ワイナリー訪問3日目は、モントレーから移動してサンフランシスコ・ベイエリアの内陸に位置するリヴァモア・ヴァレーのウェンテ・ファミリー・エステート(以後ウェンテ)から始まりました。

130年以上の歴史があるウェンテはリヴァモア・ヴァレーに2000エーカー(1エーカー=0.4㌶)、モントレー郡のアロヨ・セコに1000エーカーの計3000エーカーの自社畑を所有。創始者カール・ウェンテさんから続く家族経営で、今は4代目と5代目が活躍中です。
禁酒法の時代には教会でのミサ用ワインも造っていましたが、それだけでは生計が成り立たないので、2代目は牧場経営に着手、現在でもウェンテ・ビーフとして知られています。飼育している牛には1日1本のワインを飲ませているとのこと。柔らかくて香り高い肉質はワインの効用!
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4代目のキャロラインさんは食とワインの大事さに注目し、1986年にワイナリー内にレストランをオープンしました。5代目のカールさんはキャロラインさんの甥っ子でワインメーカー。すべて自社畑から産出するワインと同様、食材も畑からテーブルに直結する地産地消型、それがキャロラインさんの考え方です。
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レストランの遠景、敷地内にはグレッグ・ノーマンがデザインしたゴルフコースや170名が着席で楽しめるコンサートホールを併設。キャロラインさんは「ワインだけではなく、来訪者に多くの体験をしてもらうことでワインカントリーのライフスタイルを満喫して欲しい」と語っていました。
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キャロラインさんの曽祖父がドイツからリヴァモア・ヴァレーに移住。祖父(2代目)と親族がカリファルニアで初めてシャルドネCHのワインを発売(1936年ヴィンテージ) しました。「CH は祖父がフランスから持ち帰った苗木を増やしたもので〝ウェンテ・クローン〟と呼ばれています。カリフォルニアのワイナリーの80%がウェンテ・クローンを使っています」とキャロラインさん。父親(3代目)がアロヨ・セコにぶどう畑を購入したので、アロヨ・セコとリヴァモア・ヴァレーの2AVAでワインを生産。地球への配慮からサステイナブル(環境保全型)農法を導入しています。
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フレンチオークがメインで、アメリカンと東欧のオークの計3タイプを使用。毎年1万樽を購入し、2~2.5年ごとに買い替えているとのこと。樽貯蔵庫には25000樽が寝ています。
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曽祖父がドイツから持ってきた大樽は貴重な遺産
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カーヴは年間10~13度、自然のクーラー
内部の塗装はベースの砂質土壌に吹付けしたものとか
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古き良き時代を感じさせるカーヴの外観
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野菜、香草、草花など、一年を通して季節に合わせた種類を育て、自家製オリーブオイルも生産。益虫や蜂との共存で畑を健全に保っています。
フードフレンドリーなワインたち
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entwineエントワインはCATVの食チャンネル〝フードネットワーク〟とウェンテが組み、〝食事と合わせて〟をコンセプトに造り上げたアイテム。10年間で米国人に食の教育をしてきたフードネットワークの実績を生かし、ワインでも同様の試みをしています。具体的には同チャンネルのエグゼクティブシェフが年に4回ワイナリーに来て、ワインメーカーのカールさんと共同でトライアル。アルコール度数も程よく、料理に合わせやすいワインを開発しています。エントワインの日本での輸入元は日酒販です。
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左から
■ピノ・グリージョPG2012・・・グレープフルーツやリンゴ、爽快な酸、一般的なピノ・グリより重厚感、ボディがあるのはシェフが求めるスタイル、牡蠣や魚貝類と合わせて
■シャルドネ2012・・・60%ステンレス発酵、40%樽発酵のワインをブレンド 重すぎず、軽すぎずのミディアムボディ、フルーティでバランス良
■メルロ2011・・・2~3空樽使用、ドライフラワー、柔らかなタンニン、芳醇な味わい
■カベルネ・ソーヴィニヨン2011・・・カシス、ダークチェリー、ヴァニラ、燻香、紅茶、ハーブ等、複雑味あり
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こちらのウェンテブランドは明治屋扱い。両社ともに業界では最古参。「日本でもっと知って欲しいワイン」だと思いました。全体の6割が白ワイン、4割が赤ワインですが、特に〝ウェンテ・クローン〟のシャルドネはアイコンワインにふさわしい存在感があります。
■SBルイ・メル・リヴァモア・ヴァレー2013・・・SB95%+SE5%、1932年に祖父と親族が初めて〝SB〟と明記してワインをリリース。小石を多く含んだ土壌由来のキレの良い酸、グレープフルーツ等の柑橘系果実、ミネラル感
■CHモーニング・フォグ・リヴァモア・ヴァレー2013・・・CH100%(ウェンテ・クローン)、樽発酵60%とステンレス発酵40%、MLF有 、蜜を含んだサンフジ、ヴァニラ、フルボディー&複雑味あり
■CHリヴァ・ランチ・アロヨ・セコ2013・・・樽発酵90%とステンレス発酵10%、アロマ豊かでエレガント、パイナップル等のトロピカルニュアンスも、MLF有、マイベストワイン!
