2025年09月12日

メルシャン発 “日本を世界の銘醸地へ”をコンセプトにしたスタートアップワイナリーコンサルティング事業


麻井宇介先生(本名:浅井昭吾)のDNAの具現化
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メルシャンが2021年から開始したぶどう栽培&ワイン醸造コンサルティング事業は、「地域全体でワイン産地として認められなければ日本ワインの発展はない」という麻井先生が遺したメッセージの具現化。その推進役を担っているのは経験豊富なメルシャンの三銃士、麻井チルドレン第1号の藤野勝久さん、田村隆幸さん&大滝敦史さん


メルシャンの精鋭部隊
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藤野勝久シニア・ワインメーカー
1979年入社、仏シャトー・レイソン駐在、1996年から欧州事務所長に就任し、任期中は豊富な海外を生かし、多くの国際ワインコンクールの審査を担当。ボルドー大学醸造学部認定DUAD(ワインテイスティング適正資格)、エノログ、シニアソムリエ有資格。日本ワイナリー協会や葡萄酒技術研究会の役員も精力的に務める。シャトー・マルゴーの故ポール・ポンタリエ氏とは仏駐在時から公私にわたる親交があり、その縁で、氏のワイン哲学をシャトー・メルシャンのブランド育成に繋げることができた。

田村隆幸シニア・ワインメーカー
1999年入社、ワインの基礎研究と商品開発に12年間従事。2005年よりアルゼンチン・チリで醸造を経験。2013年から原料ぶどう調達業務に従事。自社管理畑の拡大を担当し、天狗沢ヴィンヤード、片丘ヴィンヤード、椀子15区&16区を管理。2017~2022年勝沼ワイナリー長、2021年チーフ・ワインメーカーに就任、2023年椀子ワイナリー長を歴任。昨年からコンサルティング業務の営業窓口&指南役としてメルシャン魂をスタートアップワイナリーに発信中!

大滝敦史シニア・ワインメーカー
1992年入社、1997年から仏ボルドーのシャトー・レイソンに駐在、2000年にボルドー大学醸造学部認定DUAD(ワインテイスティング適正資格)取得。2002~2010年メルシャンの欧州事務所赴任中は国際コンクールの審査員も多数務める。2010年以降、藤沢工場、シャトー・メルシャンの副工場長歴任。生産部門で技術および品質管理の向上に尽力、ワイン哲学とシャトー・メルシャンのブランド育成の立役者。




スタートアップワイナリーをサポート
活動業務を「ひとりでも多くの方々に知っていただきたい」と力説していた田村さん
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当時30歳の田村さんが、50歳(今の田村さんの年齢)の藤野さんから畑で指導を受けている場面

「日本のワイナリーの歴史を振り返ると、ぶどう造りは農家、ワイン造りはワイナリーという分業が当たり前でした。そのような状況下、これは先輩格の藤野さんが私に畑仕事の何たるかを語っているシーンなので、まさに、コンサル業務の“源流”」とおっしゃっていました。


原点に立ち戻る
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藤野シニア・ワインメーカーは今年で入社46年目です。
セミナーの冒頭、「物事を成功させるにはいくつかの項目があると思います。①高い志と情熱を持って努力をする。②成功すれば自信につながる。③ここで大事なのは謙虚さであり、常に感謝を忘れずにまい進する。④最終的にそれが継続できれば運は開ける。私は“運=出会い”だと思っています。今まで多くの出会いがありましたが、入社して最初に配属されたのが藤沢工場で、工場長が浅井昭吾さん(ペンネーム:麻井宇介)でした。麻井さんとの出会いによってワインの素晴らしさを知り、新たな出会いを重ねながら、今に至っています」とあいさつ。厳しい指導を受けてきた麻井チルドレン第1号ならではのお言葉!



4字熟語が得意だった麻井先生に倣い、
藤野さんと田村さんはコンサル業務を“原点回帰”と表現しました。
日本ワイン発展のために培ってきた情報をオープンにした先生の志に立ち戻る意味で、
大いに納得できます。




スタートアップワイナリーの今
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5月末のシャトー・メルシャン・フェスティバル2025@東京・渋谷
メルシャンの藤野&田村コンビと2021年からアドバイスを受けている岩手県花巻市のアールペイザンワイナリー&MKファームこぶしの担当者が集い合同セミナーを開催しました。その様子を以下にまとめておきます。


8月初旬、福岡県人の藤野シニア・ワインメーカーに同行して
福岡県北九州市「ラベンダー・ファーム」にお邪魔してきました。
ブログ後半に載せましたので、ご笑覧くださると嬉しいです。
長文になりますが、宜しくお願いします!



