
2018年の新たな試みは世界のワイン探求!
今年から〝ワインで巡る世界ツアー〟と題した単発講座を2~3月に1回のペースで開催することにしました。3月28日の初回は日本でも人気上昇中のポルトガルにフォーカス、講座生の皆さまを“大西洋の真珠”と称されるポルトガル領マデイラ島に誘いました。
マデイラ島は、スペインのレアル・マドリード所属のサッカー選手、クリスチアーノ・ロナウドの出身地。2010年に発生した大水害の時に、ユニフォームの下に“MADEIRA”と書いて、試合の勝利時に、それをまくって観客に見せ、マデイラの人たちを励ましました。現在、郷土の英雄として賛美され、島にはロナウドの記念館や銅像が建ち、昨年、空港もロナウド空港と改名されています。
3月30日から公開になった映画『ウィンストン・チャーチル』は観て価値のある映画ですし、飲んで価値あるシャンパンが登場しています。そのチャーチルの趣味の1つが、絵を描くことでした。生涯で500点ほどの作品を残していますが、リタイア後、余暇を楽しみ、絵画三昧の日々を送っていた地がマデイラ島です。酒類好きだったチャーチルなので、マデイラワインも愛飲していたようで、木下インターナショナルが輸入しているブランディーズ社にはチャーチルからの感謝状が残されています。
講座では、前半にポルトガル&マデイラワインについての基礎知識、後半に主要白ぶどう4種類の10年熟成タイプとブレンドタイプ2種類を利き比べました。当日はマデイラワインに精通している輸入元木下インターナショナル(株)マーケティング本部の館農俊則マネージャーと稗田千尋さんに多大なるサポートをいただきました。ありがとうございました!
マデイラ島について クリックで拡大

出典:木下インターナショナル
ポルトガルの首都リスボンから南西に約1,000km、大西洋に浮かぶポルトガル領マデイラ島は東西55km、南北22km、標高1,800㍍の島で、常に海を見下ろす印象、ワイン名イコール島名です。夏は25度、冬は12度という気温に恵まれているので、館農さんは「マデイラは常春」とおっしゃっていました。
マデイラ(“木、材木”の意味)は1419年にポルトガル人が発見した島で、キリスト教と切り離せない関係から、入植後、ぶどう栽培、ワイン造りを開始。島が発見されて30年後に見つかった書物には、最初に植えられたぶどう品種が“マルヴァジア・カンディア”であったとの記述があります。
山がちの島なので、農業ができるのは島全体でわずか20%。人口30万人で、70%の人々が首都フンシャルに住んでいて高密度。南部にはバナナのプランテーション(400 ㍍)があるため、それらを避ける意味で、ぶどう畑は段々畑で、400~800 ㍍に位置しています。ワインは海からの影響による塩っぽさと、火山性土壌由来の酸が特徴。マディラワインにとって酸と糖度のバランスが大事です!
