)CMS
 シャトー・モンテレーナCH 2018の模範解答の一部

  ブエナ・ヴィスタ PN2017の場合、色調は「ガーネット」
  Alc度数13.5%ですが、ここでは「やや高い」にチェックを入れるのが 正解


 受講後は毎回オンラインによる小テスト
 4択問題で、正解なら緑色、間違っている時は赤色の表示になります。
 不正解でも「テストをやり直す」で再チャレンジできます。
 テストは好きなだけ挑戦できますし、一発勝負で決まるわけではないので、ご心配なく!
 但し、問題はいつも同じではなく、その都度変わっているようです。

 最終テストの出題は50問でした!
 小テストが終わったら最後の仕上げのテストです。
 講師が念押ししたり、白板に記述していた事柄の確認は大事

 すべてをクリアすると
 小テスト&最終試験を通過すると、このような表示に[わーい(嬉しい顔)]
 Level1の受講者は2月28日迄に最終テストを済ませておくことが必須だったので、
 試験をクリアした受講生には3月中に初級の認定証が届く予定です。

キャップストーン・カリフォルニアは、初級・中級・上級・専門家/アンバサダーの 4つのレベルから成り、最初のレベルを修了すると次の段階に進むことができます。
募集はアカデミー・デュ・ヴァンの公式サイトで公開されますが、オンラインによるセルフ・スタデイの場合はテイスティングがないので、3月と4月に開催される森覚講師によるデイダクティブ・テイスティングコースを受講するのも選択肢の1つです。

キャップストーン・カリフォルニアは、カリフォルニアワインの海外市場向け販売拡大を目的とした多角的10年戦略の一翼を担うもので、世界中の人々を対象に、体系的な学習を通してカリフォルニアワインの知識が会得できるようになっています。

【キャップストーン・カリフォルニアのご案内】
詳細はコチラ

で!

【関連講座のご案内】
ディダクテイブ・テイスティング講座


カリフォルニアワイン協会公認教育プログラム
キャップストーン・カリフォルニア(Cap stone California) レベル2資格認定講座



posted by fumiko at 20:23| Comment(0) | カリフォルニア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月12日

期間限定で開催された『ナパワインフェア2019』の受賞店13店舗を表彰!

 ナパワインフェア2019授賞式
2月10日東京アメリカンクラブで授賞式が行われました。13店舗の皆さま、おめでとうございます!

『ナパワインフェア2019』はナパヴァレー・ヴィントナーズ(Napa Valley Vintners、略称NVV)主催の期間限定フェア。2019年10月1日から11月30日までの2か月間、全国の飲食店66店舗と小売店20店舗が参加して、飲食店はナパワインのグラス売り、小売店は4種類以上のナパワインを取り扱いました。受賞店舗&詳細はコチラ

で!

同フェアのために仕入れ or 販売されたナパワインは約27,000本でした。

 ワイルドカード賞は『hOnda麻布十番』の手に
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授賞式当日、ワインの仕入れ本数が200本以上の参加店の中から抽選でワイルドカード賞を選出。ラッキーな当選者は麻布十番hOnda (画像右)

 東京アメリカンクラブによるワインと料理のマリアージュ
アイオーリソースを添えた蟹料理、シトラスをブリッジ食材に使い、リンゴをトッピングすることで、ナパ・ヴァレーのシャルドネのミネラル感や酸味と相乗

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モーレソース(唐辛子、チョコレート、ナッツ、果物)の甘辛さが鶏もも肉と絶妙なバランス、ナパ・ヴァレーのメルロの果実感とボリューム感と相性良好

低温調理したリブ肉を塩と肉汁だけで味付けた素材重視の一皿。ブリッジ食材のタイムやマジョラム、ホースラディッシュがアクセントに。ナパ・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨンとナイスマリアージュ

お肉のカッティングシーンも楽しめました。


 研修ツアー『エクスペリエンス・ナパヴァレー』
(右から)フェアの成功に感謝の意を表したアメリカ大使館農産物貿易事務所バレット・バンパス副所長、ナパヴァレー・ヴィントナーズ日本事務所の若下静代表&同小枝絵麻代表、アメリカ大使館農産物貿易事務所青木純夫シア・マーケティング・スペシャリスト

受賞店の代表者は、4月に『エクスペリエンス・ナパヴァレー』に招待されます。
私は2018年にプレスとして同行させていただきました。とても素晴らしい内容だったので、受賞店の皆さまにとりましても研修ツアーは貴重な体験になると確信しております。リポートはコチラ

にまとめてありますので、ご笑覧いただけましたら嬉しく思います。

同フェアについてのお問い合わせはナパヴァレー・ヴィントナーズ窓口 若下静様まで
japan@napavintners.com
posted by fumiko at 23:55| Comment(0) | カリフォルニア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年08月22日

醸造家クリス・カーペンターが語るナパ・ヴァレー〝マウンテン・ワイン〟の世界

醸造家クリストファー・カーペンターさん
パーカーポイント高得点の滅多に試飲できないワインたちとの対面、仕事冥利な時間でした!