岩手県・はなまき市/アールペイザンワイナリー
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2019年にオープンしたアールペイザンワイナリー は、岩手県の社会福祉法人悠和会が母体のワイナリー。りんご農家から引き継いだ畑から造ったシードルが評判を呼び、それがワイン生産への足掛かりとなってワイナリー設立に。2018年に耕作放棄地だった1㌶の棚田を造成し、ぶどう栽培を開始。ワイナリー名はART=芸術、PAYSAN=農民を意味する造語。アイコンはぶどうの球体で、天然記念物の高山植物を描写。醸造・栽培責任者の高橋さんは「幸田地区はぶどう栽培では前例がないエリアです。今回、コンサルティングを依頼したことで、自分たちの立ち位置がよくわかりました。ぶどうを収穫し、醸造してからの熟成具合、ワインがどの程度のレベルなのかが良く理解できました」と感想を述べていました。


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画像は2021年に収穫したぶどう
この年に初訪問した藤野さんも出来栄えを評価
白ぶどうはシャルドネ&ゲヴュルツトラミナー
黒ぶどうはメルロー、マスカット・ベーリーA


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藤野さんが高橋さんから一番最初に受けた相談は「赤ワイン造りの指導」だったそうです。「ぶどうの選別に気を配り、良いぶどうが得られているならそれを最大限に生かす。折に触れ、世界のトップクラスのワインを味見しながら、ワインの品質を学ぶことを大事にしたい」と藤野さん。ちなみに、MKファームこぶしにはまだ醸造施設がないので、ワインは、アールペイザンワイナリーに委託醸造しています。


岩手県・はなまき市/MKファームこぶし
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農場長の堰根(せきね)慶さん

MKファームこぶしの親会社はみちのくクボタグループで、全国に13ヶ所あるクボタファームのひとつ。ぶどう栽培で直面している高齢化や担い手不足の解消に向けて、機械化による低コストや省力の実現を目指し注力。2021年からコンサルティング開始。藤野さんは「東北の屋根奥羽山脈が西からの雨をブロックするので、生育期間の降雨量は900㎜。ここは常に乾いた風が吹いています。冷涼エリアなので、温暖化のことを考えるとぶどう栽培の適地になると思っています」とコメント。「ぶどうができても良いワインを造るためにどうすればよいのか。良いワインとはどのようなものか、藤野さんとの意見交換や試飲を重ねるなかで、多くを学びました」と堰根さん


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MKファームが所有する畑は5㌶、2018年にぶどうを植樹。
圃場の詳細は上記の通り
現在の生産量2000本から来年は5000本まで増やしたいとのこと



ワイン名はスズメバチの学名“ベスピナエ”
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MKファームこぶしのアイコンはぶどうを食べる害虫のスズメバチ
これを“益虫”として共生
環境再生型農業が最も盛んなカリフォルニアの生産者のように、
生物多様性を尊重した真摯な取り組み、素晴らしいです!


テイスティングした5アイテム
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アールペイザンワイナリーは①から③、シャルドネと初成りのぶどうから生産した赤ワイン
MKファームこぶしは④と⑤、サントリーが開発したリースリング・リオン(リースリング×甲州三尺)を使った2アイテム。リースリング・リオンは岩手県を代表する品種になっています。

①シャルドネ樽発酵2023
②マスカット・ベーリーA樽熟成2021
③メルロー樽熟成2021
④べスピナエ 岩手スパークリング2024
⑤ベスピナエ 岩手リースリング・リオン2024

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セミナーが終わり、ほっとした表情の皆さん
左から堰根さん、高橋さん、藤野さん、田村さん


〆のメッセージとして・・・

「メルシャンに相談に来てもらえる素地を作っていきたい」と田村さん
藤野さんは「その土地に適したぶどう樹や苗木の選択からサポートできれば、よりスムーズなアドバイスができるので、ぶどう樹を植えてからでなく、是非、その前に相談に来ていただきたい」と強調していました。


✨✨✨


ここから後半
福岡県・北九州市のラベンター・ファーム
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ラベンダー・ファームの奥村清隆会長(右から3人目)と村田純寛さん(左から3人目)
コンサル業務は藤野さんの管轄で2022年からスタート。8月に藤野さんの引率で、メルシャンの黄金時代を築いた味村興成さん(Chメルシャンの元チーフ・ワインメーカー)と松尾弘則さん(元GM)、メルシャン現役の大峽正裕さんと共に視察させていただきました。


北九州で3番目のワイナリー『ラベンダー・ファーム』
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村田純寛(すみひろ)さんは今年3月栽培・醸造責任者に就任
小倉祇園太鼓の名手でもあります。