マデイラワインの誕生
コロンブスの時代、マデイラ島を経由した船は、アメリカ、インド、アジアを旅して、長くて5年ほどの年数の航海をしていましたが、マデイラ島のワインだけは、赤道エリア(50度)を4回通過し、熱にさらされることで、見事に熟成。凝縮し、複雑味を備えたワインに変化していました。当時は“周遊するワイン”と呼ばれ、高価なワインのひとつとして、アメリカでも人気を博し、独立記念日の祝杯用にも使われたことが知られています。
収穫:8月下旬、低地から高地の順で行い、すべて手摘み。
発酵:発酵を途中で止め、酒精強化を行う。マデイラは辛口から甘口までのタイプを造る。
熟成:特別な手法、加熱熟成。
【(1)エストゥファ】は船内で起きていたことを地上で再現した製法。ステンレスの容器でワインを3ヶ月間45度~50度で温め、酸化を促す。これにより、ワインは赤道を通過するのと同じ状況になる。エストゥファに使うのは黒ぶどうのティンタ・ネグロのみ。
【(2)カンテイロ】は古樽を使い、常温で5年間、湿度は80%以下。樽の目が詰まっているので抜けるものは一番小さな分子(H2O)だけ。このプロセスによって、凝縮感や複雑味が備わる。
主要ぶどう品種について
白ぶどうは4種 生産量の15%
■セルシアル/辛口・ドライなタイプ、アペリティフ向き
病害虫に強い品種、収斂味、酸味が他品種より強いのが特徴
■ヴェルデーリョ/中辛口・ミディアムドライ、チーズや軽い食事
かつてはマデイラワインの主要品種、近年ティンタ・ネグラにその座を奪われている
■ブアル/中甘口・ミディアムスート、デザート類
芳醇で酸味と甘さバランスが良い品種、少生産で高値のぶどう品種
■マルヴァジア/甘口・スイート、デザート類
マデイラ島に最初に植樹されたギリシャ原産ぶどう。リッチで凝縮した風味が特徴、マルムジーとの呼称も
黒ぶどうは1種 生産量の85%
■ティンタ・ネグラ
19世紀、植樹された唯一の黒ぶどう品種。適応性があり、辛~甘口まで造れるマルチプレーヤー
ドライ、ミディアムドライ、ミディアムスイート、スイートの生産が可能
テイスティングは6アイテム
第1フライトは10年熟成タイプ(すべてバーベイト社)
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#1:セルシアル10年
ぶどう品種:セルシアル100%。発酵終了間際にアルコール96度のグレープスピリッツを添加し、発酵を止める。(酒精強化)カンテイロ方式(加熱熟成)で10~14年間の樽熟成。残糖度:45.0g/L。小売価格:6,000円(税別)
きれいな酸が塩辛の生臭みを見事に払拭、飲み手を気持ち良く包み込んでくれる包容力あり
#2:ヴェルデーリョ10年
ぶどう品種:ヴェルデーリョ100%。発酵が半分以上進んだ頃にアルコール96度のグレープスピリッツを添加し、発酵を止める。(酒精強化)カンテイロ方式(加熱熟成)で10~15年間の樽熟成。残糖度:71.0g/L、小売価格6,000円(税別)
「現在オーストラリアやNZで栽培されている品種はマデイラ島のヴェルデーニョであり、ポルトガル本土でかつて栽培されていたヴェルデーリョとは異なります」と館農さん。3割強が「好み」と答えていました。島に由来するピュアなヴェルデーリョの香りと味が琴線に触れたのかも知れません。酸味と甘味のバランスが良く、マデイラケーキとの相性も〇
#3:ブアル10年
ぶどう品種:ブアル100%。発酵が半分以上進んだ頃にアルコール96度のグレープスピリッツを添加し、発酵を止める。(酒精強化)カンテイロ方式(加熱熟成)で10~14年間の樽熟成。残糖度:87.0g/L、小売価格6,000円(税別)
マイベスト! 芳醇な香りが魅力、口中に広がる凝縮感、旨味、カレーパン(なかの卵共々)との相性良好
#4:マルヴァジア10年
ぶどう品種:マルヴァジア100%。発酵の前半にアルコール96度のグレープスピリッツを添加し、発酵を止める。(酒精強化)カンテイロ方式(加熱熟成)で10~14年間の樽熟成。残糖度:101.0g/L、小売価格6,000円(税別)
100gを超える糖分がありながら、後方に控えたきれいな酸味が素晴らしく、極めてエレガント
第2フライトは5年熟成のブレンドタイプ
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#5:デルヴィーノ・レゼルバ5年(バーベイト社)
ぶどう品種:ティンタ・ネグラ80%、セルシアル20%。発酵がかなり進んだ段階で、96度のグレープスピリッツを添加。その後、フレンチオークに入れ、カンテイロで熟成。ティンタ・ネグラは5年、セルシアルは7年の熟成を経たものをブレンド。残糖度:36g/L、容量:500ml、小売価格:2,400円(税別)
程良い甘さを残しつつ、セルシアルの心地良い酸が生きたブレンド、カレーも〇
#6:アルヴァダ5年(ブランディーズ社)
ぶどう品種:マルムジー50%、ブアル50%。18~21度で温度管理されたステンレスタンクで発酵(天然酵母)。約48時間後にグレープスピリッツを添加、アメリカンオークのカンテイロで5年間熟成させた後、瓶詰め前に澱引き、清澄してブレンド。残糖度:114.0g/L、容量:500ml、小売価格:2,800円(税別)
200年以上の歴史を有すブランディーズ社はマデイラワインの王道を行くスタイル。凝縮感、旨味にあふれ、ドライフルーツやナッツ、スパイスの要素がマデイラケーキと相乗!