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シカゴ出身のクリス・カーペンターさんは旅行でナパを訪問した時、自分が好きな科学への興味と、料理&ワインへの情熱の2つが同時に満たされるライフスタイルを発見します。その道を究めるため、すぐに、カリフォルニア大学デイビス校の大学院に入学し、ぶどう栽培学と醸造学の博士号を取得。イタリアやカリフォルニアのワイナリーで研鑽を積んだ後、ジャクソン・ファミリー・ワインズの醸造チームの一員として入社して、醸造家としての一歩を踏み出します。2000年に同グループのロコヤ、2001年にはカーディナル、2005年にはラ・ホタのワインメーカーに就任し、2007年からマウント・ブレイヴのプロジェクトに参加しています。

マウンテン・ワイン(山のワイン)の第一人者
プレスセミナーでは前述4ワイナリーの9アイテムを試飲。ヴィンテージはここ10年間で一番良いと言われている2012年でした。

カリフォルニアの産地はヴァレー・フロア(平坦地)とマウンテン・サイド(山岳部)に大別できますが、クリスさんが得意なのは〝マウンテン・ワイン(山のワイン)〟で、その魅力について、「平坦地にはない酸味、凝縮感、長熟感があり、そこに惹かれている」と語っていました。

クリスさんによると、ナパ・ヴァレーの土壌は3つに分けられ、ひとつは低地でナパ川に沿った栄養分のある土壌。あとの2つは山岳部で、海底が隆起した堆積土壌と、地殻変動から1000万年後に起きた火山活動による火山性土壌とのことです。

ナパ・ヴァレーの西側にあるマヤカマス山脈は朝日を受けても、霧の好影響下にあるので、陽ざしはやわらかく、湿り気もあり、青々としています。一方、東側のヴァカ山脈には西日がストレートにあたるので土壌は乾燥して赤茶けています。ただし、ヴァカ側にあるハウエル・マウンテンだけは例外で、西側に大きな山があることで湾からの霧がそこにぶつかり、ハウエル・マウンテンにかかります。ゆえに、ヴァカ側にありながら、最も冷涼で湿気もあり、ナパ・ヴァレーのなかでボルドーに最も近いアペラシオンと言えます。そこから生まれたワインが『ラ・ホタ』です。


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画像をクリックすると拡大
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ワインは左から順に#1~#9
グラスは前列左から#1~#4、後列左から#5~#9


ラ・ホタ
オリジナルの醸造所が完成したのは1898年、現在でもその施設を使っています。
創始者はドイツ系スイス人、デザイナーはイタリア人、ワイナリーを建設したのは中国人、畑を耕していたのはメキシコ人で、『ラ・ホタ』という名はアメリカンインディアンに由来。スペイン語で〝Jという文字〟を意味しています。

ハウエル・マウンテンはナパ・ヴァレーでも標高(427㍍)が基準になっている唯一のAVA。霧が到達する位置より上部にあるので、朝、霧の影響を受けることはありません。ラ・ホタ・ヴィンヤードおよび自社畑キイズ・ヴィンヤードのぶどうを使い、山岳部のカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネ・フランを生産しています。

#1:ハウエル・マウンテン  カベルネ・フラン ナパ・ヴァレー (RP91)
#2:ハウエル・マウンテン  カベルネ・ソーヴィニヨン ナパ・ヴァレー (RP92)
#1 は1976年に植樹したカベルネ・フラン100%。「古樹があることはラッキーだが、収量は1㌶あたり1.5トン、250ケースしかないので、日本へは数ケースだけ」とクリスさん。加えて、「ハウエル・マウンテンのワインは、タンニンがしっかりしているので、近隣の『ダン』のように、飲み頃になるまでには20年かかりますが、#2はCS77%、CF11%、PV8%、ME4%のブレンドで、ダークフルーツ、ミネラル、細かなタンニンが特徴で、若いうちから楽しめます」とコメントしていました。
ラ・ホタ2012 輸入元:ラ・ラングドシェン、参考小売価格:13,000円(税別)