ランチで
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チャールズ・ウェットモアの名を冠したCS。「リヴァモア・ヴァレーのカベルネは熟したニュアンスが特徴」とキャロラインさん。ウェットモアはカリフォルニア初の使節団団長で、彼が興したワイナリーをウェンテ・ファミリーが購入、現在に至っています。
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自営農場のポークチャップ、すごいボリューム!

ウェンテのトップレンジのCS、生産量300ケース、日本ではJute Inc.が輸入しています。
すべての面において伝統に裏打ちされた家族の強い自信が伝わってきたウェンテ・ファミリー・エステート。今回の訪問ではリーズナブルな価格、身体に優しいアルコール度数、食事に合わせて楽しめるワインが多い点が気に入りました。
お気に入りのソノマのホテル
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ディナー前にソノマのマックアーサー・パレスホテル&スパにチェック・イン、ツアー初の連泊、お部屋を開けた途端、心地よい香りが・・・こころ癒されたホテル、ネット環境も迅速でした!
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清潔感のある施設の小道を抜けてお部屋に
ナパのロバート・モンダヴィ・ワイナリー
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ナパ・ヴァレーは東西1.6~8㎞、南北約50㎞の細長い地形で、サン・パブロ湾に近い南部は海風の影響を受けて涼しく、ヴァレーを北上につれ、海の影響は少なくなります。1966年創業のロバート・モンダヴィ・ワイナリーはカリフォルニアワイン業界のパイオニア的存在で、多大な貢献をしてきました。2008年に創始者モンダヴィさんは逝去、現在はコンステレーションのグループに属しています。ワイナリーのあるオークヴィルはナパの真ん中に位置し、銘醸畑ト・カロン・ヴィンヤード(180㌶)はワイナリーの背後にあります。・カベルネソーヴィニヨンCS(全体の70%)、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルド、メルロ、マルベック、ソーヴィニヨン・ブランSB、セミヨンが植樹されていて、畑にはオーパス・ワン用のぶどう樹もあります。ここで造られるCSは超高価(約35万円/トン)とか、SBも秀逸です。これら2品種は故モンダヴィさんが特に愛したぶどうです。
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クローン、台木、植樹年等、細かな情報を記載
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今年は干ばつの影響で例年より早い収穫でした。SB、PNからスタートし、10月初旬にはすべてが終わる予定(訪問は2004年9月10日)。収穫が一番遅い品種はカベルネ・ソーヴィニヨンで、過去一番早かった収穫年は1984年で9月14日には終了していたとのことです。
ト・カロン・ヴィンヤードで
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ウェルカム・ドリンクはロゼ・ワイン(CS60%、ME37%、CF3%のブレンド)、アセロラ色、柑橘系果実のアロマ、口中を洗い流す酸、イチゴやサクランボのニュアンス。バーベキューにお薦め
5時、6時から収穫作業をしている最中、我々のもとに駆けつけてくださったのがシニア・ワインメーカーのリチャード・アーノルドさん(画像なし)で、今回の案内役ワイン・エデュケーターのスーザン・フレンチさんのご主人。おふたり合わせるとモンダヴィでの勤務は70年間。アーノルドさんにとって2014年は記念すべき40回目の収穫とのことでした

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醸造施設内の階段脇に飾ってあったバッカスとモンダヴィさんの壁画
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カベルネの収穫はこれからなのでタンクは空、収穫時期には39基のタンクがフル稼働します。
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案内役スーザン・フレンチさんと醸造所でカベルネを味見、種は噛んでパリパリした感じ
