America250
今年は米国建国250周年かつ世界中のワイン関係者を驚愕させた『パリスの審判』から50年という節目になります。
イレイン・チューカン・ブラウン講師
アラスカ生まれのブラウンさんは多くの受賞歴を有する著述家、講演者、教育者。ワインサイト『JancisRobinson.com』の米国担当主幹編集者や英国『Decanter』誌のコラムニストを務め、『ワイン・アンド・スピリッツ』誌にも寄稿していました。直近では「バトナ―ジュ・フォーラム」の常任理事として活躍。先住民イヌイットであることに誇りを持ち、セミナーでは先祖への感謝を述べていました。
カリフォルニアワイン協会(California Wine Institute/略称:CWI)主催のAliveテイスティングで併催されるのが特別セミナーです。
今年は米国を代表するワインライター兼教育者イレイン・チューカン・ブラウン氏が①「The Legacy of the Paris Tasting ~パリスの審判から未来に続く道標~」、②「The Story of California Chardonnay カリフォルニア シャルドネの物語」と題する2つのセミナーを担当。定員100名の会場はともに満席、私は①に参加しました。セミナーはブログでリポートしますが、カリフォルニアワイン協会のYouTubeチャンネルでセミナーは視聴可能です ⇒ https://www.youtube.com/@calwinesjp
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プロローグ
~1976年5月24日は、たまたまパリにいた。1週間前、NYの編集者に、パリでばかばかしい試飲会がある旨は伝えてある。超一流どころのフランスワインが、名もないぽっと出のカリフォルニア物と対決する趣向らしい。フランス勢が勝つのは目に見えているので、話題にならないだろうが、カリフォルニアで生まれ育った私は、昔からワインに興味があり、スイス、ドイツ、ベルギー、フランスで、学校に通ったり働きながら、ヨーロッパのワインをいろいろ勉強した。フランス対カリフォルニアの試飲会は、取材することになったものの、誌面を飾る確率はかなり低いと思われた。試飲会場はインターコンチネンタルホテルだ。シャンゼリゼ通り近くにオフィスを構えるタイム誌パリ支局からそれほど遠くない~
出典:『Judgement of Paris by George M. Taber』/『パリスの審判(日経BP社刊』
スティーヴン・スパリュアさんを偲びつつ
上記は、『パリスの審判』の著者ジョージ・M・テイバーさんの、1976年5月24日の“取るに足りない試飲会”についての一文ですが、これこそ、カリフォルニアワインの実力を世界に知らしめ、永遠に語り継がれている出来事なのです。
フランス勢の圧勝が確実視されていただけに、取材に行ったジャーナリストはタイム誌のテイバーさんのみ。試飲会の仕掛け人は当時パリでワインショップ『カーヴ・ド・ラ・マドレーヌ』を経営していたスティーヴン・スパリュアさんですが、彼のショップのパートナーだったアメリカ人のパトリシア・ギャラガーさんがテイバーさんと知り合いだったのでお誘いがあったようです。
『カーヴ・ド・ラ・マドレーヌ』はフランスの銘醸ワインを数多く揃えていました。当時パリには英語で対応できるショップが他になかった為、来店するカリフォルニアのワイン生産者たちから、「自分たちのワインを評価して欲しい」と頼まれることが多かったそうです。そのような経験を通して、スパリュアさんはカリフォルニアで質の高いワインが造られていることを実感します。
ショップのパートナー役パトリシア・ギャラガーさんが、1975年9月バカンスでカリフォルニアに行き、その時に様々な生産者を訪問します。パトリシアさんから「来年(1976年)はアメリカ建国200周年なので、それをテーマにした試飲会を企画するのはどうか」との提案を受けたスパリュアさんは、1976年4月、妻とともにカリフォルニアに出向き、最終的にCSとCH各6本のワインを選択します。
パリでのテイスターは9名、いずれも著名人ばかりでしたが、カリフォルニアワインを飲んだことのある人はひとりくらいしかいなかったとのこと。テイスティング開催の2週間前に、公平にカリフォルアワインを試飲してもらうため、店にあるワインのなかからボルドーとブルゴーニュのトップクラスのワインを選択。テイスターには事前に「カリフォルニアワインを試飲していただきます」と話していたので、テイスティング当日に「今日はルールを変えて、ブラインドでフランスワインとカリフォルニアワインを試飲していただきます」と提案。全員から「問題なし」との返答があったので、5月24日午後、アメリカ建国200周年を記念して、白と赤10種類ずつのテイスティングが行われました。
出典:『Judgement of Paris by George M. Taber』/『パリスの審判(日経BP社刊』
スパリュアさんは、ブラインドで無名なワインが上位に入れば、高い品質のワインが造れられていることが証明できると考えていたそうですが、結果は全く予想していなかった事態に! 白も赤もカルフォルニア産が1位を独占し、ワイン界を仰天させます。ワインの世界を激変させたこの出来事は、長く語りつがれています。
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The Legacy of the Paris Tasting
ブラウン女史は『パリスの審判』をテーマに、
1970年代のアメリカ事情について解説。
未来に向けたワイン造りの提言も行いました。
カリフォルニアにおける食とライフスタイルの変化