マウント・ブレイヴ
スペイン人が入植する前に住んでいたワッポーインディアン族への敬意を込めた〝勇敢な戦士〟が名前の由来。1860年代初めからワイン造りの歴史があるマウント・ヴィーダーはナパ・ヴァレー最大のアペラシオンですが、ワインの生産は全体の2%のみです。

#3:マウント・ヴィーダー メルロー
#4:マウント・ヴィーダー カベルネ・ソーヴィニヨン(RP92)
「マウント・グレイヴ・ヴィンヤードは標高は約430~550㍍なので、霧が降りてくる位置より上にあり、まだ寒いうちから日差しを受けるので、フレーヴァーの生育が早く始まります」とクリスさん。#3のメルローはパワーと凝縮感もあり、#4のカベルネはブレンドタイプで、味わいはしっかりしていますが、柔らかいタンニンなので口中スムース
日本未発売


カーディナル
ナパ・ヴァレーのいろいろなアぺラシオンをブレンドしたのがカーディナル。様々な特徴を持つワインを、ヴィンテージの特徴を生かしながら、層を重ねるように深みのあるスタイルに造り上げています。クリスさんは「オーケストラには管楽器、弦楽器等、いろいろなパートがありますが、ひとつにまとまっています。また、素晴らしいオーケストラならバイオリンに注力しようと思えばそれもできます。カーディナルも同じで、ハウエル・マウンテンに注力すればそれがどのようなワインかが理解できるし、全体として何かが突出しているのではなく、バランスが取れています」と解説。2012年は素晴らしいVTだったので、7つのアぺラシオン(マウント・ヴィーダー、ハウエル・マウンテン、スタッグス・リープ、スプリング・マウンテン、セント・ヘレナ、ヨントヴィル、ダイヤモンド・マウンテン)をブレンドしたそうですが、彼の芸術性が試される特徴的なワインのひとつです。
カーディナル2012(RP98)、輸入元:ラ・ラングドシェン、参考小売価格:45,000円(税別)


ロコヤ
カーディナルがオーケストラなら、1995年設立のロコヤはソロのワイン。ナパ・ヴァレーの標高335~550㍍の4つの山岳部の畑のカベルネ・ソーヴィニヨンをすべて同じ醸造法で造るので、違いは場所だけ。彼のワインメイキングを表現したワインです。
山のワインの大家クリスさんは「ロコヤはコレクターのためのアイテム。理由はコレクターは購入してから長い間セラーで寝かせておくことができるからです。ロコヤの4つの違いは〝タンニンの違い〟なので、今日テイスティングした順番が力強さの順になります。アメリカでは子供が生まれたらロコヤのマウント・ヴィーダーを購入し、21歳になったら開けて楽しむことが多い」と述べていました。

#6:ロコヤ ダイヤモンド・マウンテン・ディストリクト CS(RP96)
ダイヤモンド・マウンテンはマヤカマス側の一番北側にあり、温かな場所なので、チョコレートがけのチェリー、豊潤な味わいが特徴。自社畑ではないので、購入したぶどうを使用

#7:ロコヤ スプリング・マウンテン・ディストリクト CS(RP98)
土壌が他と違い、海底が隆起した堆積土壌なので、フローラルさが特徴。オレンジや桜のような香り、赤い果実と濃い果実の香りがあり、若々しいタンニンがあります。

#8:ロコヤ ハウエル・マウンテン CS(RP99)
ラ・ホタから1.5㎞離れた自社畑キイズ・ヴィンヤーズのぶどうを使用。ここでは1994年からワイン造りをしていますが、「ナパでも1、2を争う秀逸な畑、リッチさが特徴」とクリスさん

#9:ロコヤ マウント・ヴィーダー CS(RP100)
マウント・グレイブのお隣にあり、1993年に購入した畑。山岳部の畑にしては珍しくフラットな土壌なので、クリスさんは「栽培家にとっては正確に日照量を計測しコントロールできる利点がある」とコメント。スミレやブルーベリー、力強いタンニンのストラクチャーが特徴。
ロコヤ2011 輸入元:JALUX、参考小売価格:59,000円(税別) ※2012年未リリース


ホテルオークラ『山里』でのマリアージュ体験

セミナー後は澤内恭和食調理総料理長が、事前にワインを試飲して考案してくださったメニューと合わせての贅沢なマリアージュ体験!
澤内料理長から「香りが高く、しっかりしたワインなのですが、料理との相性を考えた時、正面から組むと、前菜から和食が負けてしまうので」とのお言葉がありましたが、実際に試して、そのお言葉の裏にあった見事な工夫はとても勉強になりました。

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突出し:無花果 黒胡麻味噌 かもじ葱 鰻 豆腐もろみ漬け オクラ