経営母体は2003年に開設された障害者福祉事業サービスのNPO法人ラベンダーで、ワイナリーは奥村清隆会長が2020年に立ち上げました。北九州市で平尾台ワインを醸造する『ドメーヌ・ル・ミヤキ』と『ワタリセファーム&ワイナリー』に続く3つめのワイナリーです。村田純寛さんが研鑽を積んだ場所が前者、醸造施設が整っていなかったラべンダー・ファームのワインを委託醸造してくれていたのが後者、北九州市のワイン交流愛が伝わってきます。
北九州市は2016年、ワイン特区に認定されたので新規参入がしやすくなっている印象です。
果実酒の製造免許を得るためには通常最低数量が年間6キロ㍑ですがワイン特区は2キロ㍑


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ワイナリー名は、奥様と一緒にプロヴァンスで見たラベンダー畑に心ときめかせた奥村会長の思いを反映させたもので、「いつの日か、ぶどう畑にラベンダーを植えたい」との夢も叶えたいそうです。

ワイナリーの拠点「猿喰ヴィンヤード」にはキャンベルアーリー、CS、メルロー、CHを植樹。小倉で一番高い足立山(約600m)の東側に位置し、瀬戸内海西部の雨が少ない気候で、日中は絶えず強風が吹いているので、ぶどうには最適。畑には6ⅿ置きに暗渠排水を施してあります。

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事務所の壁には整地時の記録画像が展示してありました。

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「吉志ヴィンヤード」にはヒヨドリ対策のための鳥害ネットを設置。植樹しているのは、CS、メルロー、CH、サンジョべーゼ、アルモノワール、シラー、マルベック、ガラミ(山ぶどう)。メルローは昨年より小粒で熟度も上々。ミスターメルロこと味村エノログもチェックし高評価していました。ガラミは今年11本植樹し、残りの11本はポット苗で育て2026年に本植樹の予定。今年植えたガラミを2027年に初収穫して、細川家の熊本水前寺公園内の出水(いずみ)神社に奉納するのが、今後の計画。


細川家とワイン造りとガラミ
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ガラミとは???
奥村会長が見せてくださった書籍『永青文庫の古文書(吉川弘文館刊)』
熊本大学永青文庫研究センターの後藤典子特別研究員と稲葉継陽センター長らが永青文庫資料等の史料研究から明らかにした内容が記載されています。日本国内で国産ワインの醸造が本格的に行われたのは1870年に入ってからと考えられていましたが、それより200年以上も前に、九州・小倉藩でワインが醸造されていたことが、永青文庫の古文書によって解明されました。
1627年小倉藩細川家当主細川忠利が家臣に純国産の葡萄酒(ワイン)を造るように命じた、南蛮渡来の技術を習得していた上田太郎右衛門が醸造を担当した、使用品種は山ぶどうのガラミだった、アルコール発酵させたワインだった等の記録があった由
詳細な内容は上記の参考文献をご参照ください!


日本で初めてワイン用ぶどうとして使用されたガラミ
奥村会長は九州人としてガラミに強い思いを抱いています。

2025年に植えた11本のガラミを2027年に初収穫すると、
1627年から数えて400年という節目に当たるので、
出水(いずみ)神社への奉納が特別なものになります。
藤野シニア・ワインメーカーにも、より一層指導に力を入れていただかねば!


今秋から本格稼働の醸造施設
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8月の訪問時の施設画像
昨年まではワタリセファーム&ワイナリーに醸造を委託していたので、
醸造施設の完成を心待ちにしているご様子でした。
落成予定日は・・・奥村会長の誕生日に合わせた9月3日


今年デビューしたワイン
藤野コンサルも評価したCH.jpg
初リリースしたシャルドネ2024
フードフレンドリー
メルシャンメンバーからも良い評価


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メルロー2024
ぶどうのポテンシャルと樽使用のバランスを見極めつつテイスティング




奥村会長は「藤野さんの人柄がとても素晴らしく、ワイン業界トップの人と巡り会えたことに感謝しています。また、椀子ワイナリーの年間防除一覧表をいただき、栽培や醸造技術をすべてオープンにしてくださることに驚きました。ワインのつながりは良い人と巡り会えることだと思います。今後ともご指導よろしくお願いたします」とコンサル業務について言及。


栽培や醸造面で課題を感じていらっしゃる皆様へのサービス例はコチラで確認できます。

ワイナリーを立ち上げる予定の皆さま
メルシャンのスタートアップワイナリーの活動にご注目ください
麻井先生のメッセージ「日本を世界の銘醸地へ」を形にするためのコンサルティング事業が
広く浸透することをこころから願っています!


posted by fumiko at 23:45| Comment(0) | 日本ワイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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