
エリゼ宮の饗宴で使われるメニュー表紙
ルーブル美術館所蔵ギュスターヴ・モロー(1826~1898)の『Les plaintes du poète』
オランド政権下で変化するエリゼ宮の饗宴
1947年に完成したエリゼ宮(大統領府)のワインセラーには銘醸ワインが保管されています。
2006年12月、私は恵比寿のフレンチレストランでエリゼ宮の再現ディナーを主催しました。講師は名著『エリゼ宮の食卓 ~その饗宴と美食外交~』の著者、西川恵氏でした。
エリゼ宮の饗宴では、相手が国家元首クラスなのか、あるいは公式訪問なのか等によって供されるメニュー(料理とワイン)は異なり、ワインの格も違ってきます。エリゼ宮のメニューの裏に隠された政治的な駆け引きに言及する西川講師の語りに深く引き込まれました、強烈な面白さでした。
そのエリゼ宮で、前代未聞の出来事がありました。5月30日と31日に、ワインセラーにあった12000本のうちの1200本が、パリの歴史あるオークションハウス『ホテル・ドゥルーオ』で競売にかけられたのです。決断に至った理由は社会党政権になり、フランス国内の財政政策のため、従来のワインより安価なワインに買い替えることでした。
エリゼ宮ワインの撮影会
当初、25万ユーロ予想と言われていましたが、最終的な落札額は75万ユーロに及び、その18%を占めたのが最高入札者の一社ピーロート・ジャパン(以後ピ-ロート)で、166本のワインを入手。落札ワインは1本ずつ丁寧に梱包され、空輸便で6月末日本に到着。同社では7月12日から販売を開始していますが、同日の5時間後には70%、最新情報ではすでに80%の販売が終了している由。歴史的な意味のあるワインだけに注目度も高かったようです。
7月中旬、ベージュ・アラン・デュカス東京で、オークションワインのプレス向け撮影会があり、18本のワインが披露されました。

オークションワインについて解説する同社代表取締役営業部門担当 ローラン・フェーヴル氏
エリゼ宮のすべてのオークションワインには出拠を示すシールが貼られています。
ブルゴーニュの銘醸ワインたち
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Montrachet Grand Cru1999 Maison Louis Jadot
Bâtard-Montrachet Grand Cru1998 Maison Louis Jadot
Musigny GC "Vieille Vigne"1989 Comte Georges de Vogüé
Grands-Échézeaux Grand Cru1969 Maison Joseph Drouhin
Romanée-Saint-Vivant GC "Les Quatre Journaux"1966 Louis Latour
ボルドーの銘醸ワインたち
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Château La Mission-Haut-Brion1990
Château Beychevelle1989
Château Latour1988
Château Haut-Brion Blanc1988
Pétrus1985
Château Latour1982
1975年ヴィンテージのワインたち
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Château Margaux1975
Château Haut-Brion1975
Château Ausone1975
古酒の醍醐味を感じさせるワインたち
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Château Lafite Rothschild1961
Château Haut-Brion1964
Château Angélus1961
Château Margaux1952
日本初! エリゼ宮ワインの公式プレスランチョン
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エリゼ宮殿の饗宴に使われているカバーと同じ装丁のメニューについて解説するベージュ・アラン・デュカス東京のドミニク・ポティエ総支配人
ランチョンに登場した4本のエリゼ宮ワイン
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#1:Boizel Champagne Brut Millésimé2002
#2:Puligny-Montrachet PC "Champ-Gain"1998, Maison Louis Jadot
#3:Domaine de Chevalier Blanc1990
#4:Beaune Clos des Mouches PC1978, Maison Joseph Drouhin
#5:Latricières-Chambertin GC1990, Domaine Faiveley
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アミューズ・ブーシュにはピーロート扱いのシャンパン、#1のボワゼル2002をあわせて
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タカベと季節野菜のエスカベッシュ、#2ピュリニー・モンラッシェ・・シャンガン1998(ルイ・ジャド)
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最初のワインはルイ・ジャド好きのフェーヴル氏が選択したようですが、基本はポティエ総支配人と『アラン・デュカス・エンタープライズ』のシェフソムリエのジェラ-ル・マルジョン氏が料理に合わせてワインをセレクト。
ヘーゼルナッツや胡桃、こってりとしたハチミツのニュアンス、中盤からスパイシーさが広がり、香り&味わいともに時間経過で刻々と変わる表情、逸品でした!
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日本海スズキのオーブン焼き、オリーブオイル‐レモンの香りを付けたジロール茸と隠元 トマトソース、#3ドメーヌ・ド・シュヴァリエ1990と合わせて
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輝きのある黄金色、色から連想できるオイリーな味わい、舌の上をなぞるようなねっとり感が、味わいのはっきりしたスズキ料理との相性も良く、参加者大満足
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#4ボーヌ 1er クロ・デ・ムーシュ1978 (ドメーヌ・ドルーアン)はアンバー色!
クロ・デ・ムーシュではピノ・ノワールとシャルドネを同畑に植えていましたが、ある時、収穫時期がずれたことで、それぞれを個別に収穫。偶然の出来事から生まれた銘醸ワインです!
第一香はシェリーのオロロソを感じさせる甘やかさ、口中でもシェリー似の若干酸化したニュアンス。でも、そのあと・・・“時間は友達”を証明するワインのパワー全開。グラス内で空気と触れあってから、シガーや枯葉、若干の果実の風味も。その底力、奥行の素晴らしさに脱帽!
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佐賀県産酵素豚ロースのア・ラ・ブロッシュ、ジャガイモのフォンダンとシュークリーヌ
#5ラトリシエール・シャンベルタン1990(ドメーヌ・フェヴレ)とあわせて
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上品に加齢したマダムを彷彿とさせるワインで、エレガントさと芯の通った凛としたスタイル、
#2との1990VT比較もできた貴重な体験になりました。
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ヴァシュラン サクランボとピスタチオ
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ベージュのインテリアに映えるピンクと抹茶色のマカロン
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シャネルチョコ、オシャレ!
今回放出されたワインは、1アイテムにつき、1本~2本、多くても3本だったとのことなので、エリゼ宮には饗宴に出せる、数量十分の銘醸ワインがまだ寝ていると思います。ただ、今後の“美食外交”では、より格の違いが明確になってくるものと思われます。
ベージュでのイヴェント後、再度、『エリゼ宮の食卓』を読み直してみましたが、名著は読み手を飽きさせません。銘醸ワインも然り、飲み手を魅了してやみません。
このような機会を与えてくださったピーロート・ジャパン様にこころから御礼申し上げます!
ありがとうございました!!
そして、こういった貴重な財産が良い形で公開された事が良かったです。
ただ、おもてなしは、貴賤関係なく、でこれからの時代はあって欲しいですね。
素晴らしい情報をいつもありがとうございます。