無花果に和の素材の黒いゴマを使うことで重厚さが加わりました。私は登場した鰻に山椒を合わせたくて、粉山椒をお願いしたのですが、これは定番ともいえる組み合わせなので、有馬焼(山椒を使った焼き物)を考えていらした料理長は敢えて突出しでの山椒使用は避けていらした由。鰻の下の諸味噌は長い時間漬け込んで、水分を絞り、湯葉に近い豆腐 (チーズのような状態)にしたものだったので、2005年VTの熟成感と拮抗していました。

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凝縮感たっぷりのロコヤ2005

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お造り:鰹土佐造り 玉葱醤油 季節の芽物

料理長いわく「お造りが一番難しかった」と。刺身の場合、旨みがのっている状態がベストなのですが、今回は血合いを赤ワインに合わせるのが基本にあったので、鰹の食べ頃の旨味と血合いの鮮度の具合がポイントに。鰹を少しあぶり、桜のチップで少々燻製香をつけ、食感をきちんと残しつつ、醤油のジュレを添えて、ロコヤ2001との相性を考えた一品になりました。
玉葱醤油はコンソメをジュレにしてかつおだしと合せたものです。下準備の段階ではカツオにワインとお醤油でほんの少し味をつけています。相性の良さを引き立てるために作った白ゴマドレッシング(ゴマとかつおだしだけ)もありました。

ちなみに登場したロコヤ2001はクリスさんが栽培から醸造まで手掛けた最初のワインで、初デビューでパーカーポイント100点をゲット、14年以上の熟成を経てもまだ若さがありました!

焼き物:銀鱈有馬焼 谷中生姜 諸胡瓜 諸味噌

この印象について7月23日付のワインのこころ

で、一足先にご披露させていただきました。
銀鱈の有馬焼(実山椒を使った料理)で、山椒の実を炊き、それをたたいてのせています。旬の谷中生姜はスパイシーさ、刺激を生かした工夫。ロコヤ2001との相性は料理長の愛が実った一皿でした!

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黒毛和牛 すき焼き 野菜をロコヤ2007とカーディナル2005と合わせて
個人的にはブレンドタイプのカーディナルとの相性が好きでした。

今まで、カリフォルニアや豪州等の、濃くてアルコール度数の高いワインを和食に合わせるという試み、その相性すら十分に考えるチャンスがなかったので、とても興味深い体験になりました。
ありがとうございました!
posted by fumiko at 23:24| Comment(0) | TrackBack(0) | カリフォルニア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年04月07日

サーの称号を持つピーター・マイケルがソノマに興したピーター・マイケル・ワイナリー

今回は〝サー〟の称号を持つ英国人のピーター・マイケルさんが1982年にカリフォルニア・ソノマに興したピーター・マイケル・ワイナリー

。ワイン・イン・スタイルさんのサイトが詳細なので、できるだけダブらないようにしています。最初にお立ち寄りいただくと全体が理解しやすくなります。

ピーター・マイケル・ワイナリ―のワインは米国大統領の晩餐会で多用されています。ホワイトハウスの執事が英国出身でマイケル卿のワインが好きだったことから、クリントン、ブッシュ、オバマ各政権で使われており、英国にある米国大使館でも活用されています。

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レ・パヴォ(仏語で〝ポピーの花〟)は数千年前の火山活動で形成された土壌で、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルドが栽培されています。ワイナリーの敷地にはワイン名の由来カリフォルニアン・ポピーが!

父親がフランスに赴任していた時、ピ-ター・マイケルさんは父親に連れられ、よくワイン産地を訪問していたそうです。好みはボルドーワイン(クラレット)であり、カリフォルニアでワイン造りをすると決めた時も、本人の夢はボルドースタイルのワインを造ることでした。レ・パヴォでそれを実現しています。

100 by 100 plan
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当日は3回目の来日となるポール・マイケルさん(ピ-ター・マイケルさんのご子息)がワイナリー& ワインについて解説。100 by 100 planが意味するものは、100年間100%家族経営を行っていくことを掲げたもので、創始者のマイケルさん、2代目ご子息ポールさん、そしてお孫さんと・・・代々家族でワイナリーを維持していきます。