飛行機での渡航が楽になり、他国の食生活の見聞が深まると、カリフォルニアでも食やライフスタイルに変化が出てきました。パリで生活していたアメリカ人のアリス・ウォーターさんが1970年代にカリフォニアのバークレーでレストランを開いた時、彼女は近隣の農家の協力を得て「Farm to Table(農場から食卓へ)」という考え方を実践。入手しにくかった旬の食材や地元の食材を使い、ワインもロバート・モンダヴィとジョセフ・フェルプスの2ワイナリーを扱うという徹底した地産地消でした。それまで「ワインはフランス産」と思っていた人たちにはカルチャーショックでしたが、1970年代のフランスとカリフォルニアの食に対する考え方がリンクしてパリスの審判に繋がったと思います。
パリスの審判は「品種名ワイン」に目を向けるチャンスを与えてくれました。フランスワインは<産地名=ワイン名>なので、産地を理解していないと、使われている品種がわかりません。一方、カリフォルニアワインは<品種名=ワイン名>なので、ワイン入門者にもなじみやすく、理解しやすいのが利点。そして、もう一点は、伝統的なワイン産地でなくても、秀逸なワインを生み出す能力があることを証明したこと。ブラウンさんはテイスティングで①『パリスの審判』で高評価されたワイン ②高貴品種以外のワイン ③新しい産地や個性ある造り手のワイン。これらを踏まえながら、未来に向けたワインの可能性について言及しました。
奥左から右へ/ 手前左から右へ
テイスティング①
品種はアルバリーニョ
ポルトガルやスペインを代表する品種。シストと石灰岩から成る土壌。塩味のニュアンス。テクスチュアなめらか。カリフォルニアでアルバリーニョが商業的に造られるようになったのは21世紀になってから。雨の多い風土に適応しやすいアルバリーニョは日本でも多くの栽培家が注目しており期待度大
テイスティング②
品種はソーヴィニヨン・ブラン
甘口タイプのソーヴィニヨン・ブランが主流だったカリフォルニアで、食に合う辛口スタイルのソーヴィニヨン・ブラン(フュメ・ブラン呼称)を造り成功したのがイタリア系移民のロバート・モンダヴィ、醸造には樽を使用。②のワインの生産者はコロンビアの出身者で、古樽を使用。ピュアで存在感ある酸、フレッシュさのなかに柔らかさを感じるワイン
テイスティング③
品種はシャルドネ
パリスの審判で赤ワイン&白ワインとも10位以内にランキングした唯一のワイナリー。果実の厚み&凝縮感、白胡椒、シルキーでクリーミー、中盤以降、心地良い酸味とAlc由来の甘さのニュアンス
パリスの審判で6位だったフリーマーク・アベイ
首位に輝いたシャトー・モンテレーナ
テイスティング④
品種はシャルドネ
マロラックティック発酵(MLF)についての知識が十分に深まっていなかった1970年代にあって、当初から酸味を生かした一貫した造りをしているシャトー・モンテレーナ。果実の内果皮似の軽いビター感、抑制の利いたタイトで凛としたスタイル
テイスティング⑤
品種はピノ・ノワール
標高430ⅿ、海から4㎞、、ぶどうは十分な日照量に恵まれ完熟。自根栽培のピノがフィロキセラ禍で絶滅し、2019年が最後のヴィンテージになりました。加えて、創業者ディヴィッド・ハーシュ氏の娘ジャスミンさんがワインメーカーとして初めて差配を振るったのも2019年ヴィンテージ。ダブルの意味で価値ある特別なワイン。自根に感じる“まるみ”、凝縮感、純度の高さを感じさせるワイン
テイスティング⑥
品種はバルべーラ、未輸入
パリスの審判は多様な品種へのアプローチを可能にしました。フレッシュで軽やか、なめらかなタンニン、心地良い酸味、全房によるハーブ的なニュアンスもあり、フードフレンドリーなワインスタイル
テイスティング⑦
品種はグルナッシュ、未輸入
アメリカ初のネイティブアメリカンのルーツを持つ醸造家タラ・ゴメスさん。ラベルには「Made/Produced by American Indians」とのロゴ。1880年代に伝わった品種グルナッシュの新たな見直し
テイスティング⑧
品種はカベルネ・ソーヴィニヨン
標高470ⅿ、ナパ・ヴァレーの西側にあるマヤカマス山脈のマウント・ヴィーダーに位置し、カリフォルニア独自の“山カベ”の概念を確立したワイナリー。黒系果実、シダ、黒鉛、中盤から存在感ある酸味、緻密なタンニン。アラスカでの食習慣にボーンスープあり、「その出汁がイメージできる」と語っていたブラウン講師。独特なアロマは「骨のスープの香り」と表現すれば良いのかも😉
パリスの審判で7位だったマヤカマス
首位に輝いたスタッグス・リープ・ワイン・セラーズ S.L.V.
品種はジンファンデル、未輸入
クロアチア原産の歴史を紡いだカリフォルニアを代表する品種、⓾は樹齢120年超の古樹、サステナビリティに熱心な生産者の手による豊潤でシルキー、スパイシー、溌溂感のある長い余韻のジンファンデル。昨今「ジンファンデルはスカンジナビアで人気」とブラウン講師
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カリフォルニアワインAliveテイスティング 2026
パレスホテル東京と大阪ステーションホテルで行われたAliveテイスティング2026には、料飲店や小売店等を含むワイン業界関係者対象の昼の部には東京755名、大阪364名、一般消費者対象の夜の部には、東京と大阪で571名の参加があり、2会場の来場者数は1,690名で過去最高!
シャンパーニュの名門テタンジェがカリフォルニアで手掛けるドメーヌ・カーネロス
出展数は東京55社762品、大阪32社511品
守備範囲の広さがカリフォルニアワインの魅力
【カリフォルニアワインに関するお問い合わせ先】
カリフォルニアワイン協会 jpmedia@wineinstitute.org