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壮観、出番を待つフレンチ・オーク。使用する時に樽の胴体中央部分に赤ワインを塗りますが、それは注ぎ足しの時にワインがこぼれることがあるので汚れ隠しの工夫
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収穫して1年目の樽は平積みにして並べます。2年目からの樽は別の部屋で保存。ナパの南端にあるバレルハウスにもリザーブワインをストックしています。
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1966年の創業当初から造っているシャルドネ。100%樽発酵、100%フレンチオーク(新樽70~90%)、MLF有、引き締まった酸が特徴。「カーネロスは冷涼地なので、MLFをしても豊かな自然の酸が残ります」とスーザンさん
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ワインと食のペアリングについても早くから取り組んでいたのがロバート・モンダヴィ
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1960年代、アメリカのSBは甘口でした。欧州視察をしたロバート・モンダヴィは食事にあうドライな味わいのSBの必要性を感じ、製品化します。リリースするにあたり、〝ソーヴィニヨン・ブラン〟と表記すると甘口と勘違いされるので、〝フュメ・ブラン〟というネーミングにして発売。醸造時、一部樽を使うと燻製(フュメ)的なニュアンスが出ることに由来した命名だったようです。
(左)今回2度目のリリースとなるオークヴィル・フュメ・ブラン2012。これはロバート・モンダヴィ生誕100周年を記念して2013年にデビューしたワインです。樹齢20年ほどの樹から穫れたぶどうを使用。ワイナリーあるいはアメリカ国外でのみ販売しています。
(右)フュメ・ブラン・リザーブ2012は1970年代からト・カロン・ウヴィンヤードの古樹(最古は1945年、多くは1960年代に植樹)から造った希少ワイン。今ディナーのための特別供出。口中に広がる凝縮感、ミネラル、優しく包み込むような長い余韻。モンダヴィさんの思いがこもったSBでした!
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スナッパー(フエダイの一種)のさしみ、ピクルス、水菜やチャイブを添えて
和の素材を感じさせる一品、SBのミネラルが食材の酸味とナイスマッチング
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リブアイステーキ(リブロース)、ラタトゥイユにはナパ・ヴァレーのCSリザーブ2010を合わせて
「力強いカベルネ・ソーヴィニヨンで、若い時は果実味が、熟成するにつれシダのニュアンスを感じるワインです。。リザーブワインは100%フレンチオークの新樽を使用します。100%樽熟にするのはボディのあるぶどうだからできることです」とスーザンさん。1983年生まれのお嬢さんの誕生日(30歳)にヴィンテージワインを開けてお祝いしたそうですが、ワインは見事な熟成状態だった由。長熟タイプの良きお手本といえるワイン
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マスカルポーネのアイスクリーム、リンゴのキャラメル風味、砕いたカラス麦添え
デザートワインはナパ・ヴァレー・マスカット・ドロ2013
故モンダヴィさんが〝マスカット・オブ・ゴールド〟の意味で命名、品種はマスカット・カネリ、溌剌とした酸、桃やライチ、ハチミツ、とろりとした食感でマスカルポーネとの相性良好
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「ワインカントリー料理をお出ししました」とクリス・スティルウェル・スー・シェフ
カリフォルニアで揃う食材&作られている食材を使った料理をそう表現しているそうです。
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前職はジャーナリストだったというスーザンさん、上品なマダムで素晴らしいお気遣いでした。
翌11日はナパのケイン・ヴィンヤードと合同試飲会、ウイリアム・ヒル・エステート・ワイナリー、ブラック・スタリオン・ワイナリーと、かなりハードなスケジュールが続きました。(次回で)