ワイナリーのポリシー
ピーター・マイケルさんが仕事でシリコンヴァレーに滞在していた時、SFのレストランで仏ワイン(ボルドー)をオーダー、ところが1本目ブショネ、2本目ブショネとの事態で、仕方なく地元のワインを注文。初めて飲んだカリフォルニアワインがシャトー・モンテリーナの赤ワインでした。
ワイン造りの夢を抱き、理想の地を求め、7年間のリサーチの末、1982年、セント・ヘレナ山の西向きの麓にある土地を購入(ナイツ・ヴァレー)。1983年から植樹開始。現在、環境保全型農業で、ワイナリーの消費電力の95%はソーラーパネルで賄っています。生産している15種類のワインのうち、14種は無濾過・無清澄。ラプレ・ミディ(SB)だけはフィルター掛けをした非MLFのワイン。敷地内に醸造施設が2つあり、1つはピノ用、もう1つはCSとCH用に分けて行っています。ピーター・マイケル・ワイナリーのポリシーは、
■山岳地帯(斜面)のぶどうを使ったワイン造り 
■伝統的な醸造方法でのワイン造り
■生産量限定の希少価値の高いワイン造り
総生産量20,000ケース、フラッグシップのレ・パヴォは3,000ケース

ナイツヴァレーで造るレ・パヴォの垂直とナパで造るオー・パラディー
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画像クリックで拡大



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レ・パヴォはカベルネ・ソーヴィニヨン主体でカベルネ・フラン、メルロ、プティ・ヴェルドを使用。ブレンド比率は各ヴィンテージで若干異なります。ワインは左岸のカベルネをイメージしたワインで70%~77%使用。バランスが取れたワインでタンニン滑らか、パワフルかつエレガントで長期熟成できるワイン

同じ敷地でなぜカベルネとシャルドネが栽培できるかについて、ポールさんは「レ・パヴォは位置的に温暖であり、シャルドネが植えてある斜面は太平洋からの冷たい風の影響を直接受けるので栽培が可能」と。

#1:レ・パヴォ2006
バランスのとれた熟成具合
#2:レ・パヴォ2007
温暖な年。果実味があり、タンニンも柔らか。「長熟タイプですが若くても楽しめるワイン」とポールさん
#3:レ・パヴォ2008
2007年ヴィンテージは剪定にもかなり気を使ったヴィンテージ 
#4:レ・パヴォ2009
「良年で 2007年に似ています。07年よりタンニンもしっかりあり、長熟に向くヴィンテージ」とポールさん 
#5:レ・パヴォ2011
冷涼で難しい年。涼しいなかで、どれだけぶどうを熟させることができるかを示したヴィンテージ

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#6:オー・パラディー2011
2009年にオークヴィル・アペレーション東側の山間に土地を購入、ボルドー品種を植えています。画像の左がオークヴィルの土壌、鉄分を含んでいます。大きな岩が多い畑だったので、岩を砕き畑を整地。ナパでは雨水を貯めて灌漑用の池も作っています。右はナイツ・ヴァレーで、ともに火山性土壌です。

ナイツ・ヴァレーに特化していたピーター・マイケル・ワイナリーがナパにぶどう畑を購入した理由について、「ナイツ・ヴァレーからナパまでは車で15分程度であり、毎日畑作業をしている間、ナパは絶えず目の前にありました。いつもナパの話を耳にしていましたので、純粋にナパでワインが造りたいと思ったからです」とポールさん

プレスランチで供出された4本
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#1:ラプレ・ミディ2013
レ・パヴォの敷地内にあるシングル・ヴィンヤード。当初はロワール的な造りをしていましたが、近年、セミヨンをブレンドしたボルドースタイルに変わっています。素直で飲みやすい点が魅力
#2:マ・ベル・フィーユ2012
すべての畑のなかで標高が一番高い600m、霧が広がる高さより上なので、霧に覆われることもなく、日照度もあるのでワインにはトロピカルフルーツのニュアンスも。シャルドネ100%
#3:ル・カプリース2012
仏語で変わり者、気まぐれの意味があるカプリース。ピノ・ノワール100%で、標高300m~450mに位置する畑から産出
#4:レスプリ・デ・パヴォ2011
火山性土壌(流紋岩)で、根が地中深くにまで伸びています。最善のクローンのカベルネ、メルロ、プティ・ヴェルドのブレンド

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シェフからの可愛らしい一皿

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様々なビーツの調べ ヤギチーズと松の実と共に

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真鱈のペルシャード 具たくさんのスープ仕立て

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ワインのサービスは森覚シェフソムリエが担当してくださいました。

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仔羊のスパイスとの出会い 林檎とセロリで香り豊かに

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レモンのプリズム メレンゲとシナモンで引き立てて

ワインについてのお問い合わせはワイン・イン・スタイル ℡03-5212-2271
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2014年05月30日