ブレンドタイプは各年のものを合わせる(若くて3年、古くて50年くらいまで)
カンテイロで20年以上熟成したものはヴィンテージあるいはフラスケーラ(年号、番号付/20年に1度リコルクが必要)と呼ばれています。マデイラワインの保存は横にしないで立てたままで!
大胆なマリアージュ
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魚卵系なんでもOKなので塩辛を用意しました。
口中に残っていた生臭さが一瞬で消え、隠れていたマデイラワインの酸味が舌をきれいに洗い流してくれる印象、おすすめのマリアージュ!
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私はお節料理や和食全般に合わせて楽しめるのがマデイラワインだと実感しています。
館農さんは「セルシアルと生うに」の組み合わせをすすめていました。料理の隠し味にも使えるマデイラワインは、開栓して1年以上経過しても全然問題ありません。
京都のマデイラ菓子店カステラ・ド・パウロの特製マデイラケーキ
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マデイラワインに漬け込んだフルーツやナッツの風味がマデイラワインと合って本当に美味。今回の講座用に1ヶ月前から予約してゲット!
色や香りの変化
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白ワインは薄い色調、赤ワインはルビー色からスタートし、10年後にはどちらも同じ色調に変化します。一番若いワインは3年ものですが、アロマは熟成とともにドライフルーツ、スパイス、タバコ、ロースト風味、ヴィネガー様のニュアンスに。「16人で5年間、香りの実験を行い、その結果、全員が感じ取ることができたアロマは30種(実際には400あると言われています)でした」と館農さん。
テーブルワインと合わない食材もOK!
たまご、しょうが、カレー、ヴィネガー等
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マデイラワインの特徴香はソトロン、カレーのような香り
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ということでカレーパン(茹たまご入り)を用意!
参加者の皆さんから、ご賛同いただきました。
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マデイラワインワールドを銀座7丁目で満喫
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(左から)佐藤店長、館農さん、稗田さん、檜垣さん
木下インターナショナル直営の『マデイラ・エントラーダ』には3年物から1850年ヴィンテージに至るまで100種類のマデイラワインが揃っています。1杯400円からすべてグラスで楽しむことができます。もちろん、お食事とのマリアージュもご堪能いただけますので、是非、お立ち寄りくださいませ。
〒104-0061
東京都中央区銀座7-6-19 ソワレ・ド・銀座弥生ビルB1F ℡03-6264-5700
営業時間:17:00~23:30(L.O.23:00) / 定休日:日曜&祝日
店舗の詳細はコチラで!
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マデイラワイン恐るべし!

アルコール強化ワインのマデイラが食中酒として通用すること自体、新たな発見!


数の子や納豆巻きと合わせても口中で不快な苦みや臭いなし、驚愕!
個人的には、数の子は第1フライト(前列)の左から2番目ヴェルデーリョ10年(バーベイト社)。納豆巻きは第2フライト(後列)左から2番目ヴェルデーリョ5年(ブランディーズ社)が素直に食材を受け入れてくれた印象。

NHKの単発講座ではカレーパンを供出しましたが、今回は佐藤店長自慢のチキンカレー
ワインに含まれる物質“ソトロン”効果!
マデイラワインは体験すべきワインです。
銀座マデイラ・エントラーダのトークショー(5,000円)で目からウロコ状態にさせてもらえます!
ラベル:マデイラワイン