新カルトワイン『Scarecrow(かかし)』誕生のルーツは『The Wizard of Oz (オズの魔法使)』

5月中旬、〝映画とワイン〟にからむ素敵な時間を過ごすことができました。
輸入元の(株) 中川ワイン

の招聘でカリフォルニアから素敵なファミリーが来日したからです。

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注目の赤ワイン J.J.コーン・エステートの『Scarecrow/スケアクロウ』 を前に、オーナーのブレット・ロペスさんと妻のミミ・デブラシオさん
商業カメラマンとして活躍していたブレットさんはリーヴァイスやホンダ、コカ・コーラなどの仕事を手掛けていましたが、1998年に引退し、祖父が興したエステートを継承。ミミさんがスタイリストだった時に出会い、素晴らしい仕事を遂行していくパートナーが人生のパートナーになりました。多彩なミミさんの現在の仕事はジュエリーデザイナーです。

プレミアム・ナパ・ヴァレー・オークションで史上最高額で落札された『スケアクロウ』
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ブレットさんは3年に1回の割でワインをオークションに出品しています。ワイン界を驚かせた第1弾は2011年2月のオークション時に起きました。1ロット(60本)のスケアクロウ2009年ヴィンテージ(VT)が、12万5千ドルで落札され、史上最高額を記録したのです。さらに、その第2弾として、今年2月のオークションでは2012年VTが前回の倍の26万ドルで落札され、最高額を更新しました。スケアクロウは新カルトワインの王者としての地位を不動のものにしています。

上記の画像は今年2月のオークションのカタログです。ワインメーカーのセリア・ウェルチさんのプロフィール写真の上部にはScarecrow Wine、2012Cabernet Sauvignon、Toto's Opium Dream: Scene Ⅲという記載があります。オークション用のワイン名〝Toto's Opium Dream、SceneⅢ〟のトトは映画『オズの魔法使』で主人公のドロシーと旅を続けるワンちゃんの名前で、シーンⅢも映画の台本をイメージしたものです。そして・・・何より、〝スケアクロウ〟という名は、映画に登場する〝ブリキ男〟〝ライオン〟&〝かかし〟の3人のキャラクターのなかの〝スケアクロウ/かかし〟に由来しています。


映画『オズの魔法使』に込められた祖父へのオマージュ
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スケアクロウのワインは映画の王道ハリウッドで活躍したブレットさんの祖父へのオマージュです。祖父J.J.コーンさんが製作に関わった『オズの魔法使』に出てくる〝かかし〟
ブレットさんは、ワイン造りを生業にするにあたり、「一番大事なことは農業であり、その象徴になるうるものがかかしであると考えました。畑の土にささっている姿は一度見たら忘れられない存在です。そして、このかかしと祖父の遺した映画とは切っても切れない関係にあります」とコメント

直接的な名前だと商標権に引っかかる場合もあり、現実的にはなかなか難しかったようです。当初はそのままJ.J.コーンにしようとしたらしいのですが、すでにB.R.コーンという類似の名があったので、これは断念。最終的にスケアクロウになりました。「この名に至るまで祖父の見守りを感じています」とブレットさん

J.J.コーンの足跡
ジョセフ・ジャドソン・コーン(J.J.コーン)さんは1895年生。ロシア移民の子で貧困のなかで育ちました。18歳で新聞社に入りますが、ここで、毛皮をつくるデザイナー、シェンクさんに認められ、NYへ。その後ハリウッドヘ。MGMに雇われ、22歳で、経理を総括する仕事を担当し、肩書は副社長に。祖母はキャプテンクックの子孫にあたる家柄で、前夫との間に息子がいました。その姓がロペスだったことから、ブレットさんはその名を引き継いでいます。

週末を過ごす別荘を探していた時に、バンク・オブ・アメリカのオーナーから、1875年に建てられた、8つのベッドルームと2つのリビングルーム、プラムが植えてある大邸宅を紹介されます。その邸宅はナパのラザフォードにありました。引っ越ししてほどなく祖母が亡くなり、コーンさんも1995年に100歳で他界します。

グスタフ・ニーバムとのご縁
隣家は1879年にフィンランド人のグスタフ・ニーバムが興した『イングルヌック』でした。コーンさんが所有する畑には2エーカーだけぶどう樹(1945年植樹のオールド・マン)が植えられ、斜面の上部には豊かな湧水がありました。グスタフ・ニーバムから「素晴らしい畑」との評価を受けており、造ったぶどうはイングルヌックに納入していました。

ナパで最古のカベルネ・ソーヴィニヨン
1960年~68年にかけて多収量のぶどう樹の開発が進められ、USデイビス校ではAxR#1の台木を推奨していました。多くのワイナリーがAxR#1を採用しましたが、その後、ナパを襲ったフィロキセラ禍で多くのぶどう畑は悲惨な状態になります。AxR#1にはフィロキセラに対する免疫力がなかったことが原因です。
コーンさんは1945年に植えたセント・ジョージアの台木のぶどうを死守していたことで、難を逃れることができました。ナパのなかで一番古いカベルネ・ソーヴィニヨンは、トカロン(現在ベクストファーが所有)とJ.J.コーン・エステート(25エーカー中2エーカーのみ)のぶどう樹とのことです。


税金対策の選択肢がワイン造り
祖父が亡くなり、エステートが競売にかけられることになります。5億からスタートして7億・・・最後は30億になりました。入札者はロスチャイルド家(ロバート・モンダビと)、ベクストファー・ヴィンヤードのオーナー、アンディ・ベクスターそしてブレット・ロペスさん(フランシス・コッポラと)の3組。コッポラは競売の際、表面には出ず、すべてブレットさんひとりが立ち回っていました。結果的に75~80エーカーのうち、3分の1の25エーカーと湧水、エステートをブレットさんが取得し、残りはコッポラにわたりました。

余談ですが、1975年、イングルヌックの歴史の重さに惹かれたコッポラは『ゴッドファーザー』の収益で敷地の一部を購入し、『ニーバム・コッポラ・エステート』を設立。そして1995年の『ドラキュラ』で大成功し、その収益金で残りの全敷地を入手しています。そのことが記憶にあったので、ブレットさんに「ドラキュラで得た収益が役に立ったのでしょうか」と伺ってみたところ、「コッポラは7つの会社を所有していたので、ドラキュラだけのお金ではないと思うよ」とのお返事が。とは言え、『イングルヌック』のグスタフ・ニーバムとつながっていたコーンさん、その歴史を引き継いだコッポラも映画人であるという流れにはワクワクするものがありますね。


ワイン造りをするにあたり、著名なワインメーカーを探すために、人選のアドバイスをしてくれたのが、アメリカのスコット・トレーシーさんで、何人かのワインメーカーに接触。ここで、前述したセリア・ウェルチさんが登場することになります。

パーカー・ポイント100点騒動
ファーストリリースは2003年で、これを試飲したロバート・パーカーが98点をつけました。発表された当日は朝から電話が鳴り続け、PCはパンク! 次のVTを待つ人が6000名にのぼりました、生産量は平均して1000ケース、エステートの記録用にキープすべき本数があるので、潤沢に供給出来ないのが悩みです。


ナパで新たな伝統を築いていくロペスファミリー
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初来日のロペスファミリー。中央は愛娘ココさん。ファミリーのなかでは一番ワインに造詣が深く、現在、ワインメーカーのセリアさんから多くのことを学んでいるそうです。

ブレットさんにお目にかかるにあたり、『映画でワイン・レッスン』を持参。『カサブランカ』を例に本の内容を説明させていただきました。映画のセンス、芸術的センスがある方なので、とても喜んでくださいました。記念画像に拙著を入れてくださった気配りに感謝です。

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『スケアクロウ』の写真本にサインをしているブレットさん

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ミミさんのお洒落なセンスが光ります。

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スケアクロウのアイコンマークのチョコレート!
セント・ヘレナにあるWoodhouse

製、口中でのとろけ具合が優しくて幸せ気分に!

質問に答えて
パーカーポイント100点をゲットした後の、今後の目標は?
A:家族のなかで伝説を作っていくことです。ナパに住んでナパを感じながらファミリーの歴史を代々につないでいきたいと思っています。ふたりの娘は映画や音楽に関わっているので、我々夫婦のたどってきた道を継承しており、ワイン造りという新たな仕事も加わりました。孫も3人います。

ワインメーカーのセリア・ウェルチさんの最大の強みはなんですか?
感性、直観力、洞察力、判断力のある女性です。「私がワインメーカーよ」という風に前面に出てくるような人ではないところも魅力です。何より人間性があります。


ワインテイスティング
ワインは3時間前に抜栓。外観は黒系果実(プラム、ブラックチェリー等)の要素、木目の細かなタンニンながら、最初は舌の上を軽くなぞるドライなニュアンスがあり、時間の経過とともにグラス内での変化が顕著に。ソフトな酸味は心地よく、繊細なタンニンは、なめらかで優しく 上品な口当たりになっていきました。オールド・マン由来のミネラルも感じます。ロペスさんいわく「理想は7~8時間前に抜栓」を。
青木私感:女性ワインメーカーらしい、優しさ、上品さがあると感じました。慌ただしい生活をしている人ではなく、人生の一コマ一コマを大切にしている人に良く似合うワイン、飲んで欲しいワインです。

ブリキ男のワインも
J.J.コーンエステート

ではスケアクロウとムッシュ・エタンを造っています。前者のスケアクロウはオールド・マンの区画から収穫したワインのほか、J.J.コーン・エステートの秀逸な区画のワインをブレンドして造ります(オークション用はオールド・マンのワインのみ)。後者のラベルにはブリキ男のイラストがついています。この絵柄はブレットさん考案で、ムッシュ・エタンは映画のなかのブリキ男の本名。オズつながりは、すべて偉大なる祖父への想いに重なっています。ナパで生まれたレジェンド・・・それがスケアクロウなのです!

スケアクロウのHP

でワイン本(私がいただいた)に載っている画像を見ることができます。また、ブレットさんはじめ、エステートで働くメンバーを紹介したページには各人をユニークな単語を使って紹介しています。是非お立ち寄りくださいませ。

ロペスファミリーは古都京都への旅も満喫なさったようです。タイトなスケジュールのなか、予定の時間を30分もオーバーしてインタビューに答えてくださったブレットさん、ミミさん、ココさん、ありがとうございました。同席のマットさんにも感謝です。
中川社長、山村さん、高村さん、お世話になりました。ますますのご発展を!
ラベル:スケアクロウ
posted by fumiko at 10:23| Comment(0) | TrackBack(0) | カリフォルニア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月13日

大好きなオーパス・ワン

1991年、サンフランシスコのトランス・アメリカのタワー・ビルの設計者
スコット・ジョンソンがデザインしたオーパス・ワン・ワイナリー、素敵です!



テラスから見えるマヤカマス山脈、手前のぶどう畑はカベルネ・ソーヴィニヨン


同行取材の最終日(9日)は自由行動。滞在先のサンフランシスコから車をチャーターして、一路ナパへ。まずは大好きな『オーパス・ワン・ワイナリー』に伺いました。昨年秋、カレッジの生徒さん数名を引率しての訪問から丁度10ヶ月、この間にオーパスの醸造施設やぶどう畑にも新しい変化が・・・

一年目の樽熟成庫に並んだ1000個あまりの新樽、壮観
オーパス・ワンの一年目の樽熟成は一列のみの並列。他のワイナリーのように2段、3段と重ねません。今年の収穫はあと2週間ほど先なので、樽熟成庫に用意された新樽はまだ空の状態。収穫を待つ新樽が並ぶ光景は本当に見事です。
昨秋の訪問時には収穫が終わっていたので、樽にはできたてのワインが入っていました。

昨年との違いのひとつ・・・ 樽を置く台の下には“砂利”が敷いてありましたが、“コンクリート”に変わっていました。 これはコンクリートのほうが衛生的ということで考えられた、完璧を求めるオーパスならではの工夫。

今までのぶどう樹を引き抜き、新しいぶどう樹を植樹するために整地中の畑



台木の研究も盛んな昨今、植樹して17年も経過したぶどう樹を引き抜き、植え替えのための作業が進んでいます。画像は建物正面に程近い整地中のぶどう畑です。

posted by fumiko at 00:23| Comment(8) | TrackBack(0) | カリフォルニア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月05日

まずは機内から

成田からロスに向けてのフライトで、機内から撮影した雲海は綿アメ状態

2時間ほど経過した後、同じ角度から撮った景色は神秘的な色彩でした。



カリフォルニア同行取材で、4日ロスに向けて出発!
この旅行は2年前からお誘いを受けていたもので、今回はロスに到着後、サンタ・バーバラ~パソ・ロブルス~モントレー~ナパ~ソノマ~サンフランシスコの順に回ることになっています。
自分の夏休みプラスの意味で、貯まったマイレージでシートをアップグレードして参加したのですが、初日からなんとも嬉しいハプニングが!

UAの機上、指定の席に向かったところ、1組のカップルがすでに着席していました。
男性の方が私に、「座席を交換してくれませんか?」と。「構いませんよ」と答えると、彼は「席まで僕が案内しますよ」と言って先導し、私を彼のシートへ。案内してくださった先は、何とファーストクラス“No5”! 自分でお金を払って座ることなど、“絶対にないシート”です。これは超ラッキー、幸先の良い第1日目になりました。



大好きなシャンパンを“フルートグラス”でいただいたのも初めて! 
ポリコップやタンブラーで飲むのと、全然違いました! 33,000フィート上空で綺麗な気泡が連なる『エドシック・ディアマン・ブルー・ブリュット1996』は酸味が豊かでボディもあり、幸せな気分
シャンパーニュ地方の1996年は最高の年、「30年持つ」と言われているヴィンテージ

posted by fumiko at 23:05| Comment(3) | TrackBack(0) | カリフォルニア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする